日本代表はどこまでいける? コパ・アメリカ「招待国」の意外な成績を知る
開幕目前となった、コパ・アメリカ。世界で最も古いナショナルチームの大陸選手権であるこの大会には、1993年大会から始まった「招待国枠」というユニークな制度があることでも知られる。20年ぶり2度目の出場となる日本を含め、この「招待国」で参加したチームはこれまでどのような成績を残してきたのだろうか?
(文=池田敏明、写真=Getty Images)
1993年大会から始まったコパ・アメリカの招待制度
南米サッカー連盟(CONMEBOL)加盟国のナショナルチームが南米王座をかけて争うコパ・アメリカ。現在は原則4年周期で開催されており、今年6月14日から7月7日(現地時間)にかけて、ブラジルで46回目の大会が行われる。
大会は3グループによるグループステージを行い、成績上位の8チームが決勝トーナメントを戦うというフォーマットなのだが、CONMEBOL加盟国は10カ国しかないため、毎回2チームが「招待国」として参加する。今大会には日本とカタールが招待された。日本が招待されるのは1999年、2011年、2015年大会に続いて4回目で、2011年は東日本大震災の影響により、また2015年はスケジュール等の都合で参加を辞退したため、今大会が2度目の出場となる。
ブラジルやアルゼンチン、ウルグアイといった強豪国と真剣勝負ができる場であるだけに、日本には一試合でも多く戦ってほしいものだが、そもそも招待国が上位進出を果たせる大会なのだろうか。招待制度がスタートした1993年エクアドル大会以降の招待国の成績を振り返ってみよう。
最高成績はメキシコの準優勝 ホンジュラスも意外な好成績
1993年から2015年チリ大会までで、アメリカ、メキシコ、コスタリカ、ホンジュラス、ジャマイカ、日本の6カ国が招待国として参加している。また、2016年の100周年記念大会は北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)との共催でアメリカ、メキシコ、コスタリカ、パナマ、ハイチ、ジャマイカが参加しているが、今回はこの6カ国も招待国として扱う。この中で招待国としての存在感が最も強いのはメキシコだ。
1993年大会から2016年大会まで10大会全てに参加しており、招待されないのは今大会が初めてとなる。CONMEBOLに加盟する大半の国と同じスペイン語圏の国で、地理的にも近く、レベルも申し分ないということで、招待されやすい存在といえるだろう。メキシコ側もコパ・アメリカを重要な強化の場と捉えている傾向があり、CONCACAFの大陸大会であるゴールドカップと開催年が重なるにもかかわらず、多くの大会においてトップクラスの選手をそろえたチーム編成でコパ・アメリカに臨んでいる。
そして実際、メキシコは好成績を残すことが多い。初参加の1993年大会ではグループステージで苦戦しながら決勝トーナメントでペルー、エクアドルに勝利し、決勝でアルゼンチンに敗れたものの準優勝を果たした。1995年ウルグアイ大会はベスト8、1997年ボリビア大会、1999年パラグアイ大会は3位となり、1997年大会ではルイス・エルナンデスが6ゴールを挙げて得点王に輝いている。
2001年コロンビア大会では再び準優勝を飾り、2007年ベネズエラ大会でも3位。グループステージ敗退は2011年大会、2015年チリ大会のわずか2回だけで、通算では17勝13分18敗という成績を残している(PK戦は引き分けとしてカウント)。
また、メキシコの招待にはサポーターが大挙して来訪するという副次的メリットもある。ユニフォーム姿に加えてソンブレロ&ポンチョやルチャ・リブレのマスクなどさまざまな扮装でスタンドを彩り、独特なチャントで会場を盛り上げ、交通費や宿泊費、飲食代で開催地に多くのお金を落としてくれる彼らの存在を考えると、ある程度、勝ち上がってくれたほうがありがたいともいえる。
これに次ぐ好成績を残しているのはホンジュラスで、2001年大会で3位に入っている。開催国のコロンビアは当時、国内の治安が最悪ともいえる状態で、一度は開催中止となりながらすぐに撤回されるなど、運営自体が混乱していた。その上、アルゼンチンと、本来の招待国だったカナダが出場を辞退したため、コスタリカとホンジュラスが急遽、穴埋めとして招待される経緯があった。
十分な準備期間のないまま参戦したホンジュラスだったが、グループステージを2位で突破すると、準々決勝ではブラジルを2-0で破る快挙を達成。準決勝でコロンビアに敗れたが、3位決定戦ではPK戦の末にウルグアイを破った。ホンジュラスが招待されたのはこの1回のみで、3勝1分け2敗(PK戦勝利は引き分けとしてカウント)という成績を残しているが、これが招待国の中では唯一の勝ち越しとなる。
アメリカは1995年大会、2016年大会で4位となり、コスタリカは2001年大会、2004年ペルー大会でベスト8進出を果たしている。2001年大会のコスタリカでは、FC東京でのプレー経験もあるパウロ・ワンチョペが4試合全てで得点を記録しており、大会通算5得点で得点ランキング2位に入った。
なお、招待国の中で決勝トーナメントに進出した経験を持つのはこの4カ国だけで、残るパナマ、ハイチ、ジャマイカ、日本はいずれもグループステージを突破できていない。ジャマイカは2015年、2016年と2大会連続で出場したものの、いずれも3連敗を喫しており、6試合ともノーゴールとなっている。
1999年大会、本気の南米チーム相手に日本は……
日本の成績を詳しく見てみよう。1999年大会の日本は、開催国パラグアイに加え、ペルー、ボリビアと同じグループに入った。同年6月のFIFAランキングでは、パラグアイが21位、ボリビア53位、ペルー66位に対し、日本は42位。開催国パラグアイが勝ち上がることを想定したグループといった様相の中、ボリビア、ペルーよりランキングが上だったため、日本の勝ち上がりを期待する声も大きかった。
しかし、日本が2002年FIFAワールドカップ日韓大会に向けてのチームづくりの途上だったことを差し引いても、本気の南米諸国は太刀打ちできる相手ではなかった。初戦のペルー戦は、開始6分にブラジル出身の呂比須ワグナーが先制点を奪ったが、その後は相手の素早いチェックとパスワークに翻弄され続ける。70分、74分に失点し、77分に三浦淳宏がFKを決めて同点に追いついたが、81分に勝ち越しゴールを許し、2-3というスコア以上の実力差を感じての完敗を喫した。
続くパラグアイ戦は18分に早くも失点すると、その後も次々とゴールを許し、0-4と大敗。早くもグループステージ敗退が決まってしまった。日本にとっての消化試合となった3戦目のボリビア戦は、前半終了間際に相手が退場者を出し、数的優位を得ながらも攻め切ることができず、1-1の引き分け。1分2敗、3得点8失点という成績で帰国することとなった。
あれから20年が経過し、日本はワールドカップの常連国となった。真剣勝負の舞台で強豪国と互角に渡り合う試合も増えつつある。今大会に招待されたカタールと日本は、くしくも年初に行われたアジアカップの優勝国と準優勝国。ぜひともアジアのレベルが高まっていることを証明してほしいものである。
<了>
コパ・アメリカ 招待国 過去成績一覧
1993年 エクアドル大会
メキシコ 準優勝
アメリカ グループステージ敗退
1995年 ウルグアイ大会
アメリカ 4位
メキシコ ベスト8
1997年 ボリビア大会
メキシコ 3位
コスタリカ グループステージ敗退
1999年 パラグアイ大会
メキシコ 3位
日本 グループステージ敗退
2001年 コロンビア大会
メキシコ 準優勝
ホンジュラス 3位
コスタリカ ベスト8
2004年 ペルー大会
メキシコ ベスト8
コスタリカ ベスト8
2007年 ベネズエラ大会
メキシコ 3位
アメリカ グループステージ敗退
2011年 アルゼンチン大会
メキシコ グループステージ敗退
コスタリカ グループステージ敗退
2015年 チリ大会
メキシコ グループステージ敗退
ジャマイカ グループステージ敗退
2016年 センテナリオ アメリカ大会
アメリカ 4位
メキシコ ベスト8
コスタリカ グループステージ敗退
ジャマイカ グループステージ敗退
ハイチ グループステージ敗退
パナマ グループステージ敗退
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