
[高校サッカー選手権 誕生月ランキング]やはり「早生まれ」は不利? 最も多い月は…
冬の風物詩、高校サッカー選手権がいよいよ開幕する。新型コロナウイルスによってさまざまなことが一変した2020年。これまでとは異なる状況に置かれた選手たちの戦いぶりにも注目が集まるが、本記事では選手権に挑む選手たちの「誕生日」を集計し、ランキングを作成。日本の学校教育の中では特にスポーツ分野で「早生まれ不利」という定説があるが、選手権出場チームでは何月生まれの選手が多いのだろうか?
(文=REAL SPORTS編集部、写真=Getty Images)
選手権参加の全1440選手の誕生日を集計! 最多の月は?
日本の学校教育の「学年」は4月に始まり、翌年3月31日に終わると定められている。結果として、同学年の中に、4月から12月までの「遅生まれ」と、翌年の1月から3月生まれの「早生まれ」という二つの年にまたがった誕生日を持つ子どもが混在することになる。この「遅生まれ」「早生まれ」の格差については、古くから半ば定説のように語られてきたが、高校サッカー界の一大イベント、第99回全国高等学校サッカー選手権大会(以下、選手権)の参加選手ではどうなのか? 記事作成に当たって、REAL SPORTS編集部では、出場48チーム(各チーム出場予定メンバー30人で計算)全選手合計1440人の誕生日を集計、「選手権誕生月ランキング」を作成した。
ちなみに、4月1日生まれは、民法に定められた「人は誕生日の前日が終了する時(午後12時)に年を一つとる(満年齢に達する)」という定義から、誕生日の前日である3月31日の0時に年齢が増え、一つ上の学年に組み込まれることになっている。
データ1 選手権参加選手の誕生月
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1.4月 181人
1.5月 181人
3.6月 151人
4.7月 148人
5.8月 140人
6.9月 136人
7.10月 118人
8.12月 97人
9.11月 87人
10.1月 75人
11.2月 66人
12.3月 60人
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最多人数は、4月と5月の181人。今回集計した4月生まれには4月1日生まれがいなかったため181人すべて4月2日以降の「遅生まれ」となる。誕生月を見れば一目瞭然、4月~6月が全体の約35%を占め、今大会の参加選手の約3人に1人は4月~6月生まれとなった。
順位で見ると、4月と5月が同数、12月と11月が逆転しているほかはカレンダー通りに人数が減っていくという現象が見られた。11月からは100人を割り込み、1月から3月の「早生まれ」は、全体の約14%に留まった。
選手の誕生日を個別に見ていくと、4月3日、4月14日、6月3日生まれが、11人と最も多かった。これが偶然の一致なのか何か意味がある数字なのかはデータ収集範囲や量を広げる必要があるが、かつては「出産予定日を遅らせてでも!」といわれていた4月2日生まれも8人、以降4月前半はいずれも多く、両親の「遅生まれ信仰」が影響している可能性を感じさせた。
また、学年別に集計した場合もどの学年も1月から12月でゼロ人となる月、大差がつくような偏りはなかった。
データ2 学年別誕生月集計
「早生まれ」選手は平均して約4人が所属
選手合計1440人で集計を行った場合はゼロとなる誕生月はなかったが、チームごととなった場合変化があるかも集計を行った。48チーム中11チームが1月から12月すべての月生まれが所属しているが、残りの37チームは該当する誕生月ゼロの月がある結果となった。
該当する選手ゼロの月はやはり「早生まれ」の1月から3月に偏っている。徳島市立(徳島)は、48チームの中で唯一所属選手に1月から3月生まれの「早生まれ」選手がいないチームだった。反対に丸岡(福井)、大社(島根)の2チームは、「早生まれ」選手が登録メンバー30人中10人と3分の1を占める結果となった。
前述の徳島市立、丸岡、大社以外の45チームは「早生まれ」選手は平均して約4人が所属している。
Jクラブ加入内定選手にも「早生まれ」は少ない?
最後に選手権でもその活躍が注目されるJクラブ加入内定選手の誕生日をまとめた。
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青森山田(青森)藤原優大 6月29日
青森山田(青森)タビナス・ポール・ビスマルク 7月5日
昌平(埼玉)須藤直輝 10月1日
昌平(埼玉)小川優介 4月14日
昌平(埼玉)柴圭汰 9月12日
昌平(埼玉)小見洋太 8月11日
履正社(大阪)平岡大陽 9月14日
京都橘(京都)西野太陽 8月10日
神戸弘陵(兵庫)松井治輝 4月12日
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Jクラブ加入内定選手としてあげた選手は全員「遅生まれ」という結果になったが、今大会には2年生で活躍が期待される「早生まれ」の仙台育英(宮城)の島野怜のような選手もいる。また過去大会で活躍した「早生まれ」の選手には遠藤保仁、内田篤人もいる。
「早生まれ」は本当に不利なのか? 環境が左右する選手の成長
「早生まれ不利」は、幼少期の生育の違いが影響している説が有力だ。海外でも新学期が始まる9月以前の生まれ月の選手が成長に適切な環境で練習できずに不利を被っているという研究が見られる。オランダなどの一部のサッカー強国では、こうした「早生まれ」の才能を救済すべく、早生まれの選手だけをピックアップした合宿を行ったり、学年や年齢だけではなく、体の発育具合を個別最適化した「生物学的年齢」で強化方針を策定したりする工夫も見られる。
さらに、国際大会に目を向ければ、1月が年代別代表の区切りとなるため、学年が一つ上の早生まれ選手が、年齢制限のあるアンダーカテゴリの代表選手として活躍する例も多い。
2019年に行われたU-17ワールドカップでグループリーグを突破したU-17日本代表も登録メンバー21人中7人が早生まれ。生まれ年で見れば一つ上の世代で結果を残した選手が活躍する例もある。
選手権が高校サッカーの最強決定戦である以上、「早生まれ」であることの不利が目に付きやすい大会ともいえるが、指導者も「早生まれ」、「遅生まれ」の特性を理解しつつ、各々の最高のパフォーマンスを引き出す工夫に取り組み始めている。
総合すると、生まれ月による有利不利は後天的な環境によるもので、不均衡は埋められるという結論になるが、2006年ドイツワールドカップでフランス代表を率いたレイモン・ドメネク監督の「占星術で選手を決めた」発言のような嘘のような本当の話(メンバー選定への批判をかわすための発言とも言われる)もあり、サッカーでは誕生日に活躍、ゴールを決める選手が多いという別の定説もある。今年の選手権は、選手の誕生月を意識して観戦するのも面白いかもしれない。
<了>
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