![](https://real-sports.jp/wp/wp-content/uploads/2023/07/a9e7c430e90c11ebab2ecbb39ae5764f.webp)
野球・独立リーグは“地下アイドル”? なぜ堀江貴文は「球団経営」に参入するのか
スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回のゲストは実業家の堀江貴文。先日、「福岡北九州フェニックス」という球団を立ち上げ、独立プロ野球リーグ「九州アジアリーグ」への参入を発表。オンラインサロンから生まれた“ホリエモン球団”がどのようにして設立されたのか。その経緯と将来の展望を語る。
(文=篠幸彦、写真提供=SNS media&consulting)
オンラインサロンでプロスポーツチームを設立
五十嵐:今回、堀江さんが福岡北九州フェニックスという新球団を設立して、「九州アジアリーグ」に来シーズンからの参入を目指して加入申請されました。どのような経緯で球団設立という流れになったのでしょうか?
堀江:僕はバスケットボール・Bリーグのライジングゼファーフクオカの取締役をやっていたことがあったんです。当時、ライジングゼファーの社長をやっていたのが、以前、本田圭佑選手のマネジメント事務所がサッカー・オーストリアリーグのSVホルンの経営に参入していた頃に担当していた人間なんです。そこを辞めたあとに「ライジングゼファーをやるので堀江さん手伝ってください」と言われて、一時期手伝っていたのが始まりです。
その彼が“火の国サラマンダーズ”という野球チームをつくって、九州独立リーグを設立するんだと聞きました。久しぶりに彼の名前を聞いたなと思って連絡したんです。「福岡とか空いてるの?」と聞いたら「福岡はまだ決まってないんです」と言うんです。熊本と大分のチームをつくって、ソフトバンクの3軍と沖縄のチームが準加盟みたいな形で当初は4チームくらいでやるという話でした。それを聞いて「福岡で野球チームか、なるほどな」と思ったんですね。
それからもう一つ話があって、“堀江貴文イノベーション大学校(HIU)”というオンラインサロンをやっているんですよ。そこで「プロスポーツチームを持つ」という企画をやっていて、サロンではそういう社会実験を他にもいろいろやっているんです。例えば今回の新型コロナワクチンの職域接種をサロンメンバーで受けられるようにしてみたりとか。会社でもない、学校でもない、新しい仲間のつくり方のような組織なんです。そこで一昨年に「プロスポーツチームを持てたら面白いじゃん」という話になって、実際にバスケットボールの3×3のチームをつくったんですよ。
五十嵐:そのオンラインサロンでチームを持つという活動から新しい野球の球団設立というところにつながってくるんですか?
堀江:彼に「年間予算いくらくらいなの?」と聞いたら「1億円です」と、それくらいならできるかなと思ったんですよね。
五十嵐:堀江さんらしい軽いノリですよね。
堀江:オンラインサロンで僕にまつわるイベントをいくつか集めた“ホリエモン万博”というイベントを毎年やっていて、これが年間2億円くらい売り上げているんです。あと僕が主催でミュージカルをやったことがあって、これも7000〜8000万くらいの売上がありました。だから年間予算1億円くらいの規模ならオンライサロンのメンバーを主体にできるなと思って今回の
五十嵐:チームの本拠地が北九州というのは、堀江さんの出身が福岡県・八女市ということも関係しているんですか?
堀江:僕が福岡出身ということもあるんですけど、福岡市はソフトバンクがあるので、それ以外だと僕の地元に近い久留米市とか、北九州市とか、いろいろ話していたらオンラインサロンのメンバーがたまたま北九州出身の人が多かったんです。北九州で事業をやっている人もいて、その人が経営をしたり、お金を出したりというところがある程度できるし、僕も北九州には知り合いが多いんですよ。
五十嵐:僕はソフトバンクに6年間在籍していましたが「九州といえばソフトバンク」というイメージが九州全体にあります。その中でソフトバンクとどうつながりを持ってやっていくのか、それとも対抗してやっていくのか、そこはすごく気になります。
堀江:僕はすでに野球の独立リーグ・ルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズというチームに出資はしているんです。そこでいろいろと勉強させてもらっていて、年間予算も1億円くらいなんですね。
それで同じ埼玉の西武ライオンズとヒートベアーズは近いので、めちゃくちゃ業務提携しているんです。今は育成枠があるじゃないですか。育成枠の選手はやっぱり出場機会が少ないんですよね。だからその選手たちの出場機会として、ヒートベアーズにレンタル移籍されていたりとか、打撃コーチが西武の人だったりとか。
五十嵐:それによって育成枠選手の飼い殺しがなくなるわけですね。
堀江:九州アジアリーグにソフトバンクの3軍が加盟しているというのもそういうことなんですよね。
五十嵐:プレー機会が増えるし、野球界の裾野も広がるという意味では非常に選手としてもありがたいし、良いことですね。
堀江:これまではNPBに戦力外通告されたら行く場所がなかったわけじゃないですか。トライアウトなんてほとんど受からないわけで、引退するしかない。そうなるとどこかで選手を続けられないと、野球をする機会がなくなるわけです。
五十嵐:生きていくための手段にも関わってくるところですよね。
堀江:レベルもある程度高いところでプレーを続けないと選手としての勘も鈍っていくと思うし、そういう意味で裾野として独立リーグは結構使えることをNPBの球団もわかってきたんだと思います。
スマホ・SNS時代は独立リーグにとってチャンス
五十嵐:今後NPBへの加入も考えて活動されていくんですか?
堀江:僕は2004年の球団買収話の頃からずっと16球団論者なんですね。ずっと球団数を増やしたほうがいいと思っていて、メジャーリーグもかつては16球団しかなかったんですよ。そこからエクスパンション(昇降格制度のないスポーツリーグが計画的に参加チーム数を増やすこと)に舵を切って30球団まで増やしたわけですよね。
僕は日本のポテンシャルとして16球団まではつくれると思うし、台湾や韓国、中国あたりを入れるとメジャーリーグ並みの30球団は可能だと思うんです。そうするとメジャーリーグ対アジアリーグというのが成立して、「どっちがメジャーなんだ!?」という構図もできますよね。
五十嵐:いいですね。やりたいです。
堀江:これから経済発展をしていくのはアジアなわけです。アジアの時代がもう来るという意味では、その先駆けとしてNPBに16球団つくってもいいと思うし、九州・沖縄にソフトバンク以外の2球団目があってもいいと思います。独立リーグで裾野を広げることで、それが可能になると思っていたんです。
それで今なんで独立リーグかというと、これはスマホとかSNSの発展のおかげだと思っているんですよ。
五十嵐:それはどういうことですか?
堀江:僕が楽天と争った時期になぜこれからは野球が来ると思ったかというと、当時の福岡ダイエーホークス時代の試合が毎回満員だったんです。僕は九州に帰ってそれに衝撃を受けたわけです。なんでこんなことになっているのかと思ったらあれはケータイのメールだったんですよ。
五十嵐:ケータイのメールですか?
堀江:メールで友達と待ち合わせをして野球の試合を見に行けるようになったんです。それ以前は「この日に野球を見に行こう」とあらかじめ会った時とか、電話で約束をしてから行かなければいかなかったのに、ケータイのメールが普及してからは「今夜暇だから野球の試合でも見に行こうよ」「あ、いいね」ってできるわけですよ。
五十嵐:確かに見に行くことに対するフットワークが軽くなっていますよね。
堀江:フットワークが軽くなったことでダイエーホークスが変わったんだなって、僕はそう解釈しました。それで地方の球団のほうが娯楽は少ないから絶対にチャンスだと思ったんです。これからは巨人ではなくて地方のパ・リーグの時代だと。
五十嵐:でも本当にそれからパ・リーグは調子が良くなったというか、きっかけになりましたよね。
堀江:当時は全然理解されていなかったですけど、僕は確信がありました。それが今はスマホでSNSになったんですよ。
五十嵐:ケータイのメールからさらに進化したスマホのSNSに変わったわけですね。
独立リーグは“地下アイドル”
堀江:僕は、独立リーグは“地下アイドル”だと思っているんです。
五十嵐:それはわかりやすい例えですね。
堀江:地下アイドルは、地下アイドルだけでちゃんと利益が取れているんです。僕の知り合いの社長で名前も聞いたことのないような地下アイドルグループをやっている人がいるんですけど、売上は年間1億円くらいで利益は毎年しっかり1000万、2000万出しているんです。
五十嵐:それはどうやって経営が成り立っているのか気になりますね。
堀江:今の時代はいわゆる“投げ銭”ですよね。あとは“一緒にオンラインゲームができる権利”とか。そういうところで少しずつ稼いで7、8人のアイドルで年間1億円の売上を出しているんです。しかもそのアイドルグループのメンバーは給料が月50〜60万もらえているんですよ。
五十嵐:それは独立リーグに夢を与える話ですね。
堀江:だから僕はやり方次第で経営は成り立つと思っているんです。ソフトバンクは九州におけるAKB48で、メジャーアイドルが好きな人はそっちに行ってください。こっちは地下アイドルですからって。地下アイドルを育てる楽しみってあると思いませんか?
五十嵐:そういったところに魅力を感じるお客さんはたくさんいると思います。
堀江:それと僕は将来的にやりたいことがあって、球場って野球だけを見る場所じゃないと思うんですよ。
五十嵐:今どんどんそうなってきていると思います。
堀江:来場者からの売上を上げるために何をしたほうがいいかというと、年間3、4回くらいしか来ない人をどれだけ取り込めるかなんですよ。冷たい言い方をするようですけど、来る人は勝手に来てくれるんです。
五十嵐:そう思います。
堀江:僕もどちらかというとそっち側なんですけど、神宮球場にビールを飲みに行っているわけですよ。ヤクルトの選手とか全然知らないんですけど。
五十嵐:ちょっとくらい覚えてくださいよ(笑)
堀江:でもとりあえず神宮球場が楽しいわけです(笑)
五十嵐:そういった野球だけじゃないお客さんをどれだけ呼べるかが大事ということですよね。
堀江:そういう人たちが増えていかないとキツいと思いますね。広島東洋カープのマツダスタジアムの内野席とか酔っ払いがいっぱいいて、居酒屋的に使っている人もいるんですよ。
五十嵐:でもそういう人たちがお酒やグッズを買ってくれて球団運営につながってくるわけです。そういった意味だとどんどん面白い発想を生んでくれそうな堀江さんなので独立リーグ参入はすごく楽しみですね。
堀江:やらなければいけないことは山積しているので、これから前途多難だとは思います。でもさっき地下アイドルと例えたらわかりやすいと言ってくれましたよね。まさに僕らは地下アイドルから始めるんですけど、そのうちメジャーになるかもしれない。
五十嵐:見たいですね。地下アイドルから結果を出してメジャーになっていく姿を見たいお客さんもたくさんいると思います。
<了>
****************************
InterFM897「REAL SPORTS」(毎週土曜 AM9:00~10:00)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜
2019年にスタートしたWebメディア「REAL SPORTS」がInterFMとタッグを組み、4月3日よりラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界やアスリートのリアルを発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
****************************
InterFM897「REAL SPORTS」の公式サイトは【こちら】
真の“ドラフト上手”はどの球団? 1位指名獲得数、くじ運、入団後の活躍で測るランキング
三井不動産の東京ドーム買収騒動。マツダスタジアムを手掛けた専門家はどう見た?
[高校別 ドラフト指名ランキング]大阪、神奈川、埼玉の三つ巴を制したのは? 独自項目で算出した決定版!
この記事をシェア
KEYWORD
#INTERVIEWRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
指導者の言いなりサッカーに未来はあるのか?「ミスしたから交代」なんて言語道断。育成年代において重要な子供との向き合い方
2024.07.26Training -
松本光平が移籍先にソロモン諸島を選んだ理由「獲物は魚にタコ。野生の鶏とか豚を捕まえて食べていました」
2024.07.22Career -
サッカーを楽しむための公立中という選択肢。部活動はJ下部、街クラブに入れなかった子が行く場所なのか?
2024.07.16Education -
新関脇として大関昇進を目指す、大の里の素顔。初土俵から7場所「最速優勝」果たした愚直な青年の軌跡
2024.07.12Career -
リヴァプール元主将が語る30年ぶりのリーグ制覇。「僕がトロフィーを空高く掲げ、チームが勝利の雄叫びを上げた」
2024.07.12Career -
ドイツ国内における伊藤洋輝の評価とは? 盟主バイエルンでの活躍を疑問視する声が少ない理由
2024.07.11Career -
クロップ率いるリヴァプールがCL決勝で見せた輝き。ジョーダン・ヘンダーソンが語る「あと一歩の男」との訣別
2024.07.10Career -
なぜ森保ジャパンの「攻撃的3バック」は「モダン」なのか? W杯アジア最終予選で問われる6年目の進化と結果
2024.07.10Opinion -
「サッカー続けたいけどチーム選びで悩んでいる子はいませんか?」中体連に参加するクラブチーム・ソルシエロFCの価値ある挑戦
2024.07.09Opinion -
高校年代のラグビー競技人口が20年で半減。「主チーム」と「副チーム」で活動できる新たな制度は起爆剤となれるのか?
2024.07.08Opinion -
ジョーダン・ヘンダーソンが振り返る、リヴァプールがマドリードに敗れた経験の差。「勝つときも負けるときも全員一緒だ」
2024.07.08Opinion -
岩渕真奈と町田瑠唯。女子サッカーと女子バスケのメダリストが語る、競技発展とパリ五輪への思い
2024.07.05Opinion
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
なぜ南米選手権、クラブW杯、北中米W杯がアメリカ開催となったのか? 現地専門家が語る米国の底力
2024.07.03Business -
ハワイがサッカー界の「ラストマーケット」? プロスポーツがない超人気観光地が秘める無限の可能性
2024.07.01Business -
「学校教育にとどまらない、無限の可能性を」スポーツ庁・室伏長官がオープンイノベーションを推進する理由
2024.03.25Business -
なぜDAZNは当時、次なる市場に日本を選んだのか? 当事者が語るJリーグの「DAZN元年」
2024.03.15Business -
Jリーグ開幕から20年を経て泥沼に陥った混迷時代。ビジネスマン村井満が必要とされた理由
2024.03.01Business -
歴代Jチェアマンを振り返ると浮かび上がる村井満の異端。「伏線めいた」川淵三郎との出会い
2024.03.01Business -
アトレチコ鈴鹿クラブ誕生物語。元Jリーガー社長が主導し「地元に愛される育成型クラブ」へ
2024.01.12Business -
決勝はABEMAで生中継。本田圭佑が立ち上げた“何度でも挑戦できる”U-10サッカー大会「4v4」とは
2023.12.13Business -
アメリカで“女子スポーツ史上最大のメディア投資”が実現。米在住の元WEリーグチェアに聞く成功の裏側
2023.12.12Business -
1300人の社員を抱える企業が注目するパデルの可能性。日本代表・冨中隆史が実践するデュアルキャリアのススメ
2023.12.01Business -
東大出身・パデル日本代表の冨中隆史が語る文武両道とデュアルキャリア。「やり切った自信が生きてくる」
2023.11.30Business -
なぜ東京の会社がBリーグ・仙台89ERSのオーナーに? 「しゃしゃり出るつもりはない」M&A投資の理由とは
2023.11.28Business