躍進する東京ヴェルディユース「5年計画」と「プロになる条件」。11年ぶりプレミア復帰の背景

Training
2025.04.04

東京ヴェルディユースが躍進を遂げた。昨季、15勝2分1敗の圧倒的な成績でプリンスリーグ関東1部を制覇。プレーオフを経て、今季より11年ぶりのプレミアリーグEAST復帰を決めた。戦略的に進めてきたアカデミーの「5年計画」、そして昨年に16年ぶりのJ1復帰を果たしたトップチームとの連携についてひも解く。

(文=佐藤亮太、写真提供=©TOKYO VERDY)

技巧派集団として知られるチームに加わった新たな武器

「とにかく強い。強いと聞いてはいたが、想像以上に強かった」。この驚きが取材の出発点となった。

昨年9月29日、高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ関東1部・第14節。首位を走る東京ヴェルディユース(以下・東京Vユース)が桐蔭学園高校を2対0で下し、通算成績を13勝1分。リーグ戦4試合を残してプレミアリーグプレーオフ進出を決めた。

東京Vユースといえば技巧派集団。相手の予想の裏を突くプレーがなによりの特長。周知のとおり、数え上げればきりがないほど多くのJリーガーを輩出している。

ただ今回、試合を見て抱いたのはうまさだけではなかった。守備の強度や寄せに負けないフィジカルの強さ。焦れない我慢強さ。そして勝負強さといった“強さ”が際立っていた。

この試合で東京Vユースは序盤、劣勢にまわり、なかなか攻撃が仕掛けられなかった。そのなかで前半39分に先制すると続く40分にコーナーキックから追加点。後半、桐蔭学園のさらなる攻勢にあいながらも耐えて、失点ゼロで抑えた。

東京Vユースの藪田光教監督(当時)は「1回のチャンスで決める、2回のチャンスで2点取ることにこだわりをもっています。勝負に徹したところは今回たまたまよかったと思います」と話せば、主導権を握りながらも無得点に終わった桐蔭学園の八城修監督は「首位である自信。なにより、したたかだった」と称えた。

最終的に東京Vユースは15勝2分1敗と2位の横浜F・マリノスユースと勝点10差をつけてのリーグ首位で終了。プレーオフでは日章学園、カターレ富山U-18を破り、11年ぶりに高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグEASTへの復帰を決めた。

一朝一夕ではなかった「5年計画」

これまで長く東京Vユースにあった「うまいチーム」というイメージから「うまくて力強いチーム」へどう変貌させたのか。

「昨シーズン(2024年)の場合、その前のシーズン(23年)で見られた勝負弱さ、守備面の弱さ、そうした反省をもとにフィジカル面、メンタル面を強調しました」

きっかけを明かしたのはアカデミー全般を統括する中村忠ヘッドオブコーチング。

中村はヴェルディ川崎(当時)、浦和レッズ、京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)でプレーし、2004年で現役を引退。その後、東京Vの育成組織で指導したのち、FC東京U-18のコーチ、監督を務め、2021年12月に現職に就任した。

「一昨年に比べて、昨年はフィジカルトレーニングをメニューに加えることで強化しました。プレミアリーグ昇格を目標にかかげていたので、守備の強度、攻撃の際の運動量が上がり、それらを全面に出せました。これらが直接的な要因かはわかりませんが、結果的に昇格につながりました。選手・スタッフはワンランク上がってくれましたし、数年前までの印象より、力強さ、守備の部分、メンタル、フィジカル面で少し高いレベルに届いたのかなと感じます」

とはいえ、一朝一夕ではなかった。

「昨シーズンの2年生、3年生はジュニアユースのときからフィジカルメニューを取り入れ始め、計画的にやってきた世代です。なので実質、5年計画と言っていいと思います。ジュニアユースの当時からそれなりにチーム力があり、なおかつフィジカルのベースができ始めた年代。昨シーズンは実を結んだタイミングでした」

そう話すように中村の就任以降のプリンスリーグ関東1部の戦績を見るとその効果がわかる。 2021年の勝点「18」の8位から、22年には勝点「33」の3位。23年勝点「34」の3位。そして24年「44」の1位と着々と勝点を重ね、順位を上げ、昇格を決めた。

ユース所属選手たちが感じていた変化

チームの変革期に当時のユース所属選手たちは変化を感じていたのか。

プロ1年目MF川村楽人(3年時に2種登録)は「1年のときも、2年のときも(プリンスリーグ関東1部で)3位で終わってプレーオフに行けない悔しさがありました。選手も監督も昇格したい気持ちが強かったです。同時にうまいだけじゃ勝てないということはチーム全体に浸透していました。(練習では)率先して走りのトレーニングをしていました。うまさはもともとあったと思うので、プラスアルファでフィジカルがついてくれば、勝てるんじゃないかという考えでした」と話せば、プロ2年目FW白井亮丞はこう話す。

「中後(雅喜)監督のときの僕の一つ上の世代はポゼッションしながら、つないでいくサッカーで練習でもポゼッションを意識したメニューが多くありました。そこから藪さん(藪田光教監督)になり、選手時代FWだったこともあり練習内容に変化がありました。チームというより、個人を上げることに重点が置かれるようになり、練習では1対1、対人系が増えたと思います。強い相手にポゼッションができないとき、個人で打開できるパワーを持っている選手を育てているように感じました」と変化を語っており、中村の言う方針と齟齬はなさそうだ。

トップチームとアカデミーとの共有と連携

東京Vユースにとって2024年、トップチームの16年ぶりのJ1での戦いは大きな意味があった。

22年に就任した城福浩監督のもと、ピッチでは骨のきしみが聞こえるようなバトルの連続が繰り広げられる、流麗なパスサッカーとは程遠い武骨そのもの。そして終了の笛が鳴り終わるまでボールに執着した戦い。負けを引き分けに、引き分けを勝ちにする、そうしたゲームを何度も見せた。シーズン前、降格筆頭候補とささやかれた東京Vは下馬評を覆し、堂々6位でシーズンを終えた。

トップチームが得た成功体験あるいは反省はアカデミー全体に浸透し、進む道の正しさを示した。

「フィジカルベース、メンタルに関してトップチームからアカデミーへの要望がありました。逆に我々がトップチームを見て、うまいだけじゃ足りないなと感じましたし再認識できました。トップチームで活躍する選手を育てるには、うまさ+強さの必要性を改めて認識したので、全員で取り組んでいます」(中村)

アカデミースタッフはトップチームの練習見学や試合の振り返りを行うミーティングに参加している。

その真意を城福監督はこう語る。

「我々はアカデミーに対してオープンにしています。いつ見てもらってもいいですし、いつでもミーティングに参加してもらってもいい、そうしています。特にフィードバックのときは勝っていようが負けていようが、我々が何を大事にしているのか、言い続けています。それを聞いてくれているスタッフが(アカデミーの)選手にうまく伝えていることがひょっとしたらあったかもしれません。また我々の戦い方をみて、J2での戦いや昇格した直後の苦しい戦いからアジャストしていくプロセスを見て、感じるものがあったらうれしいですね」

トップチームとアカデミーが共有と連携を深めていることがわかる。

「もともとヴェルディとはそういうチーム」

では、サッカーファンの多くが以前から抱く“ヴェルディらしさ”とは何か。

前述のように、卓越した個人技といったイメージが浮かぶ。

「個人の発想を大事にしつつ、最大限発揮させる。そしてどんどんチャレンジさせる。システマティックに行うのではなく、個性を生かしたサッカー」(中村)

そしてその個人の集合体が有機的なチームを生む。

「チーム力が上がり、勝っていくと周囲から強いと言われます。しかし基本的な考え方は別にチームを強くする必要はなく、個人がうまく賢く強くなれば必然的にチーム力は上がっていくものです」

そして中村はこう締めた。

「もともとヴェルディとはそういうチームでしたから」

中村の指す「もともとのヴェルディ」とは、1993年、Jリーグが始まったばかりのカズこと三浦知良、武田修宏、ラモス瑠偉、北澤豪、ペレイラ、柱谷哲二、菊原志郎ら綺羅星のごとくの選手がまたたく、あの時代のヴェルディ。

一員だった中村の言葉を借りるなら、目指すべきはうまくて賢くて強い個人の集団。ただその裏で支える、背骨となるモノをいまのアカデミーにも伝えている。

「カズさんもそうですが、チームにずば抜けた身体能力の選手がいたわけではありませんでした。しかし普段の努力の積み重ねで活躍できました。だからいまの選手に伝えるんです。日頃の取り組み方で人は変わるし、上にいけるよと」(中村)

その典型がヴェルディ川崎を経て、鹿島アントラーズ、ヴィッセル神戸でプレーしたビスマルク。

「藪田監督は強かったときの話をよくしてくれました。例えばビスマルクさんは走りのメニューのとき人より3メートル長く走るとか。カズさん、ラモスさんの練習での姿勢や勝利にこだわる姿勢とかそうした話が心に響きました」(川村)

また中村によれば、ビスマルクは10本スプリントをすると必ず数回多く取り組んだ。しかもしっかりラインを越えていた。その姿をチームメイトがみな見習ったという。加えて皆が負けず嫌いというのも当時の特色。

「カズさんもビスマルクも他人に負けたくない。練習してうまくなりたい。その向上心、負けず嫌いは強かったですね。ラモスさんは普段のじゃんけんから負けたくなかったですから(笑)」と明かすとともに「練習中のミニゲームでも負けたくない。負けないためにみんな努力する。そして常に最大限の力を発揮する。それが当たり前のように身についている選手がプロになる要素はあります。結局、努力は裏切りませんから」とプロになるための条件を挙げた。

久保建英と中島翔哉の共通点

先達の教えはクラブの大きな財産。これは時代や世代に関係ない。そうわかるのは中村氏がふいに挙げた2人の教え子にある。

「例えば(久保)建英。(FC東京の下部組織時)かわいい顔をしていますがめちゃめちゃ負けず嫌いでした。いま浦和レッズにいる中島翔哉もそうでしたが陰の努力がすごいんですよ」と笑みがこぼれた。

技術の高さ、うまさの裏にある、不断の努力、むきだしの向上心が結果、力強さなるものを生む。

伝統的に追求されたテクニックにトップチームで実践されるハードワークを加味した「うまさと力強さ」。メンバーも監督も選手も世代も違う30年前と時を経た今とが深く通底しているのではないか。

4月5日から開幕するプレミアリーグEASTに向け、中村は「厳しい戦いになる」と見通しを語ったが、あわせて期待も込めた。

「選手は勝負にこだわってほしいです。最大限、成長できるようにもっていってくれると思います。開幕は楽しみですし、久々のプレミアリーグはそう甘くはない、洗礼を受けると想定しています。1年通して、選手が成長したなと感じられるシーズンにしたいです」

長い雌伏を経て、模索した末にたどり着いた道は黄金期への原点回帰なのかもしれない。

<了>

「ドイツ最高峰の育成クラブ」が評価され続ける3つの理由。フライブルクの時代に即した取り組みの成果

育成型クラブが求める選手の基準は? 将来性ある子供達を集め、プロに育て上げる大宮アカデミーの育成方法

専門家が語る「サッカーZ世代の育成方法」。育成の雄フライブルクが実践する若い世代への独自のアプローチ

アカデミー強化のキーマン2人が共有する育成の真髄とは? J1初挑戦のFC町田ゼルビアが招聘した「ラストピース」

育成年代で飛び級したら神童というわけではない。ドイツサッカー界の専門家が語る「飛び級のメリットとデメリット」

この記事をシェア

KEYWORD

#COLUMN #TRAINING

LATEST

最新の記事

RECOMMENDED

おすすめの記事