アーモンドアイ緊急参戦で史上最強「日本馬」が集結! 今年の有馬記念は近年希にみるドリームレースに
令和最初の競馬の祭典・第64回有馬記念が12月22日、中山競馬場で行われる。現役最強馬・アーモンドアイ(美浦・国枝栄厩舎)が急遽参戦を決めたことで一気に盛り上がりを見せる有馬記念だが、GⅠ馬11頭が参戦する例年にないほどの豪華メンバーがそろう1年を締めくくるのにふさわしいドリームレースとなった。“史上最高レベル”は有馬記念のみならず。日本の馬たちは、いまや世界の競馬界が無視できないほどの一大勢力に成長しているという。
(文=岡田大、写真=Getty Images)
ジャパンカップ外国馬ゼロの異常事態
日本の競馬が非常に面白いことになっている。トップレベルの競走馬の層が厚く、最高峰クラスのGⅠを中心に、毎週のように魅力的なレースが展開されているからだ。
もちろん、ケガなどによって志半ばにして引退を余儀なくされた実力馬もなかにはいるが、ビッグレースを勝った馬のほとんどがその後も第一線で奮闘し続けている点は大きい。
現在、日本中央競馬会(JRA)が抱えている現役馬のタレントのラインアップは、過去最高レベルといっても過言ではないだろう。
活躍の場は日本国内だけにとどまらない。近年は積極的に海外遠征に打って出る陣営が増え、諸外国のGⅠタイトルを手中に収めるシーンが目立つようになった。
2019年(12月20日現在)は、過去最高だった2016年の5勝を大きく上回る海外GⅠ8勝を記録している。それも、イギリス、ドバイ(UAE)、オーストラリア、香港などの競馬強豪国を代表する、歴史と権威あるレースで占められているのだから価値が高い。
「日本の馬は本当に強い」
これが今や、世界中の競馬関係者、メディア、ファンの共通認識となった。
象徴的だったのは、11月24日に東京競馬場で行われたジャパンカップと、12月8日に香港のシャティン競馬場で行われた香港国際競走である。
ジャパンカップは「世界に通用する強い馬づくり」をスローガンに、1981年に創設されたわが国最初の国際招待レースであり、世界各国から強豪が来日して盛り上がりを見せていたものの、近年は海を渡って参戦してくる外国馬の数が激減。39回目を迎えた今年は、なんと史上初めて外国馬の出走がないなかレースが行われる事態になってしまった。
このような状況を招いた要因は、ジャパンカップに匹敵するような高額賞金レースが世界的に増えたことや、舞台となる日本の馬場(芝コース)の質が諸外国(とくに欧州)と異なる点が嫌われていることなどいくつも考えられるが、なによりも、創設時に掲げられたスローガンを超越し、「日本の馬が強くなりすぎてしまったこと」に尽きるだろう。
分が悪いこと、通用しないことがわかっているのに、飛行機による長距離輸送というリスクを負ってまで、わざわざ愛馬を参戦させる意味がない。
そう考える馬主や調教師が多数を占めることは、想像に難くない。
“不在”が世界でも話題になったアーモンドアイ
一方の香港国際競走は、1200m、1600m、2000m、2400mと距離の異なる4つのカテゴリーのGⅠレースを1日で行うビッグイベントだが、今年はこのうち3つのレースで日本馬が勝利を収めたことが話題となった。
各レースに出走していた地元香港のトップホースやヨーロッパの実績馬が、決して弱かったわけではない。
純粋に日本馬が強かった。さらには、運も味方につけることができた。それが、4レース中3勝という衝撃の結果をもたらすことになったのだ。しかも、現役日本最強馬アーモンドアイの力を借りずに達成したという事実は大きい。
アーモンドアイはGⅠ6勝の実績を誇るスーパーホースで、まさに現在の日本馬の強さの象徴。牝馬ながらに昨年のジャパンカップを驚異的な世界レコードで制し、海外デビューとなった今年のドバイターフ(UAEのGⅠ)を楽勝したことなどもあって、世界中から注目を集めている特別な存在だ。
「アーモンドアイと同じレースに出てもかなうわけがないよ」
「一度でいいから、アーモンドアイの走りを間近で見てみたいね」
「ひょっとすると、現在の世界ナンバーワンホースなんじゃないの?」
これらは、歴史的名馬を育ててきた、あるいはコンビを組んできた、伯楽や名手と称される海外の一流調教師・騎手が実際に発したコメントの一部。日本人が井の中の蛙状態で自画自賛しているのではなく、アーモンドアイは世界的に確固たる評価を得ているのだ。
強い馬による強いレースが見たい。
これが競馬ファン普遍の心理ゆえ、アーモンドアイが出走するレースには、観客が大挙して押し寄せ、熱い声援を送る。10月27日に東京競馬場で行われた天皇賞(秋)には、1万人近くの徹夜組が列を成し、最終的な入場者数は10万3920人に上った。
そして、彼女は期待に応えて圧勝劇を演じてみせた。
会場のキャパシティーの違いがあるので一概に比較はできないが、今年のラグビーワールドカップで最も観客を動員した試合は決勝戦「イングラント対南アフリカ」の7万103人だったことを考えれば、競馬未経験者でも、そのスケールの大きさをありありとイメージできるだろう。
アーモンドアイは当初、香港国際競走の一つに組まれている香港カップに出走する予定だったが、体調不良(軽い熱発)によりこれを回避。今後のスケジュールはいったん白紙に戻された。
そんななか、12月10日に事態が急転する。
香港遠征とりやめ後の体調が良好なことから、中央競馬の1年を締めくくる大一番・有馬記念にサプライズ参戦することが、馬主サイドから正式に発表されたのである。
これにはファンもどよめき、同時に喝采を上げた。アーモンドアイの緊急参戦だけでもビッグニュースなわけだが、それに加えて今年の有馬記念には、日本を代表する現役トップクラスの馬が多数参戦を表明しており、過去最高レベルの豪華メンバーが集結することが確実になったからだ。
出走の決まったGⅠタイトルホルダーは、史上最多の11頭。いずれ劣らぬ実力馬たちで、どの馬もノーチャンスではない。
有馬記念が行われる中山芝2500mはトリッキーな形態のコースとして知られ、このレースでも過去に数々の波乱が起こってきた。最有力は満場一致でアーモンドアイながらも、確勝級とまで言いきることはさすがにできない。
■第64回 有馬記念 確定枠順
1枠1番 スカーレットカラー 牝4歳(岩田康)
1枠2番 スワーヴリチャード 牡5歳(マーフィー) ①大阪杯、②ジャパンカップ
2枠3番 エタリオウ 牡4歳(横山典)
2枠4番 スティッフェリオ 牡5歳(丸山)
3枠5番 フィエールマン 牡4歳(池添) ①菊花賞、②天皇賞(春)
3枠6番 リスグラシュー 牝5歳(レーン) ①エリザベス女王杯、②宝塚記念、③コックスプレート
4枠7番 ワールドプレミア 牡3歳(武豊) ①菊花賞
4枠8番 レイデオロ 牡5歳(三浦) ①日本ダービー、②天皇賞(秋)
5枠9番 アーモンドアイ 牝4歳(ルメール) ①桜花賞、②オークス、③秋華賞、④ジャパンカップ、⑤ドバイターフ、⑥天皇賞(秋)
5枠10番 サートゥルナーリア 牡3歳(スミヨン) ①ホープフルステークス、②皐月賞
6枠11番 キセキ 牡5歳(ムーア) ①菊花賞
6枠12番 クロコスミア 牝6歳(藤岡佑)
7枠13番 アルアイン 牡5歳(松山) ①皐月賞、②大阪杯
7枠14番 ヴェロックス 牡3歳(川田)
8枠15番 アエロリット 牝5歳(津村) ①NHKマイルカップ
8枠16番 シュヴァルグラン 牡7歳(福永) ①ジャパンカップ
※カッコ内は騎乗する騎手。丸囲み数字は、これまで獲得したGⅠタイトル
GⅠ馬以外にも、GⅠ2~3着実績のある実力馬も多数出走し、まさに多士済々。ジョッキーについても、日本が誇るレジェンド・武豊騎手を筆頭に、国内外の名手の名前がズラリと並ぶ。
競馬ファンにしてみれば、興奮するなというのが無理な話で、筆者も当然、ゲートが開くその瞬間を心待ちにしている。
昨年、有馬記念デーの中山競馬場に訪れた観客は10万189人。天候が大きく崩れない限り、今年はこれを大幅に上回ってくることが確実視されている。
当日の中山競馬場がどんな空気に包まれ、レースがどのような決着を見るのか、まったく想像はつかない。
しかし、後世に語り継がれる1日、生涯忘れることのできないレースになることに、疑いの余地はないだろう。
アーモンドアイが下馬評通りに圧勝するのか、それとも……。
その答えは、2019年12月22日、午後3時25分過ぎに明らかになる。
<了>
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