
[高校サッカー選手権 勝利数ランキング 都道府県対抗]昨年王者・青森山田の青森は2位。1位は??
日本の冬の風物詩、高校サッカー選手権が今年も始まる。令和になって初の大会は果たしてどのような結末を迎えるのか、今から楽しみにしている人も多いだろう。
ところで、自分の出身地の代表校は、果たしてどれぐらい勝っているのか?、47都道府県の中でどれぐらいの位置にいるのか?と考えたことはないだろうか?
今回は過去10年の選手権から、各都道府県代表の勝利数を集計した。果たして、最も勝っているのはどこだ?
(文=池田敏明、写真=Getty Images)
高校サッカー選手権、過去10年間の結果からランキングを作成!
まもなく開幕する、第98回全国高等学校サッカー選手権大会(以下、選手権)。“平成最後の選手権”として注目を集めた前回大会は、青森山田(青森)が2度目の優勝を飾った。準優勝は流通経済大柏(千葉)で、2年続けて決勝で涙をのむこととなった。
青森山田、流通経済大柏とも、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグという高校年代のトップカテゴリーで戦っており、高校サッカー部の中では抜きんでた戦力と実力を備えている。選手権は何が起こるか分からない一発勝負のトーナメント形式ではあるが、ある程度の勝利を重ねられるのは必然といえるだろう。
両校はそれぞれ青森県代表、千葉県代表として選手権に出場しているが、都道府県別で見た場合、多くの勝利を挙げているのはどの地域になるのだろうか?
第88回大会(2009年度)から第97回大会(2018年度)まで、過去10年間の大会結果から、都道府県別の勝利数を集計してみよう。なお、予選参加校数が多く、毎年2校ずつが出場している東京都については、「東京A」、「東京B」に分けて集計している。また、公式記録では引き分け扱いとなるPK戦での勝利は、便宜上「勝利」としてカウントしている。
トップは千葉:強豪2校が常に結果を出し続ける!
各都道府県の中で、過去10年間で最も多くの勝利を挙げているのは、千葉県代表で26勝だった。
上述した流通経済大柏が2017年度、18年度に準優勝、10年度、14年度にはベスト4進出と数多く上位進出を果たしている。また流通経済大柏のライバルで2019年度大会の出場を決めている市立船橋も2011年度大会で優勝するなど確実に結果を残している。
この10年で流通経済大柏からは小川諒也(現・FC東京)や関川郁万(現・鹿島アントラーズ)、市立船橋からは和泉竜司(現・名古屋グランパス)や柴戸海(現・浦和レッズ)、杉岡大暉(現・湘南ベルマーレ)など、多数のプロ選手を輩出している。
ちなみに、過去10年間で千葉県勢が選手権で1勝も挙げられなかったのは2012年度大会のみで、この時は八千代が出場していた。
2位は青森:青森山田だけで24勝を挙げる!
2位は青森県の24勝。これはつまり、2019年度大会で23年連続25回目の出場を決めている青森山田が単独で稼いだ勝利数ということになる。廣末陸(現・レノファ山口)や高橋壱晟(現・モンテディオ山形)らを擁した2016年度、檀崎竜孔(現・北海道コンサドーレ札幌)が攻撃をけん引した2018年度と2度の優勝を飾ったのに加え、2009年度には柴崎岳(現・デポルティボ/スペイン)を擁して準優勝、2015年度はベスト4と、こちらも上位の常連だ。
冬場は豪雪に見舞われ、グラウンドでのトレーニングができないという難題を抱えながら、着実に実績を積み上げたことで全国から有力選手が集まるようになった。2015年度大会で10番をつけた神谷優太(現・愛媛FC)のように、高校の途中でわざわざ青森山田に編入する選手もいるほどだ。
3位群馬、4位石川:県を代表する強豪校を有する県が上位に
千葉県、青森県以外で20勝以上を挙げているのは、群馬県(22勝)と石川県(20勝)。群馬県は2017年度大会を制した前橋育英、石川県は2014年度大会で優勝した星稜と強豪校が存在しており、彼らが定期的に上位進出を果たしていることが勝利数の増加につながっている。
東日本では栃木県や福島県、山梨県、西日本では京都府、大阪府、兵庫県などの代表チームが多くの勝利を挙げている。栃木県には矢板中央や佐野日大、福島県には尚志、山梨県には山梨学院や帝京三、京都府には京都橘、大阪府には履正社や東海大仰星、兵庫県には滝川二や神戸弘陵など、常連校を抱える都道府県が選手権で実力を発揮しやすい傾向があるようだ。
かつての“サッカー御三家”、埼玉、静岡、広島は……
一方で、強豪校がひしめいている印象のある神奈川県は12勝、かつて“サッカー御三家”と呼ばれていた埼玉県、静岡県、広島県はそれぞれ10勝、9勝、7勝と、上位の都道府県からは差をつけられている。毎年2チームが出場する東京都についても、東京都Aは12勝、東京都Bは9勝にとどまっている。
さらに苦戦を強いられているのは、3勝の秋田県と福井県、2勝の滋賀県と香川県、1勝の岩手県、和歌山県など。山形県は10年間未勝利が続く。青森山田が強豪の地位を確立する一方、降雪の影響を受けやすい東北地方のチームは厳しい戦いを強いられている。秋田県代表も2017年度までは14年間未勝利だったが、前回2018年度大会で秋田商が3勝を挙げてベスト8に進出し、苦境を脱している。
青森県や福島県、群馬県など、いわゆる“サッカーどころ”ではない印象の強い地域のチームが多くの勝利を挙げている点は意外だったが、その背景には選手権常連校の存在があった。近年の選手権は“常連校有利”の傾向が強いといえるのかもしれない。
<了>
[都道府県別対抗 勝利数ランキング]
1位 千葉 26勝
2位 青森 24勝
3位 群馬 22勝
4位 石川 20勝
5位 大阪 19勝
6位 栃木 18勝
7位 山梨 17勝
7位 京都 17勝
9位 福島 16勝
9位 兵庫 16勝
11位 富山 15勝
11位 福岡 15勝
13位 宮崎 14勝
14位 東京A 12勝
14位 神奈川 12勝
14位 新潟 12勝
17位 鳥取 11勝
18位 茨城 10勝
18位 埼玉 10勝
18位 三重 10勝
18位 島根 10勝
18位 岡山 10勝
23位 宮城 9勝
23位 東京B 9勝
23位 静岡 9勝
26位 岐阜 8勝
26位 長崎 8勝
26位 大分 8勝
26位 鹿児島 8勝
30位 北海道 7勝
30位 広島 7勝
32位 長野 6勝
32位 奈良 6勝
32位 佐賀 6勝
32位 熊本 6勝
36位 愛知 5勝
37位 山口 4勝
37位 徳島 4勝
37位 愛媛 4勝
37位 高知 4勝
37位 沖縄 4勝
42位 秋田 3勝
42位 福井 3勝
44位 滋賀 2勝
44位 香川 2勝
46位 岩手 1勝
46位 和歌山 1勝
48位 山形 0勝
[学校別対抗 勝利数ランキング]
1位 青森山田(青森) 24勝
2位 星稜(石川) 20勝
2位 前橋育英(群馬) 20勝
4位 尚志(福島) 15勝
4位 流通経済大柏(千葉) 15勝
4位 東福岡(福岡) 14勝
7位 矢板中央(栃木) 13勝
7位 富山一(富山) 13勝
9位 滝川二(兵庫) 12勝
9位 山梨学院(山梨) 12勝
11位 京都橘(京都) 10勝
11位 四日市中央工(三重) 10勝
11位 立正大淞南(島根) 10勝
14位 國學院久我山(東京) 9勝
14位 米子北(鳥取) 9勝
16位 日章学園(宮崎) 8勝
17位 市立船橋(千葉) 7勝
17位 駒澤大高(東京) 7勝
17位 桐光学園(神奈川) 7勝
17位 長崎総合科学大附(長崎)7勝
※集計対象はいずれも高校サッカー選手権第88回大会(2009年度)から第97回大会(2018年度)
「言葉ができない選手は世界で戦えない」3年で8人プロ輩出、興國・内野智章監督の目線
「目指すゴールのない者に進む道はない」大津・平岡総監督の信念が生んだ「師弟対決」のドラマ
高校サッカーに訪れたビジネスの波 スポンサー入りユニフォームの是非を考える
「プロと学業の両立」は可能? 17歳でプロ契約、横浜FC斉藤光毅が切り開く道筋とは
関西人はストライカー向き? 育成関係者が証言する日本代表を多数輩出する“3つの理由”
この記事をシェア
KEYWORD
#COLUMNRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
「今の若い選手達は焦っている」岡崎慎司が語る、試合に出られない時に大切な『自分を極める』感覚
2023.12.04Opinion -
「僕らが育てられている」阿部一二三・詩兄妹の強さを支えた家族の絆と心のアプローチ
2023.12.04Education -
ヴィッセル初優勝を支えた謙虚なヒーロー・山川哲史が貫いたクラブ愛。盟友・三笘のドリブルパートナーからJ1屈指の守備者へ
2023.12.01Opinion -
1300人の社員を抱える企業が注目するパデルの可能性。日本代表・冨中隆史が実践するデュアルキャリアのススメ
2023.12.01Business -
変わりつつある『大学』の位置付け。日本サッカーの大きな問題は「19歳から21歳の選手の育成」
2023.12.01Education -
東大出身・パデル日本代表の冨中隆史が語る文武両道とデュアルキャリア。「やり切った自信が生きてくる」
2023.11.30Business -
阿部兄妹はなぜ最強になったのか?「柔道を知らなかった」両親が考え抜いた頂点へのサポート
2023.11.29Education -
アスリートのポテンシャルは“10代の食習慣”で決まる! 「栄養素はチームじゃないと働かない」
2023.11.29Training -
トップアスリート“食事”の共通点とは? 浦和レッズを支えるスポーツ栄養士に聞く「結果を出す」体作りのアプローチ
2023.11.28Opinion -
なぜ東京の会社がBリーグ・仙台89ERSのオーナーに? 「しゃしゃり出るつもりはない」M&A投資の理由とは
2023.11.28Business -
浦和レッズを「食」から支える栄養士・石川三知の仕事とは? 練習後の残食量が激減、クラブ全体の意識も変化
2023.11.27Career -
引退発表の柏木陽介が語った“浦和の太陽”の覚悟「最後の2年間はメンタルがしんどかった」
2023.11.27Career
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
「僕らが育てられている」阿部一二三・詩兄妹の強さを支えた家族の絆と心のアプローチ
2023.12.04Education -
変わりつつある『大学』の位置付け。日本サッカーの大きな問題は「19歳から21歳の選手の育成」
2023.12.01Education -
阿部兄妹はなぜ最強になったのか?「柔道を知らなかった」両親が考え抜いた頂点へのサポート
2023.11.29Education -
『オシムチルドレン』につながった育成年代での指導 前田秀樹が痛感した「日本人選手の守備の意識の低さ」
2023.11.24Education -
「部員350人全員を公式戦に出場させるため」東京国際大学サッカー部が取り組む組織づくり
2023.11.17Education -
急成長遂げた東京国際大学サッカー部 前田秀樹監督がこだわった「観客席」と「教える側の情熱」
2023.11.10Education -
スカウトは一切なし。居残り練習禁止。「1000日間の努力で1%の可能性を伸ばす」平岡和徳が全国に広げる“大津スタイル”
2023.09.11Education -
なぜ県立高校のサッカー部から50人以上プロ選手が誕生するのか? 大津高校・平岡和徳総監督が掲げる“人づくりの流儀”
2023.09.11Education -
「サッカーが持つすべての要素をピッチで表現しよう」。スタイルを一つに絞らない鹿島学園の流儀
2022.12.28Education -
サッカー育成のカリスマが実践“自主性”高める子育て。有効なのは「サンドイッチ話法」?
2022.09.16Education -
今こそ本気で「夏の甲子園“改革”」を考えませんか? 球数制限・日程改善に立ち塞がる問題
2022.09.03Education -
高学歴サッカー選手&経営者・橋本英郎が考える、自分を信じる力を生む“文武両道”
2022.08.30Education