4強で激突!青森山田・帝京長岡に共通する強さの理由は?「地元の誇り」と継承される背中

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2020.01.09

熱戦の続く、第98回全国高校サッカー選手権。残すところ、準決勝、決勝のみとなった。
前回大会王者であり、高校年代最高峰・高円宮杯プレミアリーグを制した、青森山田と、前回大会ベスト8、今大会で新潟県勢初のベスト4入りを成し遂げた、帝京長岡。4強で激突するこの両者には、その強さを支える、ある共通点がある。それはまさに、選手権が生み出す大きな力でもある――。

(文=鈴木智之、写真=Getty Images)

青森山田、チームの骨格を担う“山中”出身の選手たち

毎年、多くの観客が詰めかける、全国高校サッカー選手権大会。熱狂を生む理由の一つに、「郷土のアイデンティティ」があるのではないだろうか。故郷を離れて暮らし、普段は意識せずに暮らしていながらも、出身県の代表が勝ち進むとうれしい。そんな気持ちになる人も多いはずだ。

選手たちは地域の代表であり、優勝して故郷に戻ると歓待を受ける。「おらが街のヒーロー」というわけだ。プレーする選手たちも、「郷土の代表」という気持ちを強く持って、この大会に臨んでいる。

優勝候補の筆頭・青森山田の最終ラインを束ねる、U-17日本代表の藤原優大は「自分は青森出身ということに誇りを持って、ピッチに立っています」と、力強く語る。

「日本人選手が海外で活躍するのと同じように、青森の選手が活躍したり、Jリーガーになると親近感が湧くと思うんです。自分はそういう選手になりたいと思って、青森出身だと押しています」

青森山田は雪深い地域にあり、冬場はグラウンドにとてつもない量の雪が積もる。雪かきをするところから練習が始まり、雪中サッカーはもはや名物となっている。

「青森は雪が降るので、外でサッカーができない期間が長くあります。小学校1年生から高校3年生まで、(他の地域の選手に比べて)、3~4年、サッカーができないのかもしれません。でも、そんな環境でも強くなれるのは青森山田が証明しています。自分としても、それをもっと伝えていきたいんです」

県外出身の選手が多い青森山田だが、チームの骨格を担うのは、青森山田中学出身の選手たちだ。キャプテンの浦和レッズ加入内定のMF武田英寿、1年生ながら名門の背番号7を背負い、攻守に存在感を発揮するU-16代表MF松木玖生。そして藤原と、要所を“山中”出身の選手が占める。

青森山田中学校の教頭であり、高校サッカー部の監督を務める黒田剛監督は「中学時代から含めると、(育成期間が)6年あります。小学校を卒業して中学校に入ってきたときは、小さくて細い選手でも、中高の6年間で細かく指導していくと、高校の3年目にこうなるんだというのは、(先輩の)檀崎やケネディ、壱晟たちが示してくれています」と言う。

昨年の選手権で優勝を果たし、卒業後にプロ入りした檀崎竜孔(現・コンサドーレ札幌)、三國ケネディエブス(現・アビスパ福岡)。そして、ジェフ千葉でプレーする高橋壱晟は山中出身だ。今年のチームについては「(2年生の)藤原や(1年生の)松木は、山中でキャプテンをやった子たちです。中学時代から高校までを含めると6年間あるので、育成システムがうまく機能しているのかなと思います」と、成果を口にする。

1年時から将来を嘱望され、卒業後のプロ入りが確実視されている、2年生センターバックの藤原は言う。

「山中から積み上げてきた5年間は、学ぶことが多かったです。練習は肉体的にも精神的にもキツイんですけど、それを一緒に乗り越えようという仲間がいて、背中を押してくれる先輩がいる。つらいときに周りを引っ張ることができるのは、山中出身の選手ですね」

帝京長岡、子どもたちに憧れられる責任と循環

準決勝で青森山田と対戦する帝京長岡も、地域に根ざした学校だ。長岡JYFCというクラブをつくり、そこでサッカーをしていた子どもたちが大きくなり、帝京長岡高校の門を叩いた。J内定トリオの晴山岬(→FC町田ゼルビア)、谷内田哲平(→京都サンガF.C.)、吉田晴稀(→愛媛FC)は、長岡JYFC出身の選手たちである。

卒業後には、FC町田ゼルビアへ加入することが決まっている、MF晴山は「帝京長岡と長岡JYFCに育ててもらった恩返しとして、置き土産じゃないですけど、優勝を長岡に持って帰りたい」と決意を語る。

晴山はU-6から、長岡JYFCで育った選手。いわば生え抜きだ。小学生のときに同クラブの先輩・小塚和季(現・大分トリニータ)を擁して全国ベスト8に進んだチームを見て「帝京長岡に行きたい」と思ったという。長岡JYFCのU-15では、中学2年生のときから帝京長岡高校のメンバーとして、プリンスリーグ北信越に出場していた。

「中2から高校の試合に出してもらっていたので、長岡以外の高校に行くことは考えもしませんでした。中2からプリンスリーグの試合に出してもらうなんて、普通はないことですよね。あのときの経験があるからこそ、いまの自分があると思います。本当にありがたい環境でした」

“生え抜きの長岡っ子”として背番号10を背負い、帝京長岡の攻撃を牽引する晴山。かつて晴山少年が、全国大会で活躍した小塚たちを見て憧れたように、いまでは地元の子どもたちから、憧れられる立場になっている。

「(自分に憧れを持ってくれている)子どもたちが地元にいるというのは、一番に考えなくてはいけないことだと思っています。自分たちが目標とされ、夢を与えられる選手にならなければいけないという責任も出てきました。こんな立場になるとは、思いもしませんでした。責任重大ですよね(笑)」

晴山はそう言って、照れくさそうに笑う。かつての自分のような子どもたちが、地元にたくさんいることは、彼の大きな力になるだろう。準決勝の相手は昨年の優勝校、青森山田だ。今年度の高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ・チャンピオンであり、高校年代ナンバーワンのチームである。

「準決勝での、自分たちのサッカー次第で『この学校でサッカーがしたい』と思ってくれる人が増えると思う。だからこそ、自分たちのサッカーを出さなければいけないと思っています。青森山田に勝てば、『山田に勝つとか、あるんだ』というイメージができて、あの学校に行きたいという気持ちになってくれると思うんです」

彼らは地域のヒーロー、つまりは「ローカルヒーロー」だ。地域の誇りを胸に、全国の舞台に立つ彼らが、勝ち上がるごとに耳目を集め、全国区のヒーローになっていく。

ファイナリストを決める準決勝は東北地方の青森、北信越の新潟、中部地方の静岡、北関東の栃木と、異なる地域の4校が高校サッカー日本一の座をかけて、11日に埼玉スタジアム2002で試合を行う。

<了>

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