アスリートが中心となり始まった「#つなぐ」プロジェクト。その舞台裏をスタッフが語る

Business
2020.06.09

新型コロナウイルスの影響が続いている中、UDN SPORTSは全国の学童や医療従事者、所属選手に縁のある地域へのマスクとメッセージレターを配布する他、各選手が子どもたちとオンライントークセッションなどを行う「#つなぐ」プロジェクトを5月1日から開始した。
活動が制限される厳しい状況下でアスリートとして何ができるのか?「#つなぐ」プロジェクトを通じて選手間でもUDN SPORTSに所属するアスリートがオンライン上でコミュニケーションする機会が生まれ、オンラインを使った新たな可能性を実感したと、UDN SPORTSの河合健太郎氏は振り返る。

(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、写真提供=UDN SPORTS)

コロナ禍の中で選手として何ができるのか

――5月1日からスタートしました「#つなぐ」プロジェクトはどのようなきっかけで始まったのでしょうか?

河合:「#つなぐ」プロジェクトとしての活動が始まる前の3月下旬に、新型コロナウイルス感染拡大が深刻だったヨーロッパやアメリカで活動する所属選手が、それぞれ個人で「ステイホーム」などのメッセージを出していました。

それと同時に、日本はまだ海外に比べて深刻さが足りないけれど、絶対に日本もこれから深刻になるだろうから、何かアクションしないと、という話が選手からありました。同時に、マスクの手配だけは早めに動いてほしいという選手からの要望があったため、すぐさま動いて20万枚のマスクの手配をしました。

マスクを手配している4月上旬には、すでに外出自粛要請などがあったため、外に出られない子どもたちが少しでもリラックスできればと思い、インスタライブ配信などを始めたりしました。

――マスクの手配、インスタライブ配信など別々に動いていたものがプロジェクトとして一つになったんですね。

河合:ただ、マスクの配布やSNSなどでの発信は、さまざまなスポーツ団体などもすでに行っていましたので、我々は違う形で選手の声を発信し、マスクの配布を行うことにしました。それが「#つなぐ」プロジェクトです。

全国の子どもたちや医療関係者にマスクを配るというプロジェクトと併せて、スポーツ選手、アスリートができることは何かと考えた時に、我々としては、物資面のサポートと精神面のサポートの両面をやることが非常に大事だと考えました。また、こういった活動は、どうやって声を大きくしていけるかが大事だということを、当社所属の香川真司とマネジメント担当が中心となって話をして、選手個々ではなくグループで行うことにしたんです。

物資面はマスク、精神面のサポートは、すでに4月から始めていたインスタライブ配信を、よりパーソナルに子どもたちとコミュニケーションを取る形にすることによって、より深い体験が提供できると考え、オンラインのトークイベントを始めました。

――マスクを配布する場所、地域はどのように決めたんですか?

河合:マスクの配布は、手配したマスクも数が限られている中で、どうやって選手たちが恩返ししたいところに配布するかを考えました。なので、医療関係者の方にも配布していますが、全国都道府県の行政だったり、選手がお世話になった出身チームだったりと、細かく分けて、マスクと選手のメッセージレター、リストバンドをセットにして送りました。リストバンドはその支援の輪を広げたい、つなげたいという意味を込めました。

――4月上旬ぐらいに20万枚のマスクを手に入れるのは、そんなにたやすいことじゃなかったと思いますが、どのように手配したんですか?

河合:当社がおつき合いしている企業の中に中国経由で手配できる会社があることを聞き、お願いしました。当初10万枚の予定だったのですが、選手からお金よりも今準備ができるだけの枚数を準備してほしいと言われ20万枚の購入に至りました。

UDNグループとして一丸で取り組む

――UDN SPORTS(UDN)グループとして今回のプロジェクトを行うためには、選手同士である程度コンセンサスを取って、丁寧に進めないとうまくいかないですよね?

河合:今回、我々として良かったなと思っているのは、当社所属選手はサッカー、バドミントン、陸上と複数競技の選手がいる中で、グループとしてチームとしてやれること、アスリートとしてできることは何かと改めて考えることができたことですね。そしてそれらを若い選手が、すでに成熟していろいろと発信している選手を見て学んだり、改めていろんなコミュニケーションが生まれたことが、非常に大きかったかなと感じています。

――意識が高い経験のある選手の言動を見て、若い選手が勉強することはとてもいいことですね。コンセプトムービーやメッセージ動画などを作る際に苦労したことはありましたか?

河合:動画は選手それぞれに自分でビデオに撮ってもらい、それを集めました。ビデオの撮り方に慣れている選手、慣れていない選手とさまざまだったので、それを集める担当は日々奔走していました。ただ、所属選手75人分の映像が1週間もかからずに集まったのにはびっくりしましたね。

――今回のプロジェクトは、選手の意識も高かったからこそ、早く映像を集めることができたんじゃないでしょうか。完成したプロジェクト映像を拝見して、こういった非常時ですけれど、UDN のパワーの再確認になったと感じました。

河合:それと、20万枚のマスクを手作業で分けて配布するなど細かい作業も大変でしたね。

――新型コロナウイルスの感染拡大に注意、予防しながら手作業で行うのは大変ですね。

河合:スピード重視で自分たちで行いました。約300カ所以上への発送になりましたが、作業への配慮と社員がアスリートの想いを形にしようと必死だったことを感じます。

リストバンド、冊子、行政や都道府県それぞれのメッセージ映像を入れて発送するのはとても骨が折れる作業だったと思います。頑張ってくれたスタッフには感謝しています。

――メッセージ映像は都道府県ごとに異なっていたんですね。

河合:そうですね。各自治体、都道府県に縁がある選手が映像の冒頭に出て、メッセージを発信する仕立てにしていたので、当然、全部コメントが違うためスタッフが徹夜でDVDを作成して、確認作業をしました。

アスリートが中心となってUDNを引っ張っていった

――大変な作業だったかと思いますが、今回のプロジェクトを通してアスリートの持つパワーや影響力などどのように感じましたか?

河合:アスリートの支援する気持ちの部分が、チームとして伝播していくと感じましたね。

例えばコンセプトムービーに、子どもでも部屋の中でマネできるパフォーマンスを入れて楽しめるものにしたりすることによって、選手が試合以外のパフォーマンスでも日々の生活をより良くする、明るく生きるための発信ができることを改めて感じました。

あとは外に発信することだけではなく、当社所属選手内でもいろいろな化学変化がありました。例えば、香川真司と若手選手30人のZoomセッションを行ったんですが、そのセッション後には、外出できない状況でもオンラインの場でコミュニケーションできると気づいて、そこから若手とベテラン選手が話してアドバイスをするといった別のセッションも生まれたりしました。

普段は食事とかに行った時じゃないといろいろと話せないですし、人数も限られますけれど、Zoomなどのオンラインの場は、物理的な制限や時間的な制限がなく、今回のプロジェクトがきっかけで、いろいろと可能性が広がったと実感しました。

――30人の若手とZoomでセッションや情報交換、意見交換を行うのはこれまでの香川選手からするとあまりなかった部分だと思いますが、何かそこに対する変化は客観的に見ていて感じましたか?

河合:そうですね。彼と話す中で次世代の選手への想いやアスリートとしてできることはなにか?スポーツ選手としての立ち位置や考え方、今後のスポーツ界への提言など非常に深い考えを持っていると感じます。今回の話を選手の集団として発信しようとか、競技によって別々に行うのはもったいないから、せめて僕らはチーム(UDN)として一緒にやろうとか、海外で10年プレイしていることで感じるものがあり、20代前半の頃と比べると本当に成熟したと思います。今後の彼の考え方は楽しみですね。

『Kids Talk with Shinji Kagawa』という電話などで少人数の子どもたちと話がしたいと考えていた香川の発案で、子どもたちとのオンライントークセッションを4月22日から26日までの5日間行いました。日本時間の夜にうまく行えるように段取りをつけて行ったところ、それがすごく評判が良かったので、他の選手たちもそれぞれの形で今、「#つなぐトーク」として子どもたち数人とのトークセッションを行っています。香川のアクションがきっかけで、今の流れが生まれましたね。

オンラインの場で広がる輪をつなげていく

――UDNのテーマとして、子どもをとても大事にしていて、そこへの意識は高いと感じます。

河合:次世代育成、そこへの貢献は大きなテーマですね。意識については、例えば、海外で活動する選手は海外の環境や周りから刺激を受けて、自分でどんどん意識を高めていったりすることもあると思います。そういった意識の共有はコミュニケーションをすることで深まっていくことなので、これからも当社内でのコミュニケーションも深めていきたいと思います。

――今回のプロジェクトは今後の方向性のいいきっかけにもなったということですね。

河合:普段のシーズンだとなかなかオフのときにしか選手は動けないので、活動が限定的になるところを、今回こういう状況になって、オンラインを使っていろいろともう少し日常的にコミュニケーションが取れることを知ることができました。表に出していませんが、数多くの選手が、マスクなどの配布とは別に自分が育ったチームの子どもたちとオンラインで会話をする機会を持ちました。
あとは、これはコロナ禍になる前からですが、原口元気や柴崎岳などが、それぞれいろいろな形で発信しだしたりしているので、それぞれの形が生まれて、もっとバラエティに富んだ活動が生まれるといいなと思っています。

また、今回の「#つなぐ」プロジェクトに関しては、ぞれぞれの選手の地元の子どもたちと、同時多発的に行っているので、そういった地域とのつながりや地域への恩返しのようなものを行ったりしています。あとは東ちづるさんが中心となって行われている「#福祉現場にもマスクを」の活動を通じて福祉の現場にマスクを配ったり、「セーブ・ザ・チルドレン」を通じて、マスクの寄付と併せて、長谷川唯選手、小川航基選手が子どもに絵本の読み聞かせを行う企画もあります。

――さまざまなところと協力してこの「#つなぐ」プロジェクトが広がっていますが、今回のこの新型コロナウイルス感染症の問題だけでなく、今後も継続的に取り組んでいくイメージですか?

河合:そうですね。選手たちからはリアルなイベントも行いたいと、話もでています。新型コロナウイルスの状況が落ち着くことで何かできるか考えていきたいと思います。今後も大きな軸には次世代育成、子どもに向けて行っていきますが、いろいろな活動が多様に広がってこのプロジェクトでつなぐ輪を広げていけたらと思いますね。

<了>

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[PROFILE]
河合健太郎(かわい・けんたろう)
1974年3月30日、静岡県出身。株式会社UDN SPORTS 取締役。
元大手スポーツブランド勤務。ブランドの戦略立案からデジタル・広告・広報・店頭販促など含む全マーケティングコミュニケーション機能を統括。その後独立、エンターテイメント、ファッション、リテール、教育、など様々な業界のマーケティングを担当した後、UDN SPORTSに加入。

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