
「北海道愛とファンへの想い」 恋焦がれ待ちわびたプロ野球開幕!輝くチアリーダーたちの笑顔
いよいよ6月19日、プロ野球ファンが待ち望んだ2020シーズンが開幕する。新型コロナウイルスの影響を受け、グラウンドに立つことができなくなってしまった選手や球団スタッフ、そしてファンたちが望み続けてきたこの時を同じく待ちわびていたのが、球場を彩るチアリーダーたち。彼女たちはどのような想いで、3カ月という長い時間を過ごしてきたのか。北海道日本ハムファイターズの公式チアリーダー「FIGHTERS GIRL(ファイターズガール)」として2018シーズンまで4年間活動していた藤原明日美が、現メンバーにその胸の内を聞いた――。
(インタビュー・構成=藤原明日美、写真=北海道日本ハムファイターズ、Getty Images)
『開幕延期』の文字を見たくないと思いながら過ごしていた
2020年6月19日。
プロ野球ファンが待ち望んだ「開幕」の瞬間がついに訪れようとしている。長かった休止期間を乗り越え、いよいよ全国の野球場に選手たちが帰ってくる。
新型コロナウイルスの影響を受け、グラウンドに立つことができなくなってしまったのは、選手だけではない。球場を彩るチアリーダー。彼女たちもまた、プロ野球の開幕を望み続けてきた。
どのような想いで、3カ月という長い時間を過ごしてきたのか。そして彼女たちは今、何を思うのか。今回は北海道日本ハムファイターズの公式チアリーダー「FIGHTERS GIRL(ファイターズガール)」のメンバー3人に話を伺った。
「やはり、悲しかったです。事態の大きさは理解していたので驚きこそしませんでしたが、『開幕延期』の文字を見たくないと思いながら過ごしていたので、恐れていたことがいよいよ現実になってしまったな……という想いでした」
開幕延期を知った時の率直な感想を語ってくれたのは、6年目の畠山茉央だ。
「開幕」とは、チアたちにとっても特別な意味を持つ。北海道中から訪れたファンと共に新しいシーズンの始まりを迎える日であり、また毎年オーディションによってメンバーが入れ替わるファイターズガールにとっては、新体制で臨む大切な初日でもある。たった1日しかない開幕の日を、全員で迎えられるように、そして最高のパフォーマンスで選手とファンにエールを送ることができるように、メンバーたちは厳しい練習を乗り越え一つになってゆく。
そんな日々が、今回の新型コロナウイルスの影響により突然失われてしまった。政府による緊急事態宣言を受け、選手同様に彼女たちも当面の間、活動休止となった。試合出演やイベント出演はもちろんのこと、活動の土台となるダンスレッスンすら行うことができない。基本的にグループでの活動が主である彼女たちにとっては、今回のウイルス拡大が与えた活動への影響は非常に大きかった。
「ファンへの想い」が原動力
このような状況の中、いま自分たちがそれぞれの場所でできることとは何なのか。メンバー全員が自主的にリモートで話し合い、主に試合やイベントなどの紹介に使用していた公式インスタグラムの活用案を考え、ファンへの発信を続けた。
「30個以上の案が出ました」と畠山が語るだけあり、投稿内容は実に多種多様だ。それぞれの個性が光る自己紹介リレーに始まり、自宅での過ごし方の紹介、手洗い動画、はたまたリモートでのコラボレーションダンスというチアならではのコンテンツも提供しつつ、牛乳の消費を呼びかける「SOS!牛乳チャレンジ」など、北海道のチームとしてのカラーも忘れない。実際に集まっての活動ができない中でも、常にファンとのつながりを大切にし続けた。
そして、個人でのトレーニングも欠かさず行ったという。
「YouTubeのトレーニング動画をテレビに映して、筋トレをしていました。家の中にいるとどうしても体力が落ちてしまうので、開幕した時に体力不足でパフォーマンスに影響が出てしまうことだけは避けたいと思っていました」(三田部晏奈)
常に全身を使ってパワフルなパフォーマンスをするチアたちは、われわれが想像している以上に高い持久力が求められる。フィジカル面への意識も、選手さながらだ。
このようにして、過去に例のない苦しい状況の中でも、ファンとつながる場所を提供し続け、グラウンドへの想いも絶やすことなく3カ月を全員で乗り越えた。困難にも負けない彼女たちの「前を向く力」は、一体どこから来るものなのだろうか。探っていくと、「ファンへの想い」が大きな原動力となっているようだ。
「チームの負けが続いている時、そんな時でもファンの皆さまに「今日も応援ありがとう!」と笑顔で声をかけていただきました。私たちのほうが元気をもらい、チームがどんなに苦しい状況でも明るく全力で応援しようと改めて感じました」(滝谷美夢)
「最後まで諦めずに声を枯らして笑顔で応援を続け、それでも負けてしまった日に、ファンの方にかけていただいた言葉が忘れられません。『お姉ちゃんの声、届いてたよ!』『応援する気になれたよ!』『私は明日も来るよ!』『また明日会おうね!』そんな言葉が心に刺さり、結局涙してしまいましたが、私たちチアが笑顔でいることがしっかり届く時があるんだと力が湧きました」(畠山)
選手やファンを元気づける存在である彼女たちもまた、ファンから大きな力をもらって活動しているということが言葉の端々から伝わってくる。2004年の北海道移転から、チームと共に17年目のシーズンを迎えるファイターズガール。どんな時も常に北海道のファンと共にあり続け、喜びも悔しさも共に分かち合ってきただけに、築き上げてきた信頼関係は深い。
北海道愛、そしてプロ野球への限りない愛を胸に――
ファイターズガールの運営管理を担当する事業統括本部の尾暮沙織さんも、彼女たちの強みは「北海道愛」にあると話す。
「一人ひとり個性もあり、それぞれ得意としている部分も違う中、互いに強みを生かし、そして補っていくことができるからこそ何でもできるチームだと思います。ただそれ以上に、本拠地である北海道に対する愛で溢れています。たくさんの地域の方から応援され、北海道に根付いた球団チームだからこそ、私たちも地域の皆さまの想いを胸に、地域の皆さまと共に、北海道を元気に明るく盛り上げていこうという強い想いを持って活動しています」
そんな彼女たちならではの北海道愛、そしてプロ野球への限りない愛を胸に、いよいよ待ち望んだ開幕の日を迎える。開幕日が正式に決まった瞬間は、メンバー同士で連絡を取り合って喜びを分かち合ったという。今月初旬からは全体でのレッスンも再開した。短い期間の中でも集中して練習を行い、準備は万端だ。
最後に、今回話を伺った3人に今年の開幕への想いを聞いた。
「待ちに待った開幕戦。この言葉を毎年言ってきましたが、今年は例年以上に重みがあります。今まで以上に気持ちを込め、無観客であってもファンの皆さまに伝わるようなパフォーマンスをお届けします。そして開幕だけではなく、プロ野球に『今まで通り』が戻った時には、きっとファンの皆さまも私たちチアも今まで以上の笑顔になっていると思うので、そんな日を楽しみに気を抜かずに活動していきたいと思います!」(畠山)
「改めて、2020年シーズンを開幕できること、ファンの皆さんとファイターズを応援できること、本当にうれしいです。まだまだ不安な日々を過ごされている方がたくさんいらっしゃることと思います。ですが、プロ野球が始まることで、スポーツが皆さんに元気や勇気、たくさんの感動を届け、人々の心を動かしてくれると信じています。私たちファイターズガールは皆さんとスポーツ、プロ野球、ファイターズ、北海道をつなぐ架け橋になれるよう、23名一丸となり‘‘全員チア‘‘でパフォーマンスしていきます。どうぞ今シーズンもファイターズへのご声援よろしくお願いします!」(三田部)
「開幕できることに感謝をしながら、野球を通して元気をお届けできるよう、ファイターズガールも全力で応援していきます!」(滝谷)
球音は、もう聞こえてきている。
初夏の爽やかな風が吹く北の大地で、念願の開幕を迎える日はもうすぐだ。その想いが、笑顔が、チームを勝利に導く光となる。
<了>
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