
なぜ長友佑都は、“ポスト長友”を寄せ付けないのか? 筋肉や体をつくる材料にまで拘る準備力
世代交代が進むサッカー日本代表にあって、34歳になったいまも、“ポスト長友”を寄せつけない長友佑都。科学的かつ激しくユニークなトレーニング、食事の徹底などの自己管理面でも飛び抜けたストイックさで知られる長友は、目下の目標は自身4度目となるワールドカップ出場に向けてどんなことに取り組んでいるのか?
(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=浦正弘)
歳を重ねたのに大幅にケガが減った理由
――今日はトレーニングやコンディショニングについて深掘りしていこうと思っているんですけど、コンディション維持とケガをしない体づくり、これについては昔以上に意識しているように見えます。
長友:それはやっていますね。実際にこの5、6年でケガもかなり減りました。肉離れなんかは、それまでは年に2回くらいはやっていたんですけど、ここ5、6年では今年やった1回だけですからね。
――それはすごいことですよね。ベテランと呼ばれる年齢になったのにケガが減っている。
長友:相当すごいですよね。食事だけじゃなくて、リカバリーの方法とか休息をしっかりとるとか睡眠とか全部大切なんですけど、とにかく食事を変えてからケガの頻度は大きく減りましたね。
――それこそ専属シェフを迎えたり、スタッフも含めていろんなことをチャレンジしながら行き着いたやり方がいまのやり方というわけですね。
長友:僕はただ調べて「これがいい」といってそのやり方を取り入れることはなくて、まずは自分で体験してみて良かったら取り入れるというやり方ですからね。自分の体を実験台にしてというか、だからトレーニングも食事もいろいろ体験しましたよ。
いいトレーニングをしても食事がダメならいい体はつくれない
――トレーニングをして、鍛えてケガをしないというのは一般の人にもわかりやすいと思いますが、食事でとなるとピンと来る人も少ないんじゃないかと思います。食事が体を強くするというのはどういう感覚なんですか?
長友:いいトレーニングをしても食事が適当だったら確実にいい体はつくれないんですよ。食事は、自分の体の中に入っていくものですよね。いい筋肉をつくるためには、その元になる食事を変えなければいけない。結局、体の中から、細胞から変えないとダメなんです。トレーニングと食事が融合して初めて、いい筋肉、いい体がつくれる。それはこれまでの経験の中で体感してきて、ケガが多い時期もあったりしましたけど、ようやくたどり着いたという感じはありますね。
もうすぐ35歳になりますけど、この年齢でも日本代表でプレーできていたり、ヨーロッパでプレーできたりということにつながってるなと思います。
――結果を見れば、今のやり方が正しい方法だなって確信があるってことですよね。
長友:これまで生きてきた中では一番の方法だろうなと。でも、これからまた進化はしていきます。また新しい方法を見つけていくんですけど、でも今は確実にこれが自分のベストだなと思ってます。
――腸内環境の改善とか、すごく科学的なアプローチもしていると聞きましたが、そういう発想はどこから来るんですか?
長友:僕、結構おなかが弱かったんですよ。疲労がたまるとおなかを壊すことが結構あって、それが腸内環境の改善でケアできるというので。これもまず自分の体で試して採用を決めたんですけど、もちろん自分の感覚だけじゃなくて、プロフェッショナルの意見を聞いてアドバイスをもらってということもやっています。でも、やっぱり自分で体験してみないと自分の中に落ちないので、効果を実感したときに『これだな』となる感じですね。
長友が毎日食べている意外な食材とは?
――食事に関しては、今すごく注目している食材があって、長友選手本人も本気で広げようとしていると聞きました。
長友:食事をとる上でこだわっているのが、たんぱく質の質なんですね。僕の体感として、鶏肉、牛肉、豚肉もとるんですけど、魚を食べたときの方がコンディションがいいという実感があったんです。
それで、効率よく魚を食べられる食材を求めていたときに、たまたま老舗かまぼこ屋さんとの出会いがあったんです。実は僕自身、かまぼこについては子どもの頃食べたよなーくらいの認識だったんですね。海外に出てからはかまぼこなんて目にする機会もなくて、すっかり存在を忘れていたくらいものだったんですけど、多くの魚が使われていて、本当に効率よく魚肉たんぱくが取れるということがわかったんですね。
――それで本当にかまぼこを毎日食べてるようになったとか。
長友:食事の話をすると、栄養優先で味気ない食事をしているとイメージする人もいるかもしれませんが、僕の実践している食事法では、おいしさも重要な要素なんですね。かまぼこは、本当においしくて、食事を任せている加藤(超也専属シェフ)も、『安心して食べてもらえるたんぱく源だ』というので。おいしさから入って、よくよく聞いてみたらそのかまぼこ屋さんのかまぼこは、化学調味料、保存料を使わず天然素材でできているというんです。
――あんまり魚を食べない子どもたちにも良さそうですよね。
長友:本当においしくて栄養価の高いものを食べるという幸せ。おいしくて栄養価が乏しいもの、おいしくなくて栄養価が高いものは結構あるじゃないですか。おいしくて、たんぱく質が豊富で手軽に食べられてとなると、アスリートじゃなくても、子どもたち含めてみんなに食べてほしいってなりますよね。
――これまでも、体幹トレーニングやヨガだったり、自分が体験したものを例えば本にして出版したりしていますが、やっぱり自分で試して良かったものを世の中に広めたいというのはありますか?
長友:それはありますね。今の自分が発信していることが全部正解だとは思っていませんが、広めたいというのはあります。
体幹とかヨガとかもそうなんですけど、こういう意識で取り組んでほしいというメッセージは伝えたいですね。やっぱり意識を高く持って取り組まないと自分の能力、才能は生かせないと思ってるので、一番伝えたいのはそこの部分なんです。正解は自分で考えて、それこそ自分で体感してつかみにいってねと。
――トレーニング、コンディショニング、食事にしてもちゃんと自分で納得したものをやる。これは徹底していますよね。
長友:いいと思ってないのにいいと言わなきゃいけないのは自分の性格的にはつらいものがあります。だから本当にいいものを伝えたい、ちゃんと自分で吟味しながらやっているからこそ、結果にもつながって、みんなにも伝えたい気持ちが出てくるんじゃないかと思っています。
――その吟味したものの集大成を次のワールドカップにぶつけるということですよね。
長友:ワールドカップの先は見ていないし、すべてをかけてやっているので、今の時点で最高と思えるやり方を全力でぶつけたいと思っています。
<了>
長友佑都と創業150年超の老舗企業の幸せなコラボ。『魚肉たんぱく同盟』が描くアスリートと企業の未来
内田篤人“日本と世界のサッカーは違う競技”発言の真意。「金棒ばかり集めてもW杯優勝はない」
「死んでも生き返れるんです。不死鳥のように」長友佑都、35歳を目前になお進化し続ける理由
育成年代にとっての「最良の食事」とは? Jユースと高体連、それぞれ取り組む新たな境地
日本人が海外の1/10も食べない食材とは? 日本代表料理人・西芳照×石井正忠、食育の最前線
PROFILE
長友佑都(ながとも・ゆうと)
1986年9月12日生まれ、愛媛県出身。東福岡高校を卒業後、明治大学に入学。大学在学中の2008年にFC東京とプロ契約。プロ1年目にはJリーグ優秀選手賞と優秀新人賞をダブル受賞し、日本代表にも初選出。2010年7月にイタリア・セリエAのチェゼーナに移籍。2011年1月、インテル・ミラノへの移籍が決まり、2017-18シーズンまで主力として活躍。2018年1月、トルコ・スュペル・リグのガラタサライSKに移籍し、リーグ連覇に貢献。2020年8月、オリンピック・マルセイユに移籍。2021年7月にマルセイユ退団が発表された。日本代表では2010年FIFAワールドカップ・南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会と3大会連続で全試合フル出場を果たしている。
この記事をシェア
RANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
いわきFCの新スタジアムは「ラボ」? スポーツで地域の価値創造を促す新たな仕組み
2025.04.03Technology -
専門家が語る「サッカーZ世代の育成方法」。育成の雄フライブルクが実践する若い世代への独自のアプローチ
2025.04.02Training -
海外で活躍する日本代表選手の食事事情。堂安律が専任シェフを雇う理由。長谷部誠が心掛けた「バランス力」とは?
2025.03.31Training -
「ドイツ最高峰の育成クラブ」が評価され続ける3つの理由。フライブルクの時代に即した取り組みの成果
2025.03.28Training -
アジア女子サッカーの覇者を懸けた戦い。浦和レッズレディースの激闘に見る女子ACLの課題と可能性
2025.03.26Opinion -
近代五種・才藤歩夢が挑む新種目。『SASUKE』で話題のオブスタクルの特殊性とは?
2025.03.24Career -
“くノ一”才藤歩夢が辿った異色のキャリア「近代五種をもっと多くの人に知ってもらいたい」
2025.03.21Career -
部活の「地域展開」の行方はどうなる? やりがい抱く教員から見た“未来の部活動”の在り方
2025.03.21Education -
リバプール・長野風花が挑む3年目の戦い。「一瞬でファンになった」聖地で感じた“選手としての喜び”
2025.03.21Career -
なでしこJにニールセン新監督が授けた自信。「ミスをしないのは、チャレンジしていないということ」長野風花が語る変化
2025.03.19Career -
新生なでしこジャパン、アメリカ戦で歴史的勝利の裏側。長野風花が見た“新スタイル”への挑戦
2025.03.17Career -
なぜ東芝ブレイブルーパス東京は、試合を地方で開催するのか? ラグビー王者が興行権を販売する新たな試み
2025.03.12Business
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
専門家が語る「サッカーZ世代の育成方法」。育成の雄フライブルクが実践する若い世代への独自のアプローチ
2025.04.02Training -
海外で活躍する日本代表選手の食事事情。堂安律が専任シェフを雇う理由。長谷部誠が心掛けた「バランス力」とは?
2025.03.31Training -
「ドイツ最高峰の育成クラブ」が評価され続ける3つの理由。フライブルクの時代に即した取り組みの成果
2025.03.28Training -
Jクラブ最注目・筑波大を進化させる中西メソッドとは? 言語化、自動化、再現性…日本サッカーを強くするキーワード
2025.03.03Training -
久保建英の“ドライブ”を進化させた中西哲生のメソッド。FWからGKまで「全選手がうまくなれる」究極の論理の正体
2025.03.03Training -
三笘薫、プレースタイル変化させ手にした2つの武器。「結果を出すことで日本人の価値も上がる」
2025.02.21Training -
錦織圭と国枝慎吾が描くジュニア育成の未来図。日本テニス界のレジェンドが伝授した強さの真髄とは?
2024.12.29Training -
指導者育成に新たに導入された「コーチデベロッパー」の役割。スイスで実践されるコーチに寄り添う存在
2024.10.16Training -
海外ビッグクラブを目指す10代に求められる“備え”とは? バルサへ逸材輩出した羽毛勇斗監督が語る「世界で戦えるマインド」
2024.10.09Training -
バルサのカンテラ加入・西山芯太を育てたFC PORTAの育成哲学。学校で教えられない「楽しさ」の本質と世界基準
2024.10.07Training -
佐伯夕利子がビジャレアルの指導改革で気づいた“自分を疑う力”。選手が「何を感じ、何を求めているのか」
2024.10.04Training -
高圧的に怒鳴る、命令する指導者は時代遅れ? ビジャレアルが取り組む、新時代の民主的チーム作りと選手育成法
2024.09.27Training