専属シェフが明かす、長友佑都のケガが劇的に減った食材とは? 知られざる食育の世界
スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回は創業156年の鈴廣かまぼこと、サッカー日本代表の長友佑都がタッグを組んだ「魚肉たんぱく同盟」という新プロジェクトに注目。
かまぼこが良質な高たんぱく食材だということは意外と知られていない。そこに着目し、子どもからお年寄りまで良質なたんぱく質をとることで健康を促進しようというのが「魚肉たんぱく同盟」のコンセプト。かまぼこづくりの老舗と一流アスリートの異色のコラボレーションで生まれたプロジェクトだ。プロジェクトリーダーである株式会社CUOREの津村洋太氏、長友佑都専属シェフの加藤超也シェフというキーマンの2人が、新商品の開発秘話と一流アスリートを支える裏方のリアルを語った。
(文=篠幸彦、撮影=大木雄介)※写真左が加藤超也シェフ、右が津村洋太氏
アスリートの専属シェフという“文字どおり”のサポート
秋山:アスリートの専属シェフというのはどういった内容のお仕事になるんですか?
加藤:その名のとおりなんですけど、選手に帯同して食事のサポートをすることが本質的な仕事になります。
五十嵐:海外も一緒に同行するんですか?
加藤:(長友佑都選手の専属シェフになって)5年たつんですけど、イタリアでプレーしていた頃からずっとサポートしていて、移籍があったら移籍先にも遅れて同行するという感じになりますね。
五十嵐:その国ごとに食材もまた全然違うと思いますけど、現地の食材でアレンジするということですか?
加藤:おっしゃるとおりで全く違うので、本当にゼロからスタートという感じですね。
秋山:ヨーロッパでは和食を作るのが大変ですよね?
加藤:大変ですね。イタリアの頃は中華街が近くにあったのでアジアショップで日本の食材が手に入ったんですけど、トルコが本当に難しかったですね。日系の企業も少なくて、アジアショップというのが1軒しかなかったんですよ。だから和食の食材をそろえるのにものすごく苦労しました。
五十嵐:やっぱり長友選手は和食が好きで、何がなんでも和食という感じなんですか?
加藤:そんなことはないです。ただ、日本人なので週に1、2回くらいは和食を入れてあげると喜ぶという感じですね。
五十嵐:それ以外では現地の料理方法を取り入れたり、いろんな国の料理を作るということですか?
加藤:そうですね。基本的には現地の食材をリスペクトして、それをどう和っぽくアレンジするか。例えば大根は普通には売っていないんです。ただ、大根に似たようなヨーロッパの食材でコールラビという野菜があるんですけど、それを大根代わりに使って煮物を作ったり、そういう考え方ですね。
五十嵐:もちろん、味もそうなんですけど、いろんなバランスを考えて提供するわけじゃないですか。
加藤:そうですね。味にプラスで栄養学というものも考えなければいけないので、ただおいしい食事とはまた別になってくるんですよね。
あえて魚肉たんぱくにこだわる理由
秋山:株式会社CUOREはどのようなビジネスを行っている会社になるんですか?
津村:アスリートの価値から創造したプロダクトで、広く世の中の人たちの健康課題の解決につなげるビジョンを掲げています。長友佑都がわれわれの会社の代表でもあり、他にもサポートしているアスリートが数多くいます。彼らが歩んできているプロセスの中の大事な要素を運動や食事といったものに翻訳して、サービスや商品に置き換えて提供する会社です。
秋山:基本的には食のサポートと考えていいんですか?
津村:そうですね。とくに食事の領域に特化をしていて、今回も鈴廣かまぼこさんと共同で商品開発をしました。かまぼこはたんぱく質が非常に豊富なので、アスリートはもちろん、一般の方にとっても大事ということで、今回のプロジェクトを立ち上げました。
五十嵐:魚肉以外にも高たんぱくな素材ってあるじゃないですか。あえて魚肉を選んだ理由はなんだったんですか?
津村:まず魚に関して個体差はあるんですが、長友にとって相性が良い素材だったこと。お肉にもさまざまなたんぱく質がありますが、余分な脂質もとり過ぎてしまうという面もありました。長友は今年35歳で、次のカタール大会は4度目のワールドカップになります。そうなった時によりたんぱく質の中身まで追求していくという中で、われわれとしては魚肉たんぱくというものに着目しました。
五十嵐:僕も現役中にあったら食べたのになぁ。
津村:かまぼこって意外とたんぱく質摂取に良いというイメージがないんですよね。
五十嵐:ないですね。ちょっとビールのおつまみにしたり、正月にいただくイメージですよね。
津村:そうなんですよ。鈴廣さんのかまぼこは良質なたんぱく質な上に、天然素材で化学調味料を使っていないという点が特徴で、アスリートにとってはもってこいの食材なんです。
“挑戦”を続ける2者から生まれた「挑・蒲鉾」
秋山:長友選手も開発に携わった新商品の「フィッシュプロテインバー 挑・蒲鉾(ちょう・かまぼこ)」はクラウドファンディングでも話題となっています。「挑・蒲鉾」、かわいい名前ですよね。
津村:いろいろな経緯があったんですけど、結論としては、まず長友が来年のワールドカップに“挑戦”すること。鈴廣さんは「老舗にあって老舗にあらず」という社是があるんですが、つまりは“挑戦”を続けている会社であること。その2者が“かまぼこのようでかまぼこではないもの”の開発に挑戦をしたということで「挑・蒲鉾」という商品名になりました。
五十嵐:味は普通のかまぼこと違いはあるんですか?
津村:味はかなり違います。タコのガリシア風、金目鯛のアクアパッツア風、ほうれん草とホタテ入りグラタン風の3種類があります。白いシンプルなかまぼこもおいしいんですが、長友専属シェフの加藤が料理人として考えたものを商品化しました。
五十嵐:食感は普通のかまぼこと同じですか?
津村:従来の弾力のある食感に、食材も粒で入っているので噛(か)み応えもあると思います。
五十嵐:かまぼこは下に板があって、そこから切って食べるイメージですが、「挑・蒲鉾」もそういったものになるんですか?
津村:スーパーなどに売っている既存のかまぼこはまさにそうしたイメージの商品になるんですが、「挑・蒲鉾」はプロテインバーになります。
五十嵐:プロテインに近い感覚でトレーニングの後に、気軽に魚肉で良質なたんぱく質をとるというイメージなんですね。プロテインはサプリメントというイメージがありますけど、それが天然素材のお魚から手軽にとれるならそっちのほうがいいですよね。
秋山:販売はインターネット上になるんでしょうか?
津村:現時点では「Makuake」というクラウドファンディングサービスで販売中です。
五十嵐:これがスーパーとかコンビニで買えるようになったらいいですよね。
津村:そこを目指しながらまずは皆さんにかまぼこの魅力を認識してもらえるように頑張っています。
秋山:コンビニで手軽に買えるようになることを願って楽しみにしています。
ゴールデンタイムに良質なたんぱく質をとるのが勝負
五十嵐:アスリートになるとやっぱりたんぱく質が多めのほうがいいとか、朝昼晩によって作るものは変わるんですか?
加藤:基本的な優先順位としては、まずは高たんぱく質であることは一番重要視しています。またたんぱく質をとるタイミングというのも長友本人は重要視しているんです。いつも練習が終わって帰る時に「何分後に帰ります」という連絡がくるんです。
トレーニングが終わって30分以内が「ゴールデンタイム」といわれていて、その間にいかに良質なたんぱく質をとるかというのは勝負どころなんですよ。練習場から大体20分くらいで帰ってくるんですけど、「今クラブハウス出ます」と連絡があったらそこから一気に準備をして提供できる状態にして、帰宅してガチャっとドアが開いて、手を洗ったらもう食べ始めるという感じですね。
五十嵐:そんな感じなんですね。
加藤:本当に早く食べたいんだろうなという時は、家の駐車場に着いた時に「今駐車場着きました」って連絡がくるんですよ。「やばい、あと3分で来ちゃう」みたいな感じですね。
秋山:でもそれくらいゴールデンタイムが大事ということなんですよね。
加藤:ですね。あとUEFAヨーロッパリーグやUEFAチャンピオンズリーグが始まると他国のクラブと対戦するんですね。例えばスペインで試合をすると大体キックオフが20時45分で、終わるのが23時半から24時くらいなんです。そうなると普通に考えるとその日には帰ってこないじゃないですか。でも帰ってくるんですよ。そうなると帰宅時間は2時とか3時とかなんです。それで次の日オフなのかと思いきや、普通に翌朝9時から練習があるっていうそんなハードな日々をこなしているんですよね。
五十嵐:次の日くらい休みでいいですけどね。それは強行スケジュールですね。帰ってきてそこからご飯は食べないですよね?
加藤:いえ、準備します。僕も試合が終わって目覚ましをかけて仮眠して、帰ってくる時間帯に合わせてちょっと前に起きて準備することもあります。本人が「今日はスープだけ飲めればいい」という時は、温めるだけの状態にして、それを食べて休むこともあります。ただ、移動の時もたんぱく質をとることは重要で、そういう時におすすめできるたんぱく質の食材というものがなくて、食べてほしいと思えるものを作りたいなと思っていました。
五十嵐:それがこの「挑・蒲鉾」ということなんですね。
加藤:コンセプトとしては彼が渡り歩いてきたヨーロッパの食べ慣れている食材をモチーフにしたいなというのが一つ。それから鈴廣さんのかまぼこを見て思ったのは、日本から世界に誇れる食材だなと。そう思った時に海外の人に食べてほしいと思ったんです。それでヨーロッパの人たちがなじみのあるテイストにしたほうがいいかなと、そんな思考から入っていきました。
五十嵐:これまでかまぼこがそんなに高たんぱく質だというイメージがなかったです。
加藤:1本で約15gはとれるので、五十嵐さんならトレーニング後に2本食べれば完璧ですね。
五十嵐:トレーニング後は大体30〜40gとっていたのでそれくらいですよね。じゃあ長友選手が急いで帰ってくる最中でも、これからはプロテインバーを食べてから帰るからもうちょっとゆっくりしても大丈夫となりそうですね。
加藤:本当におっしゃるとおりで、その1本を先に食べているだけでちょっと余裕があるんですよね。「とりあえず先にプロテインバーを食べていたら食事はその20分後くらいでもいいかな」ということもあります。やっぱり料理人なので、料理はベストな状態で出したいんですよね。
ケガが劇的に減った魔法のレシピ
秋山:6月29日に加藤シェフのご著書『長友佑都専属シェフが考案 食べて脂肪が燃える魔法のレシピ』が出版されているんですけど、食べて脂肪が燃えるって女性も引かれますね(笑)。
五十嵐:僕も引かれますよ。食べれば脂肪は付くものですからね。
加藤:全部で80を超えるレシピがあるんですけど、僕がイタリア時代からサポートして実際に長友本人に提供してきたメニューが多いですね。
秋山:長友選手もこういったレシピを求めていたということですか?
加藤:彼が求めているものは2つあって、1つ目はエネルギー。食事の理論としては脂肪だったり、脂をエネルギーに換える。そこでスタミナを維持する。サイドバックなのでスタミナがすごく求められるポジションなんですね。それでより持続可能なエネルギーというところで、脂をエネルギーに換える食事というのが一つですね。2つ目は筋肉系のケガがすごく多かったんです。僕がサポートする前は年に5、6回肉離れをして離脱していました。本人も言っていましたけど「アスリートだからしょうがない。ケガは当たり前や」みたいな感覚で、肉離れはあるものだと思っていたらしいんです。でも食事を変えてからこの5年間で、マルセイユでの1回しか肉離れをしていないんです。そういったところもアスリート目線でいうと筋肉や細胞が良質になるレシピを実行することによって効果がある。
五十嵐:現役中に聞きたかったぁ。僕も肉離れは年に1回はやっていたので……。
加藤:そうだったんですね。現役中から見ていました。僕も野球をやっていたので。
五十嵐:野球をされていたんですね。だったら声かけてくれればもうちょっと長くできたかもしれなかったなぁ(笑)。
秋山:もうちょっと早く出会っていればよかったですね(笑)。
五十嵐:でもこうした本を読んで、僕もいつか選手に伝える立場になるかもしれないので、その時は参考にさせていただければと思います。
<了>
長友佑都と創業150年超の老舗企業の幸せなコラボ。『魚肉たんぱく同盟』が描くアスリートと企業の未来
「死んでも生き返れるんです。不死鳥のように」長友佑都、35歳を目前になお進化し続ける理由
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