
稲本、関口、噂の元代表選手も?…大物続々加入の南葛SC、岩本GMが明かす話題の移籍の舞台裏
スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティーを務め、スポーツ界のリアルな声を深堀りしていく。今回はWebメディア「REAL SPORTS」編集長であり、Jリーグ参入を目指す南葛SCのゼネラルマネージャーも務める岩本義弘が、ネットニュースを騒がした大物選手獲得の裏側を初めて明かした。昨年12月25日に関東1部リーグへの昇格を達成し、続々と元日本代表クラスの選手を獲得し万全の体制で挑む今季の展望を語ってもらった。
(構成=篠幸彦、撮影=松岡健三郎)
「南葛SC、三浦知良にオファー!」その裏側とは
秋山:今回は「祝・南葛SC関東1部リーグ昇格!」ということで、ゼネラルマネージャーを務める岩本編集長に南葛SCについて話を伺っていきたいと思います。
五十嵐:まずは1部昇格おめでとうございます!
岩本:ありがとうございます! 昨年12月25日に行われた桐蔭横浜大学FCとの関東リーグ入替戦に4−1で勝つことができました。内容としては前半すぐに先制した後、終了間際に追いつかれて嫌な流れがありました。でもその直後に佐々木竜太選手が2点目を取ってくれて、後半からは危なげない試合展開を見せてくれました。最高のクリスマスプレゼントでしたね。
五十嵐:今年に入って初めてお会いしましたが、だいぶお疲れの様子ですよね。
岩本:なんで疲れているかというと、入替戦が終わった後に選手全員と個人面談をして、契約交渉を行いました。約1時間程度、中には2時間くらい話した選手もいました。
五十嵐:そんなことまでやるんですか。契約交渉は、選手側は年俸を上げてもらいたいし、フロント側は選手に見合った金額を提示したいので、なかなか話が進まないんですよね。それを一人一人、全員やるというのは相当大変だったと思います。
岩本:契約交渉は契約更新だけではなくて新規獲得も担当していて、さらにスポンサーのセールスも1月中に決めなければいけないので、12月から1月にかけては人に会う機会が多く、さすがに疲れていますね。でもこれも1部昇格が達成できたからこそなので、うれしい疲労でもあります。
秋山:今年に入って2度もYahoo!ニュースのトピックス(ヤフトピ)に南葛SCの話題が載るほど、今注目されていますよね。
岩本:昨年末にも「南葛SC、三浦知良にオファー!」というのがありました。
秋山:それも見ました!
岩本:実際、(南葛SCの代表取締役で『キャプテン翼』原作者の)高橋陽一先生と一緒にカズさん(三浦知良選手)の自主トレが行われている大阪まで行ってきました。そこで直接オファーをして、けっこう手応えがあったんです。マネジメントサイドからも「プレゼンは一番でした」と言われていました。他にも8クラブほどがオファーを出していたんですが、断られたという情報がメディアにポツポツと流れていて、うちはまだ断られてはいなかったので、これはもしかしたらと思っていました。でも結局、大本命だったお兄さんである三浦泰年さんが監督兼GMをしている鈴鹿ポイントゲッターズに決まりました。
五十嵐:鈴鹿は今どのリーグに所属しているクラブなんですか?
岩本:JFLなので、J1から数えると4部リーグに所属しています。つまりJリーグの1つ手前のリーグですね。南葛SCが昇格した関東1部リーグは5部リーグに相当します。
五十嵐:では鈴鹿のほうが1つ上のリーグということなんですね。
岩本:そうですね。でも東京にあるクラブで、世界で一番有名な日本人サッカー選手であるカズさんと、世界で一番有名なサッカー漫画『キャプテン翼』という掛け合わせは、相乗効果は絶大なものだということ。それから葛飾区にスタジアムをつくってJリーグに昇格したいというクラブのビジョンを話したらかなり乗ってきてくれていました。ただ、唯一ネックだったのが、葛飾区には天然芝のサッカーグラウンドがないんです。カズさんの考える条件の中で、そこは大きかったのではないかと思います。
五十嵐:膝や腰への負担を考えるとその条件は大きそうですね。
岩本:毎年カズさんのグアムキャンプを泊まりがけで取材をしていましたし、50歳の誕生日に私がインタビュアーを務めてカズさんのフォトブックを発行させていただいたりしてきました。
五十嵐:それだけカズさんと仕事をされてきたんですね。
岩本:そういう経緯もあってカズさんにはすごく思い入れがありましたし、子どもの頃から大好きな選手なので、オファーをして真剣に検討していただけたことがまずうれしかったです。断りの電話も本人からかけていただきました。ちなみに携帯番号の末尾は「11」でした。やっぱり背番号の11へのこだわりは相当強いんだなと思いましたね。
稲本潤一加入決定! 噂されるもう一人の大物選手
秋山:カズさんの話題も気になりましたが、稲本潤一選手の加入も話題ですよね!
五十嵐:稲本選手は僕と同い年なんですよ。
岩本:稲本潤一パワーはものすごかったです。ヤフトピに載っただけでなく、テレビの取材もすぐに入るし、スポンサーの問い合わせも殺到しました。
五十嵐:稲本選手にはどのタイミングでオファーしたんですか?
岩本:昇格が決まる前にオファーしていました。じつは最初、稲本選手が前所属のSC相模原と契約満了になったというニュースの後に、代理人から「稲本が南葛SCに興味あると言っています」と連絡があったんです。「でも他のクラブからオファーありますよね?」と聞いたらJ2、J3からオファーは当然ありました。それでも南葛に興味があると聞いて「ウソでしょ」と思いながら「それならすぐに話したいです」と12月中に会いました。それから稲本選手が他のクラブとも会った上で、1月頭に合意しました。
秋山:かなり早い段階で決まっていたんですね。
岩本:その後にキャプテン翼CUPというわれわれが主催した12歳以下の大会のエキシビションマッチに南葛SCのライバルである明和FCチームで出場してもらったんです。それから加入のリリースを出したので「明和から南葛に加入か」とツイッターなどでも話題になりました(笑)。
秋山:稲本選手の他にもう一選手話題になりましたよね?
岩本:稲本選手加入の翌日にすっぱ抜かれた形なんですけど、「元日本代表の今野泰幸選手が南葛SC入りか!?」というものまでヤフトピに載ったんですよ。
秋山:この話はいつ頃に本当なのかわかるんですか?
岩本:その記事が載って各新聞から裏を取るために問い合わせがあって、今のところ「オファーはしました。でも契約ごとなのでそれ以上は言えません」という形にしています。ただ、REAL SPORTSのラジオなのでぶっちゃけると、近々大きな発表をする予定です。
五十嵐:なんとなくそうなるだろうという感じは伝わっていますよね。
岩本:稲本選手もヨーロッパでプレーしている頃から毎年インタビューをしていたんです。今野選手に至ってはFC東京時代から単独インタビューは50回以上しているんですよね。東日本大震災以降、被災地支援にプライベートで一緒に行ったりもして、友人に近い関係性なんです。でもその時はまさか自分がクラブチームのGMをやるとは思っていなかったので、オファーを出せて一緒にやれる可能性があるというだけですごく感慨深いものがあります。
五十嵐:もし決まったとしたら契約交渉もしていくわけですよね。
岩本:そこは事前に決めてオファーしていますね。今回Yahoo!ニュースにこれだけ取り上げられたことで、「南葛SCはどれだけお金持っているんだよ」みたいに言われているんですよ。当たり前ですけど、Jリーグと比べたら全然お金はないし、出しているお金も全然少ないです。
秋山:それ以上に魅力があるということなんですよね。
岩本:ただ、南葛SCではトレーニングウェアのスポンサーは選手に開放していて、収入は全部、クラブじゃなくて選手が取っていいよ、としています。だから稲本選手クラスであればそれだけで数百万円、頑張れば1000万円以上。Jリーグだとそれができないので、場合によってはJでもらえる以上の金額になる可能性は十分にあると思います。それから南葛SCだと解説の仕事なども可能になります。JリーガーがJリーグの解説はできないので、セカンドキャリアのスタートにもなるというのはポイントだと思います。
五十嵐:プレーヤー以外のところでも活動の幅が広がるわけですね。
岩本:これからの時代に合ったアスリート像の一つになるかもしれないですね。
秋山:稲本選手や今野選手が加入するとなると、今所属している選手たちのモチベーションも上がりますよね?
岩本:みんなすごく加入を喜んでいますね。稲本選手はチーム始動日から参加していますが、若い選手にとっては子どもの頃からテレビで見ていた選手が同じチームになるなんて思っていなかったし、同じポジションの選手はまさか稲本潤一とポジション争いできるなんて思いもしないですよね。南葛SCのファン・サポーターも大物選手の加入を喜んでくれています。
五十嵐:そのクラスの選手が加入することで、チームの雰囲気だったり、練習内容だったり、何か変化はありました?
岩本:今季は稲本選手以外にも例えばJ1のベガルタ仙台から移籍してきた日本代表出場歴もある関口訓充選手であったり、著名な選手が多く加入したので、やっぱり最初はちょっとふわふわしていました。それでも監督はネームバリューでポジションを決めるわけではないので、毎日練習をしていくことで慣れていくと思います。開幕する頃には締まった雰囲気になっていくでしょうね。
五十嵐:でも来てもらったからには主力として考えているんですよね?
岩本:そこはフラットに考えています。当たり前ですけど、フェアな競争というのが一番大事だと思っているからです。
地域CLは超過酷!? Jリーグ昇格前に立ちはだかる最大の試練
秋山:今季の南葛SCがとても楽しみですが、シーズンのスケジュールはどのようになっているのですか?
岩本:2月末から天皇杯の予選が始まります。それから4月頭にリーグ戦が開幕して9月末まで続きます。10月に全国社会人サッカー選手権大会(全社)があり、11月にJFL昇格を懸けた全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)を戦うというスケジュールになります。
秋山:本当に長いシーズンですね。
岩本:関東1部から自力でJFLに昇格するためには、まずは関東リーグで優勝するか全社で3位以内(かつ関東リーグで4位以上)に入って地域CLの出場権を得て、さらに地域CLで上位2位にならないといけません。しかも全社は5日連続、地域CLは1次ラウンドが3日連続、決勝ラウンドは1日おきに3試合という過酷なスケジュールを勝ち抜かなければいけないんですよ。
秋山:そんなスケジュール聞いたことないですね。
岩本:世界でもこんなスケジュールはこの大会だけです。
五十嵐:戦力もかなり厚くないと乗り切れないですよね?
岩本:去年の地域CLを見ると15人くらいを固定して戦っているクラブが多かったですね。ただ、それだと疲弊している選手同士の対戦になって、どちらも点が入らなくて、最後はセットプレーで試合が決まるという展開になってしまいます。
五十嵐:15人しかいないとそうなりますよね。
岩本:南葛SCは『キャプテン翼』の大空翼の名言である「ボールはともだち」をテーマにボールをしっかりとつなぐサッカーをしているので、選手が疲弊してセットプレー頼みの展開になると負けてしまうと思っています。だから今年は2チーム分以上の35人体制となります。
五十嵐:過酷な日程の大会を乗り切るにはそれくらい必要ですよね。簡単な道のりではないと思いますけど、岩本さんの今の手応えは?
岩本:Jリーグまでの道のりの中で、JFLからJ3という最後の昇格よりも、その1つ手前となる地域リーグからJFL昇格のほうが大変だといわれています。実際、関東1部リーグに南葛SCよりも予算規模の大きい栃木シティFCというクラブがあるんですけど、4年連続で昇格を逃しているんです。
五十嵐:それは相当きついですね。
岩本:南葛SCとしては、連続で昇格できている今の勢いのまま一気に乗り切ってしまう必要があると思っています。そのためにかなり気合いを入れて補強もしていますし、チームとしてのサポート体制もすごく力を入れているところです。昇格するにはもう今年しかないと思っています。
五十嵐:また金満とかいわれちゃいそうですけど、でもそれくらいかけないとかなり難しいですよね。
岩本:クラブとしてお金をかけるべきところにはしっかりとかけていますね。そういう意味では、先日、高橋先生の協力のもと独身寮を葛飾区の立石に持つことができました。これは来年以降のユースチーム設立を見据えたものですけど、ひとまず部屋が空いているので独身の選手は全員入ってもOKということにしました。これは全国から大卒選手を獲得する際にものすごく役立ちました。
五十嵐:確かに住むところが確約されていると安心ですよね。
岩本:そこの経費は本来選手にとって負担になる部分なので、かなり大きいですね。元は銀行の寮だったところなので、施設としてもしっかりしています。また金満といわれてしまいそうですけど(笑)。
五十嵐:でも良いクラブをつくるためには必要な投資ですよね。
岩本:今まで南葛SCファンではなかったけど、見に来たいと言ってくれる人が本当に多いのでお二人もぜひ見に来てください。
<了>
「南葛SCがJリーグに昇格したら、バルサとの提携、エムバペの獲得も夢じゃない」。岩本義弘GMが明かす、新時代の経営戦略
「漫画以上の展開」見せるリアル“南葛SC” 高橋陽一が思い描く、地元・葛飾への恩返しとは
「日本で最も過酷な大会」地域CLから見える地域事情 “地獄の関東”“課題山積の北海道”
[天皇杯]30年で最もジャイキリしたチームはどこ? 1位は断トツで…
[アスリート収入ランキング2021]首位はコロナ禍でたった1戦でも200億円超え! 社会的インパクトを残した日本人1位は?
****************************
InterFM897ラジオ番組「REAL SPORTS」(毎週土曜 AM9:00~10:00)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜
2019年にスタートしたWebメディア「REAL SPORTS」がInterFMとタッグを組み、ラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界やアスリートのリアルを発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
****************************
この記事をシェア
RANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
高校ラグビー最強チーム“2006年の仰星”の舞台裏。「有言実行の優勝」を山中亮平が振り返る
2025.02.14Career -
プロに即戦力を続々輩出。「日本が世界一になるために」藤枝順心高校が重視する「奪う力」
2025.02.10Opinion -
張本美和が早期敗退の波乱。卓球大国・中国が放つ新たな難敵「異質ラバー×王道のハイブリッド」日本勢の勝ち筋は?
2025.02.10Opinion -
「やるかやらんか」2027年への決意。ラグビー山中亮平が経験した、まさかの落選、まさかの追加招集
2025.02.07Career -
女子選手のACLケガ予防最前線。アプリで月経周期・コンディション管理も…高校年代の常勝軍団を支えるマネジメント
2025.02.07Opinion -
前人未到の高校女子サッカー3連覇、藤枝順心高校・中村翔監督が明かす“常勝”の真髄
2025.02.06Opinion -
一流選手に求められるパーソナリティとは? ドイツサッカー界の専門家が語る「実行に移せる能力」の高め方
2025.02.03Opinion -
柿谷曜一朗が抱き続けた“セレッソ愛”。遅刻癖、背番号8、J1復帰、戦術重視への嫌悪感…稀代のファンタジスタの光と影
2025.02.03Career -
「アスリートを応援する新たな仕組みをつくる」NTTデータ関西が変える地域とスポーツの未来
2025.02.03Business -
卓球・17歳の新王者が見せた圧巻の「捻じ伏せる強さ」。松島輝空は世界一を目指せる逸材か?
2025.01.30Career -
最多観客数更新のJリーグ、欧米女子サッカービジネスに学ぶ集客策。WEリーグが描く青写真とは?
2025.01.28Business -
4大プロスポーツ支えるNCAAの試合演出。「ジェネラリストは不要」スポーツエンターテインメントはどう進化する?
2025.01.28Business
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
プロに即戦力を続々輩出。「日本が世界一になるために」藤枝順心高校が重視する「奪う力」
2025.02.10Opinion -
張本美和が早期敗退の波乱。卓球大国・中国が放つ新たな難敵「異質ラバー×王道のハイブリッド」日本勢の勝ち筋は?
2025.02.10Opinion -
女子選手のACLケガ予防最前線。アプリで月経周期・コンディション管理も…高校年代の常勝軍団を支えるマネジメント
2025.02.07Opinion -
前人未到の高校女子サッカー3連覇、藤枝順心高校・中村翔監督が明かす“常勝”の真髄
2025.02.06Opinion -
一流選手に求められるパーソナリティとは? ドイツサッカー界の専門家が語る「実行に移せる能力」の高め方
2025.02.03Opinion -
高校サッカー選手権で再確認した“プレミアリーグを戦う意義”。前橋育英、流経大柏、東福岡が見せた強さの源泉
2025.01.20Opinion -
激戦必至の卓球・全日本選手権。勢力図を覆す、次世代“ゲームチェンジャー”の存在
2025.01.20Opinion -
なぜブンデスリーガはSDGs対策を義務づけるのか? グラスルーツにも浸透するサステナブルな未来への取り組み
2025.01.14Opinion -
フィジカルサッカーが猛威を振るう高校サッカー選手権。4強進出校に共通する今大会の“カラー”とは
2025.01.10Opinion -
なぜバドミントン日本代表は強くなったのか? 成果上げた朴柱奉ヘッドコーチの20年と新時代
2024.12.29Opinion -
「すべて計画通りに進んだ」J1連覇の神戸・吉田孝行監督が示した日本サッカー界へのアンチテーゼ
2024.12.24Opinion -
昌平、神村学園、帝京長岡…波乱続出。高校サッカー有数の強豪校は、なぜ選手権に辿り着けなかったのか?
2024.12.13Opinion