日本シリーズで暴れるラッキーボーイ候補は誰だ!?2021 年間300試合取材の記者選出6傑
20日、日本シリーズが開幕する。東京ヤクルトスワローズとオリックス・バファローズ、日本一の称号をつかみ取るのは果たしてどちらだろうか? 短期決戦においては、時に意外な伏兵、“ラッキーボーイ”が勝敗を大きく左右することがある。年間300試合を取材する西尾典文氏にラッキーボーイ候補を6人選出してもらった。
(文=西尾典文、写真=Getty Images)
日本シリーズの流れを大きく変える“ラッキーボーイ”は現れるか!?
11月20日に開幕する日本シリーズ。東京ヤクルトスワローズとオリックス・バファローズの間で争われるが、両リーグそろって前年最下位のチームが出場するのは長いプロ野球の歴史の中でも初めてのことである。そして意外な伏兵が大活躍を見せることがあるのが短期決戦の醍醐味(だいごみ)ともいえる。
昨年の日本シリーズでも福岡ソフトバンクホークスのジュリスベル・グラシアルとアルフレド・デスパイネ両外国人選手の間を打った栗原陵矢が4試合で14打数7安打4打点の大活躍でMVPを受賞。2018年には甲斐拓也が広島東洋カープの仕掛けた盗塁を6度連続で阻止してMVPに選ばれている。
そこで今回はヤクルト、オリックス両チームの主力以外で、意外な活躍が期待できるラッキーボーイ候補を探ってみたいと思う。
ヤクルト候補1人目:得点圏打率.421、チャンスで結果を残す男
ヤクルトでまず筆頭として挙げたいのが川端慎吾だ。2015年に首位打者に輝いてからは腰の故障で年々成績を落としていたが、今年は代打の切り札として復活。年間代打安打歴代2位となる30安打を放ち、最終的にも打率.372という見事な成績を残したのだ。さらに特筆すべきは.421という得点圏打率だ。これは規定打席に到達した選手の中でリーグトップだったチームメートの塩見泰隆の.325を約1割も上回っており、いかにチャンスで川端が結果を残してきたことがよく分かるだろう。
オリックスの本拠地ではDH制が採用されるためスタメン出場の可能性もなくはないが、相手にとっては勝負どころの切り札としてベンチにいられる方がプレッシャーとなるはずだ。1点を争う終盤のチャンスで、シーズン中にも見せた勝負強さを発揮してくれることを期待したい。
ヤクルト候補2人目:日本シリーズを知り尽くすミスター短期決戦
ヤクルトのベテランで忘れてはならないのが内川聖一だ。移籍1年目の今シーズンは38試合の出場で11安打、打率.208と少し寂しい成績に終わったが、少ない出場機会の中でも得点圏打率は.300をマークしている。
ソフトバンク時代には日本シリーズMVPを1回、クライマックスシリーズ(CS)MVPを3回受賞しており、大一番での豊富な経験は現役選手の中でもトップクラスである。川端以外にも頼れる代打の切り札がもう一人控えているというのはヤクルトにとって大きな武器になることは間違いないだろう。
ヤクルト候補3人目:プロ初出場で本塁打、“持っている”ルーキー
ヤクルトでもう一人注目したいのがルーキーの元山飛優だ。東北福祉大時代は学生野球最後の公式戦となる東北地区大学野球選手権決勝の富士大戦で1点を追う9回表に起死回生の同点ソロをライトスタンドにたたき込むと、さらに延長11回には決勝点の犠牲フライを放ってチームの優勝に大きく貢献。自身もMVPに輝いている。
プロ入り後も初出場となった3月27日の阪神タイガース戦でいきなりプロ初ホームランを放ってみせるなど、何かやってくれそうな雰囲気を持った選手である。シーズン終盤に死球を受けた影響でCSではベンチから外れていたが、日本シリーズには間に合う予定と報道されている。大舞台に強いルーキーのプレーぶりに注目だ。
オリックス候補1人目:思わず涙も…ここぞの勝負強さが光る
一方のオリックスでは宗佑磨を筆頭候補として推したい。プロ入り7年目の今シーズンはサードのレギュラーに定着すると、チームで3位となる131安打をマーク。10月12日の千葉ロッテマリーンズ戦では起死回生の同点ツーランを放ってチームのAクラス入りを決めると、ベンチで思わず涙を流す姿は話題となった。
CSファイナルステージ3戦目でも一時逆転となるツーランを放っているが、とにかくここぞという場面での勝負強さが光る。レギュラーシーズンで宗がホームランを放った9試合は8勝1分と負けなしというのも明るい材料であり、日本シリーズでも勝敗の行方を左右する一発に期待したい。
オリックス候補2人目:25年ぶり日本シリーズ進出を決めた男
オリックスの野手ではやはり小田裕也を取り上げないわけにはいかないだろう。今シーズンは101試合に出場しているものの代走と守備固めが大半でわずか1安打しか放っていなかったが、CSファイナルステージの第3戦では9回にノーアウト一・二塁から鮮やかなバスターでのタイムリーを放ち、チームの日本シリーズ出場を決めてみせたのだ。
実は小田が大舞台で大仕事をやってのけたのはこれが初めてではない。東洋大4年時に出場した全日本大学野球選手権の決勝では延長10回に福谷浩司(現中日)からサヨナラツーランを放ちチームの大会連覇を決めているのだ。日本シリーズでも打席に立つ機会は多くないかもしれないが、そのプレーぶりにぜひ注目してもらいたい。
オリックス候補3人目:外国人中継ぎ右腕の覚醒はあるか?
短期決戦では外国人選手がゾーンに入ったような活躍を見せるケースも少なくないが、オリックスで注目したいのが中継ぎ右腕のセサル・バルガスだ。シーズン途中の8月に独立リーグ・BCリーグの茨城アストロプラネッツから入団。レギュラーシーズンでは5試合に登板して1勝1敗1ホールド、防御率11.00という成績に終わったが、CSファイナルステージでは第3戦で1点ビハインドの5回から3番手としてマウンドに上がり、2イニングをパーフェクトに抑え込み、チームの引き分けに大きく貢献している。
ストレートはコンスタントに150キロ台中盤をマークするスピードがあり、140キロ台後半のカットボールとツーシームも威力は十分。この調子を維持できれば日本シリーズでも大事な場面を任されることも予想され、フル回転での活躍も期待できそうだ。
ヤクルトでは山田哲人、村上宗隆、オリックスでは吉田正尚、杉本裕太郎という不動の中軸がチームをけん引してきたが、日本シリーズでは当然厳しいマークにあうことが予想される。また投手では先発が早く崩れたときに、中継ぎ陣の出来が勝敗に大きく影響することは間違いない。それだけに今回紹介したようなラッキーボーイ候補がいかに活躍するかが、日本シリーズの命運を分ける存在になることも十分に考えられるだろう。
<了>
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