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ダルビッシュ有が「YouTuber」を始めた理由とは?「野球でもYouTubeでも、成功の原理は応用できる」
日本球界の至宝にして、唯一無二のアスリート、ダルビッシュ有。5月に行った『REAL SPORTS』独占インタビューに続き、舞台をMLBに移して8季目を終えた今、再びその本音を明かす――。
全4回にわたる独占インタビューの第1回では「気持ちの悪かった」という今シーズンを振り返った。続く第2回のテーマは、「YouTube」だ。夏頃から頻繁に動画を公開して大きな話題となっているが、なぜダルビッシュはYouTubeを始めたのか? 何を考えて動画を制作しているのか? そこにはアスリートとしての矜持があった――。
(インタビュー・構成=岩本義弘[『REAL SPORTS』編集長]、撮影=浦正弘)
[第1回はこちら]ダルビッシュ有が「悪い霊が憑いてるんじゃ」とすら思った不調から立ち直れた方法とは?
「つまり、生きたいように生きている」
――ダルビッシュ選手は夏頃から頻繁にYouTubeを公開し大きな話題になりました。そもそもYouTubeにハマったきっかけは何だったんですか?
ダルビッシュ:いや、ハマったわけではないんですよ。野球と一緒で仮説を立てて、「こうすれば人気が出るんじゃないか?」って11月になるまでいろいろと準備してきて。YouTuberの知り合いもいますし、そういう人たちと一緒にゲームをしたりしてコメントが流れている場面や炎上しているところを見ると、「ここをこうしたらもっといいんじゃないか?」という部分がたくさんあるわけです。その過程で自分の中で作り上げてきたものがあり、8月、9月くらいから少しずつ簡単な動画を上げて、途中からあの喋る方針にしたという流れですね。
――コミュニケーションを取りながらすごく進化していくところは、見ていてすごく面白かったです。
ダルビッシュ:それがすごく大事だと思っていました。YouTubeって、動画、タイトル、概要欄、コメント欄とあるわけですよ。せっかく4つあるんだから、4つそれぞれが引き立て合うのが一番良いと思っていて。例えば、動画でどれだけ良いことを言っても、それだけで終わってしまったらもったいないし、4つそれぞれがうまく絡み合うことで一つのストーリーになって、人を呼び込むツールになっていくんじゃないかとずっと思っていたんです。だから、見てもらったらわかりますけど概要欄に変なことを書いてみたり、コメント欄で1コメの企画(※)をやってみたり、そういうことをずっとやっていましたね。
(※YouTubeのコメント欄で最も「1コメ」を取った人にMVP賞を贈る企画)
――やっていく中で、面白いことを思いつくこともあるでしょうが、基本的な構造は事前に準備されていたんですね?
ダルビッシュ:基本的には、最初に考えたとおりのことを進めていきましたね。
――そこまで考えているYouTuberっているんですか?
ダルビッシュ:例えば記者という立場の人が、何も考えずに取材をするってプロとしてあり得ないし、何もできないじゃないですか? それと一緒で、僕もこれに関してはある程度考えないと無理だとわかってました。YouTuberの中にはものすごくゲームがうまい人もいるんですよ。ゲームがうまくて、声も良い。でも視聴数が全然伸びない人もいるわけです。その理由を考えていくと、いろいろとわかってくるじゃないですか。すると、自分に何が必要なのかもわかってきますからね。
――野球でもそうですが、仮説と検証のくり返しやトライアンドエラーの精神が染みついているんですね。
ダルビッシュ:そうですね。トライアンドエラーって、みんななかなかしないじゃないですか? でも自分はします。それも、する量が半端なく多い。だから、他の人よりも少し先に進みやすいんじゃないかと思っています。
――なるほど。その考え方がすべてに通じているんでしょうね。ものすごく納得しました。
ダルビッシュ:野球を続けていく過程で、こういう考え方がビジネスだったりYouTubeだったり、すべてのことに応用できるとずっと自信を持っていたんですね。でも、周りの人たちは「ダルビッシュは野球だから成功している」「他のビジネスをやっても絶対に成功しない」と思っている。だから、そういう人たちに対して、野球であれ何であれ、成功するための原理がわかっていれば、それは応用できると示したいという思いも少しはありますね。
――一方で、YouTubeによってダルビッシュ選手により親しみを持った人はたくさんいただろうし、トップアスリートからダイレクトに話を聞けるなんて、やっぱりYouTubeはすごいなと思いましたね。しかも、すべて編集されて、格好良すぎるガチガチの動画だとテレビ番組を見ているようですけど、ダルビッシュ選手のYouTubeからはリアルな感じがすごく伝わってきますから。
ダルビッシュ:基本的に自分は、「これ言っちゃいけないんじゃないか?」とか、「人に気を遣う」というような、世間一般の常識から外れている部分があると思うんですよね。つまり、生きたいように生きている。でも、世の中には生きたいように生きられない人もすごく多いと思う。だから、自分みたいに自由にやっている人間を見ると、ちょっとすっきりするという感想を持ってくれる人も少なくないと思うんです。コメント欄にもそういうのが結構ありました。だから、それも自分の良い部分なのかなと勝手に思っていますね。
<第3回へ続く>
[第3回]ダルビッシュ有を支える仮説と検証。「1日に5個、6個の仮説を立てて試します」
[第4回]ダルビッシュ有が否定する日本の根性論。「根性論のないアメリカで、なぜ優秀な人材が生まれるのか」
[第1回]ダルビッシュ有が「悪い霊が憑いてるんじゃ」とすら思った不調から立ち直れた方法とは?
[5月独占インタビュー①]ダルビッシュ有が明かす、メディアへの本音「一番求めたいのは、嘘をつかないこと」
[5月独占インタビュー②]ダルビッシュ有が考える、日本野球界の問題「時代遅れの人たちを一掃してからじゃないと、絶対に変わらない」
[5月独占インタビュー③]ダルビッシュ有は、なぜTwitterで議論するのか「賛否両論あるということは、自分らしく生きられてる証拠」
[5月独占インタビュー④]ダルビッシュ有はなぜゲームにハマったのか?「そこまでやりたくない時でも、今はやるようにしてます」
なぜダルビッシュ有は復活を遂げたのか?「お股ニキ」が分析する“さらなる進化”
PROFILE
ダルビッシュ有(ダルビッシュ・ゆう)
1986年生まれ、大阪府出身。MLBシカゴ・カブス所属。東北高校で甲子園に4度出場し、卒業後の2005年に北海道日本ハムファイターズに加入。2006年日本シリーズ優勝、07、09年リーグ優勝に貢献。MVP(07、09年)、沢村賞(07年)、最優秀投手(09年)、ゴールデン・グラブ賞(07、08年)などの個人タイトル受賞。2012年よりMLBに挑戦、13年にシーズン最多奪三振を記録。テキサス・レンジャーズ、ロサンゼルス・ドジャースを経て、現在シカゴ・カブスに所属している。
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