「高体連は生き残れるかどうかの狭間」元流経大柏・本田裕一郎が求める育成年代の“不易流行”

Education
2020.05.13

今季で高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグが創設され、10年目を迎える。Jリーグクラブユース、高体連(全国高等学校体育連盟)、タウンクラブが一体となって競い合うスタイルが他競技にはない文化を作り出した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が延期になっているが、日本サッカー界を下支えしているリーグ戦の意義は図り知れない。この大会の礎を築き、自身も2013年に年間王者を手にした名伯楽・本田裕一郎が、育成年代の変化や今後の進むべき方向性について忌憚のない意見を語った。

(インタビュー・構成=松尾祐希、写真=Getty Images)

高体連は生き残れるかどうかのはざまにある

今から10年以上も前に思案された高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ。その中心的な役割を担っていたのが、現在は国士舘高校サッカー部でテクニカルアドバイザーを務める本田裕一郎だ。林義規と共に礎を築き、現在のレギュレーションを構築する作業に尽力した。また、自身も昨季まで流通経済大学付属柏高校でプレミアリーグを経験し、2013年にチャンピオンシップ(現・ファイナル)を制して年間王者に輝いた実績を持つ。今季から国士舘高校を指導する御年73歳の名伯楽は本大会の意義、そして今後の改革案についてどのように思っているのだろうか。

――プレミアリーグが創設されて、今年で10年目を迎えました。振り返っていただいて、いかがでしょうか。

本田:プレミアリーグの取り組みは、全体的に良かったのではないでしょうか。Jリーグクラブユース、高体連(全国高等学校体育連盟)、タウンクラブが融合し、18歳以下の選手が切磋琢磨できました。しかしながら、十年一昔といったけど、もっと早いスピードで時代が動いている。そろそろ、見直す時期にきていると思います。一時の流行になってはならないし、まさしく不易流行でなくてはなりません。

その上で、国内を見渡した際にスポーツを大きなくくりで見ると、サッカー界は上から下まで1本化されています。他の種目で新リーグが立ち上がったりするけど、それで力を落としてしまう場合は往々にしてありますよね。団体を統一できない事態に陥ってはダメだと思うんです。なぜならば、注目度が分散してしまうからです。新しい大会を開設してお金もかかりますし、移動にかかる負担も少なくありません。今後、同様の動きがサッカー界でも出てきた場合は、考えるべきですね。

プレミアリーグの内容については、最近は高体連も互角以上に戦えるようになりました。特に青森山田(高校)は勢いに乗っていますよね。その刺激をJリーグクラブユースも受けています。ただ、創設して10年経ったので、今後はリーグの在り方を検討する時期にきたのではないでしょうか。特に下からの突き上げがあまりありません。例えば、プリンスリーグ関東に所属する前橋育英(高校)は一度もプレミアリーグに昇格していません。しかも、昇格を賭けたプレーオフの権利を獲得したのにも関わらず、上のディビジョンに参戦できない状況があります。16チームから4チームしか上がれない厳しいレギュレーションなので、見直す必要があるかもしれません。

例えば、プレミアリーグを2部制とか3部制にして、シンプルに下位3チームが降格し、上位3チームが昇格するのも一手ですよね。特に育成年代は3年ごとにメンバーが変わります。そこがJリーグとは異なる点です。つまり、今年強かったチームが来年も強いとは限りません。なので、チームの入れ替わりを多くしていかないとなかなか難しいのではないでしょうか。そこを広げないと、戦力の一極化、二極化が進んでしまう気がしますね。

――下から突き上げられない現状が続いた場合は、どのような弊害が生まれるのでしょうか。

本田:2種(高校生年代)でサッカーを行う場合、有望な選手はJクラブのアカデミーに進む傾向があります。そういう意味で高体連は生き残れるかどうかのはざまにありますよね。Jクラブにも勝つ可能性を秘めた高体連がなかなか上がれていないので、選手の流れが加速することを心配しています。プレミアリーグにクラブ枠、高校枠を創設するのも一つの案かもしれないですね。

「テクニックにこだわってもいい。であれば、勝ちなさい」

――さらにリーグのレベルを向上する上で必要な取り組みはなんでしょうか?

本田:サッカーの内容について、検証があまりできていない気がしています。イングランドが各カテゴリーで世界の最前線に立っていますが、その理由は各地域の指導者講習会がすごく増えて、選手の選び方も細かく見るようになったからなんです。裾野を広げるという意味と、レベルを上げるという意味で、両方がつながっていく仕組みを作るべきだと感じています。

その中で競技の本質が何かを見極めなければなりません。まだ日本のスタイルを確立する段階まではきていませんが、いろんなサッカーがあるべきです。ただ、何となくポゼッションが素晴らしいという風潮があります。美しいサッカーもいいけど、育成年代から本質を見失ってはいけません。技術を生かしたサッカーがあってもいいんです。だけど、すべて型にはめて、同じようなサッカーばかりになってしまうのは問題があると思います。美しいサッカーが評価できる判定勝ちのような制度があればいいのですが、サッカーはそうではないんです。テクニックにこだわってもいい。であれば、勝ちなさいよと。

プレミアリーグに参戦している指導者で技術討論する場は多くありません。年に数回ある会議では、運営の話がメインになっています。勝ち負けにこだわっていけば、当然そのような会議になるはずです。コーチングライセンスの資格を持った人の講習会はあるので、大会を精査する場もより設けるべきです。プレミアリーグに参加する監督が集まって、どういうふうに進めていけばいいかを考えていけばいいんです。

例えば、去年の(全国高校サッカー)選手権(大会)はテクニカルなサッカーが注目されましたが、以前の大会で技術がなかったかというと、そうではありません。判断力も含めると、以前のほうが速くて技術があったかもしれないですから。前に進んでいるのか、後ろに戻っているのかもわからない。であれば、一つの大会が終わった段階で、時間をかけて1週間ぐらい議論する場はあっていいと思います。1試合ずつ検証する研修会があってもいい。育成の子どもたちがどういうふうに変化をしているのか。スピードが上がっているのか、判断力が上がっているのか、技術が高まっているのか。そこを検証するべきです。

そうした議論をしながら、大会運営の方法なども検証していければ、より良いのではないでしょうか。また、U-16世代のリーグを充実させる作業も課題です。現在、(ミズノチャンピオンシップU-16 ルーキーリーグを)全国展開していますが、本当は高体連主催でできるようにしたいんです。高体連管轄になれば、全チームが参加できます。先輩のゲームを見るだけではなく、自チームの順位を確認する日常があれば、子どもたちの成長を促進できるのではないでしょうか。

プレミアリーグの改革についての持論

――ここ数年でプレミアリーグを経験した選手が早い段階で海外に移籍し、代表に招集されるようになりました。そこはどのように見られていますか?

本田:それはプレミアリーグに加えて、各地域の(高円宮杯 JFA U-18サッカー)プリンスリーグ(プレミアリーグの下位リーグ)がうまくいっている恩恵もあるのではないでしょうか。そういう意味ではもっと18歳の年代から選手が育たないといけません。現状に満足せず、もっとやらないといけないんです。どうしたら、世界で戦える選手が台頭してくるか。そこはもっと向き合わないといけないですね。

――10年目で変化をしていくべきだとお話をいただきました。プレミアリーグの改革について、本田先生の持論はありますか?

本田:一つのリーグでできるほど、お金があるわけではありません。J2やJ3を見ても、もっとお金を注ぎ込まないといけない状況があるほどですから。例えば、九州のチームが1試合のために移動すると、コストが非常にかかります。となれば、前述のプレミアリーグを2部制や3部制にする案がベストですが、もっと地域を狭めて3つに分ける案や、プレミアリーグEASTとWESTでそれぞれ2部リーグを作る施策もいいのではないでしょうか。育成年代でそんなに広域でやる必要があるのかは検討するべきかもしれません。海外でも全国リーグを通年でやっている国は多くありません。ユースの全国大会や、高体連のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)、選手権。このような大会があってもいいけど、プレミアリーグなどはレベルを維持できる範囲で、もう少し地域を狭めてやる案もいいかもしれないですね。

――「去年の世代が良くて昇格できたけど、次の年はタレントがいなくて苦しむ」ケースは頻繁にあります。

本田:そうですね。特に高体連のチームはありますよね。Jリーグでは補強がうまくいって上位に食い込む場合もありますが、プレミアリーグの場合は1年から2年ぐらいしか強さを維持できない場合がほとんどです、ごくまれに1年生から試合に出る選手もいるけど、ほとんどの主力は3年生。となれば、1年ごとにメンバーが変わっていくので、そこは何かいい方法を考えないといけないですね。

――本田先生は数年前にドイツに行かれ、勉強されました。リーグ制度以外で日本との違いを感じられる部分はありますか?

本田:最近はドイツに行き、昔は南米にも足を運びました。やはり、育成から海外は違うなと感じさせられました。特に高体連のチームは日本独自の文化でもあります。日本は2種年代だけで4000チームほどあります。U-18年代でこれだけのクラブがある国はないんです。地方では一極化している傾向もありますし、1チームに200名以上選手がいるケースも少なくありません。自分が指導してきたチームはどこも100人以上抱えてきましたが、トレーニングの難しさは出てきます。

もちろん私学は部員確保がビジネスになっているところもありますが、その問題もプレミアリーグのレベル向上とは無関係ではないですし、多少コントロールをしていけば、トレーニングの内容も変わっていくのではないでしょうか。200人、300人がいて、どうやってトレーニングすればいいのかなと。各学年20人前後でやったら、どうなるのか検証してみたいですね。100人をまとめて指導はできませんし、30番目以降の選手でも試合に使っていけば、化ける選手もいます。各大会は登録制なので、制約で埋もれていく選手のピックアップも今後の課題だと思います。

暴れん坊が減り、顔で話している子が増えた

――ただ、日本には高校スポーツの文化があります。そこの改革をするのは難しいところもありますよね。

本田:高校野球の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)が最たる例ですよね。日本には敗者をたたえる文化があり、お涙頂戴の風潮もあります。もちろんそれが悪いわけではないですが、海外ではありえません。国民性なのかもしれませんが、考え方の違いはあるかもしれません。サッカーだけに限らずですが、10年を区切りに考えないといけません。5年ごとに見直していかないといけないですし、10年前の1年生と今の1年生の違いを検証するべきですね。

――その変化を本田先生はどのように捉えられていますか?

本田:異質な気がしていますね。昔は根性がある選手も多かったのですが、今は科学的になって、メンタリティーが変わった。1年生の場合でいうと、技術的にも変わり、大体のチーム戦術ができるようになりました。それぐらいの技術が備わって、間違いなくレベルは上がっています。では、高校3年生で見たときにどうなのか。そこは変わっていないんじゃないかなと。いい選手が出てくる頻度は上がっていますが、ここ数年は変わっていないんですよね。

――あと、やんちゃな子が減りましたよね。

本田:そうですね。みんな真面目。わかりやすく言えば、暴れん坊みたいな選手が少ないんです。そして、数年前と変わっていないのは、周りに意見を言えない子が多い点です。意見を出せないですよね。まだ、顔で話している子が多い。ふてくされて意見を伝えようとする場面が少なくありません。意見を口にできず、表情でくみ取ってくれよという選手。

もちろん昔よりいろいろ変わりましたが、携帯電話の影響が大きい気がするんです。新型コロナウイルスの影響で練習自粛したタイミングで、30人だけ生活習慣をチェックしたんです。睡眠は7時間から8時間。でも、携帯電話を扱う時間は平気で5、6時間あったんです。それ以外でびっくりするようなデータは出なかったのですが、携帯電話の時間だけは驚きましたね。

あとは家族とのコミュニケーション。家族で話す時間があったかどうかを聞いたんです。そうすると、「お母さんから朝起こしてもらった」とか、それも会話に入っていたんです。何かについて語り合ったとか、説教されたとか、将来のこととか、コロナウイルスの話をしたとかではなく、単なる返事まで会話に含まれていました。現代の子どもたちのコミュニケーションに対する認識は考えないといけないですね。

――最後になりますが、改革を進めるために最も重視すべきポイントを教えてください。

本田:まったく何もなかった10年前と比較すれば、間違いなく進歩はしています。結論からすると、プレミアリーグは進化してきたので、そろそろ精査して見直す時期にきているのは間違いありません。なので、改革はスピードを上げてやってほしいですね。

<了>

【連載第1回はこちら】「実力拮抗」高校年代の真価 林義規委員長「日本の育成の象徴」プレミアリーグ改革案とは? 

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PROFILE
本田裕一郎(ほんだ・ゆういちろう)
1947年生まれ、静岡県出身。静岡東高校の2年次にサッカーを始め、順天堂大学に進学。教員免許を取得し、卒業後は市原市教育委員会や五井中学に勤務した。1975年に市原緑高校に赴任し、宮澤ミッシェル氏などを指導。1986年からは習志野高校に移り、1995年には福田健二、広山望らを擁してインターハイを制した。2001年からは流通経済大学付属柏高校の監督となり、2007年には大前元紀らを率いて高校サッカー選手権で初優勝を達成。以降も同校で多くのプロ選手を育て、2013年には高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグで高校勢初となる年間王者を獲得。今年度より国士舘高校で指導を行う。

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