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思わず使いたくなる「キング・カズ」LINEスタンプ 一選手起用に拘ったJリーグの狙いとは?
JリーグLINE公式アカウントは6月30日から友だち追加で「キング・カズ」こと三浦知良選手のオリジナルLINEスタンプのプレゼントキャンペーンを開始した。企業がLINEスタンププレゼントを行うことが一つのプロモーション活動となっている中で今回Jリーグはどのような目的で三浦選手のLINEスタンプを作成したのだろうか? 作成までの秘話とともにJリーグ コミュニケーション・マーケティング本部 今井貴之氏、高田佑平氏に話を聞いた。
(インタビュー・構成=浜田加奈子[REAL SPORTS編集部]、写真=Getty Images、資料提供=Jリーグ)
イレブンミリオン達成後につなげる施策の一つ
――6月30日からJリーグLINE公式アカウントの友だち追加で三浦知良選手のオリジナルLINEスタンプのプレゼントキャンペーンが開始いたしましたが、なぜJリーグ公式で三浦選手のLINEスタンプを作ることになったのでしょうか?
今井:Jリーグはおかげさまで昨年初めて年間総入場者数が累計1100万人を超えました。以前から継続的にファン・サポーターを増やすこと、スタジアムに来場してもらうこと、そしてもっと満足度を高めたいと考えており、2016年から導入した「JリーグID」によって、どのような人が来場しているのか、どのような試合に来場しているのかなどを可視化して、どのような観客層かを知ることで観客層によったイベント企画やメール配信などいろんな顧客満足度を上げられるアプローチができるようになりました。その結果、昨年一つの成果を得ることができました。
来場されているお客さまでJリーグIDを取得している方々はJリーグの社内で定義しているファン層の中でも「ミドル層」、「ヘビー層」、「コア層」の方々には継続的にPDCAをまわしてアプローチできはじめています。なので、次はJリーグにあまり関心がない「無関心層」、昔観戦したことはあるが最近はJリーグ観戦をしていない「関心層」といった、ライト層よりも少しJリーグに離れた方々に少しでもJリーグに触れてほしい、Jリーグのファンの裾野を広げたいと考えています。そこで今回、多くの方が利用しているLINEで無関心層、関心層にもアプローチするため三浦選手のLINEスタンプを作成しました。
――Jリーグ25周年の時に作成された時はJリーグ公式マスコット「Jリーグキング」のLINEスタンプでしたが、今回は無関心層、関心層でも名前は知っているであろう三浦選手を起用することでファン層の裾野を広げる狙いということですね。
今井:そうですね。特に“Jリーグご無沙汰”、“Jリーグから離れている”といった方々にも伝わるであろう三浦選手でLINEスタンプを作成しました。
スタンプデザインは使いやすい、使いたくなるデザインを厳選
――三浦選手はこのLINEスタンプ作成にあたってどのような反応でしたか?
高田:三浦選手サイドに今回のLINEスタンプ作成について話した際は、最初は「何でカズなの?」というような反応でした。今回のターゲット層である無関心層、関心層に属する幅広い世代でも三浦選手の認知度は高いこと、そしてLINEも幅広い世代が多く使用しているので、Jリーグの裾野を広げるためには三浦選手が適していることを説明し、ご了承いただいたかたちになります。
――LINEスタンプ作成の企画はいつ頃からスタートしたのでしょうか?
高田:三浦選手サイドに企画案を出したのは1月末頃ですね。
――1月末からLINEスタンプ企画、作成がスタートしたので、新型コロナウイルスに関連するスタンプ「手洗った?」はその頃は想定していなかったデザインだったと思います。スタンプデザインは結構最近になって固まったのでしょうか?
高田:スタンプデザインは決めていましたが、新型コロナウイルスの影響を受けてLINEさまにご協力いただき一部差し換えて入稿させていただきました。
――スタンプデザインはどのように決まったのでしょうか?
高田:三浦選手サイドにサンプル50点ほどを提案し、その中で三浦選手サイドと相談の上、徐々に絞り込んでいきました。スタンプを絞り込んでいく中で三浦選手独自のスタンプもあったほうがいいという話になり、「BOA SORTE(ポルトガル語でグッドラックの意)」など三浦選手の名言を入れつつ、一般的に使いやすい用語との調整を行いました。
――厳選されていき幅広い世代でも使用できるデザインが揃ったんですね。
高田:オーソドックスなデザインに加え、若い世代が使用しやすいデザイン、三浦選手のイメージに合ったデザイン。それら3つを組み合わせて少しでもユーザーが使いやすい、使いたくなるデザインにしました。
――SNSなどで三浦選手と「ぴえん」はイメージが結びつかないといった反応もありましたが、三浦選手サイドはどのような反応でしたか?
高田:「ぴえん」とはどういう意味か質問されたので、若い世代で流行っている言葉であることを説明し、ご理解をいただきデザインとして採用いたしました。
――LINEスタンプ作成の際に苦労したことなどはありましたか?
高田:三浦知良選手らしさをいかにスタンプで表現するかというところは苦労したというよりも、こだわった部分ですね。三浦選手らしさとスタンプとして使いやすいデザインをいいあんばいにするのが難しかったので、デザイン選びは一番時間をかけました。
――お互いに入れたいデザインについてはいいあんばいを考えながら行ったため特に問題なく決まっていきましたか?
高田:そうですね。常にコミュニケーション取らせていただいて、三浦選手サイドと一緒に楽しみながら行えたのは良かったかと思います。
――新型コロナウイルスの影響で直接会って打ち合せが行えなかったと思いますが、どのようにコミュニケーションをとっていましたか?
高田:LINEスタンプのイメージ参考にもなるので、スタンプデザインのサンプルをLINEで送ったあとに電話でコミュニケーションをとる形が多かったです。あと、入稿までの時間などもギリギリだったので、電話、LINEのほうがすぐに確認ができたので良かったですね。
一人でも多くの人にJリーグを好きになってほしい
――LINEスタンプのプレゼントキャンペーンが開始してから1週間ほど経ちましたが、ファン・サポーターなどからの反応はどうですか?(編集注:7月7日にインタビュー実施)
今井:無料ということもあり多くの方から使いやすいといったいい評判、反応をいただき、SNSなどでも使いやすいことについて発信してくれているユーザーもいたので狙い通りになったかと思います。
――無関心層、関心層を含めて幅広い層に刺さり、目標達成しましたか?
今井:そうですね。おかげさまでJリーグLINE公式アカウントの友だちも、キャンペーン開始から1週間で100万人近くは伸びているので期待以上ですね。
――順調にLINEの友だち追加者が増えたことによって何か次のプロモーションなどにも生かせそうですね。
今井:今回の三浦選手のLINEスタンプを取得したことによって、少しでもJリーグを身近に感じてもらえればと。そして今回、友だち追加でつながった方々の中で一人でも多くの方が公式アカウントより発信しているJリーグの情報によって試合観戦をしたり、クラブや選手を知ってもらったりとJリーグに関心を持っていただくきっかけになればいいなと思います。
――ではJリーグLINE公式アカウントはライト層でも興味を引く情報を発信していくのでしょうか?
高田:他のSNSはプル型が多いのでこちらが知ってほしい、見てほしいと思っていてもユーザー側から検索をしてもらわないと接点が持てないですが、LINEは友だちとなっていただいたユーザーにプッシュ型でアプローチができるのがいい点だと思っています。
なので、今回の友だちになったユーザーに、どうJリーグを好きになってもらうかというのが重要だと思いますので、PDCAを回しながらその人たちに対して適切な情報、コンテンツを出していけるように考えたいと思います。
今井:JリーグLINE公式アカウントの情報からJリーグを知ってもらいゆくゆくはJリーグIDを取得していただいたり、スタジアムに足を運んでもらいファンになっていただければと思います。
厳しい現状の中でもJリーグとして行えることを行う
――LINEスタンプに三浦選手を起用した理由としては幅広い世代にも認知度があるからとのことでしたが、Jリーグにとって三浦選手はどういう存在ですか?
今井:難しい質問ですね。Jリーグにとって……日本サッカー界にとってと言ってもいいかもしれないですが、特別なシンボリックな存在だと思いますね。
――他の選手とは違うレジェンドのような存在なのでJリーグ公式として一選手単独のLINEスタンプを作成しても、ファン・サポーターも納得してくれる可能性が高いですよね。
高田:そうですね。確かにおっしゃるとおり、通常であれば1人の選手のLINEスタンプをリーグが作成することはしないです。ただ今回のLINEスタンププレゼントキャンペーンが開始してからわれわれが確認した中では「何でカズさんだけなの?」といったネガティブなユーザーの反応はなかったです。
三浦選手の存在についてはJリーグの回答というより世間一般的な回答になると思いますが、三浦選手の存在はレジェンドのような存在なので「カズさんだったらJリーグ公式でもありえるよね」といった感じになるかなと。
今井:われわれもニュースリリースで「キング・カズ」の愛称も入れて案内していますからね(笑)。
――三浦選手の所属する横浜FCが三浦選手のLINEスタンプを無料または有料で作成することも可能だったと思いますが、先にJリーグがLINEスタンプを作成したことについてどのような反応でしたか?
高田:Jリーグ公式LINEアカウントで三浦選手のスタンプ企画が立ち上がった時に、事前に横浜FCのほうにお話させていただきました。今回のキャンペーンを行うことによりJリーグのファンベースが広がり、そこから各クラブのファンにつながるということに、ご理解をいただいて今回ご快諾いただきました。
――今回、三浦選手のLINEスタンプを作成したことによってファン層の裾野を広げるためのきっかけになったかと思いますが、今後JリーグLINE公式アカウントで行いたい取り組みなどはありますか?
今井:新型コロナウイルスがまだ収束していない状況なので、まずは今、期待していただいているファン・サポーターの皆さまに対して安心・安全を第一に試合運営をしていくことが大事だと思っています。この厳しい状況の中でも裾野を広げていくことがJリーグの発展にもつながっていくと思うのでさまざまな施策を打ち出していき、ファン・サポーターの皆さまに喜んでいただけるようなコンテンツを出していきたいです。
なので、まずは新型コロナウイルスに対して感染予防対策をしっかりと取り組んだ上でLINEのプラットフォームに特にこだわることなく、引き続き行えることは行っていきたいと思います。
――新型コロナウイルスが収束していない今、Jリーグのメディアとして、行うべきこととは?
高田:Jリーグのメディアとして、Jリーグをもっと好きになっていただくことをコンセプトにオウンドメディアの運用を行っており、Jリーグのすべきことは何か、というのは日々考えています。Jリーグの情報をしっかり出すという、普通の一メディア的な要素もありますし、SNSではそれぞれの媒体に合うコンテンツの発信を行っています。
今井:あとは直近ですと、自宅での観戦の楽しみ方もお伝えしていきたいですし、今後も入場制限が続く可能性もある中で安心してスタジアムにご来場いただける対策なども併せてお伝えしていくことも含めてJリーグを楽しむことができる要素かと思いますので、そこを大事に行っていきたいですね。
<了>
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PROFILE
今井貴之(いまい・たかゆき)
公益社団法人日本プロサッカーリーグ コミュニケーション・マーケティング本部 マーケティング部 マーケティング担当オフィサー
2017年12月Jリーグデジタルに入社。2020年1月より公益社団法人日本プロサッカーリーグに所属。主にマーケティング領域、またJリーグ共通マーケティングプラットフォームの戦略立案・活用推進領域を担当。
高田佑平(たかだ・ゆうへい)
公益社団法人日本プロサッカーリーグ コミュニケーション・マーケティング本部 コミュニケーション部 デジタルコミュニケーショングループ(兼)マーケティング部 集客・視聴推進グループ
2017年7月Jリーグメディアプロモーション((兼)Jリーグデジタル)に入社。
2020年1月より公益社団法人日本プロサッカーリーグに所属。主にオウンドメディア、プロモーションの戦略立案・運用推進領域を担当。
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