小林祐希、カタールの地で目指すW杯「まだ俺にだってチャンスはある」。ベルギー戦の敗因を…

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2021.04.06

昨年より中東カタールの地でプレーする小林祐希。FIFAワールドカップに出場するために必要なステップアップを思い描き、常に日本と世界トップレベルの差を意識しながらトレーニングに励む日々を送っている。客観的に日本代表の現在と未来を見つめ、「まだまだ俺にだってチャンスはある」と語る、その心のうちに迫る。

(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=橋本涼太)

手取り1500万だと選手としてのクオリティーが保てない

――新型コロナウイルス感染症の影響を受けて欧州クラブが経営的に厳しい状況に置かれ始めています。このコロナ禍で小林選手の思い描くプランは変化を強いられましたか?

小林:別に新型コロナウイルスで変わったということもないですね。これまでずっと、できるだけ代表に近づけるようにとやってきました。

 カタールへの移籍は、2022年ワールドカップの開催地というのが大きかったんですけど、日本代表に選ばれるためにはカタールの上位2チーム、アル・サッドかアル・ドゥハイルでプレーして、優勝争いをしたり、AFCチャンピオンズリーグに出場しないことには難しいかなと考えています。(※編集注:小林選手が所属するアル・ホールは4月3日時点で12チーム中11位)

――日本代表に選出されて2022年のワールドカップに出場するためには、それまでにカタールの上位2チームで活躍するくらいのステップアップが必要なわけですね。

小林:あとは例えばアメリカやメキシコなど、ヨーロッパの主要リーグではないけれど、FIFAクラブワールドカップに出るようなチーム。どちらのリーグのクラブも強豪チームは資金的にも充実しているので、そういったクラブでしっかり給料をもらって代表に選ばれる可能性を探る選択肢も考えられます。

 今でもベルギーとかスペイン2部のクラブで、2000万〜3000万もらいながらプレーするチームは探せば見つかると思います。でもそれって手取りだと1500万ほどになり、食事のクオリティー、トレーニングのクオリティー、サッカーの練習環境など全部レベルを落とさなければいけないことになります。マッサージとか体のケアが必要となった時に日本からトレーナーを呼んで、食事が重要だからシェフを雇ってとなった時に、1円もお金が残らないですよ。それって選手としてどうなの?と考えた時に、やはりお金って評価だから、一番高い評価をしてくれるところに行きたいなというのを2年前ぐらいから考えていました。そのタイミングでカタールのチームからオファーがきたので、チャレンジすることに決めました。

「あんな舞台で足がガクガク震えた状態でプレーしてみたい」

――今はカタールの中でのステップアップも考えているし、その先、アメリカやメキシコでプレーすることも視野に入れているということですね。

小林:もちろん良いオファーがあればヨーロッパでプレーすることも視野に入れています。カタールから直接スペイン1部はなかなか難しいかもしれないですが、例えばドイツ、フランス、イタリア、オランダあたりですかね。いま日本代表で活躍しているボランチの選手たちも、(柴崎)岳がスペイン2部(レガネス)で、(遠藤)航はドイツのシュトゥットガルトでプレーしています。あとは中山(雄太)くんがオランダのズヴォレで、橋本(拳人)もロシア(ロストフ)でやっています。スペインやイングランドの強豪クラブでプレーしていなければ日本代表に入れないとは考えていないので。

――ヨーロッパのクラブといっても必ずしもスペインやイングランドの1部リーグのチームにこだわる必要はないわけですね。

小林:はい。まだまだ俺にだってチャンスはあると思っています。カタールのクラブでリーグ優勝して、クラブワールドカップに出場する道もあるかもしれません。そこを目指すか、北中米を視野に入れるか、ヨーロッパに戻るか。ワールドカップに少しでも近づけるように考えながらやっていこうとは思っています。

――日本代表でワールドカップにというのは、自身が描くプランにおいて一番プライオリティーが高いのですか?

小林:夢ですよね。あんな舞台で足がガクガク震えた状態でプレーしてみたいんですよ。代表に選ばれて試合に出られた時ももちろんうれしかったですし、気持ちは高ぶりましたけど、やっぱりワールドカップのような舞台で、「勝たなかったら終わり」という試合でプレーしてみたいですよね。

日本代表がベルギーに敗れた要因

――YouTubeで積極的にトレーニング論に関する動画を公開されています。その中で「日本代表がロシアワールドカップでベルギーに負けた時、残り1分、最後60〜80mのスプリントで負けて失点した。そこでフルパワーを出すためのトレーニングに取り組んでいる」というお話がとても興味深かったです。そこに日本と世界トップクラスとの差を感じ、そこを目標にトレーニングしているということでしょうか?

小林:今、データでいろいろ見られる時代じゃないですか。試合中に全然目立っていない選手でも、あとからスタッツを見て「13km走ってる、スプリントは40回やってる」となると、チームにとって欠かせない選手なんだなと判断してもらえるわけです。強いチームはなんで強いのか、いい選手はどこでパワーを使っているのか、そういうデータを集めて、自分なりに考えてトレーニングに反映させています。

 自分一人の力では無理ですが、その分野の専門家の意見を聞きながら個人のデータと練習や試合のデータとを組み合わせて分析し、それを受けてトレーニングメニューを作っていく作業はヨーロッパに行ってからずっとやっています。「このポジションでこういうふうにしたい時は、どの数字を伸ばしていくべきなのか」「どういう時が自分はコンディションが良くて、どういう時がコンディションが悪いのか」などをひも解いて、「じゃあ、こういうトレーニングをしよう」と。

 その延長線上で、日本と世界トップクラスとの差がどこにあって、日本はこういうサッカースタイルで、その中で自分が生きるためにはどういうところを伸ばしたらいいのかというのも考えながらやっていますね。

韓国代表が語る「日本人のフィジカル」

――よく言われる「日本人はフィジカルが弱い」という指摘に対してはどのように考えていますか?

小林:ちょうど最近のリーグ戦後に韓国代表のチョン・ウヨンとそのテーマについて話しました。ジュビロ磐田やヴィッセル神戸でプレーした選手で、Jリーグから一度中国リーグに行ってから神戸に戻って、今はカタールのアル・サッドでプレーしています。彼が中国でプレーしたあと日本に戻った時に、「日本ってやっぱりフィジカル弱いな」と思ったらしいんですよ。

――アジアの各国リーグでプレーしているだけでなく、韓国代表として五輪やワールドカップも経験している選手の生の声ですね。

小林:彼が中国リーグでプレーしていた時にセンターバックを任されていたそうなんです。そうすると対峙(たいじ)する相手選手がフッキとか(カルロス・)テベスのような選手だったわけです。それがJリーグに戻ってきて対峙する相手が日本人選手になったらフィジカルの部分でめちゃくちゃ楽に感じたと。「でも、サッカーの試合で最後に勝ち負けを決めるところはフィジカルじゃないか?」とのことでした。「日本人選手って技術は高いけどフィジカルでは劣るよね。どんなに技術があっても、フィジカルで圧倒されてそれが出せなかったら意味がなくない?」と。俺もその意見には賛成です。フィジカルはボールを持っていなくても出せるものなので。

 技術がある選手は、その技術に頼ってしまうところがあると思うのですが、世界のトップクラスで戦うためには、その技術のある選手がフィジカルも世界レベルに持っていかないといけないわけです。うまい選手がボール持ってないところでどれだけ走れるか。相手のうまい選手をつぶしに行けるか。日本のうまい選手がさらにトップスピードとかトップフィジカルの中で自分の技術を生かしていければ、日本は世界レベルでも全然やっていけると思います。

「意外といいやつじゃん」と思われるのは嫌い

――今回はオークションサイト「HATTRICK」のチャリティーオークションにスパイクを提供されるとのことですが、現在のスパイクのブランドは?

小林:今はBMZ社の「蹴王」を履いています。めちゃくちゃいいですよ。

――スパイクはサッカー選手にとってある意味唯一の武器です。

小林:足に合っていれば俺はメーカーとかはなんでもいいし、色とかにもこだわりはないです。本当ははだしでいるのが一番気持ちいいわけじゃないですか。だから履いていて締めつけられたり、変な違和感がない、はだしでいる感覚に近いシューズが好きですね。

――小林選手のチャリティーに対する考え方は?

小林:お金に余裕がある人が困っている人に支援をするのは当然のことだと思うので、俺は機会があると、その都度参加するようにしています。ただ、俺はそれを表に出すのが嫌いなんです。だから基本的には「公開はしないでください」と伝えています。

――なぜ出したくないのですか?

小林:周りからいい人だと思われるために寄付しているわけじゃないので。ただ純粋に困っている人がいたら助けたいという思いだけなので。お金がなくて水が買えないとか、震災で寝る場所がないとか、それに対してお金が必要なんだったら、それに対して自分にできることがあれば協力したいじゃないですか。それでいちいち「あ、小林祐希、そんなのやってんだ。意外といいやつじゃん」みたいに思われるのが嫌なだけです。

――欧米では、お金を持っている人が寄付するのは当たり前という文化が根づいていますよね。

小林:日本でもそういう部分はすごく重要だと思いますし、そういった活動にいち早く動けるスポーツ団体や、アスリートは必要です。今後もどんどん積極的に動いていくべきだと思います。

<了>

“アスリートとスポーツの可能性を最大化する”というビジョンを掲げるデュアルキャリア株式会社が運営する「HTTRICK(ハットトリック)」と、アスリートの“リアル”を伝えることを使命としたメディア「REAL SPORTS(リアルスポーツ)」との連動企画として、【REAL SPORTS × HATTRICK チャリティーオークション】を開催。

REAL SPORTS × HATTRICK チャリティーオークション公式ページは【こちら】

PROFILE
小林祐希(こばやし・ゆうき)
1992年4月24日生まれ、東京都出身。カタールのアル・ホール所属。ポジションはミッドフィルダー。東京ヴェルディ下部組織を経て、2011年にトップチーム昇格。1年目から中心選手として存在感を発揮し、2012年にジュビロ磐田に移籍。2016年にオランダ1部のヘーレンフェーンに移籍。2019年9月にベルギー1部のワースラント=ベフェレンに移籍して背番号10を背負い、2020年9月にカタール・スターズリーグのアル・ホールへ新天地を求めた。

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