ザスパクサツ群馬がJ2初の「共創DAO」に挑戦。「アイデアを共有し、サポーターの思いを実現するプラットフォームに」

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2023.09.11

ザスパクサツ群馬が、株式会社フィナンシェとともに、新しいプロジェクトを立ち上げた。その名も「ザスパ共創DAO」。日本では初のスポーツDAOに挑戦したアビスパ福岡に続き、J2では初の試みとなる。プロジェクト発足の背景や、今年1月に発表したリブランディングとの相乗効果、また、クラブのトップ自らが参加する強みとは? REAL SPORTS編集長で南葛SC(関東リーグ1部)代表取締役専務兼GMを務める岩本義弘が、今年2月にザスパクサツ群馬の代表取締役に再任した赤堀洋社長と、ザスパクサツ群馬営業部長の藤田耕一氏に話を聞いた。

(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、写真提供=ザスパクサツ群馬)

「より価値のあるクラブに」。ザスパ共創DAO発足への道のり

――まず、今回ザスパクサツ群馬さんが実施されている「ザスパ共創DAO」について、プロジェクトをスタートした背景を教えてください。

赤堀:一昨年にFiNANCiEさんとトークン発行型のコミュニティーで協業させていただいたのですが、クラブ側の事情があってあまり進んでいませんでした。トークンの保有者の方からも「新しい提案とかアクティビティーが少ない」という話を伺ったので、私が今年2月に代表取締役の立場になってから取り組みを見直そうということで、営業部長の藤田中心にプロジェクトを組み、FiNANCiEさんからDAOという共創型の新しいスキームをご提案いただきました。DAOは、参加していただく皆さんと一緒につくり上げていくので、互いの当事者意識が醸成される良さがあると感じて、プロジェクトをスタートしました。

 われわれとしてはアビスパ福岡さんの事例も大きな後押しになりました。参加する意義を今までにない形で感じられるところが、非常に面白いと感じたんです。

――僕も南葛SCのGMとして経営に携わっていまして、FiNANCiEを始めて3年目になるのですが、とても面白いプロジェクトだと感じています。アビスパ福岡の川森敬史社長もそうですが、親会社の幹部である赤堀さんが全面的に関わることで継続的に取り組めるところが成功のポイントではないかと思います。その点はどのように感じられますか?

赤堀:おっしゃるとおりで、参加する方からお預かりしているものがある以上、継続してリターンもしっかり提供できるようにしていきたい思いがあります。

 定期的にトークン保有者のコアサポーターの方々とお話をさせていただくことがあるんですが、彼らから聞くのは、一番期待しているのは投資のリターンではなくて、参加することで自分たちの意見やアイデアが共有されて実現していくことのほうがうれしい、と。そこにコアサポーターさんならでの思いを感じました。今まで、それを実現するプラットフォームはありそうでなかったですから。

――トライ・アンド・エラーでいろいろなことにチャレンジしていくというのは、赤堀社長がご自身のキャリアの中でもずっと心掛けてきたことなんでしょうか。

赤堀:そうですね。「これは面白そうだ」という感覚は大切にしていて、そこから人類は進化してきたと思っています。DAOもまさに、そういう魅力を最初に感じたことからスタートしています。

――クラブ経営の難しさを考えると、短期的には大変なことも多いと思います。このプロジェクトを始める判断をするのに時間はかからなかったんですか?

赤堀:ええ。事業規模を考えればわれわれは失うものも大きくないクラブですので、むしろ他のクラブよりも先に取り組むことで価値を高めていきたい。こういうことは中途半端にやると失敗すると思うんですよ。やるならやるし、やらないなら最初からやらない。今は船がすでに出発してしまったので、もう漕ぎまくるしかないのかなと。

リブランディング、そして「共創」へ

――ザスパクサツ群馬は今年1月にクラブ創立20周年の節目でリブランディングのプランを発表しました。その狙いと、DAOとの相乗効果について教えていただけますか?

赤堀:20年先を見据えて、このままでいいのか? よくないとすれば、どう変えていったらいいのか?というところからスタートしています。今の子どもたちが大人になったときにどう思うか。それをサポーターの皆さんともずっと話してきましたし、クラブの方針を決定して、具体案を皆さんと共有した上で、もちろんネガティブな意見や反対意見にも全部目を通した上で公表し、最適な形に持っていく作業をこの半年間続けてきました。DAOはそういうコミュニケーションのプラットフォームにもなると思っています。

――改めて、今回のプロジェクトの「共創」に込めた思いを聞かせていただけますか?

赤堀:やはり応援してくださる方々と同じ目的を持って進んでいくことです。例えば、ザスパという地域のサッカークラブをどうしていきたいか。よりよいものにしたいのは当たり前ですし、より価値のあるクラブにしていきたいという思いはおそらく一緒だと思うんですよ。

 そういった思いを、具体的なアクティビティーとして落とし込んで、実行して、それによって価値が上がり、リターンにつながる流れを、実際に「共創」という形でつくっていきたい。そのためのプラットフォームがあるのとないのとでは、実現する可能性が全然違ってくると思っています。「一緒にやりましょう」と言っても、同じ目線で見られなかったり、全然違う世界を見ていたり、ということが往々にしてあるんですけども、このような共有のプラットフォームを使うことで、情報が「見える化」できるし、アクションに対する成果も共有できる。このDAOにはそういう仕組みが備わっているので、「共創」という言葉がフィットすると思います。

クラブとサポーターによる相乗効果

――2021年に最初に始めたFiNANCiEのコミュニティーから共創DAOへ、具体的には何が変わるのでしょうか?

赤堀:参加する方々のコミットの度合いは大きく変わると思います。トークンも、いろいろなイベントと結びついて参加型の展開はしていたんですけど、なかなか浸透しなかったという反省がありました。共創DAOになったことで、参加することによって生まれるものや、それが良い方向に変わっていく過程が見えることは、これまでとの違いだと思います。トークンはその入口だったと思いますし、それが正常に進化したのがこのDAOだと捉えています。

藤田:一次ファンディングでトークンを販売したときも、ファンクラブとザスパトークンホルダーになることの違いや、ステークホルダーの中でのトークンホルダーのあり方は、クラブから明確なものを提示できていませんでした。今回、共創DAOという枠組みに変えたことで、明確なプロジェクトを掲げて、みんなで意見を出し合いながら達成に向けて動いていけるスキームになりました。今後は具体的なプロジェクトを動かしながら、絵を見せていきたいと思っています。

――ファン・サポーターの方は、長くファンクラブに入っていて毎年のようにグッズを買っても、その積み上げは目に見えるものではなかったじゃないですか。FiNANCiEはそこがブロックチェーンで保障されていると説明すると「それはいいかも」と言われることがあります。それも「見える化」される部分ですよね。

赤堀:まさにそうですね。価値を共有するという意味でも、DAOに参加する方が価値を見出すという意味でも、「見える化」というのは最初の一歩目だと思うんですよね。その次に、共創の価値を共有すること。究極は、自動的に仕組みが回り出してリターンが生まれて参加者の方がみんなハッピーになるというオートマティゼーション。夢物語ではなく、そういう新しい世界が本当に実現できるんじゃないかなと期待しています。

――ファン・サポーター以外にはどういう方々を「共創」のパートナーとしてイメージされているんでしょうか?

赤堀:ゆくゆくは行政や自治体、企業や学校など、地域のいろいろなステークホルダーも巻き込んでいきたいと思っています。また、こういう活動をしているということをしっかりとプロモーションしていくことで、参加している方のやりがいにつながると思いますので、メディアの力も不可欠だと思います。

――逆に、クラブにとってはどのようなメリットがあると考えていますか?

赤堀:一つはファンやサポーターの方々と、これまでとは違った形でつながれる新しいスキームを提供できることですね。

――クラブに愛着を持ってトークンを買ってくれて、ポジティブにコミュニティーに参加してくれている人が見える化することによって、そういうファンやサポーターの声をちゃんと聞けるようになるところもありますよね。

赤堀:今までは、クラブに貢献してくださっている方々の貢献をはかる尺度はあいまいでしたが、それが参加している方にも見えるという意味では画期的なことなんじゃないかと思います。ヨーロッパではソシオ制度などがありますけど、ゆくゆくはそういう、クラブ側がオーソライズした権利のような形にも発展できると思っていますし、いろんな可能性がありますよね。

「新しい仕組みだからこそ、理解してもらうのに手間と時間をかける必要がある」

――FiNANCiEのトークンやDAOについて聞かれることも多いと思います。デジタルのリテラシーも必要になるので、説明が難しいところもありますよね。藤田さんはいろいろな方にその説明をされていると思いますが、いかがですか?

藤田:今は個人や法人に対して、その話を毎日しているのですが、最初は皆さん「ぽかん」という形で、3回目ぐらいでようやく理解していただく感じですね。これまでに説明会も2回やらせていただいて、その後は個別に対応させていただいています。

赤堀:ある法人の経営者の方は、「投資のプラットフォームなんでしょう?」とおっしゃっていました。「投資ではなく価値共創のプラットフォームですよ」と言うと、「それってどういうこと?」と聞かれ、話を深掘りしていくと、ようやく深いところで理解してもらえますね。新しい仕組みだからこそ、理解してもらうまではそのように手間と時間をかける必要があるのかなと思います。

――基本的な参加方法などはどのように説明されているんですか?

藤田:参加方法は、まず、FiNANCiEのアプリをダウンロードしてトークンを買っていただくという形です。9月にホーム戦が2試合あるのですが、そこではFiNANCiEさんにも協力いただいて試合会場でブースを出して、プレゼントキャンペーンと説明会を行って、そこで入会していただくという計画を立てています。

――FiNANCiEさんの協力の下で、その場で教えてもらったほうがわかりやすいですよね。

藤田:ええ。トークンの販売自体は2年前から始めているので、認知度はコアサポーター内でもあるんです。既に相応のトークンを持っている方々は共創DAOに参加する権利をお持ちなのですが、既存のトークンホルダーの中では、まったく別物というふうに捉えられていた面もあります。そういう部分は、試合会場などで伝えていかないといけないなと思っています。

連載後編はこちら】J1昇格への道は“DAO”から。ザスパクサツ群馬が掲げる「Road to J1プロジェクト」とは?

<了>

「ザスパ共創DAO」について詳しくはこちら

[PROFILE]
赤堀洋(あかぼり・ひろし)
1969年6月2日生まれ、群馬県出身。ザスパクサツ群馬代表取締役社長。1992 年明治大学を卒業後、サッポロビール、ジュピターショップチャンネル勤務を経て、2004 年ソフトバンクBB(現ソフトバンク)へ。パートナー営業本部長、法人事業開発本部長、関連会社SBアド社長、Aeris Japan COOなどを歴任。2019年9月より株式会社カインズの新規事業開発部長。2020年3月株式会社ザスパ取締役を兼務し、11月に代表取締役社長に就任。2022年1月に退任後、2023年2月より再任。

[PROFILE]
藤田耕一(ふじた・こういち)
1983年4月19日生まれ、群馬県出身。ザスパクサツ群馬営業部長。國學院大学を卒業後、リクルート、JAPANサッカーカレッジ、Bリーグの新潟アルビレックスBB、タニタヘルスリンクを経て、2022年から現職。並行して、ヘルスケア法人の代表、アスリートフードマイスター社長室も務めている。

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