なぜアビスパ福岡は“日本初のスポーツDAO”に挑戦するのか? 「チームに恥ずかしくないアクションを」

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2023.03.31

アビスパ福岡は、2021年8月にトークン発行型クラウドファンディング「FiNANCiE(フィナンシェ)」を活用したアビスパトークンプロジェクトをスタート。J1で3年目を迎える今シーズンは更なる高みを目指し、株式会社フィナンシェとともに日本初の「スポーツDAO」を開始。「Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO(以下、アビスパDAO)」では、クラブのビジョンに賛同するトークンホルダーがさまざまなプロジェクトを推進していくことを目指し、運営にはアビスパ福岡社長の川森敬史氏自らが携わり、選手たちも自らの意思で参加。スポーツ界で初めてこのプロジェクトに乗り出した理由や、ファン・サポーター目線でトークンやDAOを活用することのメリットはどこにあるのか。REAL SPORTS編集長で南葛SC(関東リーグ1部)代表取締役専務兼GMの岩本義弘が、川森社長と、アビスパ福岡マーケット開発部の平田剛久氏に話を聞いた。

(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、写真提供=アビスパ福岡)※写真は左から川森敬史氏、平田剛久氏

スポーツ界初!「アビスパDAO」とは?

――アビスパ福岡が実施するアビスパDAOは、ブロックチェーン(※1)を活用したトークン(※2)発行型のクラウドファンディングサービス「FiNANCiE(フィナンシェ)」での新しい取り組みで、「プロスポーツ初のコミュニティー」とも言われています。改めて、このプロジェクトについて説明していただけますか?

(※1)過去から現在に至るまで、誰が・いつ・いくらで売買したかなど取引の履歴が暗号技術によって数珠つなぎのように記録されることにとにより、データの破壊や改ざんを極めて難しくしたデジタルテクノロジー

(※2)FiNANCiEにおけるトークンとは、クラブとサポーターを繋ぐ証となる『デジタル上のアイテム』。ポイントのように数量を持つもので、需要に応じてその価値(=価格)が変動するという特徴を持つ

川森:今回Web3(※1)を用いたアビスパDAOをスタートした背景としては、「スポーツ界で初のチャレンジだから」というモチベーションがあったわけではないんです。DAO(※2)というプラットフォームについて話を聞いたときに、「スポーツと組み合わせることでうまくいきそうだな」という感触をクラブ内で共有したことがきっかけです。株式会社フィナンシェ代表取締役CEOの國光宏尚さんはこういう面では日本でトップランナーといえる方なので、いろいろ教えていただきながらプロジェクトを一緒にスタートしました。

(※1)ブロックチェーン技術を活用した新しい分散型のWeb世界

(※2)Decentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)の略。中央集権的なリーダーが不在で、参加するメンバー同士が平等な立場で意思決定を行う組織。目標達成に向けて参加者が協力し合って管理・運営を行う組織モデルで、Web3における重要な概念となっている

平田:アビスパDAOに参加するには、4月10日まで行っている第3回目のファンディングにおいてトークンをご購入いただきます。購入者には、DAOメンバーの証となる「MEMBERSHIP NFT(※)」が配布されます。2021年からFiNANCiEのプロジェクトをスタートして、一定数以上のトークンをお持ちの方は、そのままDAOのほうにも入っていただいています。

 今年のクラブのテーマが「共創」ということで、「Web3×スポーツの力で福岡から世界に広がるイノベーションモデルを共創する」というビジョンを掲げています。DAOを活用することで新たに興味を持っていただいたり、法人様向けのプランも作っているので、そういった新しいトークンホルダーをどんどん募集しています。

(※)Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略。ブロックチェーンの技術を活用することで、複製が容易だった画像や動画などデジタルデータの唯一無二性を証明することができる

「チームに恥ずかしくないメンタルとアクションを示していく」

――僕も南葛SCの経営に携わっているので常にアンテナを張っていますが、J1クラブのアビスパさんがこういうプロジェクトに積極的に取り組んでいることに感銘を受けます。先日、サッカー関係者から「アビスパのDAOが面白い」という話を聞いて、僕もその場でメンバーになりました。

川森:ありがとうございます。僕たちも地域リーグの皆さんと変わらないぐらいの必死さを持ってやっています。それは強化の現場も、事業スタッフも同じです。チームには「球際で強く行け!」とか、「最後まで走り切れ!」とか、「アグレッシブに行け!」とか言うんですけど、事業スタッフに矢印を向けて、僕たちがどれだけアグレッシブに必死で事業をやっているのかというふうに見たときに、まずはチームに恥ずかしくないメンタルとアクションを示していくことが大事だと思っています。

――現場の頑張りも、ギアを上げていくモチベーションになっているんですね。

川森:ピッチの上で選手たちは体を張って戦ってくれていて、チームの成績に関しては監督が責任を持つわけじゃないですか。うちは去年、2カ月ぐらい勝てない時期があって、その時期に、声出しが禁止されているエリアで一人のサポーターから怒号のような野次が飛んだんです。その時に、長谷部茂利監督が飛び出して行って、「選手にそういう言葉を向けないでほしい」と表現したんです。強化部長がすぐ止めに入ったんですけど、それぐらいサポーターも現場も必死だし、熱く戦っています。だからこそ、事業スタッフも目の前に新しいチャンスがあったらサッカーと同じようにチャレンジして、失敗しても次のゴールに向かって進んでいく姿勢を示すことが大切だと思います。DAOも、その新しいチャレンジの一つです。

――きっかけが「スポーツ界で初だから」ということではないとおっしゃった意味がよくわかりました。ある意味「効果的なことは何でもチャレンジしてみよう」という姿勢なんですね。

川森:おっしゃるとおりです。

選手のクラブ愛・地域愛がプロジェクト参加の原動力に

――アビスパDAOの中で選手たちも積極的に前に出て発信していることにも驚きました。

川森:新しい取り組みをする時は、必ず経営会議で意見を聞いてから始めるようにしていて、2016年からは強化部長もアカデミーダイレクターも経営会議に参加してもらっています。また、2015年に社長になってから、クラブの運営とか経営の状況を僕の口から直接選手に伝えているんですね。そういうことを続けていると、選手たちがミーティング後や試合会場とかでも「社長、ちょっといいですか?」と声をかけてきて、事業面とかクラブの経営に関して質問をしてきたり、意見を言ってきてくれたりもします。クラブの課題や取り組みを知った上で、選手たちも自分に矢印を向けて、DAOについて理解を深めた上で発信してくれています。今回、DAOのアンバサダーを募集したら、選手たちが食い入るように説明を聞いてくれて、9名もの選手が手を挙げてくれました。

――それはすごいですね。どんなことが選手たちのモチベーションになっているのですか?

平田:選手たちからは「クラブをもっとよくしたい」とか、「福岡の街や地域に貢献したい」という気持ちの強さを感じます。あとは「もっとビジネスを学びたい」とか、FiNANCiEのサービスやWeb3など、「新しいビジネスについて勉強したい」という興味を持ってくれています。社長が普段から経営のリアルな話を選手と共有している中で、そういう土台ができていたのではないかと思います。

運営面の変化と新プロジェクトの可能性

――アビスパDAOの全体設計を担当されている平田さんにお聞きしたいのですが、FiNANCiEを始めてから、運用面で苦労したことはありますか?

平田:DAOをスタートする前までの一番の課題が、普段のコミュニティーの中での発信でした。イベントの時はけっこう皆さん盛り上がってくださるんですけど、イベントがない時の普段のコミュニケーションはうまく回っていなかったんです。社内でも僕と社長がたまに投稿するぐらいしかできていなかったので。その中で、トークン価値もなかなか上がってこないという課題がありました。

――DAOになってから、そこは大きく変わったんですか?

平田:そうですね。DAOにするときに、さらに踏み込まないと難しかったので、社長や他の部署の人たちもどんどん巻き込んで、新しく加わったメンバーも積極的に動いてくれました。FiNANCiEさん側も、國光さんはじめ皆さんが協力してくださって、Web3の領域では新しいスポーツDAOという切り口で取材を受ける機会も多くなったので、トークンホルダーがさらに増えてコミュニティが盛り上がってきました。今後は法人や行政、メディアもさらに巻き込んでやっていければ、次のフェーズに行けるのではないかと思います。

――進行中のプロジェクトで、手応えを感じていることはありますか?

平田:一つは、DAO×地域貢献、地域課題の解決というところです。Jリーグの「シャレン!(社会連携活動)」のプロジェクト、Web3のDAOのプロジェクト、地域のDXパートナーのプロジェクト、グローバルのプロジェクト。今後はこの4つを柱にしたいなと思っています。DAOのメンバーと一緒にシャレン!活動を行ったり、法人さんや行政と一緒にやっていくところを進めたいです。

 もう一つが、ジェネレーティブNFTの「Avispa Supporters NFT」プロジェクトというものを始めます。DAOのメンバーが優先的に手に入れることができるアビスパ福岡を応援するサポーターを具現化した特別なデジタルアイテムです。今後は、サポーターのさまざまな日常やスタジアム体験をNFT化して届けていきたいなと考えています。この二つは、個人的にもすごく楽しみにしている取り組みです。

――ジェネレーティブNFTは新しい挑戦ですよね。NFTを販売するということですか?

平田:そうです。DAOに参加した人は1体もらえます。全部で3000体を作る予定で、例えばスポンサーさんとのコラボとか、クリエーターさんとのコラボ企画を考えていて、トークンを多く持っている方にはプレゼントも考えています。例えばツイッターのプロフィールにしてもらったりとか、いろいろな形で活用していただきたいですね。

川森:デジタルアイテムとしては世界に一つしかないものなので、コレクションとして集めることで、メジャーになった時に価値がついて、二次流通で経済的メリットを得られるようになるところまでいけたらいいなと思っています。

<了>

[PROFILE]
川森敬史(かわもり・たかし)
1965年11月30日生まれ、東京都出身。アビスパ福岡社長。1991年、エドケンコムズ(現Apaman Property)で賃貸営業に携わり、2003年にアパマンショップネットワーク(現APAMAN)に入社。2004年から常務取締役になり、2014年、傘下のIT関連会社システムソフトがアビスパ福岡の増資を引き受けて筆頭株主となったことを機に、経営に携わるようになり、15年3月からアビスパ福岡社長を務める。

[PROFILE]
平田剛久(ひらた・よしひさ)
山口県出身。アビスパ福岡マーケット開発部副部長。大学在学中にプロモーション会社設立。卒業後はSportsmanship.asia北京支社長として北京で半年間サッカースクールの運営等に携わり、2015年にアビスパ福岡に入社。2018年2月に主任になり、2020年4月からマーケット開発部を立ち上げ副部長に就任。

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