「Fリーグの停滞期を壊したい」引退表明・星翔太、“型破り”なフットサル改革論。目指すべき同い年の盟友とは

Opinion
2021.11.08

Fリーグ2021-22シーズン開幕直前の6月1日に今季限りでの現役引退を表明した、名古屋オーシャンズ、星翔太。国内にとどまらず、スペインやカタールでのプレー経験、そして日本代表として2度目のワールドカップ出場となったリトアニア大会が10月3日に幕を閉じた。肌で感じた“世界との距離感”を振り返りながら、株式会社アスラボの代表取締役として経営者の顏も持つ彼ならではの、型破りな「フットサル改革論」について語ってくれた。

(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS、写真提供=名古屋オーシャンズ)

「選手として過ごす楽しみ」よりも強くなっていった、ある思い

――今シーズンで現役引退を発表しましたが、現役最後の代表活動となった(FIFA フットサル)ワールドカップ(リトアニア2021)を終えた時の気持ちを改めて振り返ってみていかがですか?

星:終わった瞬間、まだ終わった感じがしなかったんですよね。ブラジルに負けて(日本時間9月24日 ラウンド16 ブラジル対日本 4-2)敗退だったんですけど、まだふわっとしてました。

――実感が湧かなかった?

星:「もっと(ピッチに)いたいな」と思いましたよ、やっぱり。そろそろ限界を感じた部分もあったりして自分で引退すると決めたのに、終わりだというのをまだその時はうまく飲み込めなかった。日が経つにつれて、最後だったんだな、すごく充実した期間を過ごさせてもらったな、という感情が出てきました。

――アスリートの中には、サッカーでいうとカズ(三浦知良)さんのように限界までやるタイプと、中田英寿さんのようにまだやれる段階でやめるタイプの人がいると思います。星選手の場合はどちらですか?

星:僕としては、Fリーグレベルであればやろうと思えばまだ全然できると思います。だけどやっぱり世界レベルで戦いたいと考えると、もう限界だったかなと思います。周りが見てどうかは別として、自分の中で「もう一歩踏み出したい」という時の一歩が、映像を見た時にやっぱり感覚とブレがあるのを感じることがあったりして。実際に世界トップレベルのブラジルと戦った時に、「やっぱりそうか」と感じることがありましたね。

ただやるだけならできると思うんですよ。戦術的な部分や監督のコンセプトを理解して、+αの力を出せるっていう自信は自分の中ではあるので。あと、フットサルってサッカーと違ってある程度自由に交代枠がある中で、例えば自分の役割を7分発揮するだけでも許されちゃうじゃないですか。そういう割り切りができればいいんですけど、自分の中では違うかなって。それから、選手として過ごせるっていう意味ではすごく楽しさはあるけど、その日々を過ごしていく中で今後も新鮮な気持ちを維持できるかというとやっぱり難しいなというのもありました。

そして自分の中で、「もっとフットサルの環境をよくできるんじゃないか」という思いが勝ってきちゃったっていうのはあります。ピッチの中より外の活動への興味のほうが強くなってきて。

シーズン開幕直前に引退を発表した一番の理由

――今シーズンで引退することをシーズン開幕直前の6月1日に発表したので、反響を呼びましたね。

星:そうですね。でも、思っていたよりもネガティブな声がなかったのがビックリでした。例えば(森岡)薫くんやグレ(木暮賢一郎)さんのように個人でもタイトルを持っていてフットサル界を盛り上げてきたような人たちに比べれば、自分は極端にいうと個人のタイトルは持ってないし、ただ代表歴が長かったり、スペインでのプレー経験があったり、SNSなどでの発信を活発にしていたりというだけの選手じゃないですか。僕も意見を強く言うタイプなので、(そういった発表に)アンチな声もあるかなと思ったんですけど、一切なくて。この発表をポジティブに受け入れてもらえるんだっていうのは、個人的に驚きでしたね。

――シーズンが始まる前にそういう意思表明をした理由は?

星:一番のきっかけは、昨年引退を決めた選手たちがリーグ戦最後の試合で引退を発表して、最後にカップ戦をファンも含めてみんなで頑張っていきましょうというかたちだったのに、その試合がコロナ禍でなくなったんですよね。「ここまで一緒に頑張ってきた人たちと最後に戦おう」、ファンたちも「応援しにいこう」という試合がなくなっちゃうのはすごく悲しいなと思ったので。そういうことを避けたかったというのが理由の一つでした。自分としては、最後の年に行くそれぞれの場所でプレーするのが最後になるわけなので、そこで関わった人たちに感謝を伝えていきたいっていうのがあったので。

あとはやっぱり、いいプレーができる状態でちゃんとお別れしたいという思いもあって。もし先延ばしになったら、ケガをして挨拶ができなくなる可能性もあるなと。

――チームメートの反応はどうでしたか?

星:名古屋オーシャンズから離れて2、3年別の環境でやるかどうか迷ったこともありましたけど、名古屋での年数が増えていくにつれて自分の中では(移籍は)ないなと思い始めて。チームメートにも、「僕がいなくなればみんなもっと頑張んなきゃいけないよね」とか、「こういうふうな日本代表にしていかなきゃいけないよね」みたいな話もしていたので、薄々は勘づいていたんじゃないですか。ただ、(引退を)発表する前にチームメートの前で伝えた時は、やっぱり少し驚かれましたね。

――今振り返ってみて、そのタイミングで発表してよかった?

星:よかったと思います。試合を見に来てくれる人も増えたし、SNSでも発信に対して反応してくれる人も増えて、ファンとの距離を今まで以上に近く感じるようになりました。あとは自分自身、一試合一試合やり切らなきゃいけないっていう覚悟みたいものはより強まりました。

きついなと思う瞬間もあるんですけど、やっぱり引退というリミットがあると、頭の中で今日ケガするかもしれない、今日が最後になるかもしれないって思うようになって。

――代表活動の中でも感じていた?

星:感じていましたね。どう頑張っても(ワールドカップ決勝戦が行われる)10月3日には終わるわけなので、一日一日進んでいく過程で、その日にたどりついたらいいなっていう感覚でした。だから全力でやり切って、それでケガをしたのであればしょうがないという思いでプレーしていました。

「やったことがないことをやっていく以外に前に進む方法がない」

――引退後は、具体的にはどんなことをしたいと考えているんですか?

星:当初は指導者になるか、Fリーグのマネジメントをやるか、まったくフットサルに関わらない仕事をするか、この3つが僕の中ではあるなと思っていたんですけど、月日が経つにつれてやっぱりフットサルに関わった仕事をしたいなと。だけど、指導者は現役時代に実績や世界レベルでの経験がある人たちがたくさんいるので、僕がやらなくてもいいかたちができそうだなっていうイメージが湧いたので。

じゃあ、リーグのマネジメント側について考えてみた時に、選手出身者がなかなかいない。選手経験のある人間も必要なんじゃないかなと考えた時に、自分がそこのポジションでやっていきたいと思うようになりました。ビジネスの世界でつながった人脈などをFリーグの発展に対して熱量や思いを持って引き込める可能性はあるんじゃないかなと思って。

僕は、外からリーグを発展させる方法を考えていくほうが、リーグの中と外が一体となって前に進みやすくなるんじゃないかなと思っているので、方向性としてはリーグやクラブのマネジメント側に立ちたいという思いが明確になりました。とはいえ何も決まってはいないんですけど。

――リーグのマネジメントとクラブのマネジメントでは大きく異なると思いますが、どちらのほうが興味がありますか?

星:どちらも興味はあるんですけど、まず最優先はリーグなのかなと思ってます。僕の中では最初、クラブのマネジメントを5~10年ほどやってからリーグのマネジメント、そしてアジアの大きいリーグを立ち上げたいなという漠然としたプランニングをしていたんです。でも、こういった思いを話していくうちに「クラブの前にまずリーグがしっかりと方向性を決めないとクラブは苦しむから、リーグがまず先なんじゃないの」という声を聞いたことで、考えを整理して。やれるかやれないかは別として、まずはリーグをやらなきゃいけないなっていうところにたどり着きました。

リーグが変わらないとやっぱりそれ以上よくならないので。今のままでは世界のトップにたどり着けない。予算や人手不足などで難しいことも絶対あると思うんですけど、やったことがないことをやっていく以外に前に進む方法がないというか。やったけどダメだったなら分かるんですけど、やってもいないのにその前から諦めちゃうのは僕は違うと思ってるので。そういう意味でも、Fリーグの停滞期を壊していきたい。お金はないけどこれはできそうだよねとか、これをやるためにこういう準備をしていこうよっていう前向きな方向性に変えていきたくて。

――確かにリーグがよりいい方向に向かっていくことも必要ですが、それぞれのクラブもギリギリのところで必死にもがいている状況ですよね。

星:そういう感覚は強いです。選手の環境も含めて。僕は名古屋オーシャンズにいるから、Fリーグの中でもトップの環境を見れているけれど、一方でバルドラール浦安にいた時は環境の違いも見ていました。要はアマチュアに近いセミプロのような状態と、完全なプロの状態の両方を知っているからこそ、リーグとしてどう扱っていくのか。全員プロになりましょうっていうのは簡単だけど、現況をどう理解してどういうふうにやっていくべきなのか考えると正直、全員がプロになるのが正解だとも思わないので。

同い年の盟友・太田雄貴の存在「負けたくない」

――そういう意識を持ちながら、選手目線で「もっとこうなったらいいな」というアイデアはありますか?

星:お金を集めるのはもちろん必要だと思いますし、そのためにはリーグが掲げるビジョンを明確にすることですよね。リーグも2022年から新法人(新法人・一般社団法人日本フットサルトップリーグ)になることが発表されているので、これからおそらくビジョンなどもまた変わっていくじゃないですか。それが自分の思いと一緒の方向であれば、自分の力を発揮しやすくなりますし、まずは明確に、リーグがどうしていきたいのかというのがもっと打ち出されるべきだと思っています。

選手目線としては、まずは選手の教育にアプローチしなきゃいけないと思っています。リーグにとって何が資産なのかって考えると、やっぱり選手。そこにマンパワーやお金を割けるような状況をつくっていくことが大事なんじゃないかなと。

あとは、リーグの開催の仕方ですよね。世界大会に出るためにFIFAのルールにのっとってリーグが行われていて、今は(ディビジョン1の場合)1シーズンで22試合ですけども、もしかしたら今後チーム数が増えるかもしれない。そこで公式戦とは別に、よりルールとかいろんなものを変えた大会を開催してもいいんじゃないかなと考えています。そういう、やったことのないことにチャレンジするスポーツであるという価値を、まずはつくらなきゃいけない。そういうチャレンジ精神を収益化につなげていくためにより強く押し出していくべきなんじゃないかなと思っています。

――こういった考え方をするようになったのは、やっぱり現役アスリートとしてプレーしながらビジネスをやってきた経験が生かされているんですか?

星:そうですね。これまではどちらかというと、人がやったことのないことをやりたいという思いが強くて、スペインに行ったり、契約するメーカーも全部そういう感じで選んできました。ビジネスの世界に出て気付いたのは、ビジネスにおいてはいろんな肩書を外した「星翔太」っていう名前は、何の価値もなかったっていったら極端ですけど、弱かったんですよね、明らかに。それと同時に、ビジネスの世界には化け物がいっぱいいることに気付いて。

これまでの自分の中での“人がやっていないこと”って、あくまで(フットサル)業界の中だけじゃんっていうことも冷静に見れるようになりました。今までは「こういうことをやりたい」と言っていればよかったんですけど、あまりにも無鉄砲すぎて一緒にやろうって関心を持ってくれる人が見つからない可能性もすごくあるなと思って。まずはやりたいことをやるにあたって何をしなきゃいけないのかを話したり、聞いてもらうところから始めていくうちに、自分の中で考え方が変わっていきました。

――キャリアにおいて指標としている人はいますか?

星:フェンシング協会の前会長だった太田雄貴は、同い年でもあって、分かりやすい例かなと思います。トレーニングを一緒にやったり食事に行ったこともあって、「いつでも相談して」と言ってくれていて、今でもコミュニケーションを取っています。

――太田さんのような身近な存在に刺激をもらえるのはいいですね。

星:すごく刺激的ですね。同年代がやっているなら自分にもできるっていう自信にもなるし、負けたくないなという気持ちも同時に湧いてくるので。

あとはBリーグ チェアマンの島田(慎二)さん。難しい業界に入ってチャレンジして、千葉ジェッツで代表取締役を務められていた時にしっかり売り上げを上げて、Bリーグに入っても変えるべきことと今蓄えなきゃいけないものを蓄えながらやっているというところが見えるので。日本ハンドボールリーグの初代代表理事の葦原(一正)さんもそうですよね。そういったアリーナ競技のトップの人たちは、僕の中で目指すべき姿かなと。

フットサルを盛り上げるために必要なのは“展開の早さ”ではなく、「魅力的な大会演出」

――フットサルという競技のポテンシャルについてはどう思っていますか?

星:ポテンシャルはあるとは思うんですけど、やっぱり長くこの業界にいるとフットサルに対する先入観が強すぎて、ぼやけてきているのを感じます。初心者に勧める時にフットサルの魅力は何かっていったら、展開の早さとか戦術的なほうに行っちゃうんですよね。でもそれって魅力なのかってところもあって。バスケのほうが展開早いし、フットサルの戦術を見たくて観戦に来ている人なんてほぼいないわけですよ。そこまで見れたら面白いけど、初心者に対してはそこじゃない。

――展開の早さは確かにサッカーと比べた時の武器ですよね。本当に目が離せないというか、携帯が見れない(苦笑)。

星:でも、ゆっくりスポーツ観戦をしたいという人もいるよねという見方もなるべくするようにしていて。お酒を買いに行く時間やトイレに行く時間がないですよね。ハーフタイムも大会によっては短くなったりするので、そうなったらさっき話したような別の大会でルールをつくって、バスケみたいに10分4ピリオド制にしちゃったほうがその間に選手たちも休めるしいいな、と。さらにそのハーフタイムにグッズを買ってもらったり、ピッチでイベントをしたりと、タッチポイントを増やせる可能性もあります。リーグの公式戦とは別で、カップ戦の一つのようなかたちでできればいいなと考えているんですけど。

――エンタメ大会みたいなものを別でつくるイメージですね。

星:そうです。そのほうが現実的ですし、選手たちにもメリットがあるなと思っています。

――別のスポンサーを募ったり、オリジナルグッズや賞金があったり、どんどん変化させていっても面白いですよね。

星:極端にいったら、ボールも新しく開発して、もっとエンタメ性が出るようなボールに変えなきゃいけないのかもしれないし。もし僕がリーグのマネジメントができることになったら、改めてスローインは導入したいです。めちゃくちゃ点が入るし、もう少しゴールへのダイナミックさも生まれるので。公式戦ではなく、カップ戦なら現実的なのかなと。そういう感覚でリーグ側も新しいことにチャレンジしてもいいんじゃないかなと思っています。

――カップ戦の数試合ならいろいろなイベントや企業と絡められたり、リーグ自体が関わればリーグそのものの価値も高められますよね。

星:それこそ、同じ施設でやらなくてもいいと思っているので、もう少し小さいコートにして集客も少なくして、放映権とかでしっかりと稼いでいくのもありですよね。じゃあスポンサー入れようとか、テクノロジーの実験の場にしてしまうとか、そういったことも僕はありだと思って。選手のデータを取りたいからこの大会期間中は測定器を選手全員つけてっていうのをやってもいいと思うし。そういう新しいことを取り入れていく場にしていくのが一番いいのかなと思ってます。

――コロナ禍もあって、リーグ自体も冠スポンサーがいない危機的な状況が続く今こそ、新しいことにチャレンジしたり、企業を巻き込んでいくことは大切かもしれませんね。

星:危機的な状況ですが、言い方を変えれば伸びしろしかない状況でもあります。選手たちは置かれている環境の中で人生をかけて精いっぱいやっているので、それに応えたい。すぐにお金が生まれればもちろんいいけれど、チャレンジしていきながら選手の声を聞いて、一緒に前向きに進んでいくという姿勢はすごく大事だなと思うので。でも、人がいないとリーグが続いていかないですし、リーグの中の人だけでもなかなか難しい。

例えばブラジルやアルゼンチンみたいに、フットボールが文化の国だからお金も集まる。でも、彼らだって不況の波に飲まれて給料が払われなくなったチームも全然あるわけじゃないですか。それでも、文化として浸透していればお金が集まる可能性はあると思うんです。でも(日本は)そうじゃないから、この文化に合わせて発展させていく必要がある。

――国内の他のスポーツだけではなく、いろいろなエンタメと戦わなければいけないということですよね。

星:そうです。例えば、太田雄貴が今シーズンから日本ハンドボールリーグに入ったので、ハンドボールとは組んだら面白いと思います。コートの大きさもほぼ同じくらいなので一緒にできるし。組めるスポーツと組んで他のエンタメ文化に立ち向かって、スポーツでお金をしっかり稼いでいくというアクションを起こしていかなければいけないなと。

ブラジルとの対戦で明確に感じた、“世界との距離感”

――今回のワールドカップで実際に世界の強豪と戦ってみて、世界との距離についてどう感じましたか?

星:初めて、同じ人間なんだなって思いました。今までブラジルやスペインと対戦した時には、やっぱりなんだかんだ相手に余裕がありました。だけど今回はそれがなくて。相手の顔色が青ざめるように変わった瞬間があって、それを感じられたのが初めてだったんです。まだまだ対等なレベルではないんですけど、明確に(世界との)距離は縮まっていると感じました。

ただ、まだやりたいようにやって勝てるような距離感ではなく、自分たちがやらなきゃいけないことをやった上で、初めてピッチで五分五分の試合ができるっていう状況なので。自分たちがやりたいことをやりながら勝てるようになるには、リーグとして組織レベルで取り組まなきゃいけないことが多いので、もう少し年数は必要だと思います。

――試合を見ていても、相手の焦りや苛立ちを感じましたね。

星:内容の細かい部分でいえばまだまだレベルの差はありますけど、やるべきことをしっかりやればベスト16までいけるというのは示せたと思います。一方で、僕らは今大会1勝3敗という事実はもちろん受け止めています。距離感が近づいてきたという感覚には自信を持っていいけれど、レベルの限界もきている。みんなで一体感を持って新しいチャレンジをするなら、言い方は悪いですけど最初で最後の可能性があるって僕は思ってます。今じゃないとやばいぞ、と。

――星選手に共感して、一緒に変えていこうという仲間も増やしていく必要がありますよね。

星:引退の発表をシーズン前にしたのは、実はそれもあって。要は引退するって言えば、公に仲間集めをできると思ったんです。

――引退を公言していなかったら、メディアでこのような発言もできないですもんね。そういう意味では、今回のワールドカップでスペイン、ブラジルから点を取ったことも今後のキャリアに生きそうですね。

星:そうですね。今大会は僕のキャリアハイだっていう人がすごく多かったんです。実際結果だけ見たら間違いなくそうだったと思いますし。でも、僕の中でやっていることはいつもと変わっていないんです。それにゴールがついてきたっていう。

――(運を)持っているんだと思います。本当にゾーン状態だったというか、他人ごととは思えないぐらいうれしかったですね。

星:本当ですか! でも、本当にいろんなことがかみ合ったと思います。それこそ、初戦のアンゴラ戦では(弟の)龍太にアシストして兄弟でゴールも取れましたし。今大会はそういう流れがあったなと感じます。とにかく勝ちたい、1試合でも多くやりたいと思ったら、結果的に負けた後も、パフォーマンスに対する評価をもらえたのはすごく大きかったですね。

チームの全体像としても、前に進むチャンスとしてポジティブな影響を残した大会でした。うまくこの空気感を維持して前進していかないといけないと思っています。

「関わる人たちを幸せにしたい」

――今後のキャリアにおいて大事にしていきたいことは?

星:まずはシンプルに、自分に関わる人たちを幸せにしたいというのが一番大きいです。家族はもちろん、フットサルで関わった人たちだったり。幸せの定義ってそれぞれあると思うんですけど、僕の中ではその人たちが笑顔になるような環境づくりがすごく大事だと思っていて。そしてその人たちからまた他の人たちに幸せをつなげてもらいたい。

――すごいですね。いつ頃からそう考えるようになったんですか?

星:自分は割と先輩にかわいがられるタイプなんですけど、その先輩たちがしてくれてきたことを、今度は僕が後輩にしてあげなよと言ってくれる人たちが多かったんですよ。そう言ってもらっているうちに、自分の中で恩送りみたいなマインドが高まってきて、こういう思いに行きついたのかなと思います。あとは、自分がやりたいことばかりやってきた中で、仕事などを通して世界の大きさに気付けたので。その中で、自分って何ができるのかなって考えるようになったんですよね。

――星選手の年齢でその感覚に気付けたのは、本当に素晴らしいですね。うらやましいです。

星:いやいや! でも、苦労したからだと思います。技術も全然なくて、高橋健介さんや荒牧太郎さん、在原正明さんとかと話す時にも「マジで下手なのによくそこ(日本代表)にいるよね」っていうのは言われるんですよ(苦笑)。もっとうまい人なんていくらでもいるけど、ここにずっとい続けて、最後の国際大会まで出続けられたのは自分なりの苦労があって、考え方や思考とかこれまでの経験があったからなので。そういう経験や、出会った人たちが今の自分の考え方に行きつかせてくれた。フットサルだけでなく、仕事も経験していてよかったと思っています。

<了>

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PROFILE
星翔太(ほし・しょうた)
1985年生まれ、東京都葛飾区出身。Fリーグ・名古屋オーシャンズ所属。ポジションはピヴォ。暁星小学校サッカー部でサッカーを始め、中学校、高校と同校へ進学。早稲田大学へ入学後、森のくまさん(暁星高校サッカー部OBを中心に結成されたフットサルチーム)でフットサルを始める。2004年よりBOTSWANA FC MEGURO/FUGA MEGUROへ加入し、2009年にFリーグ・バルドラール浦安へ加入。2010年に初の海外となるUD Guadalajara FS(スペイン)へ移籍、FS Marfil Santa Coloma(スペイン)、AI Rayyan(カタール)を経て2012年にバルドラール浦安へ復帰。2014年にはFリーグ2014-2015 ベストファイブに選出され、2018年より名古屋オーシャンズへ加入。2021年6月1日に2021-2022シーズン限りでの引退を発表。2009年から日本代表に選出され、初出場で2得点をあげ、2014年AFCフットサル選手権では優勝に貢献。2012年、2021年にワールドカップへ出場。弟の星龍太も名古屋オーシャンズ、日本代表で活躍している。

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