「アモリム体制、勝率36.2%」再建難航のファーガソン後遺症。名門ユナイテッドは降格候補クラブなのか?
“改革”と“再建”を掲げて迎えられたルベン・アモリム体制。だが、期待とは裏腹に、その足取りは重く、苦悩の連続でもある。今季、マンチェスター・ユナイテッドが戦う舞台はプレミアリーグだが、彼らの実力はその舞台にふさわしいか──。この記事では、歴代最低水準といわれる勝率、組織の構造問題、そして過去への執着が今のユナイテッドを縛る“ファーガソン後遺症”の根深さを英紙サンデー・タイムズのエース記者が掘り下げる。
(文=ジョナサン・ノースクロフト[サンデー・タイムズ]、翻訳・構成=田嶋コウスケ、写真=ロイター/アフロ)
アモリムの勝率は「歴代最低」の数値
現在プレミアリーグで10位と低迷するマンチェスター・ユナイテッド。彼らが組織に問題を抱えているのは周知の事実だ。
例えば、マーカス・ラッシュフォードをめぐる一件は、ユナイテッドの構造的な問題を如実に示している。彼はクラブの象徴的な存在であり、生え抜きとしてファンから深く愛されてきた。しかしルベン・アモリム監督の下で居場所を失い、レンタル移籍でFCバルセロナに放出された。
皮肉なことに、ラッシュフォードは新天地で輝きを取り戻し、スペインで高い評価を受けている。彼のパフォーマンスを見る限り、問題は彼の実力ではなく、ユナイテッドという組織のあり方にあることは明白だ。
それでも共同オーナーのジム・ラトクリフと、CEO(最高経営責任者)のオマール・ベラーダ、フットボール・ディレクターのジェイソン・ウィルコックスは、クラブが“突然噛み合う”ことに望みを託し続けている。しかし、それはほとんど奇跡に近いだろう。就任から50試合を終えた時点で、アモリムの勝率は公式戦でわずか36.2%にとどまる。2013年に引退したアレックス・ファーガソン以降の監督では歴代最低の数値だ。
■アレックス・ファーガソン監督以降の指揮官の勝率(公式戦)
ジョゼ・モウリーニョ 58.33%
エリック・テン・ハフ 54.69%
オーレ・グンナー・スールシャール 54.17%
デビッド・モイーズ 52.94%
ルイス・ファン・ハール 52.43%
しかも国内リーグに限定すると、アモリムの勝率は29.4%まで低下する。過去の常任監督と比べてこの数字は異様に低く、第二次世界大戦以降まで枠を広げても最低レベルにある。
ユナイテッドが追い求めるファーガソンの幻影
それでもアモリムは「自身の戦術も哲学も変えるつもりはない」と明言している。では、どうすれば状況は好転するのか?
当初メディアやファンは「アモリムには戦術を落とし込む時間が必要だ」と指摘し、その後は「補強が必要だ」と擁護してきた。だがこの夏のオフに、そのどちらも与えられた。それでも結果も士気も上がらず、むしろ下降線をたどっている。
アモリムの最大の問題点は、戦術面で柔軟性に欠ける点だ。3バックシステムに絶対的な自信があり、システムを変える気配すら見えない。当然、対戦相手は事前の対策が練りやすい。もともとエリック・テン・ハフ時代の基本布陣は4バック。最終ラインを4枚で戦う陣容はそろっているだけに、ポルトガル人指揮官には臨機応変に戦う柔軟な姿勢が必要だろう。果たして、アモリムはここから変われるか。
もっともユナイテッドが抱えている問題は、アモリム一人の責任ではない。ファーガソン退任後、歴代の監督たちもことごとく失敗してきた。その理由として、ユナイテッドが常に「ファーガソンに似た人物」を追い求め続けてきたことがある。
デビッド・モイーズには、スコットランド人というファーガソンと共通点がある。ファーガソンのような豊富な経験値を有する人物として、ルイス・ファン・ハールを招聘した。
非情な決断を下せるジョゼ・モウリーニョも、やはりファーガソン時代のような「常勝軍団」への回帰を期待して招聘された。オーレ・グンナー・スールシャールはファーガソンの教え子。アヤックスで成功したテン・ハフのケースも、アバディーンで好成績を収めたファーガソンと似た経緯への期待感があった。
そしてアモリムについても、オールド・トラッフォードに来た当時のファーガソンのように、「ヨーロッパで最も注目される若手監督」として迎え入れたわけだ。
だが問題は、「ファーガソンが、指揮官としてすべてを兼ね備える存在」だったことに尽きる。唯一無二の存在であり、再現することも、彼を超えることも不可能なのである。それにもかかわらず、ユナイテッドはいまだにファーガソンの幻影を追い続けている。
「ライバルクラブに追いつくには最低でも5年はかかる」
もう一つの問題は、クラブ文化とリクルートメント(補強)戦略のあり方にある。かつてのユナイテッドのクラブ文化には、「一枚岩になって最後の最後まで戦い抜く」ことがあった。補強も常に効果的で、かつてのユナイテッドはこの両面でライバルを突き放していた。
しかし今では、リバプールやマンチェスター・シティ、アーセナルといったライバルに先を越されている。オーナー陣や首脳陣のクオリティもライバルのほうが優れており、ユナイテッドは長年その差を埋められていない。
ファーガソン退任後のユナイテッドで要職を務め、現在は退職しているクラブ関係者は昨年、筆者にこう漏らした。
「たとえアモリム監督の下でうまくいったとしても、ユナイテッドがライバルクラブに追いつくには最低でも5年はかかる」
その理由は、選手の契約にあるという。「ユナイテッドが長期契約で縛られている選手を整理し、実力に見合わない選手を一掃するにはそれだけの時間が必要だ」とのことだった。
名門ユナイテッド悲しき現実とわずかな光
フットボールクラブにはサイクルがある。黄金期には必ず終わりがあり、再建にはある程度の年月が必要になる。突然、覚醒して連勝街道を突っ走り始めるケースもあるが、さまざまな事情によりかなわないことのほうが多い。
ユナイテッドが今も変わらず世界的なビッグクラブであることは間違いない。いつの日か再びイングランドの頂点に返り咲く日がくるだろう。だが、それは「近い将来」に起きるだろうか? それが「アモリムの下で」実現するのか?
現時点で、アモリムがトロフィーを掲げる姿を想像することすら難しい。個人的には、ユナイテッドが今季を一桁順位で終えられたなら大きな成果だと考える。悲しいことに、これが今のユナイテッドの現実だ。選手の質から考えるにさすがにプレミア降格はないだろうが、10月19日に行われるリバプール戦で大敗すれば、アモリム監督の解任論が再び高まるだろう。ラトクリフ共同オーナーは「アモリムは3年かけて実力を証明する必要がある。私はそうするつもり」と擁護する姿勢を示しているが、ファンやメディアは黙っていないはずだ。
かつて「世界トップ」に君臨した名門ユナイテッド。しかし今の彼らに課せられたハードルと目標の低さには、驚きを通り越して虚しささえ感じてしまうのである。
もちろん、ポジティブな要素もある。
今夏の移籍市場で加わったCFベンヤミン・シェシュコが国内リーグにおいて2試合連続でネットを揺らしているのは前向きに評価できる。同じく新戦力の23歳GKセンヌ・ラメンスが安定し始めているのも心強い。レギュラーで活躍中のCBレニー・ヨロは19歳、左WBのパトリック・ドルグも20歳で、いずれも成長の伸びしろは特大だ。必ずしも絶望的な状況とは言い切れない。
9月20日に行われた第5節チェルシー戦を2−1で勝利したように、リバプールを相手に善戦できれば──。アモリムが戦術のアプローチに幅を持たせ、首脳陣が抜本的な改革を成し遂げることが飛躍の条件となるが、少なくとも現時点の風向きだけは変わるはずだ。
【連載前編】英紙記者が問う「スター選手放出の愚策」。迷走のマンチェスター・U、全責任はアモリム監督にあるのか?
<了>
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