[ユニ談]Jクラブ・スポンサー業種1位はどこ? 海外でなじみの業種はゼロ

Business
2019.07.06

ユニフォームは、アスリートにとって欠かすことのできない“戦闘服”だ。同時に、クラブにとっても決して欠かすことのできないビジネスの“戦場”だ。ユニフォームにロゴを掲出するスポンサーを獲得することは、クラブ経営の未来を左右するといっても過言ではないだろう。2019シーズン、Jリーグ58チーム(U-23チーム含む)のユニフォームスポンサーには、どのような企業が名を連ねており、どのような業種が優勢を占めているのだろうか。その傾向を読み解く。

(文=池田敏明、写真=Getty Images)

Jリーグでユニフォームに掲出できるスポンサーは最大何社?

Jリーグは2018シーズン、ユニフォーム前面の鎖骨部分左右2カ所への広告の掲出を解禁した。これにより現在、Jリーグクラブのユニフォームは胸、鎖骨(2カ所)、背面上部、背面裾部、袖、そしてパンツと、最大7カ所にスポンサー企業の広告が掲出されている。

鎖骨部分は左右で同じケース、それぞれ違うケースがあり、また片方しか入っていないクラブもある。例えば鹿島アントラーズは、左右両方とも「メルカリ」のロゴ(表記は「mercari」)が掲出されており、川崎フロンターレは左側が「GA technologies」(表記は「RENOSY」)、右側が「富士通ビー・エス・シー」。北海道コンサドーレ札幌は右側のみに「トーホウリゾート」のロゴが入っている。

クラブによってはファーストユニフォームとセカンドユニフォームで異なるロゴを掲出しているケースもある。例えば大宮アルディージャの胸部分は、ファーストユニフォームがNTTドコモ(表記は「NTT docomo」)、セカンドユニフォームは同社が提供するポイントプログラム「d POINT」のロゴが掲出されている。また、ツエーゲン金沢の鎖骨部分は、ファーストユニフォームが地元企業の「中森かいてき薬局」(表記は「中森かいてき薬局グループ」)、セカンドユニフォームは「あしたのチーム」のロゴが掲出されている。ファーストユニフォームはホームゲームで着用する機会が多いので地元企業、セカンドユニフォームはアウェーゲームで着用するので全国各地に支社がある企業と使い分けているのだろう。

スポンサー企業の業種別1位は45社を占める

では、ユニフォームスポンサーを務めているのは、どのような企業が多いのだろうか。J1からJ3までの全58チーム(FC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪のU-23チームを含む)のユニフォームに掲出されている全てのロゴとその企業をリストアップし、証券コード協議会における業種の大分類、中分類に当てはめてみよう。

最も多かったのは、大分類で「商業」、中分類で「小売業」に割り当てられる企業。スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンター、家電量販店を経営する企業がこれに該当し、45社あった。2019シーズンから浦和レッズの背中裾部分にロゴを掲出しているホームセンターの「島忠」(表記は「Shimachu HOME’S」)や、サンフレッチェ広島の胸に入っている家電量販店の「エディオン」(表記は「EDION」)などがこれに該当する。世間に店舗が数多くあり、人々の生活にも深く関わる業種であるだけに、掲出数が多いのは納得できる。

これに続くのが大分類の「運輸・情報通信業」、中分類の「情報・通信業」となる企業だ。新聞社やIT関連企業、ゲームやアニメの会社と幅広い企業が該当することもあり、41企業がユニフォームスポンサーとなっている。上述した「メルカリ」や、FC東京の胸に「XFLAG」のロゴを掲出している「ミクシィ」、あるいは松本山雅FC、AC長野パルセイロという地元の2クラブのユニフォームスポンサーを務める「信濃毎日新聞」などがこれに該当する。ちなみに、アルビレックス新潟の「新潟日報」やツエーゲン金沢の「北國新聞」、ブラウブリッツ秋田の「秋田魁新報」など、特にJ2以下のクラブには地元の新聞社がスポンサーを務めているケースが多い。地元メディアとクラブとの結び付きの強さがうかがえる。

新聞社以外に、多くの地方銀行も地元クラブとユニフォームスポンサー契約を締結している。大分類の「金融・保険業」、中分類の「銀行業」は18社に上り、栃木SCの「足利銀行」やヴァンフォーレ甲府の「山梨中央銀行」、愛媛FCの「伊予銀行」などがこれに相当する。

なお、ヴィッセル神戸の運営に携わり、胸にロゴを掲出している「楽天」(表記は「Rakuten」)は、業務形態が多様化していることもあり、大分類、中分類とも「サービス業」となる。神戸のユニフォームには「楽天メディカル」や「楽天toto」といったグループ企業のロゴも掲出されている。グループ企業のロゴが多いのは川崎フロンターレも同様で、クラブの前身であり親会社でもある「富士通」のロゴ(表記は「Fujitsu」)が胸に掲出されているのをはじめ、右側の鎖骨には「富士通ビー・エス・シー」、背中の裾部分には「富士通エフサス」、袖には「富士通マーケティング」のロゴが入っている。横浜F・マリノスの「日産自動車」(表記は「NISSAN」)や名古屋グランパスの「トヨタ自動車」(表記は「TOYOTA」)、ジュビロ磐田の「ヤマハ発動機」(表記は「YAMAHA」)のように、親会社のロゴを掲出するケースも、特にJ1のクラブの場合は一般的だ。

胸スポンサーでわかる有名企業の意外な本拠地

先に述べた通り、各チームは最大7カ所までロゴを掲出できるが、それぞれの企業の所在地を見ると、やはり地方クラブと地元企業の結び付きの強さを感じることができる。例えば北海道コンサドーレ札幌の場合、胸はクラブ創設時から支援する「石屋製菓」(表記は「ISHIYA」)、鎖骨はリゾートホテルなどを経営する「トーホウリゾート」、背中上部は冠婚葬祭などに携わる「あいプラングループ」(表記は「あいプラン」)、背中裾部はECサイト制作などを手掛ける「ダイアモンドヘッド」(表記は「Diamond head」)と、札幌市に本社がある企業のロゴを掲出している。袖の「サッポロビール」は、本社は東京だがもともとは札幌市にルーツを持つビールメーカーだ。

また、掲出先のクラブを見ることによって、全国的な知名度のある企業の意外な本拠地もわかる。家電メーカーの「アイリスオーヤマ」はベガルタ仙台の胸スポンサーを務めているが、本社は宮城県仙台市。プリンター機器などでおなじみの「エプソン」は長野県諏訪市が本社で、近隣のクラブである松本山雅FCの胸スポンサーとなっている。京都サンガF.C.は胸に電子機器メーカーの「京セラ」、鎖骨に衣料品メーカーのワコール(表記は「Wacoal」)、背中上部にコンピューターゲームや玩具を製造する「任天堂」と有名企業のロゴが多く掲出されているが、この3社はいずれも京都府京都市に本社を置いている。トイレや洗面化粧台などのメーカーである「TOTO」がギラヴァンツ北九州の胸スポンサーとなっているのも、同社の本社が福岡県北九州市にあることと無関係ではないだろう。

海外クラブのユニフォームでおなじみの業種はゼロ……

多種多様な企業が広告を掲出している点は欧州各国リーグの傾向とも合致している。イングランド・プレミアリーグの場合は外資系企業が広告を掲出しているケースが多いものの、スペインやドイツ、イタリア、フランスでは、Jリーグと同様、地元企業がスポンサーを務め、結びつきを強めているケースが多い。ただ、海外で一般的になっているオンラインブックメーカーやオンラインギャンブルの広告は、Jリーグでは禁止されてはいないものの「スポンサー自粛カテゴリー」に挙げられており、掲出は認められない。過去に大分トリニータがレジャー産業大手のマルハンとスポンサー契約を結んだものの、上記の理由により胸部分へのロゴ掲出を自粛するという事例があった。世界的な潮流を見る限り、この前時代的な自粛傾向はそろそろ見直してもいいのかもしれない。

なお、58チームの中で唯一、Y.S.C.C.横浜はロゴが一切、掲出されていない。また、サガン鳥栖はロゴが胸、袖、パンツの3カ所のみと、J1クラブながら掲出数が少ないユニフォームを着用している。元スペイン代表のフェルナンド・トーレスや元バルセロナのイサック・クエンカといった知名度の高い選手が所属し、国外からも注目を集めるチームなので、ユニフォームスポンサーとなればそれなりの効果が得られるはず。今後の動向に注目したいところだ。

<了>

[ Jリーグクラブ ユニフォームスポンサー企業の業種分類 ]

  1. 商業(小売業)             45
2. 運輸・情報通信業(情報・通信業)      41
3. サービス業(サービス業)          29
4. 製造業(食料品)              25
5. 製造業(電気機器)             19
6. 金融・保険業(銀行業)           18
7. 建設業(建設業)              17
8. 不動産業(不動産業)            10
9. 電気・ガス業(電気・ガス業)          9
製造業(輸送用機器)              9 
製造業(化学)                 9
12. 製造業(機械)               8
製造業(医薬品)                8
14. 商業(卸売業)               7   
運輸・情報通信業(陸運業)         7
16. 農業協同組合                6
17. 製造業(その他製品)            5
18. 学校法人                  4
医療機関                    4
20. 運輸・情報通信業(空運業)       3
金融・保険業(証券・商品先物取引業)3
製造業(ゴム製品)             3

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