バスケ・河村勇輝が大学中退、プロ転向1年目で手にしたもの。「後ろ盾なくす決断」「お互いプロ。先輩後輩関係ない」

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2022.05.20

スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。この春からはJFN33局ネットの全国放送にリニューアル。元プロ野球選手の五十嵐亮太、スポーツキャスターの秋山真凜、Webメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長の3人がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回は、ゲストにバスケットボール・Bリーグ、横浜ビー・コルセアーズの河村勇輝が登場。大学中退とプロ入りを決意した胸中、初めて年間を通してプレーする来シーズンへの意気込みを語る。そして、その先にある日本代表、NBAへの思いとは。

(構成=池田敏明、写真提供=B-CORSAIRS/T.Osawa)

大学を中退しプロ転向を発表したホープ  

秋山:河村選手は横浜ビー・コルセアーズのポイントガードで、福岡第一高校時代から将来を期待され、日本男子バスケットボール界のホープと呼ばれています。先日、レギュラーシーズンの最終戦が終わったばかりですが、振り返ってみていかがですか?

河村:プロに転向するという大きな決断をして臨んだシーズンだったので、いろいろな気持ちが交錯していたな、という感覚です。

岩本:今年の3月末に東海大学を中退してのプロ入りを発表されましたが、いろいろな人に相談しながら決断したのでしょうか。

河村:そうですね。両親や、東海大学(男子バスケットボール部)の陸川章監督にも相談しました。

岩本:ご両親はその決断には最初から賛成してくれましたか?

河村:うちは両親ともに教員で、自分が大学に進学した理由の一つに僕自身も教員免許を取得したいという思いがありました。大学を中退してプロバスケットボール選手になることは一つの後ろ盾をなくすことを意味しますし、大きな決断だと思うので、賛成してくれたかどうかはわからなかったのですが、自分の人生だし、しっかり責任を取ることができるならそうしなさい、という感じでした。最終的にはすごく後押ししてくれたので、本当に感謝しています。

岩本:プロ入りを選択し、シーズン後半からの合流でしたが、終盤戦は5試合連続での先発出場も果たしました。プロでの手応えはどのように感じましたか?

河村:2020-21シーズンは特別指定選手としてチームに所属していたのですが、本当にうまくいかないことだらけで、何も手応えを感じられないまま終わってしまいました。その悔しい経験から大学2年時にはいろいろなことに挑戦し、その結果として今シーズンは、少しではありましたけど手応えを感じられるようなプレーができ、結果を残すことができました。でも、まだまだ満足していません。昨シーズンの悔しさを少しだけ払拭し、これからに向けての自信にもなりましたが、プロとしてシーズンを通してやっていないので、そこは次のシーズンに向けて楽しみな部分ですね。

岩本:東海大学での約2年間で学んだことも多いと思います。

河村:バスケットボールのIQの部分を学ぶことができましたし、プレーの幅を広げることができたと思っています。

五十嵐:大学時代との違いはどのように感じていますか?

河村:特別指定選手の頃は、大学ではキャンパスに行ったりテストがあったり、単位を取るために勉強したりしなければならなかったですし、一方でプロバスケットボールチームではトレーニングの時間がしっかり決められているので、両立が本当に大変でした。ただ、その経験は今後プラスになっていくと思いますし、これからはバスケットボールに集中し、関わる時間を増やしていけるので、将来の夢に向けて大切な日々になると思っています。

五十嵐:まだまだ余力はある感じですか?

河村:余力はそんなになかったですね。思った以上にタフなスケジュールで戦ったな、という印象です。来シーズンは年間を通してバスケットボールをする初めてのシーズンになるので、どうなるんだろう、という懸念はあるんですけど、このオフシーズンでしっかり準備していきたいと思っています。

五十嵐:次のシーズンに向けての改善点は、現段階ではイメージできているんですか?

河村:すべてのスキルを1、2段階、向上させていかなければならないと思っています。最も大きな部分でいうと、シュートの精度、特にスリーポイントシュートの精度を高めていかないと、プロのバスケットボール選手としてやっていけないと思います。夢であるオリンピックに出場するため、トップの選手になるためには絶対にクリアしなければいけない条件だと思うので、もっと練習していきたいと思っています。

学業との両立から、バスケに専念する生活へ

岩本:シーズン中は具体的にどのようなタイムスケジュールで過ごしていたのでしょうか。

河村:9時頃に家を出て、帰るのは18時頃。その間は体育館で練習をしたり体のケアをしたり、という感じですね。

秋山:大学生の頃はどんなスケジュールだったんですか?

河村:トレーニングの合間にリモートで授業を受けることもありましたし、テストを受けなければならないので練習を途中で抜けることもありました。授業によってさまざまでしたね。

岩本:バスケットボールに専念するようになって、体のキレは変わってきましたか?

河村:そうですね。気持ち的にもバスケットボールに集中できている点はアスリートとしてすごく大切なことだと思いますし、ケアやトレーニングに時間をしっかり割くことができるので、プレー面やコンディションの向上につながっていると思います。

岩本:食事は今どうしているのですか? 栄養面も気になります。

河村:自炊が多いですね。一人暮らしなのですが、栄養面では『株式会社 明治』の管理栄養士さんがサポートしてくださっていて、メニューを送ったり、栄養面のフィードバックをいただいたりしているので、すごく助かっています。

秋山:学生時代から一人暮らしをされていたんですか?

河村:東海大学では寮だったんですけど、1人部屋で、室内にバス、トイレ、キッチンがすべて備わっていたので、一人暮らしに近い生活でした。

岩本:料理のレパートリーも増えましたか?

河村:いや、そんなことはなくて(笑)。管理栄養士さんが「これいいよ」と勧めてくれて、なおかつ簡単に作れるものを頑張って作っています。

五十嵐:お気に入りのメニューはありますか?

河村:朝ごはんは鮭をオーブンで焼いて、玉子や納豆やブロッコリー、ほうれん草を一緒に食べて、みたいな感じが多いですね。

岩本:すごくバランスがいいですね。

河村:でも、我慢できずにたくさん食べちゃう時もあります(笑)。

岩本:21歳らしさが見えて少し安心しました(笑)。とはいえ、特別指定選手として試合に出ていた時と比べて周囲からもプロの選手として見られるようになり、ご自身の意識もだいぶ変わったのでは?

河村:そうですね。高い要求をしてほしいというのは自分自身でずっと望んでいたことですし、それ相応の結果を残したいと思っています。ハイレベルな要求をしてもらえるのは期待を持ってもらっているからだというマインドは持っています。

岩本:刺激を受けた、あるいは学びを得たチームメートはいますか?

河村:昨年チームメートだった竹田謙さん(現GM)ですね。チーム最年長なんですが威張らず、チームファーストで動いたり発言したりしている姿を見て、自分もそんな選手になりたいと思いましたし、年齢って関係ないんだな、ということも実感したので、自分も若手だからと萎縮するのではなく、チームのために発言するタイミングがあればちゃんと発言しようと思いました。

自宅の庭で練習、憧れはマイケル・ジョーダン

秋山:そもそも、最初はどのようなきっかけでバスケットボールに興味を持つようになったのでしょうか。

河村:父親がバスケットボールをしていた影響もあり、自宅の庭に小さい頃からバスケットボールのゴールリングがあって、そこで遊びがてらバスケットボールをしているうちに火がついた感じですね。

五十嵐:『スラムダンク』でいうところの山王工業・沢北栄治と父・哲治のエピソードのようですね。現在のポジションはポイントガードということですが、このポジションは『スラムダンク』で言うと?

河村:湘北高校では宮城リョータですね。

五十嵐:そうそう、僕と同じ名前の。スリーポイントシュートとか、遠目からの攻撃も求められる。基本は司令塔ですよね?

河村:はい、そうです。

秋山:小学生の時はいろいろなポジションを経験されたんですか?

河村:それが、ないんですよ。小さい頃から身長もそんなに高くなかったのですが、背の低い選手はポイントガードになる傾向が多いので、ずっとポイントガードでした。

岩本:お父様も実績のある選手だったんですか?

河村:話を聞く限り、そんな感じではないですね。

岩本:では、家にゴールリングを作ったのは河村選手のためですか?

河村:最初はそんな感じでもなく、兄弟みんなで遊ぼう、ぐらいの感じでした。バスケットリングだけでなく、卓球台やバレーボール、野球道具などもたくさん家にあったので、その中の一つという感じです。

秋山:他のスポーツもされていたんですか?

河村:遊びではたくさんやっていました。

岩本:本格的にバスケットボールに専念するようになったのはいつ頃なんですか?

河村:小学2年生の頃です。その時からずっとポイントガードでした。

五十嵐:ポイントガードはスピードが必要だと思いますが、他の子よりも足が速かったんですか?

河村:そうですね。かけっこは絶対に負けなかったです。負けたくないという性格でもあるので。めちゃくちゃ負けず嫌いです。

岩本:当時、NBAや日本代表などで好きな選手はいたんですか?

河村:マイケル・ジョーダンです。

五十嵐:でも、現役時代のマイケル・ジョーダンを見ている世代ではないですし、ポジションも違いますよね?

河村:小さい頃だったので、見て参考にするというより、プレーを見るのが楽しいという感覚でした。マイケル・ジョーダンは誰が見ても驚きがある選手ですからね。

五十嵐:わかるな~。心を動かされるというか、ワクワクするようなプレーをするので、そんな選手になりたいというのは、子どもの頃は誰もが思いますよね。

岩本:お父様がNBAの映像を録画していて、それを見ていたんですか?

河村:父親が大のマイケル・ジョーダン好きで、物心つく前からマイケル・ジョーダンのグッズやDVDが家にたくさんありました。

秋山:お父様は河村選手に対して、プロのバスケットボール選手になってほしいという願いはあったんですか?

河村:いや、全然なかったと思います。頑張ってほしい、ぐらいだと思いますし、自分も小さい頃から「教員になりたい」とずっと両親に言っていたので。

夢はオリンピック出場、そして最高峰の舞台 

五十嵐:チーム内では年齢は一番下ですか?

河村:プロ契約している中では一番下です。

五十嵐:そんなに若い選手が年上の選手に指示するわけですよね。試合中は年齢は一切関係ないという割り切りはできるものですか?

河村:お互いプロですし、コートの中に入ったら先輩後輩は関係ないと思うので、そこは割り切って、言う時はちゃんと言うようにしています。

五十嵐:プライベートでの先輩との関係はどうなんですか?

河村:オンコートでもオフコートでも、先輩方をしっかりリスペクトするのは当たり前のことだと思います。自分はイジられキャラなので、オフコートではちゃんと“後輩”をやっています(笑)。

岩本:今年2月には、第19回アジア競技大会に向けた日本代表候補に選ばれ、強化合宿に参加しました。オリンピック出場という夢に向けての大きな一歩だったと思いますが、どのように感じましたか?

河村:まず一つの土台を築けたと思っていますが、まだまだ第一歩を踏み出しただけという感じですし、ここから上っていくことが本当に大変だと思いますので、今後の活躍が大事になってくると思っています。

岩本:代表でのライバル、特に意識している先輩は誰ですか?

河村:誰かというより、代表のポイントガード全員ですね。

岩本:トム・ホーバス監督になって、全選手にスリーポイントシュートの正確性が求められていると思います。そこがクリアできれば代表にも定着できると思いますが、意識はしていますか?

河村:はい。その意識はあります。でも、まだまだ一つ一つのスキルのレベルを高めていかないといけないので、スリーポイントシュートだけ練習しておけばいいという話でもないと思っています。

岩本:男子バスケットボール界にはなかなか新星が出てこないので、河村選手に期待されている部分も大きいと思います。あとはどうしても聞きたいのが、まだプロとしてデビューしたばかりですが、NBA挑戦の意思はあるんですか?

河村:バスケットボールをしている人間だったら一度は憧れる場所ですし、やはり最高峰のリーグなので、チャンスがあってタイミングが合えば狙いたいというのはあるんですが、まずは日本代表でトップのポイントガードにならなければなりません。そこにたどり着いたとしても挑戦できないようなレベルの高い場所がNBAだと思うので、着実に力をつけ、目標を達成していきながら、タイミングがきた時につかめるよう準備していきたいですね。

秋山:今後の活躍に期待しています。みんなで応援しましょう!

<了>

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(「REAL SPORTS」は毎週金曜日 AM5:30~6:00 ※地域により放送時間変更あり)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜、岩本義弘

Webメディア「REAL SPORTS」がJFNとタッグを組み、全国放送のラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界からのリアルな声を発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
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