岩渕真奈はなぜ“今”海外へ行くのか? 「結局どこでやっていようが…」英国で新たなる挑戦へ
4シーズン過ごしたINAC神戸レオネッサから、イングランド FA Women’s Super Leagueへの移籍が決まった岩渕真奈。いまだ世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスの感染拡大による不安はもちろん、日本女子サッカー界ではWEリーグが始まる。このタイミングで海外での再チャレンジを選択した理由とは――?
(インタビュー=岩本義弘[『REAL SPORTS』編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=大木雄介)
「サッカーをやっているからこそ」の人生を無駄にはしたくない
――イングランド FA Women’s Super Leagueへの移籍が決まりましたが、海外移籍を決めたのはなぜですか?
岩渕:まず、(2017年にドイツから)日本に帰ってきた時から「もう一回海外でチャレンジしたい」と考えていたので、その気持ちが大きかったです。
――コロナ禍で国内外の行き来が難しい状況になって、その願いを諦めようと思ったこともありましたか?
岩渕:来年の3月で28歳になるので。自分のサッカー人生、もうそこまで長くないなと考えた時に、いまだからできることって「サッカーをやっているからこそできること」だと思うので。そこは無駄にはしたくないなっていう気持ちではありました。
――バイエルン(・ミュンヘン)含め、ヨーロッパでやり残したことがあったということですか?
岩渕:自分としてはバイエルンでやってきたことにある程度自信を持てているので、やり残したということはあまりないです。また違うリーグにチャレンジするというのは、これまでの続きというよりは別物だと思っているので。ドイツでやり残したことをイギリスでやるという感覚はないかなと。ドイツでの経験があったからこそ、こういう状況の中で海外へ行く選択ができたっていうのはあると思うんですけど。
――ヨーロッパにおける女子サッカーの価値が当時から比べても一気にぐんっと上がったというか、ヨーロッパ全体でレベルアップしていますよね。その中でも特にFA Women’s Super Leagueはレベルが高いという点も移籍を決めた理由の一つですか?
岩渕:そうですね、いま(イギリスで)女子サッカーが盛り上がっているっていうのを知ってるし、アメリカ代表の選手も多くプレーしているので。やっぱりそこは魅力的に感じました。
――アメリカ代表など世界トップクラスの選手たちがいるリーグで、代表ではライバルとなる国の選手たちとプレーできるというのはプラスになる面もありますよね。
岩渕:それはあると思います。やっぱりドイツに行っていた時も、日々ドイツ代表などの選手と一緒にプレーするようになって、代表の試合でもビビらなくなったというか。この選手知ってるし、この選手はこんな感じだし、とか、自分の中の知識も増えたから、やっぱり気持ちの部分で余裕を持てるようになったと思ってます。

「結局どこでやっていようが自分次第」成長を糧にさらなる高みへ
――INAC神戸レオネッサでの4シーズンを振り返ってみると、どんな4年間でしたか?
岩渕:まず、日本に帰ってくる時に(日テレ・)ベレーザではなくINAC神戸に行ってチームを勝たせられるようにしたいっていう自分へのミッションを課して入ってきたんですけど、リーグタイトルを取れず目標にたどり着けなかったことは残念です。これまで日本ではベレーザにしかいたことがなかったので、INAC神戸に入って「こういうチームもあるんだな」とか「こういう選手もいるんだな」っていう、考え方の幅はめちゃめちゃ増えたと思います。クラブの仕組みも違うから、勉強になりました。
――ベレーザ時代と違ってINAC神戸では自分がチームを引っ張らなきゃいけないという立場で、難しさもあったのでは?
岩渕:難しさもありましたけど、結局それが代表につながっていると感じましたし、若い選手が多い中で先輩として見られる立場で、自分が積極的に声をかけながらやらなきゃいけないなっていうのもINAC神戸に行って感じるようなりました。4年間、INAC神戸に入ったからこそいろいろなことを感じたり、考える機会はあったかなと思います。
――その中で自分自身成長したと感じることはありますか?
岩渕:まずは、日本での生活がいいのか練習量が合っているのか分からないんですけど、コンディションは昔より整ったと思っています。そのおかげで代表にコンスタントに行けるようになって、点を取れるようになったりしたので、そういう部分は日本に帰ってきてよかったなと。ベレーザとINAC神戸、全然違うサッカーの中で自分の役割も違いますし、少しは成長できたかなと思います。
――そういった中で、INAC神戸も参加する日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が始まるタイミングでなぜあえて海外へ? という声もあると思います。
岩渕:なぜこのタイミングに決めたのかというと、WEリーグに関してはまだ設立されるにあたっての情報が全然入ってきてなかったというのが大きかったかもしれません。WEリーグがどんなものになるかがまだ分からない中で、光栄なことに海外移籍という選択肢を与えられて。プレミアリーグという、世界で一番盛り上がっているリーグともいえる場所に行ってチャレンジしてみたいっていう気持ちになりました。
――高倉(麻子)監督には相談したんですか?
岩渕:はい。「コンディションさえしっかり整えてくれるんだったら」と言われました。ドイツでは太っちゃったので、その話を笑いながらされて(笑)。代表合宿に参加できなくなる可能性があることも相談したんですけど、5月の9日の最終戦でリーグが終わってからでも2カ月近くあるし、結局どこでやっていようが自分次第かなと、気持ちが固まりました。

<了>
岩渕真奈が振り返る、10代の葛藤 「自分のプレーと注目度にギャップがあった」
岩渕真奈の好調は「腸腰筋」にあり。身体の専門家が施したトレーニング法とは?
永里優季「日本だけでなく世界を見ないと」 女子プロ化の成功に必要な要件とは?
なぜ猶本光は日本に帰ってきたのか? 覚悟の決断「自分の人生を懸けて勝負したい」
圧倒的なハッピーオーラ!京都精華「チャラい」監督、女子部員との卓越したコミュ力とは
PROFILE
岩渕真奈(いわぶち・まな)
1993年生まれ、東京都出身。ポジションはフォワード。小学2年生の時に関前SCでサッカーを始め、クラブ初の女子選手となる。中学進学時に日テレ・メニーナ入団、14歳でトップチームの日テレ・ベレーザに2種登録され、2008年に昇格。2012年よりドイツ・女子ブンデスリーガのホッフェンハイムへ移籍し、2014年にバイエルン・ミュンヘンへ移籍、リーグ2連覇を達成。2017年に帰国しINAC神戸レオネッサへ入団。2021年1月よりイングランド FA Women’s Super Leagueへ移籍。日本代表では、2008年FIFA U-17女子ワールドカップでゴールデンボールを受賞、世間からの注目を集めるようになる。以降、2011年女子ワールドカップ優勝、2012 年ロンドン五輪準優勝、2015年ワールドカップ準優勝、2019年ワールドカップ・ ベスト16に貢献。
この記事をシェア
KEYWORD
#INTERVIEWRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
黒田剛のサッカーはなぜアジアでも通用したのか? 町田ゼルビア“防衛的悲観主義”の真価
2026.05.01Opinion -
ロッカールームで進路が決まる? ラグビー新人採用の知られざる“価値観の変化”
2026.05.01Opinion -
“大谷のLA”に続くのは“村上のシカゴ”か? ホワイトソックスが仕掛ける日本ファン戦略
2026.04.30Business -
スタジアムは「建てるか否か」ではない。岡山で始動した「地域の未来設計」という新しい議論
2026.04.30Technology -
欧州1年目で29試合スタメン出場。秋山裕紀が選択した“自分の良さを出さない”存在証明
2026.04.28Career -
40歳、まだ速くなる。山田章仁が語る、最多109トライの裏側と“時間の使い方”
2026.04.27Career -
鹿島は弱かったわけではない。26戦無敗、鬼木体制で“らしさ”取り戻した評価軸の正体
2026.04.24Opinion -
日本での“良いプレー”が通用しない衝撃。秋山裕紀がドイツで学んだ評価のズレ、欧州標準のリアル
2026.04.23Career -
イングランド撃破で得た確信。鎌田大地が示した「新しい基準」と「サッカーIQ」の価値
2026.04.21Opinion -
「大谷翔平を知らない世界」という可能性。元巨人・柴田章吾が市場広げる“アジア甲子園”
2026.04.21Business -
監督交代の先に問われるもの。アメリカ3連戦が映したなでしこジャパンの現在地
2026.04.20Opinion -
福島を支えるスノーボード文化の現在地。星野リゾート ネコマ マウンテンに学ぶ普及のリアル
2026.04.15Business
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
黒田剛のサッカーはなぜアジアでも通用したのか? 町田ゼルビア“防衛的悲観主義”の真価
2026.05.01Opinion -
ロッカールームで進路が決まる? ラグビー新人採用の知られざる“価値観の変化”
2026.05.01Opinion -
鹿島は弱かったわけではない。26戦無敗、鬼木体制で“らしさ”取り戻した評価軸の正体
2026.04.24Opinion -
イングランド撃破で得た確信。鎌田大地が示した「新しい基準」と「サッカーIQ」の価値
2026.04.21Opinion -
監督交代の先に問われるもの。アメリカ3連戦が映したなでしこジャパンの現在地
2026.04.20Opinion -
ニルス・ニールセンが語る「別れ」と「信頼」。なでしこジャパン前監督が選手に託した未来への言葉
2026.04.06Opinion -
守田英正はなぜ呼ばれない? 森保ジャパン「最激戦区」ボランチに起きた新序列の真相
2026.04.03Opinion -
なぜ名選手は名監督になれないのか? バーゼルで起きた「指導のズレ」の正体と“指導者の本質”
2026.04.02Opinion -
トゥヘル率いるイングランドがW杯「優勝候補」と言い切れない理由。完璧な予選の違和感、そして“10番”の不在
2026.03.30Opinion -
7万4397人の熱狂を沈黙させた一撃。なでしこジャパン、アジア制覇を支えた成熟の中身
2026.03.23Opinion -
マチルダスの熱狂が包む超アウェーの決勝戦へ。なでしこジャパンが挑むアジアの頂点とその先の景色
2026.03.20Opinion -
なでしこジャパン支える“食の戦術”。西芳照シェフが整える短期決戦の食卓「小さい選手も男子並み。だから走れる」
2026.03.18Opinion
