セレッソ・西川潤 アジアMVPの逸材がブレずに意識する“世界”と、描く“未来”
2002年生まれの逸材レフティとして国内外から注目を集め、東京五輪世代としても大きな期待が寄せられている、神奈川の名門・桐光学園高校の10番、西川潤。2018年AFC U-16選手権では優勝、個人ではMVPに輝く活躍を見せ、今年飛び級で参加したFIFA U-20ワールドカップでは3試合に出場。
2020年からセレッソ大阪への加入が内定し、早くも今年、特別指定選手として公式戦デビューを果たした。順風満帆なキャリアを歩んでいるようだが、高校、Jリーグ、世代別日本代表……とさまざまな環境において、壁にぶつかりながらもそれぞれの環境に適応しながら自分の力を出していくため、常に闘い続けている。
最終学年となった今、濃厚すぎる高校生活でのサッカー人生を振り返りながら、自身を支え続けている“軸”や今後の目標について語ってもらった。
(インタビュー・構成=阿保幸菜[REAL SPORTS編集部]、インタビュー撮影=村井詩都)
高校3年間の原動力「なぜ桐光サッカー部を選んだのか?」をプレーで見せたい
現在、高校サッカーと世代別日本代表、セレッソ大阪に内定されて特別指定選手として活躍している中で、本当に目まぐるしい毎日だと思いますが、コンディション的にはいかがですか?
西川:コンディションは今、順調です。
日々の体のケアやリフレッシュ法は、どのようにされているのですか?
西川:リカバリーっていう意味では、行きつけの治療院があるのでそこに行ったり、自分でもストレッチをしたり、自分なりにできるケアはしっかりやっています。
ケア方法は、誰かに教わったりしているのですか?
西川:いろいろなところに行ったりしながら自分自身で取り入れてやっていることもありますし、代表に行った時のトレーナーさんや、治療院の先生だったり、専門知識がある人に聞いて、自分なりに良い情報はしっかり自分のものにするようにしています。
全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(以下、インターハイ)も控えているところで(編集部注:インタビューはインターハイ前の7月12日に実施)高校サッカーについてお伺いしたいと思います。まず、中学時代は横浜F・マリノスのジュニアユースに所属されていましたが、高校サッカーの泥臭さや、自分に足りない部分を強化するために桐光学園高校への進学を決められたと。最終学年となった今、振り返ってみていかがですか?
西川:(F・マリノス)ユースを断って来た身なので、最初はフレッシュな気持ちで高校サッカーへ踏み込んだんですけど、1年目は思ったよりもうまくいかなかった、という思いがあって。試合に出られなかった時もありましたし。
その中で、なんで自分は(桐光学園高校に)入学したのか?というのをしっかり認識して、その部分を強化するという考えがあったので、2年生ではしっかりと活躍できたと思います。この3年目では、インターハイはもちろん、いろんな大会を控えているので、改めて自分が入ってきた理由や、泥臭さを身に着けたいというところなど、そういうのをプレーで見せていければいいかなって思います。
高校生活の3年間でさまざまなスランプもあったと思うんですけど、壁にぶち当たった時は、どういうふうに乗り越えてきたのですか?
西川:自分のできないところに目を向けるんじゃなくて、逆に自分の良いところをもっと出そうという意識でやっていました。
悪いところを見ちゃうと、モチベーションも落ちてしまうから?
西川:そうですね。
ポジティブに、良いところを伸ばしていこうという考えで乗り越えてきたんですね。
西川:はい。
下を向いている暇はない。プレーで表すこと、“主張”することの大切さを身に着けた海外経験
昨年のインターハイでは惜しくも準優勝、そして全国高等学校サッカー選手権大会(以下、選手権)では1回戦で敗退。どちらの大会でも相当悔しい経験をされたと思います……。あれから半年ほど経ち、その間に代表戦や、Jリーグデビューなども果たされてきて、いろいろな体験を経た今、当時を振り返ってみるといかがですか?
西川:去年、インターハイでは決勝で山梨学院高校に1対2で負けてしまったのですけど、逆転されたシーンは自分が1対1でシュートを外して、そこからカウンターを受けて失点した形だったので、すごく悔しい思いがあって。その時から自分なりに“決めきる力”には、すごくこだわってきたつもりなので、そういう意味では、こだわってきた結果を一つひとつの大会で、自分なりにプレーで表していきたいという気持ちでずっとやっていました。
今の練習の中でも、そのこだわりというのを意識してやっているのですか?
西川:はい。それはずっと、去年負けた時からずっと意識してやっています。
選手権の直後にドイツのバイエル・レバークーゼンの練習に参加された時は、実際に外国人選手たちと一緒に練習してみていかがでしたか?
西川:海外遠征とかで、対外国人選手というのはやったことがあるのですけど、味方に外国人選手がいるというのは(レバークーゼンでの)練習参加の時が初めてだったので、どういう感じなのかなというのは未知の世界でした。いざ行ってみたら、日本人ということであんまり良い待遇はされないというか。
1人で飛び込んでいって、自分から主張しないと周りの人も話しかけてくれないし、パスも来ないっていう状況で。自分なりにどうしよう?って考えながら、自分の良さを出して、味方に自分の良さをわかってもらいながらやっていかないとダメだなと。それは海外に行かなかったら感じられなかったことだと思いますし、そういったハングリー精神や、自己主張することは、そこで(自分に)足りないなと感じました。
味方として外国人選手と一緒にやるとなると、コミュニケーションがかなり重要になってきますよね。
西川:そうですね。もちろん、喋らないとコミュニケーションできないので(言葉を話せないとより)そこは本当に大事なところだなと思いました。
他のチームメートとのコミュニケーションって、どういうふうに深めていったのですか?
西川:プレー内で、試合などの一つひとつのところで、言葉は通じないですけど、なんとなくジェスチャーとかで「こう来たらこうしてくれ」みたいなことを伝えたりしました。一度点を決めたらすぐパスが来る感じだったので、そこはすごくわかりやすかったですね(笑)。
ピッチ外よりピッチの中で、コミュニケーションを取っていくという感じ?
西川:そうですね。ピッチ外では言葉が通じなかったので、ジェスチャーとかで何とかやっていましたけど、プレー内でやることが一番良いかなと思ったので。
では逆に、ここは海外でも通用するなと感じられたところは?
西川:背後に抜けてからの飛び出しであったり、パスを受けてから左足でキープして周りの味方にパスを出したり、というところは、自分にとって(武器として)すごく自信になった練習参加だったかなと思います。
海外に行った選手は、芝が緩かったとよく言われていますが、そういった環境面や生活面で何か感じたことはありますか?
西川:そうですね、おっしゃるとおり芝は日本と全然違っていて、ドイツではその時ちょうど雪も降っていたので、すごく滑りやすくて。日本だったら踏み込めるところも踏み込んだら滑っちゃったりして、環境の違いっていうのもすごく感じましたし、環境面では日本と異なるところがすごくあるなと思いました。
Jリーグや代表で体感したことを、チームへ還元しないと意味がない
西川選手の印象として、現実的な考えを持っていたり、冷静に自分を客観視できるタイプなのかなと感じたのですが、自身で自覚はありますか?
西川:自覚ですか? 自覚はそんなにないですけど。自分の考えを率直に言っているだけなので。まあ、わからないですけど(笑)。
いや、なんだかすごく大人だなと(笑)。
西川:いやいや、子どもっす(笑)。
チームメートや周りの同世代の人たちと、サッカーに対する姿勢の話などはするのですか?
西川:それはすごくしますね。セレッソに行ったら、柿谷(曜一朗)選手だったりいろいろな選手がいますけど、(トップレベルのプロ選手たちが)どういう姿勢でトレーニングに取り組んでいるのか。代表でも、そこで選手たちがどのようにトレーニングに取り組んでいるか、また、どういうふうに声がけをしているかなどを、このチーム(桐光学園高校サッカー部)にしっかり自分が伝えて、還元するようにしています。
プロや代表選手を見て感じたことを、チームのみんなに?
西川:そうですね。自分がJリーグや代表の場で感じたことを、このチームにもしっかり還元しないと意味がないっていったらアレですけど。しっかり還元しています。
確かに、そういう選手がいるとチームメートとしても、すごく勉強になりますよね。
西川:はい。そう思ってもらえると嬉しいですけど(笑)。
すばらしいですね!
どの環境においてもぶれない、「世界を意識する」という一本軸
今は、Jリーグや代表にも行ったりしながら、本業は桐光学園高校サッカー部であり、そういったいろいろな環境の中で適応していくことが、プレー面以前に大事になってくると思います。西川選手自身、目まぐるしい環境の中でも、適応していくために心掛けていることはありますか?西川:自分は代表とセレッソと高校のチームと、いろいろありますから、“適応力”というのは自分でも大事だと思っていて。そこで自分が大事にしているのが「自分の持っているもの、目指すところをぶれないようにすること」。
例えば、どの環境でも、自分がFIFA U-20ワールドカップで経験した“世界”を意識してやるとか、自分なりの目標であり、軸としているところをぶらさないようにやるっていうのを意識しています。
“適応力”という部分でいえば、それぞれの環境によって人やチームの戦術なども違うわけで。その中で、自分から主張することの大事さなどに繋がってきますけど、「自分から発信をして、自分から聞いていって、なるべく早くその環境に適応しよう」っていう意識で、どこの環境でもやるようにしています。
その軸というのは、昔からずっと変わらないのですか?
西川:ずっと変えないでやっていますね。
一番の「軸」としている部分は?
西川:軸ですか? だいたいは「世界を意識する」というところですね。
戦術であったり、それぞれのチームや環境で変える部分や適応していく部分はあるけれど、自身の中では「世界を意識する」という一本の軸に繋がっているようなイメージですか?
西川:そうですね。
その軸があるから、環境が変化しても、すべてそこに繋がると?
西川:そうです。結局はそこに繋げてやっていきたいなという考えがあるので、そこを意識しながらやっていますね。
適応していくために、自分を主張していくことが大切だとおっしゃっていましたが、もともと自己主張するほうなのですか?
西川:いや、そんなにしなかったです。だからレバークーゼンや、海外で感じることがあったので、そこで自分を変えなきゃいけないという意識になりました。
今、直近の目標としていることは?
西川:直近は……いっぱいありますね。インターハイもありますし、FIFA U-17ワールドカップもありますし、選手権もありますし……。そうですね、いっぱいありますね。
直近の目標が人より多い(笑)。
西川:そうですね(笑)。
来年は東京五輪がありますけれど、そのタイミングで選手としてこうなっていたい、というような理想はありますか?
西川:目標という意味では、自分も可能性がある限りは東京五輪に出たいという思いもあります。まずは、来年からセレッソに入団することが決まっているので、そこでしっかりとスタメンの座をとれるようにやっていきたいというのが、今の自分の意思です。
Jリーグではデビュー戦(2019年3月13日、ルヴァンカップ・第2節のヴィッセル神戸戦)も、その後(4月10日、ルヴァンカップ・第3節の名古屋グランパス戦)のアシストもあり、すごく順調なプロとしてのスタートですよね。プロの舞台でプレーしてみて、実際にいかがですか?
西川:そうですね、今は(高校、セレッソ、代表を)行ったり来たりという環境なので、まだあまりわからない、というのもありますけど……。今やっている限りでは、試合に出させてもらっていて順調なスタートかなとは思います。けど、来年になってからは本格的にプロの世界に入るわけで、これから自分が試合に出られなくなったりすることもあると思います。そういった時でも、しっかり自分の軸をぶらさずにやっていきたいです。
<了>
PROFILE
西川潤(にしかわ・じゅん)
2002年生まれ、神奈川県出身。桐光学園高校サッカー部所属。ポジションはフォワード、ミッドフィルダー。中学時代は横浜F・マリノスのジュニアユース。2018年AFC U-16選手権で優勝、MVPに輝く。ドイツのレバークーゼンの練習に参加するなど国内外から注目を集め、2020年よりセレッソ大阪に加入が内定。2019年に特別指定選手として登録され、同年のルヴァンカップ・第2節で公式戦デビュー、J1リーグ・第7節でリーグ戦デビューを果たした。
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