「そっくり!」と話題になった2人が初対面。アカツキジャパン町田瑠唯と元なでしこジャパン岩渕真奈、納得の共通点とは?
東京五輪でなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)の10番を背負った岩渕真奈と、同大会でアカツキジャパン(バスケットボール女子日本代表)の銀メダル獲得の原動力となった町田瑠唯。2人は同じ1993年生まれで、大会中に「そっくり」「激似!」と話題になったことがきっかけでSNSで互いをフォローし合うように。そんな両者が、今回の対談で初対面を果たした。昨年、現役を引退して次のキャリアを歩み始めた岩渕と、現役日本代表選手としてパリ五輪のメンバーに名を連ねる町田。それぞれの競技を牽引しながらさまざまな共通項を示してきた2人は、初対面でどんな化学反応を見せるのか?
(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、撮影=大木雄介)
「似ている!」とSNSで話題に
――お二人は東京五輪の時に「似ている」と話題になりましたが、実際には対面するのは今回が初めてですね。実際に会ってみて、どのような印象ですか?
岩渕:オリンピックで初めて「似てる」って言われていると知って意識するようになったんですが、ずっと会ってみたいなって思っていました。こんなかっこいい方に似ているなんてうれしいです。
町田:こちらこそ、お会いできてうれしいです。当時は、大会が始まる前から周囲に「岩渕選手に似てるね」と言われていました。可愛らしい方だと思っていたので、似ていると言われてなんだか申し訳なかったです(笑)。(東京五輪)当時は小柄さと、ショートのヘアスタイルが似ていたんだと思います。その話題でDMしましたよね。
岩渕:しましたね(笑)。
――岩渕さんはバスケットボールの経験もあるそうですね?
岩渕:はい。町田選手を前にして恥ずかしいんですけど、小学校の時に1年やったかやってないかぐらいの感じです。市の中ではいいところまでいったんですけどね。土日にサッカーと試合が被っちゃうから、サッカーを選んだんですよ。
――町田選手はサッカーには馴染みはあったんですか?
町田:バスケット選手じゃなかったらサッカー選手を目指していたと思います。スポーツ全般が好きなんですけど、サッカーは特に好きで、小さい頃は遊びでよくボールを蹴っていました。幼稚園の頃から小学2年生まで野球をしていましたが、その時はサッカーのほうがメジャーで人気があったので、サッカーか野球かで悩んだ時期もありました。今も試合はテレビでよく見ます。富士通レッドウェーブの本拠地が川崎市で、川崎フロンターレが近いので、試合を何度か見に行きました。
岩渕:私は一回だけWリーグの試合を見に行ったことがあって。スポーツはなんでも見るのは好きなんですけど、生で見たらすごさやカッコよさが伝わってきて、すごく楽しかった印象があります。

ストライカーとアシスト王、プレースタイルの違いは性格の違い?
――町田選手はポイントガードとしてWリーグでは今季7度目のアシスト王に輝き、富士通レッドウェーブを優勝に導きました。代表でも同じようにアシストで魅せてきましたが、それぞれのチームでチームを牽引する存在としてどんなことを大切にしているのですか?
町田:ポイントガードは、コートの中では監督みたいな役割をしなければいけない司令塔なので、プレーでチームを引っ張る責任もありますし、勝敗の責任を負わなければいけない責任感はあります。ただ、富士通でも代表でも、本当にチームメイトがシュートが上手な選手ばっかりで、その選手たちを生かすためのプレーをしようと心がけてきました。シュートよりもパスのほうが好きなので、周りの選手に生かしてもらっているという気持ちがあります。
――「いいパスをもらって、もっと自分が点を取りたい」と思うことはないですか?
町田:あまりないですね。もちろん、点は取らなきゃいけないと思ってるんですけど、そっちがメインではなくて、本当に「みんなに取ってもらいたい」という気持ちが強いです。
――岩渕さんは現役時代、さまざまな大会で得点王に輝きました。アシストもありましたが、やはり自分のゴールでチームを勝たせることが一番の喜びだったのですか?
岩渕:そうですね。サッカーは一点が勝敗を分ける競技なので、そこでは自分が決めたいと思います。でも、アシストも好きですよ。バスケは点がたくさん入るので、シュートもアシストも輝ける場面が多くて羨ましいです。サッカーは、すごくいいパスを出しても決めてくれなかったら「おーい! そこ、最後触ってよ〜」ってなりますし(笑)。そういうのがあるからこそ、サッカーだったら自分が点を取りたいと思うんです。町田選手は、いいパスをしたのに決めてくれなかった時、そう思うことはないですか?
町田:それはあまりないですね。基本的に、入らなかったシュートは「自分のパスがよくなかったかな」と思ってしまうタイプなんです。
岩渕:これは性格の違いですね(笑)。
――ストライカーとアシスト王のメンタリティの違いは興味深いです(笑)。サッカーで少ないチャンスを決めなければ、チームメートやサポーターの風当たりも強くなると思いますが、そのプレッシャーはつらくなかったですか?
岩渕:嫌ではなかったですね。もちろん「自分が点を取らなかったせいで負けちゃった」って責任を背負う時もありましたけど、あまり引きずらずに切り替えてやっていました。バスケもサッカーも一人じゃ何も完結できないスポーツだから、外してしまった時はみんな「次、次」と声をかけてくれましたから。

性格のまったく違う2人の共通点
岩渕:バスケットボールは身長や体格が重視されるスポーツというイメージがあって、その中で小柄だけど活躍している町田選手は子どもたちに夢を与えると思うし、かっこいいなと。でも、これまでに身長が小さいことなどが原因で、プレーを諦めかけたりしたことはなかったんですか?
町田:諦めることはなかったですね。めちゃくちゃ負けず嫌いなので、昔から「小さいからできない」と言われるのが絶対に嫌で、常にそういう気持ちでプレーしてきました。
――「めちゃくちゃ負けず嫌い」は、もしかして一番の共通点ではないですか?
岩渕:そうかもしれないですね。ただ、自分は負けず嫌いだけど、諦めも早いんですよ。例えば、現役引退後によくゴルフに誘われるんですけど、一回打ちっぱなしに行った時に自分にセンスを感じなかったので、それ以来やっていません。「向いていない」と思うことは一瞬で手放せるんです。町田選手は?
町田:私は、裏でコツコツ練習しちゃうタイプですね(笑)。
岩渕:真面目!
町田:興味がないことには手を出さないんですが、興味あることとかやってみたいことは、できなくてもできるようになろうと頑張るんです。
岩渕:私はチャレンジしてできないと思ったらすぐに手を引いて、「やったことないんですよ」って、なかったことにしちゃいますから(笑)。

競技を背負うプレッシャーとどう向き合ったのか
――2人とも10代からトップリーグで活躍し、競技の未来を担う存在としてメディアなどでもよく取り上げられてきたと思いますが、そういう見られ方に対して、どのように受け止めてきたのですか?
岩渕:10代の時は、期待されるのが嬉しかった時期もあったと思います。ただ、活躍しなくても取り上げられるのは嫌で、メディアの取材を「面倒くさい」と思って断っていた時期もありました。チームスポーツだし、もっとうまい選手がたくさんいる中で注目されるのは、その選手たちに申し訳ないと思いますから。でも、最終的には一試合一試合の積み重ねで評価してもらえるようにもなったので、サッカーと向き合うしかない、「とにかくやるしかない」っていう気持ちは常に持っていましたね。
町田:私はあんまり表に出るのが得意じゃないので、注目されるのが苦手なんですよ。なので、メディアに出るのは苦手ですし、テレビもあまり出ないです。
――町田選手はかなりシャイだそうですね。
岩渕:かわいい! 私はそんなこと全然言われないですもん。
――岩渕さんはストライカーでしたから、目立ってなんぼ、ですよね。
岩渕:そうですね。今だから言えますけど、若い頃は「自分が一番うまい」って思っていた時期もありましたから(笑)。そういう時期はなかったですか?
町田:周りにうまい選手が多いので、自分に自信を持ったことはあまりないです。東京五輪ではちょっと注目されましたけど、それまで代表では2番手、3番手だったので、期待されているっていう感じもなかったです。自分も岩渕さんのように得点をバンバン取る選手だったらそういうメンタルになるかもしれないですけど、チームメイトがシュートを決めてくれて数字が伸びるタイプのプレーヤーなので、「みんながいるから」っていう気持ちのほうが強いですね。

多様な個性でチームは成り立つ
――「似ている」と言われたお二人ですが、「負けず嫌い」は共通している一方で、プレースタイルやキャラクターはかなり違いますね(笑)。
岩渕:本当に(笑)。でも、チームにはいろんな個性がいるからこそ面白いなと思うし、それこそ2011年にワールドカップで優勝した時の年代は全員、スーパー個性が強かったので。「あのチームがよくまとまったな」と感慨深いですし、いろんなキャラクターがいていいと思います。
町田:バスケットも、いろんな選手がいました。でも、東京五輪の時はスーパースターと言われる選手がいなくて。ずっと女子バスケット界を引っ張ってくれた渡嘉敷来夢選手がケガでオリンピックに出られなかったので、みんなの武器を合わせて「チームでしっかり戦おう」という気持ちが強かったです。
――女子バスケはトム・ホーバス監督(現男子代表監督)のマネジメントも大きかったと思いますが、なでしこジャパンはロンドン五輪で当時の佐々木則夫監督(現女子委員長)が、選手の自主性を引き出していた側面もありましたね。
町田:それは大きかったと思います。
岩渕:ノリさんは、「選手に任せる」と言いながらも決まりごとはあったので、そのバランスもよくて。自分はほとんど何もやっていないのですが、チームを引っ張っていた年上の澤(穂希)さんや宮間(あや)さんなど、中心選手がチームのために行動してくれていたなと思います。
【連載中編】バスケ×サッカー“93年組”女子代表2人が明かす五輪の舞台裏。「気持ち悪くなるほどのプレッシャーがあった」
【連載後編】岩渕真奈と町田瑠唯。女子サッカーと女子バスケのメダリストが語る、競技発展とパリ五輪への思い

<了>
試合終了後、メンバー全員と交わした抱擁。BTテーブスHCがレッドウェーブに植え付けたファミリーの愛情
岩渕真奈が語る、引退決断までの葛藤。「応援してくれている人たちの期待を裏切るようなプレーをしたくない」
Wリーグ決勝残り5分44秒、内尾聡菜が見せた優勝へのスティール。スタメン辞退の過去も町田瑠唯から「必要なんだよ」
浦和の記録づくめのシーズンを牽引。WEリーグの“赤い稲妻”清家貴子の飛躍の源「スピードに技術を上乗せできた」
2度の引退を経て再び代表へ。Wリーグ・吉田亜沙美が伝えたい「続けること」の意味「体が壊れるまで現役で競技を」
[PROFILE]
岩渕真奈(いわぶち・まな)
1993年3月18日生まれ、東京都出身。元サッカー日本女子代表。小学2年生の時に関前SCでサッカーを始め、クラブ初の女子選手となる。中学進学時に日テレ・メニーナ入団、14歳でトップチームの日テレ・ベレーザに2種登録され、2008年に昇格。2012年よりドイツ・女子ブンデスリーガのホッフェンハイムへ移籍し、2014年に加入したバイエルンではリーグ2連覇を達成。2017年に帰国し、INAC神戸レオネッサに入団。2021年1月よりイングランド ・FA女子スーパーリーグのアストン・ヴィラへ移籍、2021-22シーズンからアーセナルでプレーし、2023年1月からトッテナムへ期限付き移籍。昨年9月に引退を表明した。日本代表では2011年女子ワールドカップ優勝、2012年ロンドン五輪準優勝を経験。2021年東京五輪では背番号10を背負うなど、なでしこジャパンを長く牽引した。国際Aマッチ通算90試合37得点。

[PROFILE]
町田瑠唯(まちだ・るい)
1993年3月8日生まれ、北海道出身。女子バスケットボール・Wリーグの富士通レッドウェーブ所属。ポジションはポイントガード。チームの司令塔として、多彩なパスで得点を生み出す。高校3年時に全国高校総体と国体、全国高校選抜の三冠を達成し、高校卒業後はWリーグの富士通でプレー。リオデジャネイロ五輪ベスト8、東京五輪銀メダル。同大会の準決勝フランス戦では、大会新記録となる1試合18アシストを記録した。Wリーグの21-22シーズン終了後に渡米し、ワシントン・ミスティクスと契約、4人目の日本人WNBAプレーヤーに。1シーズンプレーした後、富士通に復帰。2023年9月に株式会社RUIを設立し、オリジナルファッションブランドを展開している。

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