社員応援団から企業文化の象徴へ。富士通チアリーダー部「フロンティアレッツ」が紡いだ47年
2025年、富士通アメリカンフットボール部「フロンティアーズ」が創部40周年を迎えた。その記念試合のハーフタイムで、創部47年を数える富士通チアリーダー部「フロンティアレッツ」が歴代メンバーと共に特別パフォーマンスを披露した。1978年、富士通サッカー部(現・川崎フロンターレ)の応援団「バトントワラー部」として始まった彼女たちの活動は、時代とともに形を変えながら半世紀近く続いている。社員主体の応援から企業文化の象徴へ。チアリーディングが持つ「応援する力」と「企業文化の継承」という側面に焦点を当て、富士通の企業スポーツ推進室の常盤真也さん、チアリーダー部チームアドバイザーの田上由美子さん、チアリーダー部スタッフの山岸亜未さんに話を聞いた。
(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=富士通フロンティアレッツ)
サッカー部応援から始まった物語
――富士通は長年、アメリカンフットボールやチアリーダー活動を支えてきた企業として、応援文化にどのような意義を感じていますか?
常盤: 当社にはアメリカンフットボール部のほか、女子バスケットボール部や陸上部など複数の運動部があります。単体で活動するよりも、応援を含めて社員全体を巻き込むことで、一体感のある“絵”を作れていると感じます。チアリーダー部の存在は、運動部を支えるだけでなく、会社そのものを盛り上げる要素にもなっています。
――1978年の創部当時は、どのようなきっかけで応援団が作られたのですか?
田上:Jリーグの川崎フロンターレの前身である富士通サッカー部の応援団として、チアリーダー部の前身「バトントワラー部」が発足したのがきっかけです。創設メンバーの方が、バトントワリング経験者を集めてスタートし、私はその5〜6年後に入社しました。
当時は今でいう高校サッカーの応援のような雰囲気で、観客席にチアリーダーが立ち、ブラスバンドの演奏で応援していたと聞いています。
――当時の練習の雰囲気はどのようなものだったのでしょうか?
田上:当時はバトントワリング経験者を中心に、バトンやポンポンを振りながら応援していました。最初の頃は週1回の練習だったと聞いています。私が入部した頃も同じでしたが、チアリーダー部が発足し、レベルアップするにつれて週2回になり、今では週3回行っています。
――山岸さんがチアリーダー部に所属された時期やきっかけを教えてください。
山岸:学生時代は競技チアをしておりました。その中でチアのスピリット「誰かのために頑張る」ことに魅了され、競技チアで培った技術や表現力を活かして、頑張っているスポーツ選手を全力で応援してみたいと思い、2016年に入社・入部し、約7年間現役として活動しました。引退してからはスタッフとして3年目になります。現役の練習は平日2日、休日1日で、平日は夜7時から9時半、休日は午前9時から13〜14時ごろまで行っています。

サッカー応援からアメフト応援へ。チアの原点と転換点
――バトントワリングからチアリーダーへと変化していった背景を教えてください。
田上:当初はサッカー部を応援していましたが、1985年にアメリカンフットボール部が創部し、1988年に社会人リーグ1部に昇格しました。その際、「せっかくバトン部があるのだから、ぜひアメフトでも応援してほしい」と声をかけられたのがきっかけです。
ただ、サッカー向けの応援スタイルではアメフトには合わず、アメフトに関しては素人だったので、最初は試行錯誤の連続でした。そこで本場アメリカのアメフト応援を学ぶために、アメリカのチアリーダー協会の日本支部の講師を招いたり、NFLの試合映像を研究したりして、アメフトに適した応援を取り入れていきました。その結果、応援スタイルが現在のチアリーダーへと変化していきました。
――チアリーダーになってから、メンバー数にも変化はありましたか?
田上:47年の歴史の中で、サッカー部時代は等々力競技場で一人で応援した方もいたと聞いています。アメフト応援初期は10人ほどで活動していた時期もありましたが、少しずつ人数が増え、今は17人、多い時は20人ほどで応援していました。

「すべて自分たちで作る」自立した社員チーム
――現在のチアリーダー部の「創部47年」という歴史をどのように受け止めていますか?
山岸:47年前に創部してくださったOGの皆さまへの感謝の気持ちが何より大きいです。それと同時に、誇りと責任を強く感じながら活動をしています。
常盤:社内では「チア部」と呼ばれていて、練習メニューや振り付けなどすべて自分たちで考えています。非常に自立した組織で、それは昔からの伝統でもあると思います。「自分たちの応援でチームを勝たせる」というマインドが強く、何事も突き詰めて取り組む姿勢が印象的です。私はアメフト部の出身ですが、彼女たちのストイックな姿勢にいつも刺激と勇気をもらっていました。
――パフォーマンスのクオリティからはチアリーダーのプロチームのようにも見えますが、メンバーは基本的に社員で構成されているのですか?
常盤:はい、現在はすべて社員で構成されています。一時期、社員だけでは人数が足りなかった時代に社外の方を受け入れていたこともありますが、今は社内でしっかりとメンバーを確保できています。
――どのような過程でメンバーを選出しているのでしょうか。
山岸:チアリーダー部を志願してくださる方に向けたオーディションを実施し、一人一人のマインドやスキルなどを総合的に見て選考しています。
――実際、メンバーはほとんどがチア経験者なのでしょうか。
山岸:ここ数年は、チアが社会的に広がっていることもあり、幼少期から続けている人や、学生時代に経験した人が多いですが、他ダンス経験のみの方や未経験のメンバーもおり、多様なバックグラウンドを持つ人たちで構成されています。
47年の伝統をつなぐ応援グッズと先輩の思い
――歴史ある部として、先輩方の思いを意識することもありますか?
山岸:長い歴史の中で築かれた伝統を常に意識していますし、私自身も憧れを持って入部しました。社業との両立など、先輩方が築き上げてきてくださったものをしっかり受け継いで次につなげていきたいと考えています。先輩が使っていた応援グッズを大切に受け継ぎ、初代が使っていた曲を今も使用するなど、「歴史がつながっている」と実感する場面が数多くあります。
常盤:チアリーダー部の応援グッズはすべて手作りです。ボロボロになっても大切に修繕しながら使い続けていて、応援グッズに対する愛着も一つの伝統です。
――どのような応援グッズがあるのですか?
山岸:フラフープに生地をかぶせ、「TOUCH DOWNやFRONTIERS」という文字をフェルトで貼り付けたオリジナルグッズがあります。これは富士通フロンティアーズ仕様の特別なもので、OGの方々の思いをつなぐ象徴でもあります。生地が裂けたり色あせたりしても、毎回手縫いで直しています。そうすることで、応援に込める思いがさらに強まっていると感じます。
――チア部の活動に真剣に取り組む中で、会社との関わり方にも変化がありましたか?
山岸:社員として働きながら活動しているので、同僚や上司に「試合を見に来てください」と声をかけることで、社内でのつながりが広がっていきます。企業スポーツの中で、社員がチアリーダーという形で運動部を応援しているのは、私たちくらいかもしれません。社員としての帰属意識や一体感により、「絶対に勝たせたい」という気持ちは日々強くなっています。

チアが生む一体感「応援が企業文化を照らす」
――「フロンティアレッツ」はアメフト部と合同で地域の子どもたちをサポートする活動も行っています。応援部門を継続することが、企業文化にどう還元されていると考えますか?
常盤:チア部員は各職場に配属されているので、職場全体が明るくなるという好影響があります。全社的にその効果を行き渡らせるのは難しいですが、少しずつ広がっている実感があります。
また、富士通スタジアム川崎で実施している「キッズチア教室」の先生として、フロンティアレッツのメンバーを派遣する活動を8年間続けており、川崎市の小学校でも普及活動を行っています。最近チアが流行っていることもあって、子どもたちもすごく喜んでくれるんです。そうした中で徐々に地元で認知が広まっているのを感じますし、今後は社内だけでなく地域全体を明るくする存在になっていきたいです。
田上:チアリーダーは明るく元気に、周囲に勇気を与える存在であり続けてほしいです。アメリカではチアリーダーが“ロールモデル”とされていますが、私たちも公私において憧れられる存在でありたいですね。
チアリーダーは一見華やかに見えますが、それだけではなく、一会社員として芯を持ち、エレガントでありながらも応援魂を忘れないようにしています。歴代のチアリーダーが大事にしてきた、その泥臭い部分は根底に持ち続けたいと思っています。

【連載後編】富士通フロンティアーズ40周年。ハーフタイムを彩ったチアリーダー部“歴代70人”のラインダンス
<了>
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