森保ジャパンの世代交代は進んでいる? データで見る日本代表メンバーの入れ替え率
2022年FIFAワールドカップ カタール大会に向け、長い道のりを戦うサッカー日本代表。特に攻撃陣に若いメンバーが入り、2018年ロシア大会から大きく世代交代をしているように見える森保ジャパンだが、実際のところはどうなのだろうか?
前回ワールドカップ本大会から次大会の予選初戦までに、どれだけメンバーが入れ替わっているのか、過去6大会をもとにデータで振り返りたい。
(文=池田敏明、写真=Getty Images)
中島、南野、堂安、久保……、若手が躍動する森保ジャパン
8月30日、サッカー日本代表の森保一監督は、9月5日のキリンチャレンジカップ2019パラグアイ戦、そして同10日に行われる2022FIFAワールドカップ カタール・アジア2次予選ミャンマー戦に向けての招集メンバー23人を発表した。森保監督が就任以来、重用してきた中島翔哉や南野拓実、堂安律に加え、コパ・アメリカに参加した久保建英もメンバー入りを果たしており、いよいよカタールW杯に向けての戦いがスタートする、という機運が高まっている。
昨年のロシアW杯当時と比較すると、特に攻撃陣に森保監督の“独自色”が垣間見えるため、今まで以上にメンバーが大きく様変わりしているように見える。だが、本当にそうなのだろうか。
日本代表は1998年フランス大会から6大会連続でW杯に出場している。本大会後には新監督が就任し、テストマッチやAFCアジアカップなどを経て次のW杯のアジア予選に臨む、という流れが確立されているが、過去の代表チームではW杯から次のW杯に向けたアジア予選の初戦までに、どの程度、選手が入れ替わっているのだろうか。
W杯の招集メンバー、そして次の予選初戦に招集されたメンバーを比較調査してみた。ただし2002年日韓大会は開催国で予選には参加しなかったため、2000年アジアカップのメンバーを判断材料としている。
ロシアW杯メンバーからは9人が残った
まずは最新のメンバーから見てみよう。2018年ロシアW杯に出場した23人のうち、今回も招集されたのは川島永嗣、長友佑都、吉田麻也、酒井宏樹、植田直通、原口元気、柴崎岳、遠藤航、大迫勇也の9人。森保監督はロシアW杯では西野朗監督の下でヘッドコーチを務めていたが、1年あまりの間に14人を入れ替えた計算になり、やはり“継続路線”というよりは“独自路線”の印象が強い。
では、過去のデータではどうなっているのだろうか。ここからは時系列で見ていこう。1998年フランスW杯当時は招集メンバーが22人で、2000年アジア杯も同数だったが、フランスW杯メンバーの中で2000年アジア杯にも出場したのは川口能活、服部年宏、名波浩、森島寛晃、小野伸二の5名。この時は岡田武史監督からフィリップ・トルシエ監督に代わっており、選手も実に17人が入れ替わっている。
2002年日韓W杯はそのトルシエ監督の下でベスト16進出を果たし、大会後は日本と縁深いジーコが新監督に就任。規律を重視したトルシエから選手の自主性に任せるジーコに代わったが、2004年2月のドイツW杯アジア1次予選の時には楢﨑正剛、宮本恒靖、稲本潤一、中田英寿、三都主アレサンドロ、小笠原満男、鈴木隆行、柳沢敦の8人が残った。
山田暢久や坪井慶介はジーコの下で招集されるようになった選手だ。ただ、このタイミングで招集されなかった川口や中田浩二、福西崇史、小野らもドイツW杯ではメンバー入りしている。
2006年ドイツW杯が1分2敗のグループステージ敗退に終わると、一度はイビチャ・オシムが代表監督に就任したが、2007年11月に脳梗塞で倒れ、岡田武史監督の下で2010年南アフリカW杯のアジア3次予選に挑んだ。ドイツW杯メンバーで2008年2月のタイ戦に招集されたのは、楢﨑、川口、駒野友一、加地亮、中澤佑二、遠藤保仁、高原直泰、巻誠一郎の8人。GKの2人は30代前半だったが、フィールドプレーヤーは20台半ばの選手が多く、南アフリカ大会本番でピークを迎えそうな選手を残した印象が強い。
ハリルホジッチ監督は意外にも?
ここまでの流れを見ると、1998年フランスW杯から2000年アジア杯では5人だったが、日韓W杯からドイツW杯アジア1次予選、ドイツW杯から南アフリカW杯アジア3次予選については、いずれも8人ずつが残っている。直近のロシアW杯メンバーでカタールW杯アジア2次予選に残った選手も9人なので、「およそ8~9人」が残る傾向がある、と推察できる。引き続き検証してみよう。
岡田武史監督の下で挑んだ2010年南アフリカW杯ではベスト16進出を果たし、大会後はイタリア人のアルベルト・ザッケローニ監督が引き継いだ。迎えた2014年ブラジルW杯のアジア3次予選初戦は2011年9月の北朝鮮戦で、この時は川島、駒野、内田篤人、今野泰幸、阿部勇樹、遠藤、中村憲剛、長谷部誠、岡崎慎司と、9人が残った。
南アフリカW杯で大活躍した長友佑都と本田圭佑は招集外だったが、彼らが入っていても11人となるし、この中の誰かが外れて9人前後に落ち着いていた可能性もある。
2014年ブラジルW杯は1分2敗でグループステージ敗退。ザッケローニ監督が指揮官としてW杯未経験者だったことが敗因の一つとされ、経験豊富なメキシコ人のハビエル・アギーレ監督がその後を継いだが、自身の八百長問題によって2015年2月に解任を余儀なくされ、同年3月にヴァヒド・ハリルホジッチ監督が就任した。
ロシアW杯アジア2次予選の初戦シンガポール戦はこの監督交代劇が起きた3カ月後の2015年6月のことで、この時はブラジル大会のメンバーから実に13人が残っている。
顔触れは川島、西川周作、酒井高徳、長友、森重真人、酒井宏、吉田、長谷部、山口蛍、本田、岡崎、香川真司、大迫。歴代最多キャップ数を誇る遠藤を外すなど大胆な改革に着手したハリルホジッチ監督、しかもアギーレ監督時代を挟んでいることもあって大幅にメンバーが入れ替わっている印象もあったが、意外と手堅い人選だった。
フランスや韓国の傾向は?
最小で5人、最大で13人と幅はあったものの、W杯メンバーから8~9人が残って次のW杯予選に挑む、というのが日本代表の一般的な流れのように見える。残る選手は意外と少ない、という意見もあるだろうし、日本はW杯ごとに監督が入れ替わるため、監督の好みによって選手が入れ替わるのは当然ではないか、という意見もあるだろう。
念のためロシアW杯王者のフランス代表についても調査してみたが、2006年ドイツW杯、2010年南アフリカW杯と2大会を率いたレイモン・ドメネク監督時代を見ると、南アフリカW杯のヨーロッパ予選初戦の際には2006年ドイツW杯出場メンバーから6人が残り、現在のディディエ・デシャン監督時代の下では、2014年ブラジルW杯のメンバーの中からロシアW杯のヨーロッパ予選初戦に招集されたのは7人だった。
1人の監督が長く務めるいる状態でも、チームに残る選手の割合は日本とそれほど大きくは変わらないことが分かった。また、日本と同じくW杯ごとに監督が入れ替わり、外国人指揮官と自国の指揮官が混在する韓国を見ても、各W杯後に残る選手は概ね10人前後となっている。
ただ、フランスは自国開催で優勝した1998年フランスW杯から2年後のUEFA EURO2000に向けて22人中18人が残り、そこから2002年日韓W杯に向けても22人中16人が残った。
つまり、フランスW杯と日韓W杯をほぼ同じメンバーで戦ったことになる。同じメンバーで戦い続ければ当然ながら連係や一体感は高まるだろうが、一方で停滞感も出てくる。1分2敗という無残な成績で日韓W杯を終えることになったのは、この停滞感と無関係ではないかもしれない。
これらを踏まえると、ロシアW杯メンバーから9人が残った今予選の日本代表メンバーは、かなり理想的な陣容といえるかもしれない。森保監督がこのような傾向を意識したかどうかは分からないが、絶妙なバランスの構成になっているといえるのではないだろうか。
<了>
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