
浦和・橋岡大樹「なりたいのは上手い選手じゃない…」 ACL決勝の屈辱を胸に、世界への飛躍を誓う
Jリーグ屈指の人気を誇る、浦和レッズの生え抜き選手として、プロ2年目の壁を乗り越えてレギュラーポジションに定着し、さらなる活躍を見せた橋岡大樹。長年愛され続けてきた浦和サポーターのみならず、“五輪世代”の主軸として、日本中から注目と期待が寄せられるようになった若きディフェンダーが目指す、未来とは――。
(インタビュー・構成=REAL SPORTS編集部、写真=NIKE)
さらなる成長を目指して、もっともっとチャレンジを
2018シーズンに浦和レッズのアカデミー組織からトップ昇格を果たし、生え抜きとしてトップチームのレギュラーにも定着してきましたが、2019シーズンを振り返ってみていかがですか?
橋岡:プレー面では、前年より攻撃の部分でできることが増えたと思います。アシストもゴールの数も増えましたし。そう考えると、もっともっとチャレンジしていけば、2020年はさらにいろんなことができるのかなと可能性を感じられた年でした。
橋岡選手のストロングポイントとして、体を張るプレーが印象的ですが、ディフェンス面についてご自身ではどう思いますか?
橋岡:ディフェンス面では、昨シーズンと変わらずにやっていきたいです。でも、もっと良いプレーをするためには、体幹の部分や、体の強さをもっと付けていかないといけないなと思っています。
プレー面で課題に感じていることはあります?
橋岡:守備では、相手に当たり負けしないように、どんな体制でも崩れないような体幹をつけること。攻撃では、縦に仕掛けることはできてきているので、シュートを打ったりクロスの上げ方とか、中に仕掛ける攻撃の部分でいろんなオプションが多くなればもっと成長できるかなと思います。
Jリーグで、昨シーズン印象に残っている試合は?
橋岡:清水戦(2019年10月6日/J1リーグ 第28節 浦和レッズvs清水エスパルス)ですね。負けていた状況から1ゴール1アシストできたので、自分の中ではチームに貢献できたという手応えを感じた試合でした。
まずはチームで良いプレーを。そして、その先の東京オリンピックへ――
昨シーズンもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝へ行って、いよいよ東京オリンピックという大きなイベントが控えている中、世界と戦う上でどのようなことを心掛けていますか?
橋岡:東京オリンピックが始まるので、それに向けて良い準備をしないといけませんが、オフの時から勝負が決まってくると思います。(編集部注:インタビューはオフ期間中の2019年12月25日に実施)でも、一年戦っていくのってけっこうハードできついので、オフ中は休む時はしっかり休んで、徐々に準備を整えながら、今年の初めには良い形でチームに入っていけたらいいなと思います。
ACLなどでワールドクラスの選手たちと対戦して感じた手応えは?
橋岡:準決勝までは正直、ACLの舞台でもできるなと感じていたんですけど、決勝では守備の部分でやられてしまったなと。攻撃面でも一枚剥がすのにすごく苦労するし、同じことをやっていたら剥がせないので。相手のアル・ヒラルにはサウジアラビア代表や元フランス代表(バフェティンビ・ゴミス)、イタリア代表の選手(セバスティアン・ジョヴィンコ)もいましたけど、アジアの舞台でも、自分はこんなにできないんだっていうのを感じました。世界で活躍するためにはもっともっと頑張らないといけない。
東京オリンピックは少ないメンバー枠で、しかもハイレベルな選手たちが集まる中での競い合いになりますね。
橋岡:東京オリンピックは絶対出たいです。それは誰もが思っていることですし、みんながライバルで、そのライバル一人ひとりに勝っていかないといけない。そのためには、チームでどれだけ良い結果を残せるかだと思うので、今年は東京オリンピックのことは考えながらも、まずはチームで良い結果を残せるように頑張っていくことで、その先に東京オリンピックがついてくると思っています。なので、自分を信じて、チームで良いプレーができるように頑張りたいです。
いとこの橋岡優輝選手も、陸上・走幅跳で東京オリンピックでの活躍が期待されていますが、東京オリンピックについて話したりするんですか?
橋岡:します、します。両方オリンピックに出て活躍できたらいいなって話しています。あっちが良い結果を出したら刺激を受けますし、僕も頑張ろうって思うので、競技は違えど良い影響を与え合っているんじゃないかと思います。
今後、自分がやっていきたいポジションは?
橋岡:それが、あんまり自分でもわかっていない状態で。もちろんサイドバックもウィングバックも楽しいし、センターバックも、全部が楽しいんですけど、今後このポジションでこうなっていくべきっていうのが、正直まだわかっていなくて。かといって、今のポジションが違うとも全く思わないし、自分に与えられたポジションで世界を目指したいと思います。
“うまい選手”はたくさんいる。“人を感動させられる選手”になりたい
浦和レッズの2020シーズン新ユニフォームが発表されましたが、特に今回新アウェイユニフォームが鹿島アントラーズ、サンフレッチェ広島との3クラブ史上初の統一テーマで話題になっていますね。実際着てみていかがですか?
橋岡:日本の国旗をイメージしているということで、このユニフォームを着ると浦和レッズの選手でありながら、日本を背負っているという気持ちにもなるんじゃないかなと思います。赤のパンツというのは今までなかったので、すごく新鮮ですし、見た目もかっこよくて着ると気持ち的にも上がるので、モチベーションが高まります。
このユニフォームには、「スポーツの祭典に向けてスポーツの魅力や楽しさ、感動、そして、幸せや平和の実現をフットボールを通じて目指す」という、ナイキと各クラブの想いが込められていますが、橋岡選手がアスリートとして、ファンに伝えたいのはどんなことですか?
橋岡:僕がずっと思っていることがあって。うまい選手、すごい選手っていっぱいいますけど、人を感動させる選手になりたい、と。アスリートって、いろんなファンの人がいて成り立っていて、その人たちが毎週僕たちを見にきてくれていて、どういう姿を見せたいかと考えた時に、ただうまい、すごいだけだとあんまり印象に残らないんじゃないかなと。プレーで感動を与えられたらすごく印象に残ると思うし、その選手を応援したいという気持ちにもなると思うので、人をプレーで感動させられる選手になりたいです。(2018FIFA)ワールドカップ ロシア大会を現地へ見に行って、日本がコロンビアに勝った時、日本のサポーターたちが泣いているのを見て、スポーツは人を感動させ、人の心を動かす力があるというのを実感しました。その時に、僕は何が何でも日本中のみんなを感動させられるようなプレーヤーになりたいなと思いました。スポーツで人を感動させられる力っていうのは、独特だと思うんですよね。
素敵ですよね、本当にそう思います。橋岡選手自身が、アスリートとしての価値を感じるようなエピソードがあれば教えてください。
橋岡:僕自身がプロになって実感したのが、ファン・サポーターの方や小さい子どもが、Instagramとかで「どうやったら橋岡選手みたいになれますか?」とか、「橋岡選手みたいになりたいです」とか、いっぱいそういうコメントをくれるし、練習場に来た時などにも声をかけてくれたりするんです。自分に憧れてくれている人たちがたくさんいるのが、すごくうれしくて。僕もまだまだですけど、少しは目標にされるような選手になってきたのかなと思って。なかなかプロ選手にならないと、人の目標にされることってないと思うので、僕自身の価値が少しずつ上がってきているのかなと感じます。
プロになる前、プロになりたいと思うきっかけになったエピソードは?
橋岡:(2010 FIFAワールドカップ)南アフリカ大会の時に、選手たちが必死に戦う姿を見ているサポーターたちが、心から本気で応援している姿や試合を見て泣いている様子を見て。絶対にこういう大会に出て、僕自身も日本中の人たちに感動を与えて、自分がその時に感じたような気持ちになってくれたらいいなと思ったので、絶対にプロになってやるって心に決めました。ノックアウトステージ進出がかかったデンマーク戦では、一番楽しんでいたのは選手自身でしょうけれど、見ていた自分たちも楽しんだし感動を与えてもらったので、逆に自分がそういう気持ちを人に与えられる立場に立つというのはすごく幸せなことだと思います。もっともっと練習してうまくなって、僕も人を感動させられるような選手になりたいです。
<了>
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PROFILE
橋岡大樹(はしおか・だいき)
1999月5月17日生まれ、埼玉県出身。ポジションはディフェンダー、ミッドフィルダー。Jリーグ・浦和レッズ所属。2012年より浦和レッズのアカデミーで育ち、2017年より2種登録選手としてトップデビュー。2019年のAFCチャンピオンズリーグではブリーラム・ユナイテッドFC戦で2ゴールの活躍を見せて勝利に貢献。同年EAFF E-1サッカー選手権2019で日本代表初招集、初出場を果たした。2020年1月にタイで開催されるAFC U-23アジア選手権のメンバーに選出。高い身体能力とアグレッシブなプレーを武器に、東京五輪での活躍が期待される。陸上・走幅跳で全日本チャンピオンの橋岡優輝はいとこ。
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