日本シリーズ「優勝の方程式」3箇条とは? 巨人OBが語る「2・3・2」の法則
11月21日、いよいよ日本一を決する戦いが始まる。今季の読売ジャイアンツ、福岡ソフトバンクホークスは、共に圧倒的な差をつけてリーグ優勝を果たした。だが143試合(今季は120試合)の長期間にわたって勝ち星を積み上げていくペナントレースと、最大でもわずか7試合の短期間で雌雄が決する日本シリーズでは、求められる戦い方は異なってくる。では具体的に、日本シリーズでは優勝するためにはいったい何が必要になるのか? 3つのポイントで見ていきたい。
(文=花田雪、写真=Getty Images)
短期決戦の日本シリーズは「何が起こるかわからない」
11月21日から行われるプロ野球・日本シリーズは、読売ジャイアンツと福岡ソフトバンクホークス、セ・パ両リーグの優勝チーム同士で行われることが決まった。
序盤から独走した巨人、終盤に怒涛のスパートを見せたソフトバンク。シーズンの戦い方にこそ大きな差があったが、共に「独走」でリーグ優勝を決めたという意味では、日本一を決めるにふさわしい対戦カードになったといえる。
昨季、屈辱の4連敗を喫した巨人に対し、今季のクライマックスシリーズも含めてポストシーズン12連勝中と短期決戦に圧倒的な強さを見せているソフトバンク。シーズン終盤に調子を上げてきたこともあり、ソフトバンクやや有利という見方も多いが、最大でも7戦しか行われない日本シリーズは文字通り「何が起こるかわからない」。
野球界ではよく、ペナントレースとポストシーズンでの戦い方は違う、という言われ方をするが、特に今季はコロナ禍の影響で例年以上に「読めない」シリーズになるのではないか。
筆者もこれまで、多くの現役選手、OBに「短期決戦での戦い方」を聞いたことがあるが、ここでは彼らのコメントをもとに、「日本シリーズを勝つために必要なこと」が何か、あらためてひも解いてみたいと思う。
日本一の方程式その①:7戦トータルで考えるのではなく……
日本シリーズではよく「2戦目が大事」という言葉を耳にする。かつて西武ライオンズを率いた森祇晶氏や、ヤクルトスワローズの監督を務めた野村克也氏らが提唱したことから日本球界に定着した考え方だ。
もし1戦目を落としても、2戦目に勝てば星を五分にできる。逆に1戦目で勝てていれば、2連勝で一気に有利になる。4戦先勝制で行われる日本シリーズにおいて、どの試合で勝ちを拾うかは、確かに重要だろう。
筆者もこの考え方に異論はないが、先日、巨人、中日で選手、指導者を務めた川相昌弘氏から、こんな言葉を聞いた。
「確かに2戦目は大事です。ただ、私はそれ以上に、日本シリーズを『7戦トータル』で考えるのではなく、2戦、3戦、2戦の『超短期決戦が3つある』と考えることの方が重要だと思っています。最初の2戦で最低1つ、次の3戦で2つ、最後の2戦で1つ勝てば、計4勝。この3つの超短期決戦でそれぞれ負け越さなければ、数字上は日本一になれる。移動日も挟まりますし、その間でデータの見直しや精神的な立て直しも行うことができます」
日本シリーズを「7戦中、4戦勝てばいい」と捉えるのではなく、さらに細分化して星勘定をする。これは巨人時代に数多く日本シリーズを経験した川相氏だからこそ感じられることかもしれない。
日本一の方程式その②:前のゲームを捨てる
川相氏は、さらに続ける。
「超短期決戦を3つと考える上で大切なのは、『前のゲームを捨てる』ことです。もちろん、相手の攻め方や戦略といったデータはしっかりと残しておく必要がある。『捨てる』のは感情です。特に試合に負けたり、個人として結果が出なかったときこそ、この『捨てる』作業がより重要になります。極端な話、日本シリーズで数字を残せなくても、プロ野球選手としての個人成績、もっといえば年俸に影響が出るようなことはほとんどありません。私の場合は打者でしたが、前の試合で4打数0安打に終わったとしても、打率を気にする必要はない。シーズンではないので、次の試合で打てればいいとすぐに切り替えることができるか。逆に引きずってしまうと、ズルズルといってしまう。『逆シリーズ男』という言葉もありますが、これがまさにそうです」
ソフトバンク・千賀滉大も同じ言葉を口にする
前の試合を「捨てる」ことに関しては、ソフトバンクのエース・千賀滉大も以前、似たようなことを話してくれたことがある。
「シーズンでは、例えば1試合負けても『この敗戦を次に生かそう』と考えられることがありますが、ポストシーズンは違います。もちろん、なにかしら生きることはあるかもしれませんが、基本的に負けは、負け。すぐに切り替えて次の試合に勝つことを考える。対戦相手も同じなので、変に引きずるよりは『次、次』と考える必要があると思います」
長いシーズンの場合は、たとえ負けたとしても、次の対戦機会にそのデータや教訓を生かすことができる。しかし、日本シリーズは違う。特に先発投手の場合、全7試合で登板機会は多くても2試合程度。投手からすれば「打たれた打者」、打者からすれば「抑えられた投手」について、いろいろと試行錯誤をして対策を練る時間などはない。
とはいえ、日本一のかかった大舞台。そう簡単に気持ちなど切り替えられるものではない。そこで重要になってくるのが「移動日」だ。
「7戦目まで行うと仮定すると、2日間ある移動日の過ごし方が、気持ちの切り替えをする絶好のタイミングです。連戦だとどうしても前の日のことを引きずってしまいがちですが、1日空けば意識して気持ちをリフレッシュさせることもできる。もちろん、前日の試合もなるべく引きずりたくはないですが、1日という時間をうまく過ごして、新たな気持ちで次の試合に臨む。これもシリーズを『2戦、3戦、2戦』で考えることにつながります」
日本一の方程式その③:打者も投手も「待つな」「逃げるな」!
川相氏いわく、シリーズでは投手の攻め方も変わってくるという。そんな戸惑いも、移動日にうまく消化することで、次の試合に臨むことができるという。
「正直、私自身はあまり日本シリーズで結果を残せていません。その反省の意味もあります。現役時代、2番打者という役割もあってどちらかというとボールを『待つ』タイプだったのですが、日本シリーズにはそのスタイルはあまり合っていないと感じます。投手は初球からどんどんストライクを取ってきますし、早いカウントから決め球を投げてくる。心のどこかに『待つ』気持ちがあると、あっという間に追い込まれてしまう。投手側の心理に立っても同じです。打者はシーズン中よりも初球から積極的に打ってくる。ただし、そこで『逃げ』を選択してしまうとカウントも悪くなる。シーズン中よりもお互いに余裕がないぶん、『遊び』が少なくなる傾向はあると思います」
川相氏の考え方でいうと、打者なら積極性のあるタイプ、投手なら初球からどんどんストライクを取っていくタイプの方が、短期決戦に順応しやすいという。
選手個々だけでなく、采配面でも選手交代のタイミングはシーズン中よりも早く、積極的な選手起用が見てとれるのが日本シリーズの特徴だ。
例年と異なる開催時期だけに……
また、今季はコロナ禍の影響で例年よりもシリーズ開催が1カ月ほど後ろ倒しになっている。例年であれば各球団は納会を行い、1年を締めくくる時期でもある。
11月下旬開催ということもあり、当然ながら気温も下がる。今年は全試合がドーム開催とはいえ、いつもなら「実戦を行っていない時期」に行われるだけに、選手のコンディショニングや体調管理も重要になってくるはずだ。
2年連続で同じ顔合わせになった2020年の日本シリーズ――。
短期決戦の戦い方を実践し、コロナ禍で前例のない1年となった今季のプロ野球界で最後に笑うのは、果たして巨人か、ソフトバンクか――。
<了>
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