
「Kaito」から「櫻井海音」へと続くリアル Jリーグ下部組織を経て、音楽、芝居に出会うまで
スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回のゲストはバンド「インナージャーニー」のドラマー「Kaito」として音楽活動をする傍ら、俳優としても活動する櫻井海音。
2020年「オオカミくんには騙されない」で一躍注目を集めると、2021年にはNHK連続テレビ小説「エール」で俳優デビュー。モデルとしても活動するなど幅広い分野で活躍する大注目の若手タレントの一人だ。
幼少期はJリーグ名門クラブの下部組織でプロを目指してサッカーをプレー。しかし挫折を経験し、そこから音楽と出会い、どのようにして今につながったのか。「Kaito」から「櫻井海音」へと続くリアルを伺った。
(文=篠幸彦、撮影=大木雄介)
幼少期はプロサッカー選手を目指して
秋山:この番組はスポーツに関わる方が出演されることが多いんですが、海音さんは好きなスポーツや、プレーされていたスポーツはあるんですか?
櫻井:僕はずっと幼少期からサッカーをやっていて、中学2、3年生くらいまで11年間ほどはプロを目指してプレーしていました。その後、音楽を始めたり、違う方向が見つかったりと、サッカーから離れる時期がありました。そこからはフットサルなどを仲間内でエンジョイでやるようになりました。今ではオフの日はずっとフットサルをやっていますね。
五十嵐:アーティストでありながら運動もしっかりやるっていうのは健康にもいいですね。興味を持って見るスポーツというのはあるんですか?
櫻井:それが本当にサッカー以外のスポーツのことがあんまりわからないし、見るというより、自分がプレーするほうが好きなタイプで。
五十嵐:わかる。僕も子どもの頃から野球をやるのは好きだけど、ほとんど見なかったんですよね。
秋山:アスリートの方とか、アスリートを目指していた方もそうですけど、そういうケースは多いですよね。
五十嵐:でも(プロ野球の世界に)入ったら苦労するんですよね。「あの選手知ってる?」とか、そういう話になると全然ついていけないんですよ。それがなんか失礼なのかなとか思ってしまって、そういうことありますか?
櫻井:けっこうありましたね。本格的にプレーすることをやめてからはプロの試合を見るようになりました。でも自分がプレーしていた頃は逆に見たくなくて、チームメートとかが最近の注目選手とかの話をしていても全くわからなくて、全然ついていけなかったです。
五十嵐:でもサッカーをやっていて、誰かのプレーを真似しようとか、そうこともなかったんですか?
櫻井:なかったですね。だから好きな選手を聞かれても何も答えられなかったです。
五十嵐:じゃあサッカーの足さばきを誰の真似とかより、自分のイメージでこうしたいというのをとにかく追求していった感じですか?
櫻井:本気でサッカーをやっていた時はそうでしたね。でも今は逆に好きな選手のプレーを見て「どうやったらこれを真似できるか」みたいな感じですね。
五十嵐:やめた後にプロの技術とかを見るようになって、「あの時やっておけばよかったな」みたいになったりします?
櫻井:めちゃくちゃなりますね(笑)。
五十嵐:やっぱそういう時に後悔しちゃうもんですよね(笑)。
ドラムが一番アグレッシブに全身を使って表現できる
五十嵐:サッカーをプレーしていた頃は試合を見ることはあまりなかったんですか?
櫻井:ほとんどなかったですね。中学の頃にJリーグのクラブの下部組織に所属していたので、そのトップの試合を見たりはしていましたけど、あんまり自分から能動的に見ることはなかったです。
五十嵐:僕だったら技とか盗みたいもんだけど、それってどんな感じなんだろう。自分の中だけで完結しちゃうってわけでしょう?
櫻井:そうですね。でもそれで挫折というか、徐々にサッカーが嫌いになってやめて、しばらくトラウマみたいなものを抱えていたんですね。そこから2年くらい経って克服して、また楽しいというところに戻ったんですけど。
僕は人から教わったりとか、押し付けられたりするのがすごく苦手なんです。Jの下部組織にいると規則も厳しいし、こういうプレーをしなきゃいけないとか。周りには同世代でレベルの高い選手がいっぱいいるので、そういう中でやっている自分がどんどん楽しくなくなって、嫌いになってしまったんです。もうやめようと決意した日にコーチに「いつまでにやめたいです」ということを話したんです。でもやめるまでの間は練習に行かなきゃいけないわけですよ。
五十嵐:やめることがわかっていて行くのはつらいですね。
櫻井:そうなんですよ。練習に行く電車の中がすごくつらくて、やめてからの2年くらいは練習場や試合に向かう時のことが悪夢のように夢に出てきました。
秋山:やめてサッカーが嫌いだった時期に音楽に出会ったんですか?
櫻井:そうですね。サッカーに向けていた熱量を音楽や新たな夢に注げたので、その期間はその期間でよかったと思いますね。
五十嵐:でも常に夢中になれるものが見つかって、ある意味幸せですよね。
櫻井:自分の中のポリシーというか、やると決めたことをやり始めたらプロというか、それを職業とするということしか頭になかったんですよね。
秋山:それくらい興味がないとオールインできないってことですよね。
五十嵐:やるからにはトップ、頂点を目指すということですよね。バンドをやるという時は何から始めたんですか?
櫻井:サッカーをやめてからバンドの音楽というものに初めて出会ったんです。好きだったバンドのドラマーを見た時に、それまでバンドがどんな楽器で構成されているかとか、どんなことをやっているかを理解しないで聴いていたんだなと。改めて好きなバンドのライブの映像を見た時に、ドラムってこんなかっこいいんだなって。それでプロのドラマーになりたいと思ってドラムを始めたんですよね。
五十嵐:普通だったらボーカルとかいきたいよね。だって一番目立つじゃん。野球だったら「ピッチャーが目立つし」みたいな。そこじゃなくてドラムにいった理由はなんだったんですか?
櫻井:サッカーをやっていたので一番体を動かせる楽器がなんなのかって見ていたり、実際にやってみてもそう感じていた気がします。ドラムが一番アグレッシブに全身を使って表現できるってことだったのかなって、今思い返すとそう思いますね。
五十嵐:ドラムって結構しんどそうだよね。
櫻井:今僕がやっているはポップス寄りのバンドなんですけど、昨日MVの撮影をしていて丸一日演奏をしていたんです。ドラムの僕だけちょっと頭がおかしくなりそうなくらい体が疲れてきて、サッカーが終わった直後くらいの感じに体がなっていたんですよね。バンドの中でもドラムはスポーツ要素が強いなって思いますね。
「Kaito」から「櫻井海音」へ 決意表明の改名
五十嵐:今年の春からこれまでの「Kaito」から「櫻井海音」に改名されましたよね。
櫻井:「Kaito」としてバンド活動をやっていたんですけど、今年に入って個人の活動や俳優として新たに自分というものを確立していきたいという意思を込めて、俳優としての活動は漢字表記で「櫻井海音」として、バンド活動は引き続き「Kaito」としてやっていきます。使い分けという意味合いもありますが、意思表明という意味合いを込めて改名しました。
秋山:俳優業には元々興味があったんですか?
櫻井:元々は全然興味がなくて、個人の活動をするにあたって「オオカミくんには騙されない」というリアリティショーに出て、最初はそこからモデルの仕事までかなと思っていたんです。でもありがたいことにお芝居の仕事もいただけるようになりました。最初は右も左もわからない状態だったんですけど、仕事やレッスンを重ねていくうちに自分で考える面白みみたいなものが徐々に増してきました。
自分で考えて「こういうお芝居をしたらカメラにはどう映っているんだろう」とか、「この表現一つでどういうニュアンスが付け加えられるんだろう」とか。それは音楽も一緒なんですけど、そういう自分で考えて、行動して、チャレンジするっていう感覚がすごく楽しくなってきて、そのタイミングで改名したという感じですね。
五十嵐:サッカーをやっている時も別に好きな選手もいないし、プレーも見なかったわけですよね。役者をやるからには誰かの演技を真似しようとか、そういうことも全然なく、これも全部自分でやっていく感じですか?
櫻井:本当はよくないんですけど、あんまり見るのが得意ではなくて、自分で考えてやっている時間が一番楽しいから成長にもつながるし、熱意も向けられる。そのことをサッカーで一回経験して自分の感覚を理解しているからこそ、そういう取り組み方ができているのかなと思います。
五十嵐:結局誰かの真似になっちゃったりして、そうなると自分じゃなくなってくるからね。
櫻井:本当はいろいろなものを見て勉強することは必要ではあるんですけど、僕はそれをやってしまうとどんどん嫌いとか、苦手の方向になっていってしまうんですよね。
五十嵐:嫌いにならないためには自分の信じた道をいったほうが、結局はハッピーで悪夢を見ないで済むからね(笑)。
櫻井:そうですね。仕事現場に向かう夢とか見なくていいですね(笑)。
<了>
黒羽麻璃央「野球も演劇も根性は共通。根底に愛がある」。“東京ドームで野球”の夢を叶える瞬間
東大出身者で初のJリーガー・久木田紳吾 究極の「文武両道」の中で養った“聞く力”とは?
なぜ高校出身選手はJユース出身選手より伸びるのか? 暁星・林監督が指摘する問題点
“負け組”元Jリーガーから年収1000万ビジネスマンに 「今だから言える」若者たちへ伝えたいこと
[アスリート収入ランキング2021]首位はたった1戦で200億円超え! 社会的インパクトを残した日本人1位は?
****************************
InterFM897「REAL SPORTS」(毎週土曜 AM9:00~10:00)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜
2019年にスタートしたWebメディア「REAL SPORTS」がInterFMとタッグを組み、4月3日よりラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界やアスリートのリアルを発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
****************************
InterFM897「REAL SPORTS」の公式サイトは【こちら】
この記事をシェア
KEYWORD
#INTERVIEWRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
走幅跳のエース・橋岡優輝を導いた「見守る力」。逆境に立ち向かう力を育んだ両親の支え
2025.09.14Education -
アスリート一家に生まれて。走幅跳・橋岡優輝を支えた“2人の元日本代表”の「教えすぎない」子育て
2025.09.14Education -
アーセナルは今季リーグ優勝できるのか? 「史上最強スカッド」でアルテタ監督が挑む22年ぶり栄光の鍵とは
2025.09.12Opinion -
運命を変えた一本の電話。今夏490億円投じたアーセナル、新加入イングランド代表MF“14年ぶり”復帰劇の真相
2025.09.12Opinion -
「守りながら増やす」アスリートの資産防衛。独立系ファイナンシャル・アドバイザー後藤奈津子の信念
2025.09.12Business -
木村和司が語る、横浜F・マリノス監督就任の真実。Jのピッチに響いた「ちゃぶる」の哲学
2025.09.12Career -
“わし”はこうして監督になった。木村和司が明かす、S級取得と「口下手な解説者」時代の苦悩
2025.09.12Career -
松永成立が語る、辞任後の胸中。横浜F・マリノスと歩んだ40年、GKコーチを辞しても揺るがぬクラブ愛
2025.09.12Career -
アスリートは“お金の無知”で損をする? 元実業団ランナーIFAが伝える資産形成のリアル
2025.09.10Business -
日向小次郎は大空翼にしかパスを出さない? データで読み解く、名試合の構造[統計学×『キャプテン翼』]
2025.09.09Education -
「卓球はあくまで人生の土台」中学卓球レジェンド招聘で躍進。駒大苫小牧高校がもたらす育成の本質
2025.09.09Education -
大空翼は本当に「司令塔」なのか? データで読み解く、名場面の裏側[統計学×『キャプテン翼』]
2025.09.08Education
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
木村和司が語る、横浜F・マリノス監督就任の真実。Jのピッチに響いた「ちゃぶる」の哲学
2025.09.12Career -
“わし”はこうして監督になった。木村和司が明かす、S級取得と「口下手な解説者」時代の苦悩
2025.09.12Career -
松永成立が語る、辞任後の胸中。横浜F・マリノスと歩んだ40年、GKコーチを辞しても揺るがぬクラブ愛
2025.09.12Career -
「不世出のストライカー」釜本邦茂さんを偲んで。記者が今に語り継ぐ“決定力の原点”
2025.09.05Career -
“永遠のサッカー小僧”が見た1993年5月15日――木村和司が明かす「J開幕戦」熱狂の記憶
2025.09.05Career -
「英雄」か「凡庸」か。田中碧、プレミアリーグ初挑戦で大きく揺れ動く評価の行方
2025.09.04Career -
「カズシは鳥じゃ」木村和司が振り返る、1983年の革新と歓喜。日産自動車初タイトルの舞台裏
2025.08.29Career -
涙で若手に伝えた「日本代表のプライド」。中国撃破の立役者・宮澤夕貴が語るアジアカップ準優勝と新体制の手応え
2025.08.22Career -
読売・ラモス瑠偉のラブコールを断った意外な理由。木村和司が“プロの夢”を捨て“王道”選んだ決意
2025.08.22Career -
堂安律、フランクフルトでCL初挑戦へ。欧州9年目「急がば回れ」を貫いたキャリア哲学
2025.08.22Career -
吉田麻也も菅原由勢も厚い信頼。欧州で唯一の“足技”トレーナー木谷将志の挑戦
2025.08.18Career -
張本智和、「心技体」充実の時。圧巻の優勝劇で見せた精神的余裕、サプライズ戦法…日本卓球の新境地
2025.08.15Career