日本シリーズで暴れるラッキーボーイ候補は誰だ!? 年間300試合取材の記者選出6傑
21日、日本シリーズが開幕する。日本一の称号をつかみ取るためには、もちろんチームの総合力が求められる。だが短期決戦においては、必ずしもそれだけで勝敗が決するわけではない。時には意外な伏兵、“ラッキーボーイ”がシーズンの流れを大きく変えてしまうことがある。2年連続でソフトバンクと巨人の組み合わせとなった2020年の日本シリーズ、ラッキーボーイ候補はいったい誰だ?
(文=西尾典文、写真=Getty Images)
日本シリーズの流れを大きく変える“ラッキーボーイ”は現れるか!?
いよいよ21日に開幕する日本シリーズ。ソフトバンク、巨人両チームともペナントレースでは2位以下に大差をつけており、まさに頂点を決めるのにふさわしい対戦といえるだろう。
そして日本シリーズのような短期決戦でポイントとなるのが、“ラッキーボーイ”と呼ばれる選手が出現するかどうかだ。特に最初から期待値の高い主力ではなく、伏兵的な選手が大活躍を見せると印象に残ることが多い。
古くは1984年にレギュラー獲得2年目だった長嶋清幸(広島)が3本塁打と大暴れの活躍を見せてチームの日本一に大きく貢献。2000年代以降では今江敏晃(ロッテ)が短期決戦で異常な強さを発揮し、2005年、2010年と2度出場した日本シリーズでいずれもMVPに輝いている。2018年の日本シリーズでは甲斐拓也(ソフトバンク)が6連続盗塁阻止と広島の機動力を完全に封じ込め、一躍ヒーローになった。そこで今回はソフトバンク、巨人の主力選手以外から、今年の日本シリーズでラッキーボーイになる可能性を秘めた選手を探ってみたいと思う。
ソフトバンク候補1人目:調子の上がらない大砲
まずソフトバンクで推したいのがウラディミール・バレンティンだ。ソフトバンク移籍1年目の今シーズンは開幕から不振が続き8月下旬から10月上旬は2軍で調整。シーズン終盤に1軍復帰を果たしたものの、最後まで調子が上がらず打率.168、9本塁打、22打点という期待外れな成績に終わった。
しかしヤクルト時代の9年間では故障でほぼプレーできなかった2015年を除く8季でシーズン30本塁打を記録した長打力はやはり侮れない。昨年の球団別成績を見ても巨人から最も多い10本塁打を放っており、エースの菅野智之からも5打数2安打1本塁打としっかり結果を残している。クライマックスシリーズの2試合ではベンチ入りメンバーから外れており、日本シリーズでの出場は微妙な状況ではあるものの、これまでの実績と相性の良さを考えると大事な場面での出場も十分に考えられるだろう。
ソフトバンク候補2人目:短期決戦で強さを発揮するベテラン
ソフトバンクの野手でもう一人面白いのがベテランの川島慶三だ。2014年のシーズン途中にヤクルトから移籍し、選手層の厚いチームの中でも毎年存在感を示している。
2017年のシリーズでは日本一を決めるサヨナラタイムリーを放っているように、短期決戦での強さも大きな持ち味だ。2018年は第1戦で途中出場から2安打を放ち、昨年もヒットこそなかったものの6打席で3四球と見事に役割を果たしている。今年も大舞台の経験が豊富なベテランにかかる期待は大きい。
ソフトバンク候補3人目:東浜の穴を埋める存在となれるか?
投手で期待したいのが2年目の泉圭輔だ。今年は昨年の倍以上となる40試合に中継ぎで登板し8ホールド、防御率2.08という見事な成績を残した。
ソフトバンクの先発を考えると、クライマックスシリーズ第2戦で登板した東浜巨が肩を痛めており、千賀滉大、石川柊太に続く3番手以降の先発は比較的早く降板する可能性が高い。ロングリリーフではアンダースローの高橋礼が筆頭といえる存在だが、夏場以降は少し不安定な投球が続いているだけに、泉の出番が増える可能性は高い。競った場面でチームに流れを呼び込むような投球を見せることができれば、その名は一躍全国に知れ渡ることになるだろう。
巨人候補1人目:サヨナラ打がチーム単独トップの勝負強さ
一方の巨人では今年レギュラーに定着した吉川尚輝を筆頭候補として推したい。開幕戦でいきなり決勝の逆転ツーランを放っているように、注目される舞台、場面での強さは天下一品。このホームランを含めて今年は決勝打を5本放っており、サヨナラ打2本はチーム単独トップの数字である。
基本的にはリードオフマンタイプだが、チャンスでも変にヒットを狙わずに思い切りよく振り切ってスタンドに運ぶ力も持ち合わせている。坂本勇人、岡本和真、丸佳浩の3人にマークが集中することが予想されるだけに、吉川にかかる期待は大きい。
巨人候補2人目:守備のワンプレーでシーズンの流れを変えるか?
野手でもう一人推したいのが今年外野の一角に定着した松原聖弥だ。今年チーム3回のサヨナラ打のうち2本は吉川尚輝が放っているが、残り1本は松原が記録したものである。
もう一つ注目すべきはその守備だ。8月27日のヤクルト戦では相手投手の高梨裕稔が放った当たりを素早いチャージと見事な返球でライトゴロに仕留めており、その守備範囲の広さと強肩はチームでも随一である。このプレーには原辰徳監督も「満塁ホームランに値する」と称賛を惜しまなかったが、短期決戦では守備のワンプレーが流れを変えるケースも少なくない。再びチームを救うようなビッグプレーを見せてくれる可能性も十分にありそうだ。
巨人候補3人目:プロ初完封も達成、調子を上げている先発投手
最後に巨人の投手陣では畠世周が候補となる。過去2年間は期待されながらもそれを裏切るシーズンが続いていたが、今年はシーズン終盤にようやく先発ローテーションに定着。11月1日のヤクルト戦ではわずか113球でプロ初完封勝利もマークするなど、ここへ来てぐんぐんと調子を上げているのだ。
エースの菅野、今年ブレイクした戸郷翔征、新外国人のエンジェル・サンチェスに続く先発として起用される可能性が高い。1989年の日本シリーズでは近鉄に3連敗で迎えた4戦目に香田勲男が完封勝利を挙げてチームの逆転日本一に貢献したことがあったが、畠も同じような状況で登板する可能性もあるだけに、救世主的な活躍も期待されそうだ。
短期決戦の日本シリーズでは中心選手がシーズン中とは別人のように不振に陥るケースも多い。そうなった時にカバーできる選手が出てくるかどうかはやはり極めて重要といえる。そういう意味でもここで挙げたような意外な伏兵のプレーにもぜひ注目して日本シリーズを楽しんでもらいたい。
<了>
短期決戦の鬼か、変幻自在の名将か? 日本シリーズのカギ、工藤・原監督対決を徹底分析!
「それでも、やるなや…」ソフトバンク千賀滉大の怒り 「子供の虐待」に取り組む信念
ソフトバンク千賀滉大「一流の成長術」 底辺から駆け上がった「ネガティブ思考の本当の意味」
老害“巨人軍爺”が妨げる日本球界の変化。「伝統」の圧力を打破した原采配
この記事をシェア
KEYWORD
#COLUMNRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
卓球・カットマンは絶滅危惧種なのか? 佐藤瞳・橋本帆乃香ペアが世界の頂点へ。中国勢を連破した旋風と可能性
2024.12.03Opinion -
非エリート街道から世界トップ100へ。18年のプロテニス選手生活に終止符、伊藤竜馬が刻んだ開拓者魂
2024.12.02Career -
なぜ“史上最強”積水化学は負けたのか。新谷仁美が話すクイーンズ駅伝の敗因と、支える側の意思
2024.11.29Opinion -
FC今治、J2昇格の背景にある「理想と現実の相克」。服部監督が語る、岡田メソッドの進化が生んだ安定と覚醒
2024.11.29Opinion -
スポーツ組織のトップに求められるリーダー像とは? 常勝チームの共通点と「限られた予算で勝つ」セオリー
2024.11.29Business -
漫画人気はマイナー競技の発展には直結しない?「4年に一度の大会頼みは限界」国内スポーツ改革の現在地
2024.11.28Opinion -
高校サッカー選手権、強豪校ひしめく“死の組”を制するのは? 難題に挑む青森山田、東福岡らプレミア勢
2024.11.27Opinion -
スポーツ育成大国に見るスタンダードとゴールデンエイジ。専門家の見解は?「勝敗を気にするのは大人だけ」
2024.11.27Opinion -
「甲子園は5大会あっていい」プロホッケーコーチが指摘する育成界の課題。スポーツ文化発展に不可欠な競技構造改革
2024.11.26Opinion -
なぜザルツブルクから特別な若手選手が世界へ羽ばたくのか? ハーランドとのプレー比較が可能な育成環境とは
2024.11.26Technology -
驚きの共有空間「ピーススタジアム」を通して専門家が読み解く、長崎スタジアムシティの全貌
2024.11.26Technology -
なぜ大谷翔平はDH専念でもMVP満票選出を果たせたのか? ハードヒット率、バレル率が示す「結果」と「クオリティ」
2024.11.22Opinion
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
非エリート街道から世界トップ100へ。18年のプロテニス選手生活に終止符、伊藤竜馬が刻んだ開拓者魂
2024.12.02Career -
いじめを克服した三刀流サーファー・井上鷹「嫌だったけど、伝えて誰かの未来が開くなら」
2024.11.20Career -
2部降格、ケガでの出遅れ…それでも再び輝き始めた橋岡大樹。ルートン、日本代表で見せつける3−4−2−1への自信
2024.11.12Career -
J2最年長、GK本間幸司が水戸と歩んだ唯一無二のプロ人生。縁がなかったJ1への思い。伝え続けた歴史とクラブ愛
2024.11.08Career -
海外での成功はそんなに甘くない。岡崎慎司がプロ目指す若者達に伝える処世術「トップレベルとの距離がわかってない」
2024.11.06Career -
「レッズとブライトンが試合したらどっちが勝つ?とよく想像する」清家貴子が海外挑戦で驚いた最前線の環境と心の支え
2024.11.05Career -
WSL史上初のデビュー戦ハットトリック。清家貴子がブライトンで目指す即戦力「ゴールを取り続けたい」
2024.11.01Career -
日本女子テニス界のエース候補、石井さやかと齋藤咲良が繰り広げた激闘。「目指すのは富士山ではなくエベレスト」
2024.10.28Career -
吐き気乗り越え「やっと任務遂行できた」パリ五輪。一日16時間の練習経て近代五種・佐藤大宗が磨いた万能性
2024.10.21Career -
112年の歴史を塗り替えた近代五種・佐藤大宗。競技人口50人の逆境から挑んだ初五輪「どの種目より達成感ある」
2024.10.18Career -
33歳で欧州初挑戦、谷口彰悟が覆すキャリアの常識「ステップアップを狙っている。これからもギラギラしていく」
2024.10.10Career -
「周りを笑顔にする」さくらジャパン・及川栞の笑顔と健康美の原点。キャリア最大の逆境乗り越えた“伝える”力
2024.10.08Career