「完全に自分が世界のトップだと言える」ONE世界王者・秋元皓貴が、初防衛戦で見据える更なる高み
日本時間11月19日に開催されるONE Championship「ONE 163: Akimoto vs. Petchtanong」で、バンタム級キックボクシング世界チャンピオンの秋元皓貴が初の防衛戦に挑む。今年3月にONEで日本人初の立ち技世界王者となった秋元は「完全に自分が世界のトップだと言える」と、ベルトとともに己の強さに確信を得た。そんな秋元が目指すファイトスタイルの進化、ベルトの価値、意識の変化。チャンピオン・秋元が見据えるさらなる高みとは。
(インタビュー・構成=篠幸彦、写真提供=ONE Championship)
チャンピオンになってトレーニングをより深く考えるようになった
――チャンピオンになって約7カ月が経ちましたが、周囲や秋元さん自身の中でなにか変化はありましたか?
秋元:シンガポールで普通に生活している中ではバスや電車に乗っていて、声をかけられることは時々あるくらいですね。もちろん、ジムの中ではよりいろんな人が声をかけてくれるようになりました。正直、自分の中での変化はあまりないですね。ただ、トレーニングに対する意識はより高くなったと思います。
――トレーニングに対する意識には具体的にはどんな変化があったんですか?
秋元:今まで以上にトレーニングについて深く考えるようになったり、真摯(しんし)に向き合うようになったり、そういう意識の変化ですね。
――深く考えるようになった?
秋元:ちょっと言葉にするのが難しいんですけど、相手を倒す、ダメージをしっかりと与えるためにどう動くか。そこをもっと突き詰めていく。今までだとプレッシャーをかけていく戦いか、サイドを取るのか、下がりながらやるのか。3つに分けて考えていたんですけど、そこを前に出ながらサイドを取るとか。よりバリエーションを増やすように考えるようになりました。
――そこは前回「ONE Ⅹ」のカピタン・ペッティンディー戦で、圧倒する良い内容だった中でも課題として持った部分なのでしょうか?
秋元:そうですね。良い内容でも課題として出たものは、どんどんつぶしていこうと思って取り組んでいます。そういう意味でもかなり良い経験だったと思います。
――魔裟斗さんのYouTubeに出られたときに、パンチを打つときに脇が開いてしまうことを課題に挙げられていましたが、今回のトレーニングでも意識されてきました?
秋元:かなり意識して練習してきましたね。あとは試合になったときに、練習した動きが出せるかどうか。そこも楽しみですね。
カピタン戦で得た自分が世界のトップである確信
――以前、秋元さんはまだ自分の強さが世界のどのあたりにいるかがわからないという話をされていました。チャンピオンになったことで、自分の強さの現在地を確認できました?
秋元:完全に自分が世界のトップだと言えると思います。これからベルトを防衛していく中で、世界のトップであるという自覚を持ちながらまだまだ成長できると思っています。だからそう簡単に負けることはないし、さらに突っ走っていけると思いますね。
――それだけ確信が得られたということは、カピタン戦の対戦前に思い描いていた以上の内容で勝てたということもありますか?
秋元:自分がイメージしていたよりも良かったですね。1、2ラウンドは取られても仕方ないと思っていたんですけど、ほぼフルラウンド取ったと思います。ただ、かなりタフな試合で、見ている人も疲れるような試合だったと思いますね。でもあれだけ動いたあとでも2、3ラウンドはまだ動けるくらいのスタミナは余っていたので、そこも自信になりました。これからどんな相手がきても大丈夫だと思える試合でした。
――それだけ圧倒した内容でしたが、倒し切れなかったのはチャンピオンのタフさを感じたところでしょうか?
秋元:それはありますね。あとは自分の攻撃の質をもっと上げていく必要があると感じました。
――この試合だけでなく、まだONEでKO勝利がないということに対して、どれほど意識されていますか?
秋元:KOに関しては強く意識しているわけではないんですよね。もちろん、KO勝利は一番盛り上がるということはわかっています。でも自分の持ち味はスピードやテクニック、あまり攻撃をもらわないことだと思っていて、試合を完封することが僕の一番の目標なんです。その中でチャンスがあればKOできるというのが一番だと思っています。
ベルトを守り続けるためには、自分に求め続けること
――カピタン戦前のインタビューで、「ベルトは誰に勝って、誰から取ったものか。そこにブランド価値があって、ベルトを持ったらどれだけ価値のあるものにできるかが大事」ということをおっしゃっていました。ベルトを取った今、ベルトの価値についてどのように意識していますか?
秋元:そういう意味ではKO勝利は求められてくるものだと思います。ベルトの価値を上げるためには倒していなかければいけないし、ただ倒すだけじゃなくて、完封した内容でしっかりとフィニッシュまでもっていくというのは、自分の中の課題だと思います。
――ベルトの価値を上げるためには、ベルトを守り続ける必要があると思います。そのためにはどのようなことが必要だと思いますか?
秋元:常に求め続けることだと思います。自分が今、世界のトップだと言っても自分が知らないテクニックはたくさんあるので、そこをコーチやジムのインストラクター、他のいろんなところからもどんどん吸収して、自分に合うものを取り入れ続けること。現状で満足してしまうとそこで終わりだと思うんですよね。だからとにかく変わり続けることが必要だと思います。
――変わり続けるというところで、秋元選手は空手やムエタイなど、さまざまなスタイルがミックスされて、スタイルが固定されていないことが特徴だと思います。これからそのスタイルがどのように確立されていくかイメージはあるのでしょうか?
秋元:イメージはまったくないですね。自分がどのように変わっていくかわからないし、予想もつかないです。だから対戦相手からすると、僕以上に予想がつかないだろうし、すごくやりにくいと思います。そこは自分の武器だと思うし、最終的にファイトスタイルが完成することはないと思っています。
――ちなみに秋元選手が考えるチャンピオン像や、憧れたチャンピオンとかはいるんですか?
秋元:あまり考えたことがないんですよね。格闘技は好きなんですけど、見るのはあまり好きではなくて、憧れたチャンピオンというのもいないんですよ。だから自分がどんなチャンピオンになっていくかは、自分でもわからないし、想像もつかないですね。
進化していくスタイルを感じ取ってほしい
――初防衛戦で自身に期待するところはありますか?
秋元:ここ2戦はオーソドックスの相手と試合をしてきて、久しぶりにサウスポーが相手ということで、自分がどれくらい対サウスポーを相手に変わったのかを一番楽しみにしています。あとはKOですね。しっかりとフィニッシュまでもっていくことができるか。そのためにはいかにシャープに動けるかだと思うので、練習してきたことを出せるように自分に期待していますね。
――チャンピオンになってから秋元選手のスタイルに憧れて、格闘家を目指す、あるいは世界に挑戦したいという若い層が出てくると思います。そうした若者に向けてメッセージはありますか?
秋元:自分が一番のベースとしているのはカウンターや返しなんですけど、そこは一つ印象的だと思います。あと試合ごとにスタイルが変わっていて、これからも変わっていくつもりです。一つのスタイルを確立するのではなくて、僕がどんどん成長していくのは1、2試合見ただけではたぶんわからないと思います。ずっと僕を追いかけていく中で、成長や変化、進化していくスタイルを感じ取ってもらえたらうれしいですね。
――では最後にファンの方へ向けて一言お願いします。
秋元:先ほども言いましたが、チャンピオンになってからトレーニングの意識がすごく高まって、ベルトを取る前よりさらに自分を磨いてきました。自分自身でもかなり成長を感じていて、防衛戦でどれだけ成長したかを見てもらって楽しんでもらえたらと思います。
<了>
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