ダルビッシュ有が語る「プロスピ愛」 ゲームをやり続ける理由と、そこから学んだもの
自らのYouTubeチャンネルでもゲーム実況を行うなど、スマホアプリゲーム『プロスピ(プロ野球スピリッツA)』に強い愛情を持つメジャーリーガーであり“ゲーマー”ダルビッシュ有。「本当にむかつく」と語りながらもここまで熱意を持って続けるモチベーションとはなんだろう? 今オフのインタビューに向けて話のネタになればとプロスピをプレイし始めたものの、気づけば空き時間のほとんどをプロスピに費やす生活を送る岩本義弘REAL SPORTS編集長が、ダルビッシュのプロスピへの止めどなき想いに迫る。
(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=浦正弘)
プロスピではトップ層の人たちに勝つことも。でも…
――俺も初心者ながらプロスピを始めて、選手はある程度は揃ってきたんですけど、リアタイ(リアルタイム対戦)では全然勝てなかったんですよ。なので、まず勝つための準備をしようと思って、専用のiPad Proを買いました。
ダルビッシュ:何インチですか?
――11インチです。
ダルビッシュ:打率はどのぐらいなんですか?
――いや、全然です。2割ちょいぐらいです。
ダルビッシュ:感度(カーソル移動速度)はどのぐらいでやっているんですか?
――感度は速いの(4or5)でやっています。
ダルビッシュ:そうなんですか。プロスピ、自分もやっぱりイライラしますよ。本当にむかつく。
――うまい人たちの感覚っていったいどうなっているんだろうなっていつも思います。
ダルビッシュ:本当にそういうのを見て僕もいろいろ勉強しているんですけど。ただ、プロスピはまだトップ層の人たちに勝てたりもするんですよ。
――YouTubeでダルビッシュ選手がトップ層の人たちに勝っているのを見ていて、本当にすごいなと思います。
ダルビッシュ:(プロスピでは)たまにそういうことがあるんですけど、フォートナイトは絶対にないです。そこは絶対に勝てないっていう壁があるので。
――そこで勝てるようになったらeスポーツのプレーヤーとしてもいけちゃいますもんね。
ダルビッシュ:そうですね。トップ層の人たちは本当にすごいですよ。フォートナイトをやっていると、いかにeスポーツのトップの人たちがすごいかがよくわかります。
「甘いところをわざと使うのも大事」
――昔、ゲーム雑誌の編集もやっていたので、格闘技ゲームとかのトップの人たちと毎日のようにプレイしたり、トレーニングについての話もよく聞きましたが、トレーニングも思考も本当にすごいんですよ。毎日毎日、高い意識でトレーニングしている。だから本当にあれはスポーツの一種だと思うんですよね。
ダルビッシュ:すごくよくわかります。トッププレーヤーたちのYouTubeとか見ているんですけど、練習中の動画をずっと流しているんですよね。やっぱりいい練習をするからうまいんですよ。僕とかは才能もないのに、練習もしなかったら負けるのは当たり前じゃないですか。それなのに自分にイライラしてむかつくって、本当にしょうもない人間だなって最近すごく思うようになって。努力もしないくせに、それで結果が出ないから怒るってすごく自分本位だし、なんか子どもっぽいなと。だから今いろいろ勉強しているところです。
――改めて勉強し直しているんですね。
ダルビッシュ:脳科学からちゃんと勉強しようと思っています。
――でもダルビッシュ選手のプロスピを見ていて、トッププレーヤーたちに勝ったりするのは、やっぱり普通の人と「読み」が違うなと感じます。
ダルビッシュ:でもそれって、配球が合う、合わないってあるんですよ。例えば外木場(義郎)投手が(僕は)打てるとしても、別の人は外木場投手に完全にハマるってことが多々あるんです。それは脳の癖が合う、合わないってあるんですよね。
――あとトッププレーヤーは、ツーシームの打撃の見極めのところが、やたらうまいなと思います。
ダルビッシュ:そうですね。距離感やスピード感で判断したりするからすごいですよね。
――もうこっちは、「投げるボールがない!」って状態になるんですよ(苦笑)。
ダルビッシュ:自分もそうなります(笑)。強い人たちの話を聞いていると、「甘いところをわざと使うのも大事だ」みたいなことを言うんですよね。Twitterとかでもフォローし合ってやっている人たちがいるんですが、「甘いところにいきなり投げたりするのもすごく大事ですよ」と。ただ、自分はその勇気が湧かない。
ゲームをやり続けるモチベーションとは?
――プロスピをずっと続けているモチベーションは?
ダルビッシュ:野球と同じで、単純に好きだからです。コロナ自粛期間中とかファンの人たちとすごくコミュニケーションがとれて、学んだこともすごく多かったんですよ。日本のプロ野球選手のこともすごく詳しくなったし、YouTubeでもゲーム実況の難しさとかそういうのもすごくわかったりして、得るものが本当に多かったですね。半端じゃなく課金しているけど、でもかなりプラスになる部分はありました。
――僕も想像していた以上にたくさん使ってしまいました(苦笑)。
ダルビッシュ:最近だと誰を狙ったんですか?
――カープファンなので、最近だと前田智徳選手。
ダルビッシュ:そういえば、自チーム、カープでしたね。今回(2020シリーズ2 OB第2弾)、当たり的には前田選手が一番かな。
――対象のSランクキャラが確定となる3番目と6番目、どちらも前田選手だったんですよ。だから、今のイベントをやっていけばあとA(ランク)が3枚手に入るので極められます(編集部注:「極」は選手のレベル・特訓レベル・限界突破回数を最大にした状態。また、同じ選手が重なった場合、特訓の時に素材として使用できる)。
ダルビッシュ:それだと外野の守備が相当強くなりますね。
――でもあとから始めていると大変ですよね、もう出てこない選手もいるので。
ダルビッシュ:でも大体再販されますよね。OBもそうですし。昔の選手はスピリッツが弱くなっちゃうじゃないですか。だからそのあたりのバランスはうまいなと、プロスピ。
――(ゲーム内の)ダルビッシュ選手を「極」にするのが一番大変でした。
ダルビッシュ:あれは大変だと思います。僕のセレクションのチーム(編集部注:プロスピとのコラボ企画としてダルビッシュ選手自身が選んだNPB12選手が登場する「ダルビッシュセレクション」)は持っているんですよね?
――はい。
ダルビッシュ:で、「極」なんですか?
――「極」です。でも全然良い称号はついていないので。
ダルビッシュ:「精密機械」か「勝利の使者」ですね。
――ダルビッシュ選手は、普通の人では理解できないレベルで称号獲得チャレンジやっているから……。
ダルビッシュ:ずっとやっているからどんどんA(ランク)が育っていくんです。
――そうですよね。それこそ、誰かを救うチャレンジをやっている時にたくさんA(ランク)が入るから、それでどんどん育てているということですよね。しかも、さらにB(ランク)もたくさん育ててる。
ダルビッシュ:Vロード(全12球団のCPUチームと対戦するモード)をやるときにB(ランク)も何体か入れて、レベルマックスに持っていったまま次のB(ランク)を入れていって、最後経験値で変換して今ちょうどそれなんですけど。ストック経験値になるので、かなりでかいです。(画面を見せながら)全部50なんですけど、B(ランク)の。こういう感じで売るとめちゃくちゃ育成もはかどります。
――調べて、それが効率的だなとわかったので、同じことを真似しています。ありがとうございます。次取材したときまでにはもっと強くなっておきます。
ダルビッシュ:じゃあ、今度ぜひリアタイやりましょう!
<了>
[連載第1回]ダルビッシュ有が明かす、成功の秘訣「僕は夢っていうものを持ったことがない。ただ…」
[連載第2回]ダルビッシュ有を救ったノートの存在。最多勝獲得も、開幕時は「ヤバいヤバいと思っていた…」
[過去連載]ダルビッシュ有が明かす「キャッチャーに求める2箇条」とは?「一番組みたい日本人捕手は…」
[過去連載]ダルビッシュ有が驚愕した、「キャッチャーの真実」とは? 「日本は結果論で評価しすぎる」
[過去連載]ダルビッシュ有が否定する日本の根性論。「根性論のないアメリカで、なぜ優秀な人材が生まれるのか」
[過去連載]ダルビッシュ有を支える仮説と検証。「1日に5個、6個の仮説を立てて試します」
[過去連載]ダルビッシュ有が「YouTuber」を始めた理由とは?「野球でもYouTubeでも、成功の原理は応用できる」
[過去連載]ダルビッシュ有が「悪い霊が憑いてるんじゃ」とすら思った不調から立ち直れた方法とは?
[過去連載]ダルビッシュ有が考える、日本野球界の問題「時代遅れの人たちを一掃してからじゃないと、絶対に変わらない」
[過去連載]ダルビッシュ有は、なぜTwitterで議論するのか「賛否両論あるということは、自分らしく生きられてる証拠」
[過去連載]ダルビッシュ有はなぜゲームにハマったのか?「そこまでやりたくない時でも、今はやるようにしてます」
[過去連載]ダルビッシュ有が明かす、メディアへの本音「一番求めたいのは、嘘をつかないこと」
PROFILE
ダルビッシュ有(ダルビッシュ・ゆう)
1986年生まれ、大阪府出身。MLBサンディエゴ・パドレス所属。東北高校で甲子園に4度出場し、卒業後の2005年に北海道日本ハムファイターズに加入。2006年日本シリーズ優勝、07、09年リーグ優勝に貢献。MVP(07、09年)、沢村賞(07年)、最優秀投手(09年)、ゴールデングラブ賞(07、08年)などの個人タイトル受賞。2012年よりMLBに挑戦、13年にシーズン最多奪三振、20年に日本人初となる最多勝を獲得。テキサス・レンジャーズ、ロサンゼルス・ドジャース、シカゴ・カブスを経て、2020年12月29日にサンディエゴ・パドレスへ移籍。
この記事をシェア
RANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
JリーグMVP・武藤嘉紀が語った「逃げ出したくなる経験」とは? 苦悩した26歳での挫折と、32歳の今に繋がる矜持
2024.12.13Career -
昌平、神村学園、帝京長岡…波乱続出。高校サッカー有数の強豪校は、なぜ選手権に辿り着けなかったのか?
2024.12.13Opinion -
なぜNTTデータ関西がスポーツビジネスに参入するのか? 社会課題解決に向けて新規事業「GOATUS」立ち上げに込めた想い
2024.12.10Business -
青山敏弘がサンフレッチェ広島の未来に紡ぎ託したもの。逆転優勝かけ運命の最終戦へ「最終章を書き直せるぐらいのドラマを」
2024.12.06Career -
三笘薫も「質が素晴らしい」と語る“スター候補”が躍動。なぜブライトンには優秀な若手選手が集まるのか?
2024.12.05Opinion -
ラグビー欧州組が日本代表にもたらすものとは? 齋藤直人が示す「主導権を握る」ロールモデル
2024.12.04Opinion -
卓球・カットマンは絶滅危惧種なのか? 佐藤瞳・橋本帆乃香ペアが世界の頂点へ。中国勢を連破した旋風と可能性
2024.12.03Opinion -
非エリート街道から世界トップ100へ。18年のプロテニス選手生活に終止符、伊藤竜馬が刻んだ開拓者魂
2024.12.02Career -
なぜ“史上最強”積水化学は負けたのか。新谷仁美が話すクイーンズ駅伝の敗因と、支える側の意思
2024.11.29Opinion -
FC今治、J2昇格の背景にある「理想と現実の相克」。服部監督が語る、岡田メソッドの進化が生んだ安定と覚醒
2024.11.29Opinion -
スポーツ組織のトップに求められるリーダー像とは? 常勝チームの共通点と「限られた予算で勝つ」セオリー
2024.11.29Business -
漫画人気はマイナー競技の発展には直結しない?「4年に一度の大会頼みは限界」国内スポーツ改革の現在地
2024.11.28Opinion
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
JリーグMVP・武藤嘉紀が語った「逃げ出したくなる経験」とは? 苦悩した26歳での挫折と、32歳の今に繋がる矜持
2024.12.13Career -
青山敏弘がサンフレッチェ広島の未来に紡ぎ託したもの。逆転優勝かけ運命の最終戦へ「最終章を書き直せるぐらいのドラマを」
2024.12.06Career -
非エリート街道から世界トップ100へ。18年のプロテニス選手生活に終止符、伊藤竜馬が刻んだ開拓者魂
2024.12.02Career -
いじめを克服した三刀流サーファー・井上鷹「嫌だったけど、伝えて誰かの未来が開くなら」
2024.11.20Career -
2部降格、ケガでの出遅れ…それでも再び輝き始めた橋岡大樹。ルートン、日本代表で見せつける3−4−2−1への自信
2024.11.12Career -
J2最年長、GK本間幸司が水戸と歩んだ唯一無二のプロ人生。縁がなかったJ1への思い。伝え続けた歴史とクラブ愛
2024.11.08Career -
海外での成功はそんなに甘くない。岡崎慎司がプロ目指す若者達に伝える処世術「トップレベルとの距離がわかってない」
2024.11.06Career -
「レッズとブライトンが試合したらどっちが勝つ?とよく想像する」清家貴子が海外挑戦で驚いた最前線の環境と心の支え
2024.11.05Career -
WSL史上初のデビュー戦ハットトリック。清家貴子がブライトンで目指す即戦力「ゴールを取り続けたい」
2024.11.01Career -
日本女子テニス界のエース候補、石井さやかと齋藤咲良が繰り広げた激闘。「目指すのは富士山ではなくエベレスト」
2024.10.28Career -
吐き気乗り越え「やっと任務遂行できた」パリ五輪。一日16時間の練習経て近代五種・佐藤大宗が磨いた万能性
2024.10.21Career -
112年の歴史を塗り替えた近代五種・佐藤大宗。競技人口50人の逆境から挑んだ初五輪「どの種目より達成感ある」
2024.10.18Career