柳田将洋、30歳を迎えて明かす“本音”「今までのプランニングじゃダメだなと思って」
プロバレーボール選手として活躍する柳田将洋が、自身5チーム目の所属チームとなるVリーグ・ジェイテクトSTINGSでのシーズンをスタートさせた。大学生で日本代表デビューを果たし、25歳になる年にプロに転向して海外リーグで3シーズン活躍。日本代表で主将も務め、世界を相手に腕を磨き駆け抜けた20代から、30代へ。気になる今後のキャリアや、日本代表について、話を聞いた。
(文・撮影=米虫紀子)
「すべてのバレーボーラーが目指す場所」代表への変わらぬ思い
――7月6日に30歳の誕生日を迎えられましたが、これからの現役選手としてのビジョンや、成し遂げたいことはありますか?
柳田:選手としては、これからも変わらないんじゃないかなと思うんです。自分がどれだけ成長できるか、自分の役割をチームでどれだけ果たせるか。プロとしてはそれを続けることしかできないと思います。それはキャリアを積んだからといってこれからも変わるものではなく、逆によりしっかり果たせる選手になっていかなければいけないと考えています。
――日本代表についてはいかがですか? 選ばれるかどうかはご自身で決められることではありませんが、目指す場所ではあり続けますか?
柳田:そうですね。これからも変わらないと思います。すべてのバレーボーラーが目指す場所であるべきだと思うので、それは僕自身も変わりません。急に呼ばれたりしたらビックリしますけどね(笑)。
――今年は世界選手権に出場するチームとは別に、AVCカップに出場するチームをつくるため追加招集があり、サントリーでともに戦ってきた藤中謙也選手や小野遥輝選手が選ばれましたね。
柳田:藤中に関しては、やっと評価されたなという感じで、遅いぐらいですけどね。頑張ってほしいなと思いますし、どういう戦いをするのか、見てみたいですね。5月にイランで開催されたアジアクラブ選手権でも、相手のいいサーブを彼がしっかり受けていた。僕はフローターサーブ(のサーブレシーブ)を彼に全部任せちゃう布陣だったので、そこを誰かと分担して、彼ももっともっと攻撃に参加しているところを見られたら、僕としてもうれしいです。
――ご自身も現役選手である限りは代表への思いはある、と。
柳田:そうです。ただ、例えば僕が25歳でプロになって、海外(ドイツ、ポーランド)で3年間やった時は、簡単に4年間のプランをボンッと決められたんですけど、今って4年後や3年後じゃなく、1年1年なんです。今年1年やって、どこまでいけるかの繰り返し。昨年ぐらいからそんな感覚です。3年後は31歳か32歳か、となった時に、今までのプランニングじゃダメだなと思って。
その1年間の後半に、どれぐらいの感覚なのかによって、次のシーズンをイメージする。そういうことがこれからのキャリアの積み方であり、自分のスタイルになっていくと思います。そのタイミングでもし代表、となったら、プランニングがころっと変わると思うので、そこは大変になるかもしれませんが、それでも選ばれるほうがいいので、また選ばれるように頑張りたいなと思いますね。
――選ばれるためにこうしよう、とはまた違うんでしょうか?
柳田:選ばれるためにこうしよう、ということと、今やっていることがイコールだと思っています。サーブレシーブの部分、それに攻撃の部分も、多少は昨シーズンまでとは変化があると思うので、そこが自分の新しい刺激になればと僕は望んでいますし、自分の成長にもつながればと思っています。
――やはり今の代表では、アウトサイドはサーブレシーブが重視されている印象でしょうか?
柳田:そうだと思いますね。
ネーションズリーグで快進撃を見せる日本代表の強さの理由
――現在開催されているネーションズリーグは見ていますか?
柳田:見てます見てます。日本は、まず当たり前のプレーを当たり前に、基本を正確にできているというのが、見ていて一番感じますし、それが大事なところなのかなと。精度の高いつなぎや二段トスで、しっかりとスパイカーにつなげていたり、リバウンドもすごく正確に取っています。フォローする側も意識が高いので、2本、3本と連続でリバウンドをやっても、何度でもフォローに入る。そういうところでボールが落ちないことが、今海外のチームとの違いになっているのかなと感じます。あとは、フェイクセット(スパイクを打つと見せかけてトスを上げる)をやったりして、常に的を1つに絞らせないこともやっている。すごくアイデアも豊富なので、そういう部分でブレイクを取れたり、一歩先に行けているのかなと思います。
――東洋高校でともに日本一になり、日本代表でも一緒にプレーしたセッターの関田誠大選手も、ミドルブロッカーを積極的に使うトスワークで攻撃の流れをつくっています。昨季は、かつて柳田選手も所属していたポーランドのルビンでプレーし、今季は同じジェイテクトで戦いますが、今年の関田選手の変化をどのように見ていますか?
柳田:彼はもともとうまいですし、(ポーランドに行く前に)堺ブレイザーズでやっていた時も、クイック、パイプを本当によく使う選手だったんですけど、今回は特に、打数を見てもミドルが本当に多くて、チームとしてかなりいい使い方をしていると感じます。今(代表の)アウトサイドの選手はみんなパイプを打てるので、余計にバランスが取れてきているのかなと。あとは、村山(豪)とのコンビもしっかり合わせてくれているので(ジェイテクトに戻ってきた時に)いいなと(笑)。
本当にうまい選手なのは誰もが認めていると思うし、僕は彼のトスを打つのが久しぶりなので、楽しみにしています。パイプを使ってくれるので。サントリーの大宅(真樹)も使ってくれていましたけど、(関田は)たぶんまた違った使い方をしそうなセッターなので。
――関田選手のパイプの使い方とは?
柳田:たぶん関田は使いたくて使っていると思うんです。僕が「使ってくれ」と言う前に、関田は自分からどんどん上げてくれるので、僕が引っ張られる感じですね。なので、突っ込んでいきやすいかなと。あと、ファーサイドにトスをしっかり飛ばせます。サーブレシーブをする側としては、別にど真ん中じゃなくて左右どちらかに寄ったとしても、両サイドに飛ばしてくれるので、プレッシャーは少なくなりますね。アタックラインの中だったらいいかな、という感じで返せるので。
「気持ちが動いている間は、(現役で)やれればなと」
――(ジェイテクトに復帰するオポジットの)西田有志選手と一緒にプレーするのも久しぶりですね。
柳田:そうですね。(代表で)調子いいですよね。
――(サーブが強力な)柳田選手と西田選手が同じチームにいたら、相手チームのレシーバーはたまりませんね。
柳田:いえいえ、僕は西田についていけるように頑張ります(笑)。(新加入のスロベニア出身選手)ティネ・ウルナウトもサーブがいいですしね。
――すごく気の早い話ですが、柳田選手は、「こうなった時は引退する」とか、「何歳までは」など、決めていることはあるのですか?
柳田:決めていません。全然。けっこうよく聞かれるんですけどね。「どういうふうになったら引退するの?」って。それを決めちゃうと、よぎっちゃうというか、「あ、なんか今そこに寄っていってるな」とか考えてしまうかもしれないので、そこは決めたくないですね。
僕的には、体が動かなくなっても、気持ちが動いていたら、たぶんまだ引退しなくていいなと思う。でも、体が動いても気持ちが動かなくなったら、やっていてもあまり面白くなくなっちゃう。だから、気持ちの面でまだやりたいと思えている間はやれればなと。もちろんそれはもらってくれるチームがあればの話ですけど(苦笑)。やりたいうちはやっている、が一番いいのかなと思っています。
<了>
【前編はこちら】柳田将洋が明かす、移籍の本当の理由。「満足していなかった。そこは妥協できないところ」
男子バレー・清水邦広「あとは託そうと…」 東京五輪で感じた日本の可能性と課題
代表落選・柳田将洋が語る、それでも前進する理由「応援してくれる方にとってもターニングポイントだと…」
バレー・髙橋藍「リベロで学べることも多い」海外で葛藤の末に遂げた進化。自ら背負う代表での責任
[アスリート収入ランキング2021]首位はコロナ禍でたった1戦でも200億円超え! 日本人1位は?
PROFILE
柳田将洋(やなぎだ・まさひろ)
1992年7月6日生まれ、東京都出身。Vリーグ・ジェイテクトSTINGS所属。ポジションはアウトサイドヒッター。186cm、80kg。東洋高校時に春の高校バレーで主将としてチームを牽引して優勝を経験。慶應義塾大学を経て、2015年にサントリーサンバーズに入団し、2015-16シーズンV・プレミアリーグで最優秀新人賞を受賞。2017年にプロ転向し、2017-18シーズンはドイツのビュール、2018-19シーズンはポーランドのクプルム・ルビン、2019-20シーズンはドイツのユナイテッド・バレーズでプレーした。2020年にサントリーに復帰し、2020-21シーズン、2021-22シーズンのVリーグ2連覇や、2022年5月のアジアクラブ選手権準優勝に貢献。22年7月、ジェイテクトSTINGSに移籍。日本代表には2013年に初選出され、数々の国際大会で活躍。主将も務めた。
この記事をシェア
KEYWORD
#INTERVIEWRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
「ラグビーかサッカー、どっちが簡単か」「好きなものを、好きな時に」田村優が育成年代の子供達に伝えた、一流になるための条件
2024.09.06Career -
名門ビジャレアル、歴史の勉強から始まった「指導改革」。育成型クラブがぶち壊した“古くからの指導”
2024.09.06Training -
浦和サポが呆気に取られてブーイングを忘れた伝説の企画「メーカブー誕生祭」。担当者が「間違っていた」と語った意外過ぎる理由
2024.09.04Business -
張本智和・早田ひなペアを波乱の初戦敗退に追い込んだ“異質ラバー”。ロス五輪に向けて、その種類と対策法とは?
2024.09.02Opinion -
「部活をやめても野球をやりたい選手がこんなにいる」甲子園を“目指さない”選手の受け皿GXAスカイホークスの挑戦
2024.08.29Opinion -
バレーボール界に一石投じたエド・クラインの指導美学。「自由か、コントロールされた状態かの二択ではなく、常にその間」
2024.08.27Training -
エド・クラインHCがヴォレアス北海道に植え付けた最短昇格への道。SVリーグは「世界でもトップ3のリーグになる」
2024.08.26Training -
なぜ“フラッグフットボール”が子供の習い事として人気なのか? マネジメントを学び、人として成長する競技の魅力
2024.08.26Opinion -
五輪のメダルは誰のため? 堀米雄斗が送り込んだ“新しい風”と、『ともに』が示す新しい価値
2024.08.23Opinion -
スポーツ界の課題と向き合い、世界一を目指すヴォレアス北海道。「試合会場でジャンクフードを食べるのは不健全」
2024.08.23Business -
なでしこジャパンの新監督候補とは? 池田太監督が退任、求められる高いハードル
2024.08.22Opinion -
バレーボール最速昇格成し遂げた“SVリーグの異端児”。旭川初のプロスポーツチーム・ヴォレアス北海道の挑戦
2024.08.22Business
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
「ラグビーかサッカー、どっちが簡単か」「好きなものを、好きな時に」田村優が育成年代の子供達に伝えた、一流になるための条件
2024.09.06Career -
「いつも『死ぬんじゃないか』と思うくらい落としていた」限界迎えていたレスリング・樋口黎の体、手にした糸口
2024.08.07Career -
室屋成がドイツで勝ち取った地位。欧州の地で“若くはない外国籍選手”が生き抜く術とは?
2024.08.06Career -
早田ひなが満身創痍で手にした「世界最高の銅メダル」。大舞台で見せた一点突破の戦術選択
2024.08.05Career -
レスリング・文田健一郎が痛感した、五輪で金を獲る人生と銀の人生。「変わらなかった人生」に誓う雪辱
2024.08.05Career -
92年ぶりメダル獲得の“初老ジャパン”が巻き起こした愛称論争。平均年齢41.5歳の4人と愛馬が紡いだ物語
2024.08.02Career -
競泳から転向後、3度オリンピックに出場。貴田裕美が語るスポーツの魅力「引退後もこんなに楽しい世界がある」
2024.08.01Career -
松本光平が移籍先にソロモン諸島を選んだ理由「獲物は魚にタコ。野生の鶏とか豚を捕まえて食べていました」
2024.07.22Career -
新関脇として大関昇進を目指す、大の里の素顔。初土俵から7場所「最速優勝」果たした愚直な青年の軌跡
2024.07.12Career -
リヴァプール元主将が語る30年ぶりのリーグ制覇。「僕がトロフィーを空高く掲げ、チームが勝利の雄叫びを上げた」
2024.07.12Career -
ドイツ国内における伊藤洋輝の評価とは? 盟主バイエルンでの活躍を疑問視する声が少ない理由
2024.07.11Career -
クロップ率いるリヴァプールがCL決勝で見せた輝き。ジョーダン・ヘンダーソンが語る「あと一歩の男」との訣別
2024.07.10Career