28試合28ゴール。「一生、成長に飢え続ける」WEリーグ得点王・植木理子、決定力が進化した理由
6月10日の最終節で、WEリーグ2年目が終了した。熾烈な得点王争いを制したのは、日テレ・東京ヴェルディベレーザのFW植木理子。プレシーズンのカップ戦(2位)、皇后杯(優勝)、リーグ戦(3位)のすべてで得点王になり、公式戦28試合で28ゴールと抜群の決定力を発揮。風格も増した23歳のストライカーの進化に迫った。
(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=森田直樹/アフロスポーツ)
「チームメートが自分以上に喜んでくれて実感した」
――なでしこリーグ時代も含めて、初のリーグ得点王に輝きました。率直な思いを教えてください。
植木:FWとして一番目に見える結果が得点王だと思うので、ゆくゆくは目指したいと思っていましたが、第18節のちふれASエルフェン埼玉戦(9-0で勝利)で5点を決めるまではそこまで意識していませんでした。まだ割と不思議な感覚ですが、チームメートが自分以上に喜んでくれたのが嬉しくて、少し実感が湧きました。
――チームメートの皆さんはどんな風に喜んでくれたんですか?
植木:最終節はすでに優勝の可能性がなくなっていて、唯一、かかっているタイトルが得点王でした。試合が終わった後、みんながすぐに他会場の結果を見てくれて、「おめでとう、よくやった」という感じで言ってくれて、それは本当に嬉しかったですね。
――今季の得点王争いは、三菱重工浦和レッズレディースの菅澤優衣香選手やINAC神戸レオネッサの田中美南選手など、毎年二桁ゴールを取ってきた選手たちとの熾烈な戦いを制しました。
植木:個人で戦ったら勝てない相手だと思いますし、尊敬している先輩方です。ベレーザで自分の前に背番号9を背負っていたのが田中さんで、チームがきつい時に得点でチームを引っ張ってくれた選手なので、その番号が自分に託された重みは感じていました。そういう意味ではやっと、FWらしい仕事ができたのかなと思います。ベレーザは前線でいい動きをすれば「触ればいいだけのボール」が出てくるチームなので、そのおかげで取れた得点王ですし、チームメートに心から感謝しています。
――ただ、リーグ戦の結果は昨年に続き、3位でした。優勝には何が足りなかったと思いますか?
植木:前期に取りこぼした勝ち点が響きましたし、勝ちきれない引き分けも多かったので、シンプルに実力不足だったと思います。試合を重ねるにつれてチームが成長していくのを感じていたので、いいシーズンではあったと思いますが……やっぱり悔しいですね。
鮮明に覚えている皇后杯のゴール
――全14得点のうち、特に印象に残っているのはどのゴールですか?
植木:第4節のAC長野パルセイロ・レディース戦(2-0で勝利)で決めたゴールは、チームとしてもなかなかうまくいかない中で、チーム全員で頑張ろうと改めて話をした後の、村松智子キャプテンのアシストから決めたゴールだったので印象に残っています。
個人的に一番嬉しかったのは、皇后杯決勝のINAC神戸戦(4-0で勝利)の2点目です。コーナーキックを胸トラップしてボレーで決めたんですが、ゴールを決めた後に全員でサポーターの下に行って喜びを共に表現したシーンを鮮明に覚えていて。あれほど、チームとサポーターが一体になってゴールを喜んだことが今までなかったので、忘れられないですね。
――武器のヘディングではどのチームも対策をとってきていましたが、「頭利き」は今年も健在でしたね。
植木:チームメートが特徴をわかってくれているので、例年よりクロスの数が増えたと思いますし、自分の動き出しや入る位置が良ければいいボールが上がってくるので、ポジショニングは今までより考えるようになりました。
――チームの得点は昨年の「32」から1.5倍の「47」に増えました。植木選手と小林里歌子選手、藤野あおば選手との3トップの攻撃力は、近年稀に見る迫力がありました。
植木:それぞれに良さが全然違う3人なので、お互いにリスペクトしながらも、ピッチの中でいろいろなコンビネーションを生み出せるのは本当に楽しかったし、試合を重ねる中でプレーが合っていく感覚もあったので。そこは、脅威にはなれたんじゃないかなと思います。
論理的にサッカーを考えられるようになった
――海外で活躍するMF長谷川唯選手をはじめ、ベレーザでは永田雅人ヘッドコーチの「永トレ」で飛躍的に成長した選手が多いですが、植木選手はどんなことに取り組んできたんですか?
植木:永田さんのシュート練習は本当に面白くて、論理的で、ゴールを取るためにすべてが考えられているんです。以前は感覚派で、もともとあまり考えてプレーしたくないタイプだったんです(笑)。でも、永田さんと会ってから、頭を使いながらプレーするようになりました。特に、守備や攻撃の動き出しはレベルアップできたと思います。自分の良さである、「一生懸命頑張る」良さはなくさないようにしながら、冷静に考えてプレーできるようになりました。
――以前に比べてケガが少なくなったことも、サッカーを論理的に考えられるようになったことと関係しているんでしょうか。
植木:そうですね。球際のいき方などは考えるようになりましたし、ベレーザは周りの選手が本当に上手なので、そういう選手たちと毎日一緒に練習できていることも成長につながっていると思います。
来季はチームを助ける得点王になりたい
――ゴールを決められず、試合に負けたときは誰よりも落ち込んで、でも潔く結果を受け止めている姿が印象的でした。気持ちの切り替えはどのようにしているんですか?
植木:いい意味で、自分にそこまで自信を持てていないので、ゴールを決められなかったことに対しては、いつも実力不足だと受け止めています。次に同じチャンスがきた時に決め切れる選手にならなければいけないと思って、下を向く時間もないなと。悔しさを乗り越えて、成長できると思うので。
――その自信は、どういう結果を出した時に持てると思いますか?
植木:結果を残し続けた先にあるものだと思います。ただ、自分は周りに生かされるタイプで、「頑張ること」が良さだと思うので、そこに対する責任は誰よりも持っていたいです。「最後は自分に託してほしい」という気持ちがあるので、自信を持ってチームメートに言えるぐらいの存在になりたいですね。そんなふうに一生、成長に飢え続けて終わるのかな、とも思うのですが(笑)。
――成長に飢え続けるというのは植木選手らしい言葉ですね。少し気が早いですが、最後に来シーズンのWEリーグの目標を教えてください。
植木:今シーズンは本当にチームに助けてもらって獲得できた得点王だったので、来シーズンはチームを勝たせる得点王になりたいですし、今シーズン以上にゴールを決めて優勝に貢献したいと思います。
【前編はこちら】「あれほど泣いた日はなかった」4年前の悔しさを糧に。なでしこ新エース候補、植木理子が挑むワールドカップ
<了>
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[PROFILE]
植木理子(うえき・りこ)
1999年7月30日生まれ、神奈川県出身。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属の女子プロサッカー選手。中学の時に日テレメニーナ・セリアスに一期生として入団し、高1の時にトップチームのベレーザにスピード昇格を果たす。年代別代表で活躍し、2018年のU-20女子ワールドカップフランス大会では5ゴールを決めて世界一に貢献。スピードを生かした背後への動き出しやヘディングのうまさが特徴で、今季のWEリーグで得点王とベストイレブンをダブル受賞。池田ジャパンではコンスタントにメンバー入りし、今年7月に行われるワールドカップのメンバーにも選出された。
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