「本気でやるほどお金がかかる」それでも藤田晋が「FC町田ゼルビア」に挑む理由
2018年10月、日本中のサッカーファンに激震が走った。大手IT企業の株式サイバーエージェントによる、J2・FC町田ゼルビアの経営権取得。近年IT企業が相次いでプロスポーツチームへの経営に参画し、成果を残してきたことから、大きな期待を持って迎えられた。
なぜサイバーエージェントは町田の買収を決めたのか? 何を目指しているのか? そして、昨年のチーム名変更に関する騒動をどのように見ていたのか?
サイバーエージェント代表取締役社長で、町田のオーナーを務める藤田晋氏が、その本音を明かした――。
(インタビュー・構成=岩本義弘、撮影=高須力)
<本インタビューは、2月17日に実施>
にわかに盛り上がりを見せる「東京のサッカー」
――今日は取材を受けていただき、ありがとうございます。実は僕自身も今、Jリーグを目指している南葛SCというクラブの経営をしています。現在はまだ東京都1部リーグ、つまりJ1から数えて7部相当のカテゴリーなんですが、『キャプテン翼』の高橋陽一先生がオーナー兼代表取締役で、本気でJリーグを目指してやっています。
藤田:そうなんですね。本田圭佑さんが始めたクラブはどのカテゴリーですか?
――本田選手のONE TOKYOは東京都4部(10部相当)ですね。堀江貴文さんのTokyo2020 FCも同じカテゴリーです。
藤田:え、堀江さんも始めたんですか?
――はい、堀江さんも新たなクラブを設立して、東京都4部リーグからチャレンジします。なので、にわかに東京都リーグの注目度が上がっています。
藤田:確かに。ONE TOKYOも武井壮さんを監督にしましたし、話題になっていますよね。
――そうなんです。それこそ、藤田さんはゼロからつくろう、という発想はなかったんでしょうか? 既存のクラブの経営権を取得する、ではなく。
藤田:いや、実は本田圭佑さんと、「東京だったら、アジアを代表するビッククラブをつくれる可能性がある」という話をしたことがありました。それがFC町田ゼルビアをやるきっかけにもなったんです。でも、さすがにゼロからつくるという発想はちょっとなかったですね。だから、(ONE TOKYOの話を聞いた時)その手があったか、とは思いました。でもきっと、大変さは町田の比じゃないでしょうね。
――そうですね。僕自身も実際にやっている最中なので痛感していますが、現状で下のカテゴリーから上がっていくのは、本当に大変だと感じています。以前は飛び級制度もありましたが、今は一切ないので、ゼロからとなると10部から1段ずつ上がっていかなければならないわけです。つまり、全部ストレートで上がったとしても、J1まで10年はかかると。実際はストレートで上がるなんて、ほぼ不可能ですから、もっと長い年月がかかりますよね。
藤田:さすがに、そこまで時間をかけるのは難しいですからね。
「サッカーには悪魔的な魅力がある」
――それでは、本題に入らせていただきます。改めてになりますが、そもそも、なぜ町田の経営権を取得しようと考えたのですか?
藤田:単純に言えば、サッカーが好きだからです。以前(2006年)に東京ヴェルディの経営に参画した時に感じたんですが、応援するサッカーチームがあると、人生が本当に充実するなと。毎週末、負けられない試合があって、試合に勝ったらやっぱり連勝したくなるし、負けたら取り返さなきゃいけない、という気持ちになる。延々と続く連続ドラマみたいな感じですよね。とにかく、人生が充実するんです。なので、正直に言うと、「自分がやりたい」という強い思い、大学時代を過ごしたゆかりのある町田という土地で、大好きなサッカーをやりたいという思いが先にありました。もちろん、会社のお金を使ってやるわけですから、当たり前ですが、ビジネス的にも成立させなきゃいけない。その難しさというのは東京ヴェルディの時にうんざりするほど経験したので、その経験を元手に、もう一回チャレンジしようと。
――以前にも「東京ヴェルディで失敗した経験を生かしたい」という話をしていましたが、具体的にどういう点が失敗だったと考えているのですか?
藤田:そもそもの大前提として、株式構成において、我々は筆頭株主ではありませんでした。わずかな差でしたが、日本テレビが筆頭株主で、我々は第2位。主導権が握れない中で、フロントとチーム、選手、監督、ファン・サポーターが同じ方向を向いてやっていくために何ができるのか、というのが至難の業で。それぞれがバラバラな方向を向いてしまっていて、本当に難しかったんです。
――サイバーエージェントという年間の連結売上高が4000億円を超える企業のトップである藤田さんが、オーナーとして単にお金を出すだけじゃなく、経営にも関わるということに、正直、驚きを感じました。
藤田:サッカークラブって、本気でやろうと思えば思うほどお金がかかりますよね。正直、うち(サイバーエージェント)の財務担当には、無関心でいてくれたほうがありがたいと思われています(笑)。例えば、エース級の選手を取るとなったら、それに見合う収益をあげない限りは、単純に(親会社が)赤字を補填しなきゃいけないわけです。ヴェルディ時代には、そういうことも経験済みでした。当時のヴェルディは年間20億円近い赤字を出していて、それを日テレと2社で負担していたので。Jクラブは基本的に赤字を広告費という名目で親会社が補填するという慣習があるので、それこそファンやサポーターには出したことすらほとんど知られないままお金が流れていくことになります。単にスポンサーだけやっている場合は、ファン・サポーターにもとても感謝されるんですが、これがオーナーになると、時には批判もされるし、お金も一番出しているのに気づいてすらもらえない立場なんですよね。
――確かに。身銭を切っているのに、批判されてしまうのはつらいですよね……。
藤田:ただ、それでもやっぱりサッカーには悪魔的な魅力があるので。もうね、底なし沼のような魅力があるんですよね……。だから、世界中の大富豪がこぞってサッカークラブのオーナーになって、どんどんお金をつぎ込むんだと思います。
――ヨーロッパのトップリーグに所属するクラブを見ても、世界の名だたる大富豪たちがオーナーに名を連ねています。
藤田:ただ、ずっと赤字を補填し続けるのであれば、当然、「会社じゃなくて、個人でやれ」という話になってくるので、サイバーエージェントの事業として成立させるためにはどうすればいいかということを考えました。その結果、町田という一つの街だけをマーケティングの対象にしてしまうと、当然、大企業のスポンサーにはついてもらえないので、東京全体を対象にすることでクラブ経営を安定させるというプランに行き着いたことで、社内でも納得してもらい株式取得に至った、というのが当初の経緯です。
チーム名変更を考えた意味と間違い
――昨年、チーム名を「FC町田トウキョウ」へ変更する意思があると表明し、ファン・サポーターの反発も含めて大きな話題となりました。チーム名に「トウキョウ」を入れることも契約に入っていたそうですね。
藤田:そうですね。チーム名の変更については、そういった諸々の経緯を含めて説明するためにサポーターミーティングを実施しました(2019年10月11日)。率直な言葉で現状の課題とそれを解決する話をしたいと思い、あえてライブ配信もしたのですが、結果はご存知のとおりの結末になりました。
(※編集注:サポーターミーティングで反対の声が多く挙がったことから、その場では結論を出さず、いったん保留とした。10月18日、クラブHPで「2020シーズンに関して(中略)現行のままで継続」すると発表した)
そういう意味では、J1も含めていくつかのクラブから話があった中で、そもそも、なぜ町田にしたかというと、今は決してビッグクラブじゃないけれど、大きくなっていく過程を、サポーターをはじめとした皆さんを巻き込みながらやっていきたいと。そういう意味では、もちろんベストではなかったかもしれませんが、あれ(サポーターミーティング)をきっかけに、結果的にかなり多くのファン・サポーターの皆さんを巻き込むことができましたし、僕自身もあれで初めて前面に立てるようになりました。
――僕もあのサポーターミーティングはライブ配信で見ていました。上場企業の社長である藤田さんが、矢面に立って正面から向き合っていたこと自体に、驚きました。
藤田:ただ、結果は散々でしたが(苦笑)。正直に言うと、それまで町田に対してひたすら尽くしている感覚が自分の中にあったんだと思います。なので、何ら後ろめたい気持ちもありませんでした。ただ結果はどうであれ、いろいろな学びはありましたね。
もちろん、誤算があったことも事実です。事前のリサーチで、「FC町田ゼルビア」は、「FC町田」がルーツだから、「ゼルビア」という名称はそれほど重要じゃない、という情報があったので、ああいった名称変更をしようとしたんですが、ずっとクラブを支えてきたファン・サポーターにとってはそうではなく、「ゼルビア」はとても重要だったわけです。そこを読み違えていたのは間違いありません。
――実は僕も町田出身で、小学4年から中学1年の終わりまで、FC町田に所属していたんですよ。当時は今と違って、町田市の選抜チームでした。(※編集注:1977年にFC町田が発足、1989年にトップチームが創設され、1997年にFC町田ゼルビアに名称変更)
なので、藤田さんのような優秀な経営者の方が町田のサッカーを盛り上げてくれようとしていること自体に、とても感謝していました。だから、ああいった形で紛糾したのは意外でした。と言っても、サポーターミーティングでも賛否両論あって、どちらかの意見に偏っているわけではないように感じていましたが。
藤田:そうですね。ちゃんと通しで見てもらえると、それが伝わると思うんですが、動画の一部だけを見たり、現場にいなかった人がTwitterで感情的にツイートを拡散していって、それを見た人がその情報だけを見て拡散して……、典型的な炎上のパターンだったんだと思います。僕自身、炎上してたたかれるのは過去に何度も経験しているので、慣れているといえば慣れていましたが。
――確かに、揚げ足を取られて、ネガティブな部分だけが拡散されてしまった印象はありました。でも、あの後には懇親会をしたり、サポーターとのコミュニケーションを積極的に取っていましたよね。「雨降って地固まる」というような部分はありましたか?
藤田:それはあったと思います。それまでは、サポーターの皆さんとかなり距離感があったと思います。僕はクラブの社長でもないですし。そういう意味では、前面に立ってたたかれたことで、前面に立つ資格を得たというか。
さっき言ったように、ヴェルディ時代にはみんなが同じ方向を向くことができずにうまくいかなかった。町田は小さなクラブですし、やっぱり一つにまとまらないとうまくいかないと思うんですよ、絶対。なので、これをきっかけにサポーターとのコミュニケーションも増やしていきたいです。今シーズンは、ゴール裏のサポーターとも飲みに行く約束もしているので。
――久しぶりに炎上して、どんな気持ちでしたか?
藤田:もちろん、完全に予想外だった、というわけではなく、ある程度は想定していた部分もありました。流れによっては、ああいうふうになるパターンもあり得ると。それもあって、最初からすべてを公開した上で実施しました。誤った事実が独り歩きしないように、全部のやりとりが動画でオープンになっているから、そこはちゃんと見てもらいたいですね。
それと、期待値が上がりすぎると、それはそれで経営者としてはリスクなんですよ。「この人はすごくいい人だ」と思われすぎると、何かあった時に必要以上にダメージを受けることになる。なので、たまにはたたかれておいたほうがいいかなと(苦笑)。
――藤田さんはメディアで見ている限り、基本的にはすべて素でいくというか、本音を出しているイメージがすごく強くあります。そういうふうに心がけているんでしょうか?
藤田:きっと、僕らの世代は、それこそホリエモンとかもそうですけど、ネットによって丸裸にされる、というのがわかっているので、「変に取り繕ったって仕方ない」ということは意識した上でやっているとは思います。
新外国籍選手のステファンは「モノが違う」
――続いて、今シーズンの話を聞かせてください。今オフは的確な補強ができていて、町田のファン・サポーターはかなりテンションが上がっているんじゃないかと思います。
(※編集注:GK秋元陽太、DF水本裕貴、FWステファン・スチェポビッチ、アレン・マソビッチなど)
藤田:選手人件費がJ2全体の中で下から2番目とか3番目とか、そんな状態では戦えないと。(J1ライセンス取得の条件である)スタジアムや天然芝の練習場、クラブハウスなどの施設面が整うまでは、チーム強化にそこまで力を入れても、という考えもあったんですが、昨年は残留争いをしてしまいましたし、もう少しは増やさないとダメだなと。
――新外国籍選手のステファン選手(元セルビア代表)やマソビッチ選手(元U-23セルビア代表)も、相当やりそうですよね。
藤田:そうですね。特にステファン選手は、キャンプを見に行った人たちが「モノが違う」と口ぐちに言っていたので、どこまでやってくれるのかとても楽しみにしています。
――(ランコ・)ポポヴィッチ監督が再び町田の指揮を執ることになったことにも、注目が集まっています。
藤田:僕は相馬(直樹)監督のことは大好きですし、心から尊敬しています。ただ、「ABEMA」で中継している中で、魅せるサッカーという意味では、チーム全体がすごく攻撃的であるとか、とんでもないストライカーがいるとか、そういう特長がないと、なかなか厳しいのではないかと。そういう意味では、ポポヴィッチ監督はかなり攻撃的なサッカーをする監督なので楽しみにしています。
藤田氏から見た「川淵三郎」という存在
――話は変わりますが、藤田さんがチェアマンを務めているMリーグ(麻雀プロリーグ)で、川淵三郎さん(Mリーグ最高顧問/Jリーグ初代チェアマン)と交流がありますが、川淵さんからサッカー面でのアドバイスをもらったりはするんですか?
藤田:いや、サッカーについてはそんなに細かい話をしているわけじゃないですね。Mリーグについての話をした後に、ちょっとだけサッカーについても意見をもらってるくらいです。もちろん、川淵さんは町田での挑戦を応援してくれています。
――藤田さんから見た川淵さんって、どんな人なんでしょうか?
藤田:一言でいうと、代えがたい存在ですよね。誰もが川淵さんのことをそう言いますよね。「ABEMA」にも、いろいろな競技団体の方たちから「うちのスポーツを放映してほしい」という話をいただくことがありますが、そうやって話をしていてわかったことは、どのスポーツもほぼ例外なく揉めているんです。
――揉めている?
藤田:それぞれのスポーツの中の人、連盟とか協会にいる人たちですね。サッカーはまだ比較的良好な関係を築けていると思いますが、小さい団体ほど、お金がなくて揉めていますね。
それをちゃんとプロ化しようという話になった時に、嫌われてもいいから私利私欲なく正しいことをする人が必要になってくると思うんですけど、私利私欲がなくて面倒なことをやってくれて、なおかつ経験がある人なんて、ほぼいないですよね。だから川淵さんの名前が必ず挙がり、みんなが川淵さんを頼るんだと思います。
――正しいと思ったことに向かって突き進む、形にしていく。あれだけ何度も繰り返せる、再現性がある人は、確かに他にはいないですよね。
藤田:みんな何だかんだ権力欲みたいなものがあって、それこそいろいろなスポーツ団体から個性的な会長みたいな人たちが出てくるじゃないですか。報酬というよりは、権力なんでしょうね。一度権力の座に座ると、そこから離れたくなくなる。でも、川淵さんにはそれがない。それとMリーグについていえば、麻雀のリーグをこんな形でやることは初めてなので、当然リスクはある。あれほどの方がやるのは、リスクが大きいわけです。
――正直、衝撃を受けました。
藤田:それを、麻雀が好きだからという理由で引き受けてくれて。Mリーグとしてはものすごく箔(はく)がついたので、感謝しています。Jリーグ、Bリーグを立ち上げた人がやるわけですから、とてもポジティブな影響がありますからね。
イニエスタ獲得に「こんなに良いお金の使い方があるんだ」
――町田に話を戻します。町田をJ1で戦えるチームにしていくために、今後どういうプランを考えているのでしょうか?
藤田:先ほども言ったように、プランAは、東京全体をマーケティングの対象に変えて、メジャーなスポンサーを取り、より多くの人たちが見に来る街のクラブにする、というものでした。ただ、あのサポーターミーティングを受けて、事前にこういう事態も想定はしていたので、プランBとして、FC町田ゼルビアのままで、我々がクラブに貢献し、そこに共感をしてもらうという方向性に切り替えました。
――クラブの名称に関しては、将来的には変えることも検討する可能性はありますか?
藤田:いや、もう変えるつもりはないです。もともとクラブの好感度を上げる、イメージを良くするためのリブランディングだったわけですが、結果としてああいう形になってしまった。今後、どんな形で名称を変えても、今回のイメージがついて回る。もうやっても(名称を変えても)意味がありませんから。
――将来的にJ1で優勝争いをする、ということを明言していますが、実際にJ1で優勝争いをするためには、事業規模を拡大させていく必要があると思います。そのためには、何が必要だと考えていますか?
藤田:賛否はいろいろあるかもしれませんが、やっぱり三木谷(浩史)さん(楽天株式会社代表取締役会長兼社長)がヴィッセル神戸でやってきたことは、徐々に芽が出始めていますよね。アジアでの立ち位置を含めて、Jリーグの価値を上げるのに、大きな貢献をしたと思います。
30億円以上を使って(アンドレス・)イニエスタ選手を獲得した時は、素直に「こんなに良いお金の使い方があるんだ」と感心させられました。三木谷さんが規格外のお金を使ったことで、日本にいながらにして、多くの人がイニエスタを生で見られる。スタジアムに行けばイニエスタに会える、という状態をJリーグでつくったんだから、その価値は本当に大きい。
――三木谷さんとは、直接、サッカーの話はしますか?
藤田:実は昔、注意されたんですよ。「藤田、サッカーだけはやっちゃダメだぞ。あんな金のかかるものはない」って(笑)。でも結局、やることになっちゃいましたね(笑)。「なぜサッカーをやることにしたのか」については、「本当に好きだから」と言いましたが、好きに加えて、自分自身がのめり込んでいて、熟知しているから、というのも大きいです。いまや「ABEMA」の中心コンテンツになっているMリーグや、ヒップホップもそうなんですが、要は僕が好きで熟知しているから勘どころがわかる、というのがあります。あんまりよくわかっていないコンテンツだと、勘どころを間違えやすいんですよ。特に、最終的に資金を投下するかどうかの判断をする際には、そういったことがポイントになる。それで、サッカーというコンテンツを選びました。
――ただ、三木谷さんが言うように、サッカークラブは上に行けば行くほど、さらにお金がかかりますよね。J1に行ったら、毎年何十億円規模のお金が必要になります。
藤田:そうなんです。それに加えて、さっき言った問題があるんですよ。お金がかかる上に、スポンサーと違って、そのお金がサイレントに支払われていくわけです。一番貢献しているのにわかってもらえないというつらさは常についてくる。
――もちろん副次的なものを含めていろいろな効果はあると思いますが、サイバーエージェントグループの財務的に見れば、どうしても難しい話にはなってきますよね。そこはどう折り合いをつけていくんでしょうか?
藤田:純粋にコンテンツとしての価値が上がっていけば意味がありますし、利益を生む可能性もあるので、もっともっとファンを増やしていくのが重要だと思います。
――一方で、ヨーロッパをはじめとしたトップリーグのクラブでも、純粋に儲かっているクラブはほとんどないのが実情です。クラブのオーナーも、サッカーが好きだからやっているケースがほとんどです。そういう状況の中、ビジネスとしてクラブ経営をやっていくのは本当に大変ですよね。
藤田:もちろん、簡単じゃありません。ただ、コンテンツとしての価値が上がれば、スポンサーもついてくる。企業がスポンサーをするのも、半分は「好きだから」というのがあると思います。結局は、それで成り立っている世界なんだろうなと。みんなサッカーが大好きなので、それはそれでいいんじゃないですかね。それでお金を払う人がいるわけですから。
――そういう意味でいうと、三木谷さんのように、どんどんサッカークラブに投資している人がいることは、藤田さんにとって心強いですか?
藤田:そうですね。ただ、もちろん僕も三木谷さんに続きたいとは思っているんですが、意外に時間がかかりそうだなとも思っています。もっとスピーディーに仕上げるつもりで計画していたんですけどね(苦笑)。まあ、無理をしすぎて破綻することのないように、でも、可能な限りスピードを上げてやっていきたいと思います。
インタビュー実施後の2月25日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、Jリーグはすべての公式戦の延期を発表した。5月2日現在、再開の見通しは立っていない。だがいつか必ずやってくるその日に、チームが最高の状態で臨めるよう、藤田氏は闘い続けるに違いない。
<了>
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PROFILE
藤田晋(ふじた・すすむ)
1973年5月16日生まれ。株式会社サイバーエージェント代表取締役社長。FC町田ゼルビア オーナー。1998年、24歳でサイバーエージェントを設立。2000年、26歳で当時史上最年少社長として東証マザーズ上場、2014年9月、東証一部へ市場変更した。 創業から一貫して、インターネット産業において高い成長を遂げる会社づくりを目指し、「21世紀を代表する会社を創る」を会社のビジョンに掲げる。
2018年10月1日、サイバーエージェントがFC町田ゼルビアの経営権を取得したと発表。藤田氏にとって町田は大学時代を過ごしたゆかりのある街。
株式会社AbemaTV代表取締役社長、Mリーグ(麻雀プロリーグ)チェアマン、渋谷ABEMAS(Mリーグ所属)監督。
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