張本に石川、平野だけじゃない!世界最高峰「Tリーグ」は東京五輪の前哨戦
2018年10月に両国国技館で観客5624人を集めて華々しく開幕した卓球新リーグ「Tリーグ」。男子の張本智和、丹羽孝希、水谷隼、女子の石川佳純、平野美宇などトップ選手の参戦で話題を呼んだ。そして迎えた今年8月29日より2年目のシーズンとなる「ノジマTリーグ 2019-2020シーズン」が開幕する。
海外トップ選手が続々参戦することで「東京五輪の前哨戦」という様相も帯び、注目度が高まっている。そのTリーグの魅力や注目点についてリーグ広報を務め、スポーツライターとしても活動する小野寺俊明さんにご執筆いただいた。
(文=小野寺俊明、写真=Getty Images)
Tリーグは個人戦ではなく“団体戦”
「ノジマTリーグ 2019-2020シーズン」が8月29日に開幕します。ご存じの方も多いとは思いますが、Tリーグは昨シーズンから始まった卓球の新リーグで、今季はセカンドシーズンとなります。特徴は男子と女子の両方のリーグがあり、個人戦ではなく、チーム対抗の団体戦ということです。
今季、Tリーグに参戦するのはファーストシーズンに引き続き、男子が「T.T彩たま」「木下マイスター東京(KM東京)」「岡山リベッツ」「琉球アスティーダ」。女子が「木下アビエル神奈川(KA神奈川)」「トップおとめピンポンズ名古屋」「日本生命レッドエルフ」「日本ペイントマレッツ(ニッペM)」と各4チーム、合計8チームです。
男子は8月29日(木)に東京都立川市のアリーナ立川立飛、女子が30日(金)に大阪府立体育会館で開幕。レギュラーシーズンは2020年2月16日(日)まで行われ、7回戦総当りで、男女合計84試合が行われます。男女それぞれ上位2チームがファイナルに進出し、一発勝負でチャンピオンを決めます。
試合は4マッチ(ダブルス:1マッチ、シングルス:3マッチ)で行われ、3マッチに勝利したチームに勝利となりますが、マッチカウントが2-2となった場合は、延長戦に該当する「ビクトリーマッチ」が行われます。
勝ち点はマッチカウントが4-0の場合は勝者に「4点」、3-1や3-2は「3点」となります。また、ビクトリーマッチで敗戦し、2-3の場合も負けたチームに「1点」が与えられます。この勝ち点の合計で順位を争います。
東京五輪代表を狙う日本代表クラスがズラリ
Tリーグの理念の1番目に掲げられているのが「世界No.1の卓球リーグを実現する」です。そのため、選手のランク分けがなされており、細かく出場選手レギュレーションを決めています。
選手のランクは「S」「AAA」「AA」「A」と4種類あり、最上位の「S」は直近の2シーズンで世界ランク10位以内といった厳しい条件となっています。また、「AAA」も世界ランク20位以内と、ハードルは高く設定されています。
この「S」もしくは「AAA」の選手の試合がTリーグの試合では必ず見ることができます。ファンの間では、「Tリーグでは、世界大会の準々決勝以上のカードがいつも見られる」とも言われているようです。
もちろん、多くの日本人トップ選手がTリーグに参戦しており、現在、男子の世界ランキング(2019年8月現在)で日本選手の上位9人までが所属しています。
5位 張本智和(KM東京)
10位 丹羽孝希(KM東京)
14位 水谷隼 (KM東京)
43位 吉村和弘(岡山)
48位 吉村真晴(琉球)
49位 大島祐哉(KM東京)
50位 上田仁 (岡山)
56位 森薗政祟(岡山)
59位 松平健太(TT彩たま)
また、女子は日本人の上位10人中、6人がTリーグのチームに所属しています。
6位 石川佳純(KA神奈川)
10位 平野美宇(日本生命)
26位 加藤美優(ニッペM)
34位 早田ひな(日本生命)
44位 長崎美柚(KA神奈川)
52位 木原美悠(KA神奈川)
今季は東京五輪前のシーズンという意味でも注目です。2020年1月に発表される世界ランキングの上位2名が東京五輪のシングルスの代表に決定します。その後、団体戦メンバーの1名を実績や他の選手とのダブルスでの相性などを考慮して選出されます。Tリーグとともに、世界大会での各選手の結果からも目が離せません。
東京五輪でも活躍が期待される海外の強豪
海外からも多くの世界トップの選手たちがTリーグに参戦します。男子の海外選手で注目されるのは、まず、チャイニーズタイペイのリン・ユンジュ(岡山)。18歳の新鋭で7月に行われた世界のトップが出場した「T2ダイヤモンド」で優勝しました。
昨季のTリーグでは、後半戦から参戦し、最初の2試合はいいところなくストレートで敗れましたが、3戦目で張本智和に勝利すると、そこから3連勝。チームのプレーオフ進出に貢献しました。Tリーグで成長した選手の一人と言えるでしょう。
また、リアム・ピッチフォード(TT彩たま)は26歳でイギリスのエース。ロンドン、リオデジャネイロと2大会連続で五輪代表になり、2020年の東京五輪出場の可能性も極めて高い選手です。手足が長く、バックハンドが得意で世界の上位ランカーも度々破っています。また、イケメンだけに人気も出そうです。
女子はドゥ・ホイカン(中国香港/KA神奈川)、ハン・イン(ドイツ/名古屋)、チェン・ズーユ(チャイニーズタイペイ/日本生命)、フォン・ティエンウェイ(シンガポール/ニッペM)と、各チームの「S」ランク選手が注目されます。
セカンドシーズンの優勝争い。連覇か、それとも……
ファーストシーズンの優勝を飾ったのは、男子がKM東京でしたが、今季もこのチームを中心に優勝争いが展開されそうです。KM東京は、張本智和、丹羽孝希、水谷隼と、世界ランキングの日本人上位3人が所属。さらに先日の全中国選手権で優勝したホウ・エイチョウもおり、巨大戦力を誇ります。
昨季、ファイナルに進出した岡山は先述のリンに加え、吉村和弘、上田仁、森薗政祟と戦力が揃い、打倒KM東京の一番手です。特に上田と森薗で組むダブルスは昨シーズン、15勝3敗と圧倒的な強さを見せました。TT彩たまは今季から加入する松平健太、ピッチフォードに期待が集まります。また、琉球も吉村真晴が加入し、上位進出の鍵を握ります。
女子は日本生命が平野美宇と早田ひなの2枚看板で連覇に挑みます。特に早田は昨季のレギュラーシーズンで11勝0敗。さらにファイナルでも2勝を挙げ、MVPにも輝きました。無敗記録がどこまで伸びるかにも注目です。KA神奈川はエース、石川佳純を中心に長崎美柚、木原美悠の高校、中学生の若手コンビの活躍が期待されます。
ニッペMは加藤美優がT2ダイヤモンドで世界ランク1位に勝利し、ベスト4進出を果たすなど好調。また、スー・ワイヤムミニー(中国香港)と、Tリーグ初のタイ選手、サウェータブット・スターシニーの新戦力が加わりました。また、名古屋の新戦力は全日本選手権ジュニアで優勝した高校生の出澤杏佳。戦型は「右シェーク異質攻撃型」という変則スタイル。世界トップを相手にどこまで通用するかに注目です。
Tリーグのセカンドシーズンは各チームのホーム開催の他にも、仙台、茨城県神栖、甲府、静岡県袋井、徳島県鳴門、山口、北九州などでも開催されます。ぜひ、間近で世界最高レベルの卓球をお楽しみ下さい。
<了>
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