「週4でお酒を飲んでます」ボディメイクのプロ・鳥巣愛佳が明かす“我慢しない”減量メソッド

Training
2025.04.21

「ダイエット中だけれど、断れない会食があって……」「お酒や揚げ物が好きだけれど、ダイエット中は控えないと……」。欲望と罪悪感のはざまで、そんな葛藤を経験したことがある人は多いのではないだろうか。「山盛り食べてキレイに痩せる」を掲げ、自身もBIKINI選手として大会に出場するボディメイクトレーナー・鳥巣愛佳さんは、自他ともに認めるお酒好き。食事の食べ合わせを工夫すれば「お酒で太る」ことを過剰に心配する必要はないと話す。居酒屋でのおすすめメニューや、ボディメイクをする上で大切な生活習慣とは?

(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真提供=鳥巣愛佳)

お酒はダイエットの敵ではない

――鳥巣さんは「お酒が大好き」と公言されていますよね。お酒はダイエットやボディメイクとは相反するように思えますが、どのように考えているのですか?

鳥巣:お酒はダイエットの天敵だと思われるケースがほとんどですね。私はダイエット中でもよく飲んでいますが、お酒をカロリーに入れて計算したことがないです(笑)。気をつけるべきなのはお酒単体ではなく“食べ合わせ”です。ダイエットは糖質と脂質を一緒に摂らず、どちらかを減らすことが基本になります。私の減量の場合は糖質を抑えるケトジェニックダイエットをしていることが多いので、糖質が含まれるビールや日本酒は減量期には控えて、ハイボールなどをよく飲んでいます。逆に脂質を抑えたローファットダイエットをしていれば、糖質はむしろしっかり摂らないといけないので、お寿司を食べながらビールや日本酒などはよく飲んでいます。

――ケトジェニックダイエットでは、ハイボールと唐揚げのような組み合わせでも大丈夫ですか?

鳥巣:唐揚げの衣に糖質がどれくらい含まれているかによります。一般的な唐揚げの衣に使われる薄力粉だと糖質が高いので、おからパウダーなど糖質が少ないものが衣になっている場合は、積極的に食べて大丈夫です。とはいえ多少の糖質は気にしないこともあるので、数個くらいは食べていますけどね(笑)。ハイボールには糖質が含まれていないないので、太る要因にはなりません。焼酎や泡盛といった蒸留酒も問題ないです。ケトジェニック食であれば、食事とお酒に含まれる糖質を抑えておけば、太る要素はほとんどないんです。

――アルコールは太る印象がありますが、意外です。

鳥巣:アルコールは1gあたり7キロカロリーあるので、「カロリーが高いから太る」と思われがちですが、アルコールは“毒”として肝臓で真っ先に分解・排出されます。つまりアルコールのカロリーがそのまま中性脂肪になるわけではないんです。

「アルコールの代謝が脂肪燃焼の防げになる」「アルコールを飲むと筋肉が合成してくれないから良くない」と言われますが、理論的にはどちらも正しいです。お酒は決して体にいいものではありません。ただ、健康に問題がなく、一般的に体型維持したい方が気にするレベルではないと思います。確かに筋トレをした後の飲酒は、筋肉の合成が一時的に後回しになるので、もったいないと思います。でも、アルコールの分解が終わったらちゃんと筋肉は合成されますし、筋トレが無駄になるわけではないです。

――大会前日でも飲むことがあるとか。普段は週にどのくらい飲むんですか?

鳥巣:多い時は週4回ほどですね(苦笑)。私はプロを目指すボディビルダーなので、筋トレ後は筋合成を優先させるために、できるだけお酒を飲まないようにしていますが、そうでない時もよくあります。絞り切る大会の前日でも飲んでいることもありますが、ライフスタイルとして常時飲んでいるので、直前にお酒を控えたところで仕上がりには関係ないです。むしろ禁酒をするとストレスがたまって調子が悪い時はありました。ストレスを溜めないことは、ダイエットやボディメイクを続ける上でとても大切なことだと思います。

居酒屋メニューは糖質オフ。「〆のラーメンはほしくならない」

――会食で気をつけるべき食べ合わせや、注文のコツはありますか?

鳥巣:自分が糖質を制限しているのか、脂質を控えているのかによりますが、私は糖質を抑えるケトジェニックダイエットをしていることが多いので、食事はおでんの卵や大根、揚げ出し豆腐も食べますし、お刺身や焼き鳥串はもちろん、ゴーヤチャンプルーやニラ玉、ステーキなどをチョイスしています。

――サラダなどは食べないですか?

鳥巣:野菜にも糖質の高いものがあるので、積極的に食べることはありません。腸内環境のためにビタミンやミネラル、食物繊維を摂るのは大切ですけど、サプリで摂っているので問題ないです。

――〆のラーメンやご飯はつい欲しくなりますよね……。

鳥巣:それが意外と、先ほどの事例のような食事をしっかり食べていたら欲しくならないんです。〆のラーメンが欲しくなるのは、普段の食事で栄養が足りていない可能性が高いんですよね。ダイエット中でも、普段からしっかり栄養が摂れていれば、そうした“飢餓感”は生まれにくいはずです。

――食べ方の工夫などもあれば教えてください。

鳥巣:早食いはやめたほうがいいです。よく噛むことで消化吸収がスムーズになりますし、食事誘発性熱産生(DIT)が高まり、体がポカポカして代謝が上がります。ダイエットでも増量期のどちらでも、栄養がちゃんと吸収される環境で筋肉は育つので、時間をかけてよく噛んで食べることが大切ですね。お肉をしっかりと噛むのは大変ですが、私もゆっくりよく噛んで食べるように常に心がけています。

――食事以外で、生活習慣で意識していることはありますか?

鳥巣:睡眠の質です。短時間睡眠でもボディメイクできているクライアントはいらっしゃいますし、重要なのは寝る時間よりも“質”だと思います。寝ている間に内臓が消化を促すのはもちろん、自律神経を整えて、ストレスなく痩せやすい環境にするためにも、質の高い睡眠はボディメイクに欠かせません。

“バランス”が問われるBIKINI。筋トレは理想から逆算

――ダイエットにはご褒美のおいしいご飯や数字など、いろいろなモチベーションがあると思います。鳥巣さんにとって最大のモチベーションは何ですか?

鳥巣:ジムを経営する立場として、私自身が体づくりを実践し続けて、説得力のある情報発信をしていきたいという思いが強いですね。その点は他の選手や一般の方とは違うモチベーションかもしれません。体をつくるためにどんな栄養を摂って何をしたらいいのか、自分の体を使って“人体実験”をしている感覚なのでモチベーションがブレてしまうこともありません。トレーニングも食事も苦だと思ったことは、これまで一度もないと言い切れます。理論を学び、実践しながら自分自身の知識をアップデートし、お客様に還元していきたいという気持ちです。

 また、BIKINIは、筋肉のバランスが重要な競技です。ただ筋肉が大きくて絞れていれば勝てる競技ではなく、肩やお尻の形、そのバランスに対して腕や脚の太さなど、細部まで比較されます。自分に何が必要なのか、理想の体型から逆算してトレーニングをしています。

――逆算して鍛える知識とテクニックが必要なのですね。

鳥巣:はい。「この形を作るためにこの筋トレをしている」という明確な根拠を持って日々のトレーニングメニューを組み立てています。体重の増減も含めて、自分の学びがすべて一般のお客様のための、ダイエットやボディメイクに活かせるのでうれしいですね。ですから体重の増減も繰り返しながら、筋トレのメニューも常にアップデートしています。

――トレーナーとして、そして選手として目指す将来像を教えてください。

鳥巣:「正しいダイエットを広めたい」というのが選手としてもトレーナーとしても最大のミッションです。そのために、IFBB(International Federation of Bodybuilding and Fitness=国際ボディビルディング・フィットネス連盟)が認定するプロの資格の取得を目指しています。指定された大会で結果を残さないといけないのですが、今後も山本先生の指導のもとさまざまな仮説検証を楽しみながら、取得を目指したいと思っています。

――IFBBプロはどのような資格なのでしょう?

鳥巣:日本では現在、女性ではまだ20名ほどしかいない世界で認められているボディビルの資格です。現在私はアマチュアで、大会の参加費や旅費はすべて自費で、入賞しても賞金などは発生しません。ただ、プロになると招待制の試合に出られるようになり、試合で勝つと賞金をいただけたりもします。IFBB プロになって国際的に認められた選手であることを示すことができれば、発信を積み重ねてきた正しいダイエットをより知っていただけるきっかけになると確信しています。今度は誰もが認めるフィールドで結果を出して、大好きなフィットネスで生きていく、トレーナーのロールモデルになっていきたいと思います。

【連載前編】痩せるために有酸素運動は非効率? 元競技エアロビック日本代表・鳥巣愛佳が語る逆転の体づくり

【連載中編】減量中も1日2500キロカロリー!? ボディメイクトレーナー・鳥巣愛佳が実践する“食べて痩せる”ダイエット法

<了>

カーリング・藤澤五月の肉体美はどのように生まれたのか? 2カ月半の“変身”支えたトレーナーに聞くボディメイクの舞台裏

藤澤五月のボディメイク支えたトレーナー・マムシ〇口子が明かすボディメイクの始め方「お尻と、デコルテラインを美しく」

海外で活躍する日本代表選手の食事事情。堂安律が専任シェフを雇う理由。長谷部誠が心掛けた「バランス力」とは?

「どんぶり飯何杯の武勇伝」「移動中に食事を詰め込む」日本の弊害 欧州で大切にされる“食育”とは?

[PROFILE]
鳥巣愛佳(とりす・あいか)
1993年生まれ、福岡県出身。合同会社AERIY代表。元競技エアロビック日本代表選手。早稲田大学商学部を卒業後にトレーナーとして独立し、ダンスやスパルタンレース競技において日本トップクラスで活躍。BIKINI競技に転向後、選手としての活動と並行して2022年から上野御徒町にて「ボディメイクサロンVIAS」を経営している。師匠はボディビルダーの山本義徳氏。

この記事をシェア

LATEST

最新の記事

RECOMMENDED

おすすめの記事