トップアスリートになる秘訣は『わらしべ長者』にあり⁉ ビリギャル著者・坪田信貴が教える「才能」の秘密 

Education
2019.11.08

プロスポーツ選手になることを夢見る子どもたちはもちろんのこと、学生、ビジネスマン、美しくなりたい女性、理想の恋人が欲しい人……誰もが内に秘める「一番になりたい」、「夢を叶えたい」「理想の自分になりたい」という想い。
しかし私たちは、トップオブトップで活躍する人や、理想的な人生を歩んでいるように思われる人を見て「あの人と比べて自分には才能がない……」などと“才能”という概念にとらわれてしまうが、ベストセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(通称『ビリギャル』/KADOKAWA)の著者として知られ、昨年『才能の正体』(幻冬舎)を上梓した坪田信貴氏は 「才能は誰にでもある」と断言する。トップオブトップになるための才能を引き出すためには、何が必要なのか。

(インタビュー=岩本義弘[『REAL SPORTS』編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=UZA)

【前編】トップアスリートの「才能の正体」とは? ビリギャル著者・坪田信貴が語る「結果を出す方法」

「才能を嘆くのなら、2位になってから」

アスリートにおける“才能”について、トップオブトップになるためにはどのようなことが必要になってくると思いますか?

坪田:僕は昔、某アスリートの人に、ある時「お前は世界一か?」って聞かれたことがあって。その時、「自分には才能がないから」と思わずボソって言ってしまったのですが、今度は「ならば、世界2位か?」って聞かれて。「いや、違います」と言ったら、「じゃあ世界2位になってから才能を嘆け」と言われたのです。「世界1位になるというのは、シンプルに言うと“才能”なのか“運”なのかわからないけれど、どうしても自分ではコントロールできないものというのが出てくる。だけど、2位までならば努力でなれるから、才能を嘆くんだったら世界で2位になってから言え!」みたいなことを言われて、それが僕の中でしっくりきたんです。

トップオブトップになるというのは、自分もなったことがないので、正直なところ誠実に答えようと思ったら、僕に言える権利はないと思っています。でも、だからこそ自分もトップオブトップになりたいなと思い続けています。まずは“諦める”か、“諦めない”かで、その入場券を持てるか、持てないかというのがあるんじゃないかって。

トップオブトップになるための、入場券を手にするかどうかということですね。

坪田:世界でトップになろうと思ったら、例えばサッカー選手が「俺は(リオネル・)メッシに勝とう」ってまず思えるかどうかじゃないでしょうか。ほとんどの人は、メッシやクリスティアーノ・ロナウドを思い浮かべた瞬間に、今の自分と比べて絶対に無理だなと判断すると思います。Jリーグの選手ですら、そこまでは……となるだろうし。

重要なのは、僕らは神様ではないので、自分自身では何も判断できないということだと思うのです。だから、才能を測ることなんてできないんです。そこで勝手に“才能”について判断せずに、自分が目指すところの世界一にチャレンジする、“したい”、“できる”って心から思っているかどうかが一番大きい気がします。そして、その成長をずっとし続けて、ある段階まできた時に、「自分は世界一を目指す」と本気で思えているかどうか。自分自身ができることって、それしかないんですよね。他人をコントロールすることはできないし。

極論、トップオブトップの選手といえば、メッシやロナウドというのは、今の現役の中での話ですよね。現役の中でそこまでのレベルになれなくても、そこを目指してやっていくことによって、その後のやり方やマインド、人脈などにも繋がっていきます。圧倒的に活躍し続けている人の例でいえば、中田英寿さんや本田圭佑選手は、あきらかにオンリーワンの道を行っていますよね。

まさに本田圭佑選手が、「サッカー選手としてメッシやロナウドの位置に立つのは諦めた。ただ人生では俺の方が稼ぐ」みたいなことを言っていました。そのために、現役のうちからいろいろなことをやろうと、さまざまなことに取り組んでいます。そのように、自分自身のことを冷静に見ながら置き換えて、さらにそのレベルに到達した人にしか成し遂げられないことってありますよね。

坪田:そうなんです。

坪田先生の著書『才能の正体』の中でも、人の言うことに左右されすぎずに、自分流のやり方を見つけてやった方がいいというようなことが書かれていましたよね。

『わらしべ長者』に学ぶ、トップを手に入れるためのヒント

坪田:いつも思うのが、『わらしべ長者』という昔話があるじゃないですか。わらしべ長者のすごいところは、何をやってもうまくいかない貧乏な青年が、ある時に金持ちになろうとして観音様のところに行って、「金持ちになるにはどうしたらいいか」と聞きに行くんですよ。三日三晩聞きに行って、やっと観音様に「お堂から出て一番最初に掴んだものを持って西に向かって歩きなさい」って言われるのです。それで、出て行った瞬間に転んで、手に掴んだのがわらだった。そこからどんどん、わらをいろいろなものに交換していくっていう話なんですよ。

どのようなところが、すごいんですか?

坪田:この話のすごいポイントは、いくつかあって。まず、何をやっても全然うまくいかない貧乏な若者が金持ちになりたいって、まず思わないじゃないですか。わかりやすく言えば、偏差値30の子が、慶応や東大に行きたいってなかなかならないですよね。だけど、そこで観音様のところに行こうと思えたのがまずすごいなと。どういうことかというと、普通そういうことって身近な人に聞きがちなんですよね。

以前、インターネットの記事で見て衝撃を受けたのが、20代で年収1200万稼げる人って20代だと0.何パーセントぐらいみたいで、「そのようなエリートになるために必要なことって何だと思いますか?」という質問に対する回答のランキング記事だったんです。それが、20代で1200万以上稼いでいる人たちに聞いたのならわかりますが、そうではない一般の人たち50人に聞いたランキングだったんです。その中で1位だった回答に対して、「それを頑張っていきましょう!」っていう結論で終わっていて(笑)。なんの意味もない情報をぶつけられた感がすごくあって。

確かに、意味がないですね(苦笑)。

トップになる方法はトップしか知らない

坪田:一方で、わらしべ長者がセンスあるなと感じたのは、観音様という、おそらく宇宙のすべてを知っているであろう人に方法を聞きに行ったというのが、すごくポイントだと。身近な人に聞くより、トップのプロに意見を求めるということが。

サッカーの育成などに置き換えても、指導者がトップを経験してないのに、経験したように教えたりしますよね。岡田武史さんに(FIFA)ワールドカップについて語られるならわかるけれど、週末のお父さんコーチとかに、「お前はワールドカップ出たくないのか?」と言われても……(笑)。コーチにも、親にもいろいろ言われて、子どもはそれに合わせようとして、ぐちゃぐちゃになってしまいます。

坪田:そういう意味だと、まだ僕が指導者になって1年目ぐらいの時に、IQ70くらいの、少し知的障がいがあるとされている子を指導することになったんです。その際、アメリカの創造性教育のトップといわれている教授と、京都大学の教授に手紙を書いて、どういった方法論がありますか?と聞いて教えてもらって、それを実行したんですよ。

どのようなアドバイスを受けたのですか?

坪田:最初にまず波線をランダムに引いて、ちゃんとその通りに手を動かすという練習をするのですが、その時、次の動きを予測しながら自分の体をコントロールしなくてはならないじゃないですか。これってけっこう知的な作業なんですよね。それが複雑であればあるほど、自分の思考と体のコントロールを一致させていくことになるので、だんだんそのスピードを上げていくという練習をするといいと教えてもらって。それから、迷路をやったほうがいいと言われて。

迷路ですか?

坪田:迷路って、右に行くと行き止まりで、左に行くと進めるようになっていた場合、右に行ったはいいんだけど、壁に当たりそうだから戻らなきゃ、といった判断して戻ったりしますよね。そうすると次は、もうそっちには行かないという判断をするようになります。最初その子は、壁に当たってから戻るというのを繰り返していたのですが、徐々に2mm手前で戻るようになった。これって成長じゃないですか。

ちょっと先を見た行動をするようになったということですね。

坪田:人生には誰しも選択肢があって、そのどちらかに行くんだけど、そこで行き止まりになったら戻るというのを教えてくれる、一番シンプル化したのが迷路だから、それをどんどん練習していくといいというのを教わって。この迷路をたくさん練習していった結果、その子はすごく成長しました。この方法も、トップの人に聞いたことを実行したからだと思いますね。

<了>

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PROFILE
坪田信貴(つぼた・のぶたか)
処女作『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)がベストセラーとなり、第49回新風賞受賞。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法によって、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。教育者でありながら、起業家・経営者としての顔も持つ。テレビ・ラジオ等でも活躍中。新著に『才能の正体』(幻冬舎)がある。坪田塾 塾長。起業家・経営者・作家・教育者。

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