ソフトバンク「最大の補強」は城島&平石!キャンプで絶大な存在感、盤石の常勝軍団へ死角なし
この5年で4度の日本一。まさに我が世の春を謳歌する福岡ソフトバンクホークス。今オフにはバレンティンを獲得したことが大きな話題となったが、それ以上にキャンプで絶大な存在感を見せつけていた“新加入”の二人がいた。ホークスが常勝軍団の座をさらに盤石にするべく目を付けたのは、選手“以外”の補強だった。
(文=花田雪、写真=Getty Images)
城島健司と平石洋介、キャンプで見せつけた絶大な存在感
東京五輪開催の影響で、例年よりも1週間ほど早い3月20日に開幕を迎える今季のプロ野球。
開幕まで1カ月を切ったこのタイミングは、各球団のチーム体制が少しずつ見えてくる時期でもある。
昨季まで3年連続日本一と、圧倒的な結果を残し続ける福岡ソフトバンクホークスは今季、東京ヤクルトスワローズを退団したウラディミール・バレンティンを獲得。NPB通算9年間で288本塁打を放っている球界屈指の長距離砲の加入で、12球団一の選手層はさらに厚みを増した。
筆者も2月上旬にキャンプ地である宮崎県宮崎市・生目の杜運動公園野球場を訪れたが、やはり最大の関心は大砲・バレンティンの動向だった。
しかし、実際にキャンプ地での光景を目の当たりにして、感じたことがある。
それは、プロ野球チームにおける「補強」とは、なにも「選手の加入」だけを指すわけではないということだ。
確かに、バレンティンの存在感はスター軍団のホークスにおいても抜群だ。チームリーダーの松田宣浩は相変わらず球場中に響く大きな声でチームはもとより観客までも盛り上げる。育成選手ながらA班に抜擢された砂川リチャードの打撃も特筆ものだった。
ただ、そんな常勝軍団において、春季キャンプで彼ら「選手」より大きな存在感を放っていたのが、城島健司と平石洋介の二人だ。
「キャンプで一番人気」、別格の城島
城島はダイエー時代からホークスの正捕手としてプレーし、その後メジャーリーグ、さらには阪神タイガースでもプレー。2012年限りで現役を引退して以降は、一度もユニフォームに袖を通すことなく、地元九州で趣味としても知られる釣り番組に出演するなど、球界からは一定の距離を置き続けてきた。
それが今季、恩師でもある会長・王貞治氏の要請を受けて球団会長付特別アドバイザーに就任。久しぶりにホークスに戻ってきた。
肩書上、選手を指導する監督、コーチではないため、キャンプ地でも比較的「自由」に回る城島の姿を追うのは至難の業だ。
A班がメイン球場として使うアイビースタジアムに顔を出したかと思えば、気付くとブルペンにふらっと現れる。
ただ、それでもやはり、城島の存在感はこと「ホークス」という球団においては別格だ。
移動中、ファンに声をかけられてサインに応じていると、そこにはすぐに長蛇の列ができて即席のサイン会が始まる。
メディアの間では「今年のキャンプ、一番人気は城島だね」という声も聞かれたほどだ。
もちろん人気だけではない。ホークス、メジャーリーグ、そしてセ・リーグでのプレー経験もある城島のキャリアは、間違いなくチームにとってもプラスになるだろう。
特にチームの正捕手に君臨する甲斐拓也を筆頭に、捕手陣からは「その経験や技術について少しでも学びたい」という姿勢がひしひしと感じられた。打者としても超一流の実績を残しているだけに、伸び悩む若手野手陣にとっても彼の存在は大きなプラスになるはずだ。
今季は前述の球団会長付特別アドバイザーとしてチームに帯同するが、昨季まで出演していたレギュラー番組なども継続予定だという。
憶測にすぎないが、1年間かけて指導者としての下準備、身辺整理を済ませ、2021年からは満を持してユニフォームに袖を通す――。そんな青写真も見えてくる。
「動」の平石コーチ就任は大きな武器になる
一方、今季から1軍打撃兼野手総合コーチに就任した平石洋介は、城島とは違いホークスとは縁もゆかりもないキャリアを歩んできた。PL学園、同志社大、トヨタ自動車とアマチュア野球の名門チームを経て、2004年ドラフト7巡目で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。2011年に現役を引退すると、翌年からは同球団初の生え抜き出身コーチに就任。2018年途中からは監督代行、昨季は監督としてチームをクライマックスシリーズ進出へと導いた。
ホークスにとってはいわば「敵軍の将」。それが、電撃解任からタイムラグなしで、ライバル球団のコーチへと転身を遂げたのだ。
1980年生まれの平石はいわゆる「松坂世代」。今年40歳とまだ若いが、指導者としてのキャリアは同世代でも群を抜く。
春季キャンプから、指導者として精力的に動く姿は一目見て明らかだった。シートノック中はどのコーチよりも選手に近い位置で隅々まで目を配り、積極的に声もかける。工藤公康監督、森浩之ヘッドコーチがどちらかといえば「静」の指導者なだけに、「動」の平石コーチとの相性も良さそうだ。
キャンプ中、少しだけ話を聞くことができたが、「まだまだ慣れないところはありますけど、少しずつね。これから、監督の目指す方向性や選手の要望も取り入れていきたい」と新天地での指導にも確かな手応えを感じている。
また、昨季まで同リーグの楽天を率いていたことも、シーズンを戦う上で大きなアドバンテージになる。楽天は今季、FAで鈴木大地、メジャーリーグから牧田和久、トレードで涌井秀章、美馬学のFA人的補償で酒居知史と、大幅な補強を敢行。戦力的には優勝争いのライバルになる可能性は非常に高い。
そんなライバルを知り尽くした男がベンチにいるとなれば、これほど心強いことはないだろう。
3年ぶりのリーグ優勝奪還、4年連続日本一を目指すチームにおいて、確かにバレンティンの加入は大きな戦力アップになるはずだ。
しかし、2020年を戦うホークスにとっての最大の「補強」は、選手ではなく城島と平石の二人なのではないか。
チームの補強とは、なにも「選手の加入」だけを指すのではない――。
宮崎の地で、それを実感した。
<了>
「それでも、やるなや…」ソフトバンク千賀滉大の怒り 「子供の虐待」に取り組む信念
ソフトバンク千賀滉大「WBCは足を引っ張った」 東京五輪、リーグ優勝へ「ブレない」決意
ソフトバンク高橋礼、滅茶苦茶な10代を球界屈指サブマリンへ飛躍させた「3つの金言」とは
ソフトバンク周東佑京、侍ジャパンを「足」で救ったスピード出世の礎
この記事をシェア
KEYWORD
#COLUMNRANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
「自信が無くなるくらいの経験を求めて」常に向上心を持ち続ける、町田浩樹の原動力とは
2024.09.10Career -
「このまま1、2年で引退するのかな」日本代表・町田浩樹が振り返る、プロになるまでの歩みと挫折
2024.09.09Career -
「ラグビーかサッカー、どっちが簡単か」「好きなものを、好きな時に」田村優が育成年代の子供達に伝えた、一流になるための条件
2024.09.06Career -
名門ビジャレアル、歴史の勉強から始まった「指導改革」。育成型クラブがぶち壊した“古くからの指導”
2024.09.06Training -
浦和サポが呆気に取られてブーイングを忘れた伝説の企画「メーカブー誕生祭」。担当者が「間違っていた」と語った意外過ぎる理由
2024.09.04Business -
張本智和・早田ひなペアを波乱の初戦敗退に追い込んだ“異質ラバー”。ロス五輪に向けて、その種類と対策法とは?
2024.09.02Opinion -
「部活をやめても野球をやりたい選手がこんなにいる」甲子園を“目指さない”選手の受け皿GXAスカイホークスの挑戦
2024.08.29Opinion -
バレーボール界に一石投じたエド・クラインの指導美学。「自由か、コントロールされた状態かの二択ではなく、常にその間」
2024.08.27Training -
エド・クラインHCがヴォレアス北海道に植え付けた最短昇格への道。SVリーグは「世界でもトップ3のリーグになる」
2024.08.26Training -
なぜ“フラッグフットボール”が子供の習い事として人気なのか? マネジメントを学び、人として成長する競技の魅力
2024.08.26Opinion -
五輪のメダルは誰のため? 堀米雄斗が送り込んだ“新しい風”と、『ともに』が示す新しい価値
2024.08.23Opinion -
スポーツ界の課題と向き合い、世界一を目指すヴォレアス北海道。「試合会場でジャンクフードを食べるのは不健全」
2024.08.23Business
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
張本智和・早田ひなペアを波乱の初戦敗退に追い込んだ“異質ラバー”。ロス五輪に向けて、その種類と対策法とは?
2024.09.02Opinion -
「部活をやめても野球をやりたい選手がこんなにいる」甲子園を“目指さない”選手の受け皿GXAスカイホークスの挑戦
2024.08.29Opinion -
なぜ“フラッグフットボール”が子供の習い事として人気なのか? マネジメントを学び、人として成長する競技の魅力
2024.08.26Opinion -
五輪のメダルは誰のため? 堀米雄斗が送り込んだ“新しい風”と、『ともに』が示す新しい価値
2024.08.23Opinion -
なでしこジャパンの新監督候補とは? 池田太監督が退任、求められる高いハードル
2024.08.22Opinion -
パリ五輪・卓球団体、日本勢に足りなかったものとは? ベストを尽くした選手たち。4年後に向けた期待と課題
2024.08.15Opinion -
なでしこジャパン、ベスト8突破に届かなかった2つの理由。パリ五輪に見た池田ジャパン3年間の成長の軌跡
2024.08.07Opinion -
早田ひなの真骨頂。盤石の仕上がりを見せ、ベスト4進出。平野美宇は堂々のベスト8。2人の激闘を紐解く
2024.08.02Opinion -
女王・スペインとの「1点差」に見えた現在地。アクシデント続きのなでしこジャパンはブラジル戦にどう勝機を見出す?
2024.07.28Opinion -
なぜ森保ジャパンの「攻撃的3バック」は「モダン」なのか? W杯アジア最終予選で問われる6年目の進化と結果
2024.07.10Opinion -
「サッカー続けたいけどチーム選びで悩んでいる子はいませんか?」中体連に参加するクラブチーム・ソルシエロFCの価値ある挑戦
2024.07.09Opinion -
高校年代のラグビー競技人口が20年で半減。「主チーム」と「副チーム」で活動できる新たな制度は起爆剤となれるのか?
2024.07.08Opinion