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なぜ河合竜二は札幌のパートナー企業を急増できたのか?「まだまだ大きくなれる」と語る未来図
北海道コンサドーレ札幌で加入初年度の2011年から5年間キャプテンを務め、2度のJ1昇格をけん引してきた河合竜二。2018年に現役を引退した後フロントスタッフとして新たなキャリアをスタートさせた。自らの引退試合をクラウドファンディングで実現するなど選手やファン・サポーターからの信頼も厚い男が、C.R.C(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)として、苦境の中迎えた2年目の今シーズン。クラブ、そして北海道への想いと、描いている未来図とは――? 河合を身近で見てきたパートナー事業部 副部長の伊藤浩士氏と共に明かしてくれた。
(インタビュー・構成=阿保幸菜[REAL SPORTS編集部]、写真=2020 CONSADOLE)
「北海道に残ってこのチームをもっと大きく、強いクラブにしたい」
――河合さんが引退後のセカンドキャリアとして、コンサドーレのフロントスタッフの道を選んだのはなぜですか?
河合:やはり北海道が好きになったのもありますし、このクラブに魅力を感じて……まだまだ大きくなれるクラブだし、自分が貢献できるのはこのクラブかなと思ったからです。現役を続けたい気持ちはありましたけど、(他のクラブで)現役をやっても、たぶんまた戻ってきたと思います。それだけの思いがこのチームには芽生えましたし、オファーをいただいた時は、「北海道に残ってこのチームをもっと大きくしたい、強いクラブにしたい」という思いが強かったですね。
――地域やクラブの魅力に加えて、クラブやチームの可能性に引かれたのですね。
河合:全部が重なりました。J1とJ2を行き来しているエレベーターチームと言われながらも、自分が入った時は若手主体になっていて、「クラブを引っ張っていってくれ」と言われ加入したのですが、今現在ここまでのクラブになったというのは正直、当時は想像もつきませんでした。やっぱり、すごく可能性のあるチームだと思うんですよね。そこで、クラブがまた一つ大きくなるために自分に手伝えることがあるならやっていきたいという思いです。
――河合さんがC.R.C(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)に就任して2年目のシーズンとなりますが、今後どのような活動をしていきたいと考えていますか?
河合:クラブの社長やGMになると言っている人もいますけど、まずは目の前のことをしっかりやりつつ、北海道の手助けができるようにしていきたいです。今現在は、コロナウイルスの影響でファン・サポーターたちが寂しい思いをしないように、クラブとつながりが持てるような発信をしています。自分は普段、メディアなどに出るのはあまり好きではないのですが、今は進んで出させてもらっています。
それから全道を一つにしたいという思いがあるので、定期的にサッカー教室を開催したり、全道にコンサドーレをPRしながら、北海道全体のサッカー文化を底上げできるような存在になっていけたらなと思います。
――C.R.Cというネーミングはどういうふうに決まったのですか? 同じような役職でも、クラブによって違いますよね。
河合:はい。今、“3文字役職”が流行っていますよね。最初に中田浩二さんが鹿島アントラーズのC.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)になって、僕が2番目なんです。3番目が僕の直後に森崎[﨑](和幸)さんがサンフレッチェ広島のC.R.M(クラブ・リレーションズ・マネージャー)になったんですけど。「コンサドーレ宣伝部長」みたいな感じだと、ちょっと格好悪いじゃないですか(笑)。やっぱり、印象づいたほうがいいなと。
――「クラブ~」ではなく「コンサドーレ」という名前が入っているのもいいですよね。
河合:ありがとうございます。よくぞ気づいてくれましたね(笑)。
――まさにその名のとおり、コンサドーレを通して人々をつなげるために活動をしているというのがすごくわかりました。
河合:本当ですね。今言われて自分も改めて思いました(笑)。
伊藤:河合竜二がクラブに入ってから、新規パートナー企業が増えています。
――その理由は何だと思いますか?
伊藤:河合も企業に同行してもらうことが多々あります。22年間の選手生活から社会人1年目とは思えないほどの対応力ですよ、一番は、彼の何事にも全力で対応する姿勢や、これまで築いてきた信頼関係を企業が肌で感じ取っていることだと思います。これは、昨日今日で身に着けることのできないことです。本当に営業の即戦力としてクラブに貢献しています。
河合:いや、まだまだです。
――でも本当に、コンサドーレの可能性を高めていく上でものすごく重要なポジションだと思うんですけども、そういった意味でもすごくやりがいがありそうですよね。
河合:はい。自分にしかできないこともあると思うので、そこは進んでやっていきたいです。クラブとしてはもちろん、地域が求めていることもコンサドーレを通して手伝えるならやっていきたいと思っています。小さな力も大きな一歩ですからね。
「北海道から」ではなく「北海道とともに、世界へ」
――コンサドーレは昨シーズン、(JリーグYBC)ルヴァンカップで準優勝というクラブの新たな歴史を築きましたけれども、今の状況を乗り越えて、今後クラブとしてさらなる成長のためにはどんなことが必要だと感じていますか?
伊藤:どのクラブも必ず目標を持つ、一方、フロント側は広告料収入、入場料収入、物販収入などを柱に事業規模を大きくしていかなければなりません。その中でもやはりフロントとチームは同じ目標を共有しなければいけません。「チームとフロントが一丸となる」と、簡単には言えますが、なかなか難しいもの。でも、野々村(芳和)社長が着任した初年度から、クラブ事業収入が年々増えています。(野々村社長)が着任してから間もなくですが、札幌ドームのビジョンを使って、集まったサポーターにコンサドーレの実態や立ち位置などをプレゼンし、実施した時から、将来のクラブビジョンがブレずに浸透されていて、全選手、スタッフ、社員が同じ目標に向かっているので成功していると思います。
――すごいですね。クラブ全体が着実に上向きに歩み続けているということはすごく強みですよね。
伊藤:そうですね。本当に尊敬しています。
――今後のコンサドーレが目指す姿について教えてください。
河合:北海道民に愛され、応援されるクラブになるというのが理想です。そして全国どこへ行っても「北海道にはコンサドーレがあるよね」と言われるような存在になっていきたいです。そのためには、クラブの夢物語で終わるのではなく事業規模を拡大しなければいけないですし、まだまだやれることはあります。なので、このコロナウイルスの影響で悪くなるのではなく、野々村社長も言っていたのですが「コロナの前よりいいクラブにしよう」というのを合言葉にしています。
そこで僕たちの今の行動や、パートナー企業様の日頃からのクラブへのご支援、ファン・サポーターのクラブ愛。それら全てがいい循環になっていけば、芯が強い固まりになると思うので大事な時期かなとは思いますね。今だからこそできることを進んでやることが、今後のクラブの未来につながると思います。
伊藤:われわれは「北海道とともに、世界へ」というクラブスローガンを掲げています。「北海道から」ではなくて、「北海道とともに」というスローガンです。未来は変えていくもの、北海道に何ができるかということを真剣に考え、行動しています。地域に根差すということはどういうことなのか、今だからこそ考えて行動しなければならない。そして本当に、コロナとは長い戦いになるかと思いますが、この状況が一日も早く収束して日常を取り戻せるよう活動していけたらと思います。
――そうですね。今回お話を伺って、コンサドーレの地域、企業、サポーターたちとの支援の輪というのが、本当に強いチームなんだなというのを感じました。
伊藤:ありがとうございます。われわれのクラブが北海道に存在する意義は、プロサッカーチームの運営会社ではなく、北海道を豊かに元気にする会社。そのツールがたまたま、サッカーであり、スポーツ。パートナーとパートナーをいかにしてつなげることができるか、それがパートナー事業部の仕事です。繰り返しになりますが、われわれは、北海道を豊かに元気にしなければいけないですし、コロナ以前のクラブよりもより良いクラブになったと言われるよう、そして地域に必要とされる存在にならなければなりません。
河合:その辺は選手たちもすごく感じてくれていて、今回話題になりましたが、選手一同より4月~9月の6カ月間、報酬の一部返納の申し出がありました。選手たちもそのように北海道に返還したいという気持ちが強いですし、SNSの発信においても、選手から「何かやれることないですか?」という相談もあります。僕は選手側の気持ちもわかるので、コロナウイルスによるピンチを一つのきっかけに、ファン・サポーターとのメンタル的な距離は縮められているのかなと感じています。
――今の状況をポジティブに捉えるならば、コンサドーレに関わる人たちみんなが寄り添うような形ができてきたというのはいいことですね。
河合:そう思います。サッカーができない状況になって改めて、誰のおかげでサッカーができているのかということを、選手は感じていると思いますね。
<了>
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PROFILE
河合竜二(かわい・りゅうじ)
1978年生まれ、東京都板橋区出身。西武台高校卒業後、浦和レッズに加入。2002年に浦和を契約満了後、2003年に2度目のトライアウトを経てその年から監督就任となった岡田武史氏の誘いで横浜F・マリノスへ加入し、主力として活躍し2年間キャプテンとしてチームを率いた。2011年に北海道コンサドーレ札幌へ移籍し、初年度からキャプテンに任命されチームを支える存在として貢献しながら、2018年シーズン限りで現役を引退。2019年1月に現役引退と北海道コンサドーレ札幌のフロントスタッフへの就任を発表し、現在C.R.C(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)として活動している。
伊藤浩士(いとう・ひろし)
1973年生まれ、北海道札幌市出身。札幌真栄高校卒業後、1992年~2012年までルネッサンスサッポロホテルに20年間勤務、ドア/ベルマン・フロントを経験し、ホテルの核となる宿泊セールストップとして国内外の旅行代理店にPR、特に海外インバウンドに注力し、ASEANを中心とした現地旅行代理店との繋がりを強化し、多くの旅行者に北海道の魅力を発信してきた。2013年 株式会社コンサドーレへ入社、パートナー事業部の一員となり、初年度から新規パートナーの獲得や北海道内各市町村との相互交流締結など企業だけに留まらず、地域との懸け橋としても活動し2020年より、パートナー事業部 副部長として従事している。また、幼少から社会人までサッカー選手だった経験を生かし、全道各地に食育&サッカー教室などを開催し、スポーツ文化の普及活動にも貢献している。
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