手越祐也から親友・内田篤人へのメッセージ「日本色に染まってほしくない」 日本サッカー改革論

Opinion
2021.01.23

昨年6月、17年半所属したジャニーズ事務所を退所し、新たな道を歩み始めた手越祐也さん。大のサッカー好きとして知られ、自身も4歳からサッカーを始めた。FIFAワールドカップやFIFAクラブワールドカップのメインキャスターを務め、世界中のサッカーを現地で見てきた。そんな手越さんの目線から、日本サッカー界はどう見えているのだろうか?「日本サッカー界の未来は明るくない。もっと危機感を持った方がいい」と口にする手越祐也さんの「日本サッカー改革論」を聞いた。

(インタビュー=岩本義弘[REAL SPORTS編集長]、構成=REAL SPORTS編集部、撮影=軍記ひろし)

Jリーグはもっとエンタメの意識を持って、メディアを利用しないといけない

――手越さんから見て、日本サッカー界がさらに発展していくためには、まず何が必要だと思いますか?

手越:まずメディアへの対応を変えた方がいいと思いますね。自分もいろいろと取材させてもらって感じたことなんですけど、例えばJ2の時の湘南ベルマーレに取材に行ったんですよ。当時湘南にいた遠藤航選手(現シュトゥットガルト)。俺がJ2のクラブだったら、少しでも露出を増やして、選手の知名度を上げて、集客を増やしたいなって思うわけ。J2に地上波のテレビ局が来てくれるのは大きなチャンスじゃんって。芸能界で例えるならば、オリコンでまだ20位くらいしか取ってないアイドルがテレビ番組に出られるとなったら絶対にかぶりつくわけですよ。

それで朝9時くらいに湘南のクラブハウスまで取材に行って。そうしたら前日の試合でケガをしたから取材を受けさせられないと。いや、ケガしてもしゃべれるじゃんって。結局取材はドタキャンになって。それで遠藤選手がすみませんと謝りに来たんですよ。

――謝りには来られるわけですよね。

手越:そうそう。でもそれって遠藤選手が謝ることじゃない。遠藤選手はあくまでも試合でケガしちゃったわけだから。クラブがよくないって思うわけですよ、謝るんじゃなくて取材を受けさせてよって。Jリーグがプロ野球くらい毎試合観客で埋まってればいいですよ。でも実際そうじゃないわけですよね。選手の給料を払うためには集客は大事だし、集客することによってグッズも売れて、さらにメディアも来るわけじゃん。もっとメディアの影響力を利用するべきだと思います。

――選手というよりも、クラブが考え方を変えないといけないと。

手越:そうですね、クラブが考え方を変えないといけないと思います。スポーツはエンターテインメントなんだということを意識しないと。これはもうメジャーリーグだろうがNBAだろうが、集客があるからメディアが来るしスポンサーがつく。そこから選手の給料を払うわけだから。やっぱりもっとメディアをうまく利用すればいいのになってすごく思います。

――内田篤人さんがシャルケに在籍していた時、取材に行った日に肉離れをやったんですけど、普通にご飯を食べながら取材を受けてくれました。クラブとしても、自分でちゃんとやれるんだったらOKとしているわけです。でも確かに日本だとその日にケガしたら取材はキャンセルになりますね。

手越:ケガしたらしゃべれないという理由が俺にはよくわからない。そこは変えた方がいいなって思います。

――エンターテインメントの意識が低いと。

手越:低いですね。やっぱりスポーツだろうが芸能だろうがエンタメだから。客がいてなんぼなわけだから。集客を増やしてくれるメディアの力はもっと頼らないといけないし、もっと使わないと。サッカー選手の給料は高いとはいえないじゃない、他のスポーツに比べて。常に身体に対してストイックでケガも隣り合わせのスポーツなのに給料が安いのは変えていかないと。もっと恵まれた生活をしてもいいのかなって思います。

スター感のあるサッカー選手がいなくなった。子どもが憧れる存在に

――他にもっとこうした方がいいんじゃないかと思うところはありますか?

手越:もっとスター感があった方がいいなって思いますね。やっぱりJリーグが開幕した当初、カズ(三浦知良)さん、武田(修宏)さん、城(彰二)さんとかすごくスター感があったから、みんな憧れたじゃないですか。スポーツ選手も芸能人もそうですけど、最近みんな堅くて、スターがいないように思います。憧れられる存在じゃない。

――チームの主軸で活躍している選手はいるけど、誰もがオーラを感じるようなものがないと。

手越:そう、オーラがない。みんな真面目、サラリーマンみたい。芸能人もスポーツ選手も、人前に立つ人間なわけじゃないですか。小さい子が憧れる存在でいてほしいなって。今のサッカー選手を見てても、“サッカー選手になりたい”って目指す子どもは絶対に昔より少ない気がする。俺らが子どもの頃はスターがいっぱいいたから“サッカーやりたい!”ってなったけど。今は芸能人よりYouTuberになりたいっていう子どもが増えたのと一緒で、キラキラした特別感とかスター感が無さすぎるかなと思います。

――あえて言うなら誰でしょうか?

手越:本田圭佑選手(ボタフォゴ)くらいじゃない? “本田圭佑”ってブランドに対するこだわりがすごくありますよね。ACミランの時もBBQでスーツ着ちゃったりさ。でもそれは彼のブランディング。空港にフェラーリで来たり、超いいじゃん。あのくらいのスター感がないと。今の選手はちょっと地味かな。

――せっかくそこのポジションが空いているから、そこを取りにいく選手がいてもいいですよね。

手越:はい、そう思うんですけどね。唯一期待できるのは久保(建英)選手(ヘタフェ)くらいじゃないですか。日本で育ってない人しか期待できないでしょ。今の日本の堅苦しい社会で育った人で出てくるとは思えないから。

――久保選手がすごいのは、外国人選手ともスペイン語でガチで言い合うところなんて普通じゃないですもんね。

手越:いい、普通じゃない。でも、あれじゃないと海外では戦えないですよね。

――でも久保選手もスター感というより、外国人感という気もしますけど。

手越:そうですね。もうちょっとスター感はあっていいんですけどね。久保選手くらいの立場でうまければ。

――でも(リオネル・)メッシだってかわいい系で小さいけどスター感がすごい。久保選手もそっちにいけばいいんですよね。

手越:はい。やっぱりサッカー選手はスターであってほしい。

サッカー選手のセカンドキャリア問題をどう見ている?

――手越さんはJリーガーのセカンドキャリアの支援活動に取り組みたいという話もしていました。なぜそう考えたんですか?

手越:アイドルもタレント生命が長いとは思っていませんけど、サッカー選手はケガと隣り合わせで、常にストイックに自分を追い詰めないといけないのに、選手生命が短いですよね。でもJリーグで億プレーヤーは本当に少ない。本田圭佑選手みたいに現役中からサイドビジネスをしてる選手なんてほぼいなくて、小さい頃からずっとサッカーしかしてないわけじゃないですか。もしそういう人たちが20代後半とかでケガをして選手生命を絶たれたときに、第二の人生はどうするのって。一般の人たちがぐうたらな生活を送ってる間も、何十年も食事もトレーニングもサッカーに対してストイックにやってきた人たちのセカンドキャリアは、美しく明るいものがないと不平等だなと思っちゃう。だからセカンドキャリアのサポートが何かできたらいいなと思ってます。

――手越さんがずっとサッカーを見てきて、現役時代に活躍しても引退してからのセカンドキャリアがなかなかうまくいかない人たちも近くで見てきたからこそそう思うわけですね。

手越:そうですね。日本代表になった人でもそうなので、なんとかできたらなって思いますね。

――そのためにはどんなことが必要だと思いますか?

手越:俺も小さい頃からサッカーをして、仕事はジャニーズしかしたことがなくて。言ってみれば32歳にしてジャニーズを引退して、独立(セカンドキャリア)の道を行ってるわけじゃない。俺がもし事務所の言うことを全部聞いて、一切の交友関係を広げてこなかったら、俺は路頭に迷ってたと思うんですよね。でも今は独立してもなんとかなってる、独立した方が忙しくできてるというのは、ジャニーズにいる間にいろいろな知識や人脈を培ってきたからこそだと思う。

サッカー選手って芸能人やアイドルよりも交友関係を広げることが難しいと思うんですよね。外の世界でも生きられる知識を得る機会もなかなかなくて、ケガで現役を引退したら放り出される。だからそういう勉強は現役時代からクラブがサポートしてあげないと。ずっとサッカーサッカーで生活してるわけだから。現役の時に引退後のことを考えるのもおかしい話かもしれないけど、いつかは引退が来るわけだから。そういう知識とサポートは現役時代からあっていいと俺は思うんですよね。

――海外クラブの場合は結構教育しているんですが、Jリーグではあまりありません。ただ今は一般社会でも大手企業なら安心という時代ではありませんし、自分のキャリアは自分で考える、少なくとも勉強はしないといけないと思います。

手越:そうですね。組織が死ぬまで面倒を見てくれるわけではないですからね。

「染まってほしくない」友人の内田篤人へのメッセージ

――セカンドキャリアを歩み始めた内田篤人さんのことはどう見ていますか?(※昨夏の引退後、日本サッカー協会(JFA)の新役職、ロールモデルコーチに就任した)

手越:日本サッカー界には改善点が多くあると思ってるから、それを変える活動をしてほしい。組織に染まってほしくないなって思ってます。

――引退してすぐにJFAからオファーがきましたけど、その中でも改革してほしいと。

手越:改革してほしい、染まらないでほしい、サラリーマンにならないでほしい。何年もドイツで戦ってきて、日本代表でも不動の右サイドバックを確立して、ある意味でサイドバックの常識を長友(佑都)選手とともに変えた。海外の仕組みとか厳しさを死ぬほど理解してる人だと思うから、日本色に染まってほしくないなって思います。日本サッカーの歴史はイングランドやドイツと比べて100年くらいの差があるわけじゃん。それを詰めるような活動をしてほしいなって思いますね。

――UEFAチャンピオンズリーグの日本人歴代最長出場記録(2418分)を持っていて、日本人歴代最高タイのベスト4までいったという経験は内田さんにしかないわけですからね。

手越:他にいないですね。日本のやり方に染まってほしくないなって思う。

――大きな組織のやり方に染まると、これまでの経験が全然生かせなくてもったいなくなるかもしれません。

手越:そうですね。俺は独立してから自分の活動を全部自分の頭で考えてできるから、サッカー界に対して何かできることをやりたいと思って、篤人の引退試合を見に行った時に「何か手伝えることある?」って声を掛けたんですよ。そしたら、「いや、JFAという組織に入ったから自分の判断だけでは動けないんだよね」って。「え、そうなの!?」って。そうはならないでほしい。

――そこから変えてほしいですよね。

手越:変えてほしい。

――友人としてですね。

手越:そうですね。同い年で、同じ32歳の時に人生の転機を迎えて。

――ドイツでも鹿島アントラーズでもあれだけやって、勝者のメンタリティーを知っていて、サッカー選手としてあがき続けて、骨っぽさがあって。そういう人がテレビのバラエティー番組に出ていじられてほしくないというのはあります。

手越:篤人しかいないと思うんですよね。変えられるの。

日本サッカー界の未来は明るくない。もっと危機感を持った方がいい

手越:日本サッカー界はもっと焦った方がいいと思ってます。ラ・リーガ(スペイン)とかプレミアリーグ(イングランド)を見てると、トップのクラブと下のクラブの差がどんどん詰まってきてる。もうレアル・マドリード、バルセロナでさえ簡単に勝てない。でも悲しい話、海外の2部リーグの試合を見て、その後にJリーグを見ると、やっぱり差を感じる。

――同じDAZNで放送されてるから、見る試合を切り替えると即座にスピード感や激しさの違いを感じてしまいますよね。

手越:ちょっとね、クリンチの多いボクシングを見てる感じがする。本当にみんなが思ってるより、どんどん差が開いてきてるよと。Jリーグが大好きだからこそ、その危機感を持ってほしいと思います。ここ近年、Jリーガーがみんな2部だろうが3部だろうが海外で戦いたいっていう気持ちはわかります。

――今後サッカーの仕事はどうしていきたいと考えていますか?

手越:このままだとマジでサッカー界の未来は明るいものじゃないなってわかるから、なんとかしたいなって思ってます。サッカーが好きだし、お世話になったから。独立したからこそ自分の判断でできるから、絶対にサッカー界を盛り上げる何かをしたいなって思ってます。

――それこそ手越さんのYouTubeチャンネルで、Jリーグの村井満チェアマンとか、JFAの田嶋幸三会長にオファーしてみたらどうですか?

手越:そうですね。圭佑くんとはよくしゃべってるけど、時差がね(笑)。

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<了>

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PROFILE
手越祐也(てごし・ゆうや)
1987年11月11日生まれ。2003年9月に男性アイドルグループ・NEWSのメンバーとしてデビュー。オリコンのアルバムランキングで12作連続の1位を獲得した。2006年11月に増田貴久とヴォーカルユニット、テゴマスを結成。歌手活動のみならず、バラエティー、スポーツキャスター、俳優など幅広く活動した。4歳からサッカーを始めた経験を生かし、FIFAクラブワールドカップ、FIFAワールドカップでメインキャスターを務めた。2020年6月、ジャニーズ事務所から独立。YouTube『手越祐也チャンネル』の登録数は2週間弱で100万人を達成した。

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