憧れの「ベレーザの14番」を背負う覚悟。眞城美春が語る“プロ2年目”の現在地
昨季、日テレ・東京ヴェルディベレーザでWEリーグデビューを果たして初優勝に貢献し、優秀選手賞とベストヤングプレーヤー賞を同時受賞した眞城美春。世代別代表では飛び級でのU-17ワールドカップ招集、U-17アジアカップMVPなど実績を重ね、昨年4月にはA代表にも初招集された。プロ2年目の今季もボランチを主戦場として全試合に先発し、得点でも存在感を示している。マルセイユルーレットからのフィニッシュ、ループシュートなど“魅せる”局面でも観客を沸かせる19歳に、物おじしないメンタリティの原点、成長の理由、そして、かつて長谷川唯がつけていた背番号14への思いを聞いた。
(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=森田直樹/アフロスポーツ)
「壁に当たった」2年目のスタート
――WEリーグデビューの昨季は18試合4得点でベレーザのWE初タイトルに大きく貢献し、個人でも優秀選手賞とベストヤングプレーヤー賞をダブル受賞しました。今季も多くの試合に先発し、得点も順調に重ねています。昨季からの変化はどう感じていますか?
眞城:昨季と比べると、今季は引き分けや負けが続いた時期があって、チームとしてもうまくいかない感覚があり、自分自身も思うようなプレーができずに壁に当たっている感覚がありました。ただ、その中でも点を取るなど、結果を残せた場面もあり、そこは良かったと思います。
――2年目で、相手にプレーを研究されている感覚もありますか?
眞城:そうですね。特にボランチに対する相手のプレスには苦しみました。チームがうまくいかない時に、自分も良さを出し切れなかったのは反省点です。もっとゴールに関わって、チームが勝ちを重ねていけば、流れも良くなっていくと思うので、そこは大事にしたいです。
――昨季に続きINAC神戸レオネッサ、三菱重工浦和レッズレディースとの対戦では苦戦しています。タイトルに近づくために必要なことは何だと思いますか?
眞城:上位との対戦は「決めるところで決める」ことが本当に大事だと感じます。INACもレッズもそこを強みにしていると思うので、ベレーザがもっと決定力を上げられれば勝利に近づけると思います。自分は決定力の部分は得意とは言えないので練習で取り組んでいます。ゴールは一番わかりやすい結果なので、決めるべきところで決め切れる選手になりたいです。
――今季は菅野奏音選手とともに中盤の中心として欠かせない存在になっています。自分の良さを出すために意識していることは何ですか?
眞城:守備を強化しています。冬の中断期間も、さらにレベルアップしようと意識していました。攻撃はもともと好きで得意でしたが、守備はずっと苦手意識があったので、最近は具体的に課題と向き合って取り組みたいと強く感じています。まだ大きな結果につながっていませんが、少しずつ上げていきたいです。
最大の武器は「アイデア」
――足元のテクニック、ゲームメイク、ドリブル、視野の広さなど、さまざまな武器を持っていますが、ご自身が考える最大の持ち味は何ですか?
眞城:一番というと自分でも迷うところなのですが、テクニックを生かして攻撃にアクセントをつける部分が強みだと思います。特に、ボックスの前でボールを持った時のアイデアの出し方は大事にしています。
――中盤で相手を引きつけたかと思えば、逆サイドまで顔を出すなど、カバーするエリアの広さも印象的です。ポジション取りで意識していることは?
眞城:試合の中でボールに関わり続けたり、動き続けることで自分の良さが出てくると思うので、そこは大事にしています。自分が動いても(菅野)奏音さんなどカバーしてくれる人がいるので、前でゴールに関わる部分は意識していますし、自由にプレーさせてもらっています。
――菅野選手と組むことで、リスク管理を委ねて前に出られる部分も大きい?
眞城:はい、奏音さんは細かく気を配ってカバーしてくれるので、「あとはお願いします!」って感じで(笑)。その分、奏音さんが前に出た時は、自分がカバーできるようにしています。その都度、アイコンタクトを取りながらやっています。
フィジカル差を埋める“感覚”と体の使い方
――WEリーグには強さや高さを武器にする選手もいます。フィジカル差を埋めるために、判断や体の使い方で心がけていることは?
眞城:自分よりフィジカルが強い相手だと、体の向きが平行になった瞬間に負けてしまうことがあります。だから常に、自分が有利な状態に立てるように体の使い方を意識しています。
――相手の逆を取るプレーも多いですが、ボディフェイントなどを意識的に使っているんですか?
眞城:逆を取るプレーは小さい頃からやってきたので、感覚でやっている部分があります。ただ、海外の選手や男子の選手のほうが、グッと踏み込んでくることが多いので、逆にやりやすさは感じます。
――ピッチ上では距離感やプレッシャーをロジカルに捉えているように見えますが、実際は感覚派ですか?
眞城:はい、完全に感覚派だと思います(笑)。
――複数の選手に囲まれても物応じせずに仕掛けるメンタリティはどこからきているのでしょう?
眞城:小学生の頃は男子チームでずっとプレーしていて、女子は一人でした。そこで、メンタルも鍛えられた部分はあると思います。ピッチに立ったら年齢や経験はあまり意識しないですし、以前は試合前に緊張することもありましたが、今はなくなりました。
サッカー観とフィジカル強化。成長を支える二つの土台
――中学・高校とメニーナ(ベレーザの下部組織)時代から積み上げてきた経験で、今の自分を一番支えていると感じるのはどんな部分ですか?
眞城:メニーナでは「サッカー観」を学びました。自分がやりたいサッカーを持てていると、プレーに迷った時に立ち戻れます。メニーナで皇后杯に出て、ベスト4まで行った時(2021年)のサッカーが、一番イメージに近いです。いい距離感でパスをつなぎながら、強くて速い相手にも通用する感覚がありました。プレーしていてすごく楽しかったです。
――プロチームを立て続けに破った大会ですね。昨季からはご自身もプロになりましたが、体の作り方や食事も含めて、眞城選手が一番大事にしていることは何ですか?
眞城:食事の内容を考えたり、筋力トレーニングにも意識的に取り組んでいます。ただ、やっぱりボールをたくさん触る時間は大切にしています。
――中学1年生の頃から身長が20cm伸びたと話していました。フィジカルの変化で、プレー面も変わりましたか?
眞城:身長が伸びてスピードも上がってきたので、自分で仕掛けてゴールに向かうプレーは増えたと思います。
――筋トレはどのぐらいのペースでやっているのですか?
眞城:チームでは週2回やっています。それとは別で、(樋渡)百花さんと一緒に、足りていない部分を重点的に取り組んでいます。体重に対して筋肉量を増やしたほうがいいとコーチに言われたことがきっかけで、ここ1年くらい続けています。
――テクニックを活かすための筋力バランスもあると思います。具体的にどこを強化していますか?
眞城:背中を重点的に鍛えています。背中を鍛えると走り方やバランスの改善にもつながるので、重い錘(おもり)を持つというより、体の動かし方を意識しています。まだ大きな変化を感じ切れてはいないですが、これからかなと思います。
憧れから継承へ。背番号14への思い
――憧れの選手に長谷川唯選手を挙げています。同じ背番号14をつけて2年目になりますが、この番号をつけることへの思いを改めて教えてください。
眞城:唯さんがずっとつけている好きな番号で、自分も好きな番号なので、つけさせてもらえることはうれしいです。ベレーザの14番といったら唯さん、ではなくて、「眞城美春」とイメージしてもらえるようになりたいです。
――長谷川選手のどんなところを参考にしていますか?
眞城:見ていて「うまいなー!」と思うシーンが試合中に何度もあります。自分に足りない守備の部分でも、すごく上手な選手です。似ている部分もあると思いますが、違うなと思う部分もあって、唯さんはすごく考えて、理論的にサッカーしている印象があるので、そこは尊敬しています。自分はポジション的にはもう少し前に出て攻撃に参加するプレーが強みだと思うので、そこは違いかなと思います。
――今季は猶本光選手、塩越柚歩選手、土光真代選手、隅田凜選手といった選手たちが加入して、昨季とはチームの強みもガラリと変わりました。どんな刺激や学びを得ていますか?
眞城:経験豊富な選手が入ってきて、プロとしての意識の高さやプレーのこだわりは、見ていて刺激になります。自分に足りていない要素を持っている選手も多いので、練習から見て学ぶことが多くあります。
――眞城選手にとって、メニーナ時代からこれまでの試合で、特に印象に残っているのはどの試合ですか?
眞城:(2025に年ミャンマーで行われた)AFC女子チャンピオンズリーグのグループステージで、北朝鮮のネゴヒャン女子蹴球団に4-0で勝った試合は、最近特に印象に残っている試合です。北朝鮮はU-17女子代表で戦う機会が多く、苦手意識があった相手だったので、勝てたことで意識が変わったと思います。
<了>
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[PROFILE]
眞城美春(しんじょう・みはる)
2007年2月5日生まれ、東京都出身。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。広い視野とテクニックを備え、創造性のあるプレーで局面を動かす。下部組織のメニーナで育ち、2022年FIFA U-17女子ワールドカップでは15歳で飛び級招集され、谷川萌々子とダブルボランチを組んでベスト8入り。2024年FIFA U-17女子ワールドカップにも出場し、2大会連続でベスト8進出を経験した。2024年AFC U-17女子アジアカップではキャプテンとして全5試合に出場し、チーム最多の4得点を記録。準優勝に導き、大会最優秀選手に選出された。2025年2月にベレーザへの昇格が発表され、2024-25シーズンはWEリーグ初優勝に貢献。個人でも優秀選手賞、ベストヤングプレーヤー賞を受賞した。その技術の高さから、メディアでは「ポスト長谷川」とも評される。
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