“瞑想”にドライブイン観戦?日本も見習うべき「コロナ禍の逆境を活かす」最先端戦略

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2020.04.24

新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ収束の見通しが立たず、その影響であらゆるスポーツの大会が延期・中止を余儀なくされている。各競技の団体・組織は今後さらに、経営的・財務的に厳しい局面に立たされるだろう。
この未曽有の状況下で、これまでの延長線上の努力をしていては、マイナスを減らすことはできてもそれは結局マイナスにすぎない。むしろこの危機をチャンスと捉えてこれまでにない新たな施策に取り組むことで、“Afterコロナ”に生かしていくことが求められるだろう。海外ではいったいどんな取り組みが行われているのだろうか?

(文=川内イオ、写真=Getty Images)

イタリア・ACミランはロックダウン中のファンを“瞑想”でサポート

収束の兆しが見えない新型コロナウイルスは、スポーツ界に大混乱をもたらしている。世界的にリーグや大会の延期、中止が相次ぎ、ほとんどの国では再開のめども立たない。試合に例えるなら、突如としてかつてないほど圧倒的な強さを持つ敵が現れ、なすすべなく翻弄されている状態だ。しかし、この危機に手をこまねいてはいられないと、独自のアイデアで活路を見いだそうとするクラブや団体が出てきている。

サッカー界では、イタリア・セリエAの名門、ACミランがユニークな取り組みを始めた。イタリアはアメリカに次いで世界で2番目に多い約2万5000人の死者(4月23日時点)を出すなど、コロナで深刻な被害を受けている。ACミランが拠点を置くミラノを含むロンバルディア州では、3月8日から都市封鎖(ロックダウン)が始まり、今も続く。やむをえない仕事、食料品、薬の買い出し以外の外出が許されず、違反すると最高5000ユーロの罰金という厳しい制約の下で、強いストレスを抱えている住民も少なくないだろう。

そこで、ACミランは隔離生活を強いられているファンをサポートするために、4月8日、190カ国に約6000万人のユーザーを持つ瞑想アプリ「ヘッドスペース」を展開するベンチャー、ヘッドスペースとの提携を発表。「Milan is Yours」というプログラムで、ACミランのファンに対してライブ瞑想セッション、マインドフルトレーニングなど1200時間を超えるコンテンツを1カ月間、無償で提供する。

ヘッドスペースのアプリでコード「HEADSPACEACM」を入力すると、1カ月無料で利用でき、ACミランのクラブ会員(Cuore Rossonero Card所有者)は、3カ月間無料。4月10日には、ACミランのゴールキーパー、アスミル・ベゴヴィッチがヘッドスペースのインスタグラムライブに登場し、ライブメディテーションセッションに参加した。

デンマークでは「ドライブインシアター」方式のスタジアム観戦を計画

現在中断しているデンマーク1部リーグは5月17日に再開を予定しているが、シーズン終了まで無観客試合が予定されている。そこで、中断前まで首位を走っていたFCミッティランは、「ドライブインシアター」方式の観戦を計画している。自動車1万2000台の収容能力がある本拠地MCHアリーナの駐車場に、巨大なスクリーンを2台設置。スクリーンを十分に目視できる2000台分のスペースを観戦エリアとして、車の中でカーラジオを聞きながら観戦するというものだ。

FCミッティランのマーケティングディレクターは、デンマークの新聞『BT』の取材に対して「私たちは可能な限り最高の体験を生み出すために、(車内観戦について)2週間前から実現に取り組んでおり、警察、消防当局、テレビの権利所有者など関係者全員と緊密かつ良好な対話を行っています」とコメント。

もっともうまく車をチームカラー(オレンジと黒)にドレスアップした「ベストドレスドカー」の表彰や、「アウェーチームのファンは離れたエリアで観戦」、「観戦中にトイレに行きたくなったら車のライトをパッシングする」など、無観客でのリーグ再開に向けてさまざまな構想を練っている。

NBAミルウォーキー・バックスは、ファンとチームをつなげる新コンテンツを次々リリース

3月12日から中断しているアメリカのNBAでは、ミルウォーキー・バックスが新しい試みを始めた。自宅待機命令によって生活が制限されているファンとチームをつなぐコンテンツ「BucksPlay」をリリースしたのだ。

「BucksPlay」はバックスのホームページで公開されていて、チームの舞台裏の映像や選手のインタビュー、ファン参加型の「Bucks Recess Challenge」などが用意されている。「Bucks Recess Challenge」の第1弾は、今年のNBAオールスターで開催されたダンクコンテストに出場したバックスの人気選手、パット・コノートンのダンクの再現にファンがチャレンジし、投稿するというもの。

ほかにも、バックスのコーチがトレーニングを指導する「Driveway Drills」、チームのスタッフや選手による食事やフィットネスの指導などが続々配信される。特筆すべきは「Kids Zone」のコーナーで、子どもたちが自宅で楽しく過ごせるように選手の塗り絵や紙にプリントアウトして遊べるゲーム、バスケのトレーニングプラン、スキルチェックリストなどが公開されている。

プロテニストーナメントはプロ選手参加の“公式”ゲーム大会に切り替え

テニス界は、奇策に出た。5月に開催される予定だった男女プロトーナメント、ムトゥア・マドリード・オープンを、オンラインテニスゲーム大会に切り替えたのだ。「ムトゥア・マドリード・オープン・バーチャル・プロ」と名付けられたこのゲーム大会は、4月27日から30日に開催。プロ選手によるオンライン対戦で、男女の勝者には15万ユーロ(約1750万円)の賞金が用意されている。

使用されるゲームは、『テニス ワールドツアー』で、選手はラケットをプレイステーション4のコントローラーに持ち替え、自宅でプレーする。男子は世界ランキング2位のラファエル・ナダル、3位のドミニク・ティエム、錦織圭、女子は世界ランキング3位のカロリナ・プリスコバ、5位のエリナ・スビトリナ、6位のビアンカ・アンドレースクなど、そうそうたるメンバーが参加を表明している。

すべての試合で解説、分析、ハイライト、各試合後の勝利者インタビューまで配信される本格的な構成だ。また、コロナの影響を受けている人々を支援するための資金を調達するチャリティーマッチも予定されている。

アメリカのスポーツマーケティング代理店Two Circles社によると、世界のスポーツ産業の総収入は今年、前年比4.9%増の1353億ドルに達する見込みだったが、コロナの影響で半減に近い737億ドルにとどまると試算している。この大打撃で先行きに不安が広がるなかで、今回紹介した取り組みは、既存のファンを喜ばせるだけでなく、新たなファンの開拓につながるチャレンジといえるだろう。ピンチをチャンスに変える試み、日本のスポーツ界でもぜひ参考にしてほしい。

<了>

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