ベテランの進化論。Bリーグ・川崎ブレイブサンダースを牽引する篠山竜青が、37歳でプレースタイルを変えた理由
Bリーグ屈指の司令塔として長く第一線を走り続けてきた篠山竜青が、いまプレースタイルを変えている。変革期にあるBリーグ・川崎ブレイブサンダースの中で、37歳のキャプテンが選んだのは「過去にすがらない」進化だった。“一人一人が脅威になる”チームを目指すなか、ベテランはいかに自分をアップデートしているのか。
(文・撮影=白石怜平)
変革期の中で見出した“楽しい”の真意
2011年に篠山は前身の東芝ブレイブサンダースへ加入し、以降サンダース一筋で15年目のシーズンを戦っている。そのうち延べ11シーズン、さらには日本代表でもキャプテンを務めてきた日本バスケ界の象徴的存在である。
2016年にBリーグが発足して以降も川崎がチャンピオンシップ(CS)へと進出する原動力となり、常に先頭に立ち牽引し続けている。
篠山は特にこの2シーズン、チームとともに自身にも大きく変革を課している。
2023-24シーズン限りで大黒柱の一人であったニック・ファジーカスが現役を引退した。これらが転機となり、篠山も「自分もよりアグレッシブにならないといけない」と、プレースタイルを転換している。
川崎はファジーカス引退後から転換期となり、敗戦が先行していることから苦しい時期も続いているが、そんな中でも篠山は前向きさを失わない意味で“楽しさ”を見出していた。
昨シーズン試合後の取材などでも「1勝をみんなで勝ち取ることが本当に楽しい」と述べていた。というのも、2022−23シーズンまで川崎は毎年のように優勝候補の一角で、チャンピオンシップの常連チームだった。
周囲からは勝つことが当たり前に見られていたことから、勝利を挙げると「ホッとした」と安堵の気持ちになるなど、毎試合プレッシャーとも戦っていたという。
ただ、当時とは状況が変わり今は“挑戦者”の気持ちで臨んでいることから、上記のコメントにつながっていた。さらに今季は、自身のプレーについても楽しさを見出していた。
「シュートの部分なのですが、シンプルに空いてたら打つし、相手が来ていたらドライブするという柔軟なプレーができて、余裕を持ってオフェンス展開できるようになってきている感覚があります。
まだまだミスもありますけど、アグレッシブにシュートを狙いにいったり、ボールを上げればET(エマニュエル・テリー)がリバウンドしてくれますから。その意味では去年より楽しくできていますね」

「一人一人が脅威になる」を率先して浸透
前述したプレースタイルの転換。それはシュート、さらには得点力という形で表れている。
昨シーズンはB1ベストFT(フリースロー)成功率賞を初受賞し、今シーズンはさらに得点力が向上。2月15日の第23節終了時点で309得点と、昨季の298得点をすでに上回る。
昨年12月7日の第12節(京都ハンナリーズ戦)から第15節(島根スサノオマジック戦)まで5試合連続で2桁得点、1試合挟んだ第16節(琉球ゴールデンキングス戦)では25得点をマークし、西地区上位チームを相手に勝利の原動力となった。
PG(ポイントガード)として試合をコントロールするのみならず、得点源にもなる活躍には指揮官の掲げるバスケが要因の一つにあった。
「ジェフ(勝久ジェフリーHC)さんは『一人一人が脅威に思われないといけない』と話しているので、そこを改めて自分自身も体現したい思いが大きくあります。
なのでアグレッシブに、しっかりリングを見てプレーするというところは意識しているし、それがいい形でチームに伝染していってくれればと考えながらやっています」

“一人一人が脅威になる”。これは、シーズン途中から指揮を執る勝久ジェフリーHCがチームに浸透を図っている姿勢である。篠山の今シーズンのプレーについて問うた際、「彼のすごいところは、毎年何か進化する点だと思います」と評した。
「今このチームにとって何が必要なのかをリーダーとしていつも考えていて、それを行動に移しています。
我々は全員が積極的になることを目指しているので、そこに対してすごく前向きに取り組みますし、『自分がやってやる!』という気持ちを強く持っている選手です。
私からはその“脅威になること”をチームへ浸透させている中で、それを彼自身でも発信しながら自分でも体現していますので本当に心強いですし、毎年進化していることが彼のすごいところです」

勝久HCが語る“脅威”は、それぞれがコートの中で発揮する機会が増えている。
島根から加入した津山尚大は、試合終了間際まで劣勢でも正確なシュートでチームを救えば、篠山の1年後輩で共に川崎一筋で戦い続ける長谷川技からも「数字に表れないところで脅威になりたい」とのフレーズが発せられている。
今シーズン、1月3日の第18節(レバンガ北海道戦)後に篠山はチームについてこのように語っていた。
「一人一人が脅威になるというテーマの中、ボールを動かしてアグレッシブに全員がリングを見ています。そこでズレを作ってそのズレを大きくして、いいシュートを打つ。
この点が良くなっている感触がありますし、今日も第3Qで離されそうになった時もチーム全員で、アグレッシブにチャレンジし続けた部分もあったと思うので、チームとしてステップアップできている感覚があります」
この試合の時点で、北海道は川崎と同じ東地区で4位。ただ、勝敗だけで見るとアルバルク東京や千葉ジェッツと並び2位タイと上位を走っている。そんなチーム相手にこの試合では、篠山が開始40秒で5得点を奪うなど第1Qで26得点を挙げた。
最終的には第3Qに逆転を許し77-83と敗れはしたものの、第4Qは両者21点と互角の展開を見せ、翌日の同戦での勝利へとつなげていた。

現時点でキャリアハイを記録する3Pシュート成功率
昨シーズンオフの講演会に登壇した際、ベテランとしてプレーする心境を以下のように語っていた。
「ベテランになればなるほど、数字に直結する仕事ができれば試合に出られますし、直結できなくなってくるとプレータイムが減っていくと感じています」
この数字に直結するというのは、得点を決めることが一つの意味を成している。その中で特にチャレンジしていることがあるとして、自らの考えを明かしてくれた。
「ベテランとしてガード(PG)に出て行ってチームの流れを変える選手たちに共通するのは、しっかりと3Pシュートを入れてくるところなんです。
年齢を重ねる中でさらに生き抜くためには、外を決められないとダメというのをずっと感じていた部分なので、今いいチェンジができていると感じています」
篠山は今シーズン、3P成功率はチームトップタイの42.4%を誇る。レギュラーシーズンにおいては現時点でキャリアハイの記録。ベテランとして、そして中心選手として輝きを放ち続けている要因がここでも証明されていた。

アグレッシブさでチームを引っ張るだけでなく、相手への脅威となっている篠山。変化し続けることは、選手としての未来を今後も切り拓く重要なピースであった。
「これまで積み重ねてきた経験はありますが、常にその積み重ねを疑うというか、バスケット自体もどんどん変化していってますよね。
シュートの打ち方であったり、バスケットの展開のトレンドも常に変化していっている状況なので、新しいものを取り入れることには柔軟でいるようにしています。
長くプレーしているからこそ、過去の経験にすがるだけではなく、素直に新しいことにチャレンジをしてみる点は意識しています。それができることが今の自分の強みであるとも感じています」
この7月で38歳を迎える篠山。しかし、“今、私、全盛期”と公式サイトの紹介欄にあるように、まだまだ進化を遂げている最中である。
<了>
「準備やプレーを背中で見せられる」結果に左右されず、チームを牽引するSR渋谷・田中大貴の矜持
“1万人動員”のB3クラブ、TUBCの挑戦。地域とつながる、新時代バスケ経営論
Bリーグは「育成組織」と「ドラフト」を両立できるのか? 年俸1800万の新人誕生。新制度の見通しと矛盾
Wリーグ連覇達成した“勝ち癖”の正体とは? 富士通支える主将・宮澤夕貴のリーダー像
「そっくり!」と話題になった2人が初対面。アカツキジャパン町田瑠唯と元なでしこジャパン岩渕真奈、納得の共通点とは?
この記事をシェア
RANKING
ランキング
LATEST
最新の記事
-
欧米ビッグクラブ組が牽引する、なでしこジャパン。アジアカップで問われる優勝への三つの条件
2026.03.04Opinion -
なぜ張本美和・早田ひなペアは噛み合ったのか? 化学反応起こした「今の2人だけが出せる答え」
2026.03.02Opinion -
日本人のフィジカルは本当に弱いのか? 異端のトレーナー・西本が語る世界との違いと“勝機”
2026.03.02Training -
風間八宏のひざを支え、サンフレッチェを変えたトレーナーとの出会い「身体のことは西本さんに聞けばいい」
2026.03.02Career -
野球界の腰を支える革新的技術がサッカーの常識を変える。インナー型サポーターで「適度な圧迫」の新発想
2026.03.02Technology -
なぜ老舗マスクメーカーはMLB選手に愛される“ベルト”を生み出せた? 選手の声から生まれた新機軸ギアの物語
2026.03.02Business -
「コンパニの12分」が示した、人種差別との向き合い方。ヴィニシウスへの差別問題が突きつけた本質
2026.03.02Opinion -
クロップの強度、スロットの構造。リバプール戦術転換が変えた遠藤航の現在地
2026.02.27Career -
“勉強するラガーマン”文武両道のリアル。日本で戦う外国人選手に学ぶ「競技と学業の両立」
2026.02.26Education -
三笘薫の数字が伸びない理由。ブライトン不振が変えた、勝てないチームで起きるプレーの変化
2026.02.25Opinion -
日本サッカーに「U-21リーグ」は必要なのか? 欧州の構造から考える19〜22歳の育成
2026.02.20Opinion -
フィジカルコーチからJリーガーへ。異色の経歴持つ23歳・岡﨑大志郎が証明する「夢の追い方」
2026.02.20Career
RECOMMENDED
おすすめの記事
-
風間八宏のひざを支え、サンフレッチェを変えたトレーナーとの出会い「身体のことは西本さんに聞けばいい」
2026.03.02Career -
クロップの強度、スロットの構造。リバプール戦術転換が変えた遠藤航の現在地
2026.02.27Career -
フィジカルコーチからJリーガーへ。異色の経歴持つ23歳・岡﨑大志郎が証明する「夢の追い方」
2026.02.20Career -
「コーチも宗教も信じないお前は勝てない」指導者選びに失敗した陸上・横田真人が掲げる“非効率”な育成理念
2026.02.20Career -
ブッフォンが語る「ユーヴェ退団の真相」。CLラストマッチ後に下した“パルマ復帰”の決断
2026.02.20Career -
名守護神が悲憤に震えたCL一戦と代表戦。ブッフォンが胸中明かす、崩れ落ちた夜と譲れぬ矜持
2026.02.13Career -
「自分がいると次が育たない」ラグビー日本代表戦士たちの引退の哲学。次世代のために退くという決断
2026.02.12Career -
女子サッカー日本人選手20人がプレーするWSL。林穂之香が語る進化と求められる役割
2026.02.10Career -
ユナイテッド、チェルシー、アーセナルを“刺した”一撃。林穂之香が宿す「劣勢で決め切る」メンタリティ
2026.02.09Career -
中国勢撃破に挑む、日本の若き王者2人。松島輝空と張本美和が切り開く卓球新時代
2026.02.06Career -
守護神ブッフォンが明かす、2006年W杯決勝の真実。驚きの“一撃”とPK戦の知られざる舞台裏
2026.02.06Career -
モレーノ主審はイタリア代表に恩恵を与えた? ブッフォンが回顧する、セリエA初優勝と日韓W杯
2026.01.30Career
