守田英正はなぜ呼ばれない? 森保ジャパン「最激戦区」ボランチに起きた新序列の真相
イギリス遠征でスコットランド、イングランドを連破した森保ジャパン。ワールドカップ本大会前最後の強化機会となった今回の2試合を振り返り、改めて見えてきたのがボランチの序列だ。佐野海舟、田中碧、鎌田大地、藤田譲瑠チマがそれぞれ異なる形で起用される一方で、昨年3月のワールドカップ・アジア最終予選まで中盤の軸を担ってきた守田英正はメンバーから外れた。所属先のスポルティングでは安定して出場を続け、コンディションも上向くなかで、なぜこの重要な2連戦で選外となったのか。ワールドカップ本大会まで残された時間、そして森保一監督が示してきた選考方針をたどると、日本代表の“最激戦区”で起きている変化が見えてくる。
(文=藤江直人、写真=REX/アフロ)
遠征2試合の起用法が示したボランチの序列
スコットランド、イングランド両代表にともに1-0で勝利した森保ジャパンのイギリス遠征における起用法を振り返れば、招集された4人のボランチ陣の序列が伝わってくる。
3月28日のスコットランド戦で先発したのは田中碧と藤田譲瑠チマで、ともに78分までプレー。田中は同じボランチの鎌田大地と、藤田は初招集のアタッカー塩貝健人と交代した。
中2日の同31日のイングランド戦では佐野海舟と鎌田が先発。前者がフル出場し、後者は80分にアタッカーの鈴木唯人と交代。さらに71分には堂安律に代わって田中が途中出場している。
森保一監督はFIFAランキング4位の強豪イングランド戦で、三笘薫や上田綺世、伊東純也、谷口彰悟、そして今遠征のキャプテンに指名した堂安ら主力級の選手たちを先発させている。
その観点で見れば、ただ一人フル出場した佐野と、2試合で計92分プレーした鎌田とのコンビがファーストチョイス。97分プレーした田中、そして出場1試合の藤田が2人に続いている。
一方で今回の遠征に招集されていないボランチもいる。2月中旬のプレミアリーグで左足首を痛め、同下旬に手術を受けた33歳の遠藤航は、リバプールからイングランド戦の会場だったロンドンの聖地ウェンブリー・スタジアムへ駆けつけ、歴史的な初勝利をスタンドで見届けている。
もう一人、第1次政権時から遠藤と長くコンビを組み、森保ジャパンの中盤を支えてきた30歳の守田英正は、ハーフタイムで田中と交代した昨年3月20日のバーレーン代表とのFIFAワールドカップ・アジア最終予選第7戦が、現時点で森保ジャパンにおける最後の出場となっている。
この試合で日本は8大会連続8度目のワールドカップ出場を決めている。そして0-0の状況でピッチを後にした守田は、2日後の3月22日にケガによるチーム離脱が発表された。
以来、守田はコンディション不良に悩まされてきた。しかし、今シーズンは復調傾向にあり、所属するポルトガルのスポルティングで2月以降の公式戦全9試合に出場している。
そのうち先発は、ノルウェーのボデ・グリムトとのUEFAチャンピオンズリーグ・ラウンド16第2戦を含めて8試合を数え、直近のアルヴェルカとのリーグ戦ではアシストも記録した。
守田が外れた理由、森保監督が示した選考基準
コンディション的にも試合勘の点でも問題がない。それでも守田はなぜ、ワールドカップ北中米大会に臨む代表メンバー発表前で最後のアピール機会となるイギリス遠征で選外となったのか。
実は森保監督はワールドカップイヤーを前にした昨年末に、こんな方針を明かしていた。
「これまで代表チームを支えてきてくれた敬意は、ベテランと呼ばれる選手たちに対してもちろん欠かせません。ワタル(遠藤)にしてもモリ(守田)にしても、アジア最終予選を当たり前のように勝ってこられたのは、チームを引っ張ってくれた彼らの力が本当に大きかったと思っています。しかし、今回のワールドカップはアジア最終予選を突破してから1年以上の時間が経過して迎える大会なので、コンディションや力といったところは加味して最終的に選ばないといけない」
コロナ禍の影響でアジア最終予選が2022年3月まで行われた前回カタール大会では、わずか8カ月後に開幕する本大会へ、最終予選で主軸を担った選手たちを中心とした陣容で臨んでいる。
対照的に今回は日本の場合、出場権獲得から1年3カ月もの時間が経過する。その間に所属クラブで成長する選手が多いほど、代表チーム内における序列も変わってくる。メンバー選考においてボランチが最激戦区になると昨年末の段階で認めていた指揮官は、さらにこうつけ加えている。
「多くの選手が個人昇格を目指しているなかで、ボランチで考えられる選手の多くは5大リーグでプレーしている。そのなかで力を発揮している点は評価しないといけないし、同じような力であればさらに上がっていく選手を、とも考えられる。もちろんそこ(個人)だけを見ているわけでもないし、常にチーム全体を見ながら、国を背負って戦うプロの集団としてまずは個の力を持ち、さらにチームのために、仲間のために、日本のために戦える、という両輪をもつ選手を選んでいきたい」
佐野海舟の台頭が映す中盤の変化
出場機会を激減させていたとはいえ、遠藤はプレミアリーグの名門リバプールでプレーして3シーズン目となる。クリスタル・パレスで2シーズン目を迎えている鎌田は、それまではドイツやイタリアでプレー。今シーズンからは田中が所属するリーズもプレミアリーグへ昇格した。
ドイツ・ブンデスリーガ1部では、25歳の佐野が鹿島アントラーズからマインツへ移籍して2シーズン目もリーグ戦でフルタイム出場を継続。パリ五輪代表でキャプテンを務めた24歳の藤田も、今シーズンにベルギーのシントトロイデンからザンクトパウリへステップアップを果たした。
特に佐野は昨年6月のオーストラリア代表とのアジア最終予選第9戦、そして同9月のアメリカ代表との国際親善試合で先発を果たすもチームは敗れ、佐野自身も不本意なプレーに終わった。
しかし、10月シリーズ以降は、待望の初勝利をあげたブラジル代表戦を含めて4試合中3試合に先発。リバウンドメンタリティーも含めて、森保監督は佐野の急成長ぶりに目を細めていた。
「チーム全体をコントロールするボランチとしてはまだまだかな、という部分を覆しただけでなく、10月と11月に関しては間違いなく個の強さも発揮してくれたのは評価しています」
その佐野がボランチの軸にすえられた今回のイギリス遠征。一方でチャンピオンズリーグのベスト8進出を果たし、来週にはアーセナルとの準々決勝第1戦に臨む守田も、もちろんあきらめていない。スコットランド戦前に自身のインスタグラムを更新。ジムでフィジカルトレーニングに励む自身の写真を投稿するとともに、代表復帰へ向けてこんな決意を綴っている。
「これが本ならこの章が一番の見どころ。全て自分次第。俺はやるよ」
経験か、伸びしろか。指揮官を悩ませる最後の選択
日本代表チーム史上で初めて、ワールドカップをまたいで長期にわたる指揮を執っている森保監督を「一番嫌ですね」と言わしめる時期が近づいている。前回カタール大会に臨む代表メンバー選考で、実直で情にも厚い性格の指揮官を最後の最後まで悩ませた経験があるからだ。
通常の代表戦におけるメンバー選考でも、たとえば経験と安定感のあるベテランか、勢いのある若手かで迷った場合の最終的な判断に関して、森保監督はいまも「答えがあるのかどうか、ちょっとわからないですね」と胸中を明かしながら、こんな言葉も紡いでいる。
「同じくらいになってきていると思ったときには、経験が若干足りないかもしれないと思っても、基本的にはベテランの選手よりも若い選手を招集させてもらって経験を積んでもらう。こういった判断はこれまでもやってきたつもりですけど、それでも本当に難しいと思っています」
今回のイギリス遠征で言えばボランチ陣の人選、具体的な名前をあげれば守田を復帰させるのか、あるいは引き続き藤田を招集するのかで、このような思いを抱いていたのは想像に難くない。これが4年に一度のワールドカップ代表メンバーの選考となれば、比較にならないほど思い悩む。
招集できる選手の数が限られているなかで、最終的な判断は具体的な数字や指標に基づくのか、それとも感覚的な部分に委ねるのか。森保監督は「ほとんどが後者ですね」とこう続ける。
「たとえばこの選手とこの選手の組み合わせならうまくいくといった部分に関して、データでは測れないところはやはりありますし、それが見えなければおそらくこの仕事はできないと思っています。組み合わせだけを見ているのではなくて、それを見ながらも実は周りがどう思っているのか、いろいろなつながりがあるのか、という点に関しては、やはり主観になってくると思います」
ボランチの遠藤だけでなく、現状の森保ジャパンはケガによる戦線離脱者が相次いでいる。遠藤とともにイングランド戦を観戦した南野拓実は昨年末に左膝前十字靱帯を断裂する大ケガを負い、1月中旬に左太もも裏を痛めた久保建英は、ここにきて復帰が近いと伝えられている。
イギリス遠征でも当初は招集されていた冨安健洋と安藤智哉がケガで辞退。最終ライン組では板倉滉と町田浩樹、高井幸大が招集外となり、国内組では長友佑都が右太もも裏を痛めた。
来たるワールドカップでは、オランダとチュニジアに加えて、イングランド戦と同時刻に行われていたヨーロッパ予選プレーオフのパスB決勝を制したスウェーデンとグループFをまず戦う。
その先に待つノックアウトステージを勝ち進み、これまで経験していない景色を見るために。5月下旬に予定される本大会メンバーの発表へ、今回の守田の件に象徴されるように、場合によっては非情に徹する決断を厭わない、という決意を新たにした森保監督は、代表のラージグループに名を連ねる選手たちが置かれた状況を注視しながら絞り込み作業の最終段階に入る。
<了>
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