近代五種・才藤歩夢が挑む新種目。『SASUKE』で話題のオブスタクルの特殊性とは?
近代五種競技の5種目のうち、馬術に代わる新種目として2028年のロサンゼルス五輪から追加されることとなった「オブスタクル」。オリンピック初出場を目指し、この新競技に挑んでいる一人が才藤歩夢だ。競技のもととなった「SASUKE」にも出演し、2024年10月のオブスタクル日本選手権では女子シニアクラスで準優勝と活躍。競技の特殊性に合わせて、トレーニング内容も工夫を凝らしているという。5種目をまんべんなく鍛える日々のトレーニング内容や、ロサンゼルス五輪への展望について話を聞いた。
(インタビュー・構成=松原渓[REAL SPORTS編集部]、写真=YUTAKA/アフロスポーツ)
新種目オブスタクルの“特殊性”とは?
――2028年のロサンゼルス五輪では馬術に代わる新種目として「オブスタクル」が追加されました。さまざまな種類の障害物をクリアしてゴールを目指すタイムレースですが、種目変更が決まった時はどんな心境でしたか?
才藤:馬術は馬に障害物を越えさせる競技でしたが、オブスタクルでは自分が障害物を越えていく形なので、競技の性質が違いますし、馬の気持ちが少しわかった気がします(笑)。また、ランニングや水泳やフェンシングなど、何かにぶら下がって自分の体重を支える種目がこれまではなかったのですが、オブスタクルでは雲梯(うんてい)に近い動きもあるので、これまでとは違う特殊な種目だと感じます。ただ、球技のようにまったく異なる競技が入ってきたというわけではなく、「自分の体を使う競技」という点では共通しているので、「できない種目ではないな」という印象はありました。
――実際に、オブスタクルでご自身の強みを生かせそうな点はありますか?
才藤:割と手足のリーチはあるほうかなと思うので、そこはうまく生かしていけたらと思っています。例えば雲梯なら、一個ずつ進むよりも、一個飛ばしでいかに早く前進できるかという部分ですね。
――昨年10月に徳島県で行われた第1回オブスタクルスポーツ日本選手権に出場し、準優勝しています。TBSの『SASUKE』や『KUNOICHI』でもオブスタクルにチャレンジされていましたが、競技を始める人が増えている印象はありますか?
才藤:そうですね。『SASUKE』のファンの方や、「自分もやってみたい」という方が、大会に出場している印象です。女性も『SASUKE』や『KUNOICHI』に出たいという方が出場していました。そういうきっかけから近代五種を始めてもらえればうれしいですね。
一日のトレーニングは「2〜3種目を5〜6時間かけて」
――シーズン中は、国際大会も含めて大会は多いのですか?
才藤:去年は1月から6月までに6大会あって、ワールドカップの前に一つ大会があり、その後にワールドカップが4戦あって、その後に世界選手権と、ものすごく忙しい1年でした。
――疲労回復もままならない忙しさですね。飛行機などでの移動も負担になりそうです。
才藤:そうですね。移動して試合、移動して試合という繰り返しで、そこまでしっかり練習する期間が取れていなかったので、今年は海外には行かず、国内で練習を積みながら大会に臨むイメージで取り組んでいます。
――一日の練習は、どのようなスケジュールを組んでいるのですか?
才藤:トレーニングは週4回ぐらいで、毎日2、3種目ずつぐらいに取り組んでいます。一日のトレーニング時間は5〜6時間ぐらいです。ただ、気持ちが乗っていない時にやってもケガをしたり、効率が下がったりしてしまうので、休む時は休んで、トレーニングする時はやるべきポイントをしっかり決めて取り組んでいます。
ボルダリングで上腕を強化「筋力アップが必要」
――新種目にオブスタクルが加わったことで、日常のトレーニングも変化しましたか?
才藤:そうですね。オブスタクルの練習が本格的にできる場所が、徳島と千葉の2カ所ぐらいでまだ全国的に少なく、毎日練習ができる環境ではないので、代わりに最近はよくボルダリングの練習に行っています。ぶら下がって上半身を使うので、腕の力を強化するのにも効果的なんです。
――ボルダリングの慣れない動きを体得するのは難しいと思いますが、先生にアドバイスをもらったりしながらトレーニングしているのですか。
才藤:TBSの『SASUKE』『KUNOICHI』に出演した際に知り合った方と一緒に行って教えてもらったりもしています。体を振った反動を使うような動きはこれまでやってこなかったので、その使い方はしっかり教えてもらいながらやっています。
――ウエイトトレーニングなども増やしているのでしょうか。
才藤:そうですね。ただ、ウエイトの量というよりは、ボルダリングのトレーニング頻度を増やして筋力アップに励んでいます。
――日々、消費するエネルギーも相当なものになると思いますが、食事や栄養バランスに関しては、どんなことを心がけているのですか?
才藤:食事はしっかり食べるように気をつけています。回復の質を上げるためにサプリメントを飲んだり、練習中に足りない部分はゼリーで補ったりもしています。ただ、もともと量を食べるほうではないので、ゼリー飲料などに頼りがちな部分はあります。
――自分自身のベストコンディションを維持するための体重などは決めて調整しているのですか?
才藤:細かく決めているわけではないんですが、食べ過ぎて重くなってしまうことは少ないので、そこまで増減はないです。ただ、新種目のオブスタクルが入ってきたので、筋力的には上げていかなきゃいけないなと思っていますし、そのためにも少しでも多くエネルギーを入れるように意識しています。
うまくいかない時は「視点を変えてみる」
――各競技のパフォーマンスを高めるために、トレーニングではどのようなことを心がけているのですか?
才藤:例えば、泳いだり走ったりしてる時に動画を撮ってもらって、それを確認してフォームを見直すことはよくあります。「自分ではこう動いているつもりなんだけど、こう見えているんだ」とイメージと実際の動きが異なる場合です。そういう時はちょっと変えてみたり、コーチに自分の考えを伝えた上で、もっといいパフォーマンスを出せる方法はないかと相談することもあります。
――大一番で実力を発揮する上で、メンタル面ではどのように自分をコントロールしているのですか。
才藤:小さい頃から負けず嫌いで、レースを重ねるたびにメンタルは強くなっていった気がします。ただ、今は負けず嫌いな部分は前面に出しすぎず、冷静に臨むようにしています。
――悩んだ時に立ち返る考え方や、うまくいかない場面で切り抜けるための秘訣はありますか?
才藤:うまくいかない時は、何かが間違っている時だと思うので、切り替えて違う方法を試します。トレーニングでも、ずっと同じ方法でやっていてもうまくいかなくなった時には勇気を持ってフォームを変えてみたり、視点を変えて、全然違う方法を試したりもします。
ロサンゼルス五輪への未来図「まずは国内の大会で勝ちたい」
――2028年のロサンゼルス五輪に向けて、ステップアップのイメージをどんなふうに描いていますか?
才藤:出場枠を得られるように、まずは国内の試合で勝つことを目指します。オブスタクルが新種目になってから近代五種のレースにまだ出てないので、まずは大会の流れを経験した上で、今後の試合の組み立て方を考えながら、国内でトレーニングと試合を重ねて、海外の大会に出場できたらと思っています。
――モデル活動も含め、さまざまな形で競技の魅力を普及されていますが、競技発展の未来図について、イメージを教えてください。
才藤:近代五種は国内で施設が少ないので、今は練習場所を転々としながら取り組んでいますが、一箇所ですべてをトレーニングできる場所が増えるといいなと思っています。その中で、「面白そう、やってみたい」と、近代五種に興味を持ってくださる人が増えたらうれしいですね。
【連載前編】“くノ一”才藤歩夢が辿った異色のキャリア「近代五種をもっと多くの人に知ってもらいたい」
<了>
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[PROFILE]
才藤歩夢(さいとう・あゆむ)
1996年9月14日生まれ、東京都出身。近代五種選手。近代五種競技のオリンピック選手であった才藤浩氏(元日本代表監督)を父に持ち、幼少の頃より近代五種競技を始める。2019年と2023年には全日本選手権で個人優勝。また、フェンシング競技(エペ)単体においても国内トップクラスの実力を誇り、学生時代からさまざまな大会に出場。2016年学生日本選手権個人優勝、2015年、2017年、2019年には全日本選手権で団体優勝などの実績を持つ。競技生活のかたわら、各種ブランドのモデル活動や、さまざまなイベントやメディアに多数出演している。マイナビ所属。
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