塩貝健人が語る「4年後に向けて」。W杯での課題をドイツ2部で磨き、再び迎えるブラジル戦
FIFAワールドカップでブラジル代表に敗れ、日本代表の戦いは新たなサイクルへと入った。そのなかで塩貝健人が選んだのは、ドイツ2部での挑戦だった。あの敗戦から約2カ月。11月14日に次なるブラジルとの対戦も決まった今、若きストライカーは何を思い、何を変えようとしているのか。
(文=中野吉之伴、写真=アフロ)
「やっぱり、違いを作れる選手という存在が必要」
日本代表がFIFAワールドカップでブラジル代表に敗れてから、2カ月と少しが経った。欧州各国では新シーズンが始まり、サッカー界は次のサイクルへと動き始めている。
そのなかで、次世代の日本代表を担う存在として期待される塩貝健人は、今季もドイツでプレーする道を選んだ。舞台はドイツ・ブンデスリーガ2部のヴォルフスブルク。ワールドカップでブラジルに敗れた悔しさを、塩貝は次の4年間の出発点として捉えている。
「やっぱりワールドカップで悔しい思いをして、本当に『ここから4年後に向けて、一からやり直そう』という気持ちで戻ってきました。去年1部から2部に落ちて、いますごく流れが悪いというか、この流れを早く断ち切らないといけないと思っています。自分が2部から1部に上げるための立役者になる。自分がストライカーとしてこのチームのエースになって、点を取っていかないといけないと思っています」
そこには、ワールドカップで感じた明確な課題がある。試合の流れが悪いとき、自分一人の力で相手を剥がす。そこからゴールを奪う。チーム全体がうまくいかない状況でも、個人の力で局面を変える。
ワールドカップを経験したからこそ、塩貝は「違いを作れる選手」の必要性をさらに強く感じるようになったという。具体的には、どういったプレーをもっと伸ばしていこうと思っているのだろう?
「個でなんとかできる力がないと、グループステージから上にはいけないと思います。今日の試合でも、少し流れが悪い状況で、自分の個の力で相手を剥がして、点を取るということができないといけないと思うし、やっぱり、違いを作れる選手という存在が必要になってくると思います。それは他のチームを見ていても思いました。
このチーム、このリーグで、しっかり個の力を見せつけられないと、ワールドカップでもできないと思う。次のワールドカップまでは4年間あるので、しっかり一つずつ積み重ねてやっていかなければいけない」
好調の上田綺世に「負けていられない」
心機一転、再出発をする舞台はブンデスリーガ2部。日本代表FWでは例えば上田綺世がリール、中村敬斗がリヨンと、それぞれフランスリーグのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場クラブへと移籍を果たしている。上田は早速リーグでもCLでもゴール。「自分も」という気持ちは募るばかり。戦う舞台が2部だからと、それを理由にモチベーションを低下させている暇さえないのだ。そのことは塩貝自身が一番わかっている。
「他のストライカーが、日本人選手でも、同じリーグでも他のリーグでも点を取っています。『負けていられない』という気持ちもあります。まずはこのチームでファーストストライカーの座を取って、結果を残していきたい」
実際ドイツ2部でプレーするのは、簡単なことではない。多くの日本人選手がこのリーグでプレーをし、その大変さと難しさを口にしている。フィジカルコンタクトの強さとゴールへ迫るダイレクトなプレーという、このリーグならではの難しさをどのように感じているだろう?
「そうですね。やっぱりフィジカルというところは強いです。自分のストロングポイントをなかなか出し切れていないというところもあります。そこはうまく適応して、やっていければと思っています」
構想に欠かせない存在として期待されているが…
塩貝が持つ“ジョーカー” としての資質は申し分ない。何かをもたらしそうな雰囲気を十分に感じさせられる選手だ。虎視眈々とチャンスをうかがい、ボールを受けると積極的にドリブルで仕掛け、味方に対して臆することなく何度もパスを要求する。足を止めることなくゴール前に飛び込むし、ゴール近くでパスを受けるとためらいなくシュートに持ち込む。
流れを変えられる選手が持っておくべき特長を持っている。ヴォルフスブルクにとっても、あるいは日本代表にとっても大きな価値を持っている選手だろう。
ただスタメンとしてチームの主軸になれる選手かどうかは、また別の要素が必要になる。スタメンに求められる要素と途中出場選手に求められる要素はまた違う。監督は、ゴールを決められるという一点だけで、FWのスタメン選手を決めるわけではない。
「チームとしてのコンセプトを壊さないこと」「攻守の起点になること」「ゲームの流れをコントロールできること」「相手に流れを渡さないこと」
その点で重要なのは、今季ヴォルフスブルクで監督を務めるトビアス・シュトローブルが塩貝の特長を評価しており、構想に欠かせない存在として期待されている点だ。塩貝もその点を挙げていた。
「監督からは『重要な選手として見ている』というふうに言われています。だから今季残ってここでプレーすることにしました。前回、前々回とスタメンで使ってもらっています。僕の持ち味もあるし、もう一人の選手は身長が高くて、違ったタイプの良さがあると思います。試合の状況によって、僕が出る時もあれば、もう一人のストライカーが出る時もある」
現時点で塩貝はまだ絶対的なレギュラーとして約束されているわけではない。確かな競争がある。いま置かれている現状と必死に向き合い、何をどのように勝ち取るかが問われている。
「あのチームにやり返したい」ブラジル再戦へ燃える思い
第4節コットブス戦では32歳のベテランFWロベルト・グラッツェルがスタメン出場。193センチの長身を誇る経験豊富なドイツ人ストライカーで、今季ここまで2ゴールと結果を出している。一方の塩貝はまだ数字を残せていない。それでもシュトローブル監督は塩貝にもチャンスを与えるし、コットブス戦では52分という早い時間帯に塩貝をピッチに送っている。
ただ、一時3-0とリードを広げていたコットブス戦は後半に入って試合の流れを明け渡し、最終的に4-4の引き分けに終わっている。勝ち試合を逃しただけに、チームにとっても塩貝にとっても痛い経験となった。
「味方(グラッツェル)が2点取って、自分は点を取れていない。そこはしっかり結果を受け止めてやっていくしかないし、もっと本当に結果を突き詰めないといけないと思っています。頑張るしかないですね」
チャンスはあった。86分にペナルティエリア内でボールが転がってくる。ファーストタッチでゴールへと向かいシュートを狙おうとしたが、必死に戻るコットブスDFの懸命のスライディングにかき出されてしまった。
「自分が追加点を取ってゲームを締められたと思う。3-3に追いつかれて、チームが勝ち越した後に自分にもチャンスがあった。ああいうところを仕留める力をつけていかなければいけないと思います」
ブラジルに敗れたあの日から始まった、次の4年間。ここで流れを変えるジョーカーから試合を託される主軸へと変われるか。そして、その先で日本代表でも違いを作れる選手になれるのか。11月にシンガポールで開催される4カ国大会で日本は再びブラジル代表と対戦する。
「またブラジルとの試合があるというところで、そこであのチームにやり返したい。ワールドカップで負けた借りを返したいという気持ちもあります。そこに向けて、もう一回やっていこうという気持ちになったので、次の試合から頑張ってやっていきたいと思います」
いきなり大きなステップを踏むのではない。1部昇格を狙うヴォルフスブルクでポジション争いに勝ち、チームを勝利へ導き、その過程で「自分の力で試合を変えられる選手」へと成長することを目指す。熱い闘志を胸に燃やし、塩貝は新たな自分を見つける戦いに挑んでいる。
<了>
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