角田裕毅に再び巡ってきたチャンス。F1残留を懸けてイタリアで問われる「2度目の挑戦」

Career
2026.09.04

一度失ったF1のレギュラーシートを、もう一度つかむことはできるのか。2026年シーズンをリザーブドライバーとして過ごしていた角田裕毅に、突然チャンスが巡ってきた。負傷したアイザック・ハジャーの代役として、8カ月ぶりにレーシングブルズのマシンを駆った第12戦オランダでは11位。限られた準備期間のなかで存在感を示した。そして今週末、角田は再びレーシングブルズから第13戦イタリアに出走する。F1に残るための「2度目のチャンス」の舞台となるモンツァで、角田は何を見せるのか。

(文=辻野ヒロシ、提供=FOD INFO MOTOR 編集部、写真=Jay Hirano/アフロ)

レギュラーシート喪失も、オランダに突然の代役出走

2026年は日本のF1ファンにとって少し寂しいシーズンになっている。角田裕毅のレギュラーシート喪失により、2026年は6年ぶりに日本人レギュラードライバーが不在のシーズンとなっているからだ。

角田は今季、「レッドブル」「レーシングブルズ」のレッドブルファミリーには留まり、この2チームのリザーブドライバーとしてスタンバイしている。リザーブドライバーとは、レギュラーがケガによる欠場やペナルティで出場できない場合、代役を務めることになる「控え選手」である。

リザーブドライバーはグランプリウィークにサーキットに入るが、レギュラードライバーが何事もなく出走することになれば、レースでの出番はない。レースウィーク中は多忙なレギュラーに代わってファンサービスのトークショーを務めることもあれば、チームのVIPゲストをアテンドしたりする、いわばアンバサダーの役割を担うことになる。

レーシングドライバーとしてはフラストレーションが溜まる立場であるが、レギュラードライバーの不振が続くと白羽の矢が立つこともある。レースの世界ではチャンスは突然やってくるものだ。

角田にもその機会が訪れた。今季トップチーム体制の「レッドブル」に移籍したアイザック・ハジャーが夏休み中のトレーニングで左手首を負傷し、欠場が決まった。「レッドブル」はリザーブの角田をそのまま代役として起用するのではなく、「レーシングブルズ」のリアム・ローソンをハジャーの代役に据え、代わりに角田を「レーシングブルズ」の代役に送り込んだ。

今季、出番をずっと待っていた角田にとっては、自分自身をアピールするビッグチャンスだった。過去にも代役参戦で素晴らしい走りを披露し、のちに他チームからのオファーを受けることになったドライバーは多い。最近でいえば、オリバー・ベアマンの2024年フェラーリでの出走、2022年のニック・デ・フリースのウィリアムズでの出走などがそうだ。もっと昔の話を出せば、後のワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハもF1デビューは急遽の代役参戦だった。

しかし、こういった例はみんなF1未経験の若手の例である。リザーブドライバーにはF1レギュラーではなくなった経験者がリザーブに就く例もあるが、ニコ・ヒュルケンベルグ(現アウディ)は2020年から22年までの3年間にわたりレギュラーシートを失っていたが、リザーブドライバーとして代役出走して活躍したことで、2023年から再びF1レギュラーに返り咲いた。角田が狙っていくのはヒュルケンベルグのような復帰パターンだ。

今年のマシンを初体験。限られた時間で示した適応力

ギリシャでバカンス中に急遽呼び出された角田は、レースウィークの水曜日にイギリスのミルトンキーンズでシミュレータートレーニングを実施したという。今季はTPC(旧型車テスト)でF1をドライブしていたものの、2026年レギュレーションのF1マシンに乗るのは初。「レーシングブルズ」のマシン、VCARB 03に関してはシミュレータートレーニングも初めてで、すべてが手探りのぶっつけ本番だったのだ。

しかも、オランダはスプリントレースありのフォーマットで、金曜日のフリープラクティスは60分間の1回のみ。金曜日に実車に慣れるための時間は決して十分ではなかった。初走行となったフリープラクティスをトップから2.1秒差の17番手で終えた角田は、スプリント予選ではQ2まで進み、スプリントレースの12番グリッドを獲得する。

角田は土曜日のスプリントレースではスタートで順位を落としたものの、13位でフィニッシュ。シーズン開幕前のテストでは多くのドライバーが以前のマシンとの違いに頭を悩ませていたが、角田は決勝に向けてスプリントレース24周をしっかり走り切ったことで自信を得た。

決勝に向けた予選もQ2進出を果たし、決勝レースではピエール・ガスリー(アルピーヌ)とのサイドバイサイドのバトルでオーバーテイクを披露しつつ、好レースを展開。レース終盤にガスリーにオーバーテイクされ、ポイント圏外に脱落してしまったものの、急遽の代役だったとは思えない走りで自身の存在を世界にアピールした。

モンツァでもう一度。角田裕毅に訪れた「2度目のチャンス」

マシンレギュレーションが大幅に変更となった今季、角田裕毅にとって初のレース出場となった。その難しさを克服し、レースで見せ場を作った意味は大きい。チームメイトのアービッド・リンドブラッドの前でしっかりフィニッシュしたのだ。

しかし、角田の活躍は、かつて代役として出場したニコ・ヒュルケンベルグがレーシングポイント(現アストンマーティン)で予選3位を獲得したようなインパクトはない。ベテラン選手でもシーズン途中の代役で結果を残すことは非常に難しく、ヒュルケンベルグの例は特殊な成功例だ。むしろ、怖いもの知らずのルーキーのほうが代役で好成績を残しやすいのは歴史が物語っているのである。

そんな角田に再びチャンスが訪れた。9月4日(金)~6日(日)にイタリアのモンツァサーキットで開催されるイタリアで、再び「レーシングブルズ」のステアリングを握ることになった。レッドブル陣営はアイザック・ハジャーの手首の状態を注視し、イタリアでの復帰を目指していたが、完全な回復に向けてリスクを取る必要はないと判断。ハジャーを欠場させ、「レッドブル」にローソン、そして「レーシングブルズ」に角田を乗せることを決定した。

オランダのザントフォールトとイタリアのモンツァは性格が異なるコースだが、すでに1戦を経験した状態で挑む代役出走は角田にとって、さらなるアピールをするチャンスだ。「レーシングブルズ」は元を辿ればミナルディをルーツとするイタリアのチームであり、母国グランプリである。さらにモンツァでは2008年にセバスチャン・ベッテル(当時トロロッソ)、2020年にピエール・ガスリー(当時アルファタウリ)が優勝。チームとモンツァの相性は抜群だ。

ただ、角田はモンツァでは「レッドブル」の昨年を含めて一度も入賞経験(10位以内)がなく、過去5回中2回はマシントラブルでスタートできなくなるなど相性はあまりよろしくない。

レッドブル陣営からは角田の続投と共に、岩佐歩夢の今季3度目の金曜フリープラクティス出走を発表。岩佐は「レッドブル」のマックス・フェルスタッペンのマシンをドライブする。さらにレッドブルには現在FIA F2でランキング首位につけている19歳、ニコラ・ツォロフが将来のレギュラー候補として育成プログラムにいる。フェルスタッペンの2030年までの契約延長が決まった今、角田の来年以降のレギュラー昇格の可能性はさらに薄くなってしまった状況だ。

そんな中で巡ってきた2回目のチャンス。ここでさらなるインパクトを与える走りができるかどうかで、彼の未来は決まるかもしれない。F1に残留か、それともインディカーやFIA WECなど別カテゴリーへの転向を余儀なくされるのか、このチャンスにかかっている。角田はレーシングドライバーとしての人生を賭けたレースに挑む。

<了>

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